俺と怪盗と狙撃手と   作:黒っぽい猫

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第一話〜始まりは何時でも唐突である〜

『君はなぜ戦う?確かに彼の友人として彼の力になる、というのは理解ができる。だが、何故そこまで彼に肩入れする?君のそれは、些か度が過ぎているように僕からは見えるが』

 

ああ、何時もの予知夢か、と独りごちる。目の前に立っているのは──顔が見えない。低い声から男だということはわかる。

 

『なぜって?ハッ、そんなのわざわざ言うまでもないコトだぜ』

 

夢の中の俺も、今の俺とどうやら同じ事を思うようだ。呟く俺の声と夢の中の俺の声が重なる。

 

『「アイツと一緒にいると退屈しないからだ」』

 

男はフッと笑う。

 

『成程、それは納得のいく理由だ──!!』

 

そこで景色は途切れ、朝の開始を象徴する音が俺の耳に入ってくる。

 

 

 

 

ジリリリリリリリリリリ!!!ガチャ!

 

 

 

「ふぁ……眠い」

 

時刻は朝の五時。とりあえず近くにある防弾制服を手早く纏う。

 

そのまま台所に行って中身を確認。よし、これなら弁当の為の材料もあるな。

 

手早く作り、手早く詰める。米だけは炊いてあるのでやる事はそんなに多くない。

 

 

 

「さて、今日も行きますかね」

 

俺、明智拓郎は呟きながら探偵帽を目深に被った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京武偵高校。俺が通う高校の名前だ。武偵とは武装探偵の略、文字通りに武装した探偵のことだ。

 

科学の発達に伴い頻発し始めた悪質犯罪に対して、既存の警察では対応しきれない政府は武偵法と共に武偵校の設立をした。

 

要するに、荒っぽい事件を解決する人手確保って事だ。

 

「ま、事件はピンキリだからなぁ〜、お、これなんてどうだ?」

 

仕事の依頼は教務科で受注する。基本的には報酬とそれに相当する単位が与えられるので、授業を受けずとも卒業までの単位を揃えることも出来る。ちなみに俺はもう既に単位は揃っている。

 

『猫探し

探偵科:0.5単位、報酬5万円

 

富豪の猫が居なくなったので捜索求む』

 

さすが金持ち、猫探しに5万円か。ふむふむ…この写真の猫、と。

 

猫探しくらいなら2分あれば済むな。

 

「……条理予知(コグニス)

 

写真の中の猫をじっと眺め続ける。俺の脳内には、知らない室内──恐らく依頼主の屋敷──の中にいる猫が映る。

 

早送りのコマのように猫は外に出て行くのでそれを追っていく。

 

コマ送りが終わると、その場所はよく見知った所だった。ただ、ここから行くのはちょっと面倒だな。

 

「こんな時の後輩(パシリ)〜っと♪」

 

スマホを取り出してその中から『風魔陽菜』を見つけ呼び出す。ワンコール目で出てきて少し驚く。

 

『もしもし、明智殿でござるか』

 

「おう、おはよう風魔。今暇か?」

 

『丁度朝の鍛練が終了したので朝の商店街をぶらついてるでござる』

 

「そりゃあいい。その付近に今から送る写真の猫がいるから捕まえてくれ、報酬は2万だ」

 

『に、2万?!承らせて下さい!!』

 

「素が出てる、素が出てるぞ風魔」

 

『ハッ?!………ともかく、今送られてきた写真の猫を捕まえて教務科に連れていけばいいでござるな?』

 

「正確には教務科の前にいる俺な」

 

『10分で推参するでござる!』

 

言うが早いか、電話はそこで切れた。全く現金なヤツだ。

 

「それを餌にして楽する俺も大概だけどな。ま、風魔の朝飯でも買っといてやるか」

 

この高校には戦姉妹(アミカ)と呼ばれる制度がある。わかりやすく言えば弟子入り制度だ。彼女は俺の戦姉妹という訳では無いのだが、親友の戦妹だ。雑には扱えない。

 

個人的に風魔を気に入ってるのもあるが。

 

近くの購買で適当に見繕ったおにぎりとミネラルウォーターを購入する。あいつの場合パンより米派だし、シンプルな朝食を好む傾向にある。

 

俺が元の場所に戻ると、そこには既に猫を抱えた風魔が立っていた。忍者のような装いをしており、マスクのせいで顔は見えないが実は結構可愛い。

 

「おー、待たせたな風魔」

 

「いえ、某も今来たところにござる。はて、手に持っているビニル袋は朝食にござるか?」

 

「おう、お前のな。任務依頼で2万、ここまで届けてもらうのでこの朝食だ」

 

「………」

 

何も返ってこないと思って猫から風魔に視線を戻すと何故か涙を流していた。

 

「なんという羽振りの良さ!!ありがたき幸せにございます明智殿!!」

 

「とりあえずこれを猫と交換だ、風魔」

 

「ハッ!」

 

やけにかしこまって袋と報酬を受け取ると「またご依頼お待ちしております」と微笑んで去っていった、というか消えた。

 

風魔の術かなにかだろうか、俺もやってみたいし今度教えてもらおうかな。

 

「さて、それより先に俺もお前さんを教務科に引き渡さにゃならんからな」

 

「にゃー」

 

その後俺は教務科で報酬を受け取ってその足で始業式──をバックれて屋上で本を読んでいた。元々半分も出席しないし、出席するのは真面目か内申を悪くしたらまずいかのどちらかだ。

 

俺は基本的に探偵ものの本は読まない。一ページ目を読んだ瞬間に犯人逮捕までの流れや犯行動機が頭の中にイメージされ、つまらないからだ。

 

条理予知。イメージとしては推理力がずば抜けすぎている、の究極形だ。

 

「理系の本だけだ、俺が理解できないのは」

 

同じ理由で小説などもめったに読まない。読むのは専ら理科の学術書だ。

 

タチの悪いことにこれは超能力(ステルス)と呼ばれる類のものでもないため、ジャマーなどで阻害できない。

 

「いつかはこの力を完璧に制御したいものだけどなぁ……ん?」

 

不意に遠くで何かが爆発する音が響いた。この音からすると小型の爆弾、爆発したのは自転車で負傷者は無いな。

 

「うーん、読むのも飽きてきたし、アイツがここに来るまでもあと1時間はある。暇つぶしにはなるかな」

 

とりあえず最短ルートで現場に向かうために俺は躊躇なく屋上のフェンスを踏み台に飛び降りた。

 

「んー、あの距離ならあれとあれだ…なっ!」

 

両手から特製の吸盤が先端に引っ付いてるワイヤーを取り出してスパイ○ーマンのように手頃なビルに貼り付ける。

 

地面に近づく体をワイヤーを巻きとることで浮遊させ、ビルに激突する前に他のビルにワイヤーを打ち込む作業を繰り返しながら現場に向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おー、楽しそうなことになってんなぁ〜」

 

現場に到着した俺は、そこには何も無いことをすぐに察してその付近を歩いていた。すると何やら倉庫の方から銃声が聞こえる。

 

そしてそこに駆けつけた俺が見たのは──

 

「おい、小学生相手になにやってんのキンジ」

 

顔を胸に押し付けられた姿勢で笑っている親友の遠山キンジと。

 

「な──なーーーっ!!!」

 

顔をその髪より赤く染めている小学生の姿だった。

 

「え?ごめんキンジ、俺邪魔だったか?」

 

「いや、そんなことは無いよタク。積もる話もあるけどその前に──」

 

「はわっ?!」

 

キンジはその小学生をお姫様抱っこすると跳び箱の上に優しく座らせる。

 

「お嬢様はそこでご観覧あれ」

 

「お、おじょっ?!」

 

元から赤かった顔がより赤く染まる。もう呆れてものも言えない。

 

「まさかお前……アレでヒスったのか?なんとなく気づいてたけどお前あれだよな…おわっ?!」

 

溜息をついていると再び銃声が聞こえてこちらに飛んでくる!!

 

器用にナイフで弾くキンジ。ちゃっかり小学生に向かってくる銃弾も弾いている。

 

「ちょっと!どういうつもり?」

 

「アリアを……守る!」

 

勝手に二人の世界に入り込んだ奴らを無視して俺は背中に背負っている錫杖──の中からレイピアを引き抜いて構える。

 

「キザったらしはそこで小学生のご機嫌でもとってな!俺がやってやる!!」

 

「アンタ後で風穴!!」

 

「それじゃ、お願いしようかな。任せたよタク」

 

後ろで聞こえる叫びに聞こえないフリをしてから銃撃してきた方向にようやく目を向ける。どうやら無人のセグウェイにUZIを取り付けたらしい。

 

「ハッ!そんな単調な攻撃食らうか!!」

 

弾を全て見切って避けるとセグウェイとUZIの関節部に背負っていた細剣(レイピア)をぶち込む。この細剣は貫通させるだけなら3重の防弾ガラス越しの鉄板すら貫ける。そんな得物にこんな鉄クズごときが耐えられるはずもない!!

 

「やわい装甲だな!オラ次!!」

 

的確に関節部だけと貫き遠隔操作不可能にしていく。ものの2分足らずで全て動かなくなる。

 

「もう終わりかよ……」

 

物足りねぇな、と思いながら振り返る──ドギュン!!──危な?!

 

「オイちびっこ小学生!んなもん当たったら死ぬだろうが!」

 

「うっさい!さっさと死になさい!!それに私は小学生じゃない!!高校2年よ!!」

 

死ね死ね言いながら飛んでくる銃弾をとにかく避けながら距離を詰める。

 

視界の端でキンジを探すが、どうやらうまく逃げおおせたらしい。後で殴る。

 

「お前キンジはどうした!」

 

「キンジ?!誰よそれ!」

 

「遠山キンジだ!お前の胸に顔埋めてた変態だ」

 

やっと銃撃が止まる。少し落ち着いた声で目の前の女は質問を重ねてくる。

 

「あの男はキンジって名前なの?」

 

「ああ、そうだ。ちなみに俺の名前は明智拓郎っていう。アンタの名前は?」

 

「私は神崎・H・アリア。さっき言った通り高校二年生よ。学科は強襲科、ランクはS。アリアでいいわ」

 

「御丁寧にどうも。改めて明智拓郎。同じく高校二年、所属は強襲科と探偵科、救護科の掛け持ちだ。ランクは探偵科がS、強襲科と救護科がどちらもAだ」

 

かなり驚いているようだ。まあ無理もない。3学科を兼ねているだけでなくどれもそこそこ高ランクなのだから。本当は諜報科もSランクだが伏せておく。初手から全て手札をオープンにするのは悪手だ。

 

「そんなレベルの腕があるなら安心ね。アンタに依頼を頼みた──「あ、そろそろ時間だな」…?」

 

「悪い、一緒に飯を食う約束してる奴がいるから依頼の話は後でいいか?俺の携帯番号と住所渡しておくから、午後4時以降にその番号にかけるかウチに来てくれ。

 

そんじゃあな!!」

 

もう時間が無い、少し急がなければ。

 

少し慌て気味に近くにある建物にワイヤーを伸ばしてよじ登る。それほど高くない建物の屋上から先程のようにワイヤーを伸ばして俺は学校の屋上へと急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

屋上に戻った俺を待っていたのは無言かつ無表情でこちらを眺める少女の姿だった。

 

「あの〜……レキ?」

 

「はい」

 

「怒ってる?」

 

フルフル、と首を横に振るも目は「怒ってる」と告げている。少し間を開けて目の前の少女──レキの腹から「くぅ」と可愛い音が聞こえた。どうやらお腹がすいていたらしい。

 

「朝飯、食うか」

 

「………はい」

 

出会った時と比べれば、レキも随分感情豊かになったものである。未だに『風』に縛られてはいるものの、それでも彼女は随分感情をこちらに伝えてくる。

 

「どう?今日の朝飯。結構自信作なんだけど」

 

モクモクと一定の速度で頬張るレキに聞いてみる。

 

口の中にあるものを全て食べ終えるとこちらを向き直ってくる。少しだけ、ほんの少しだけだが微笑んでいるようだ。

 

「今日もとても美味しいです」

 

「おう、そーか。そりゃ良かった」

 

それきり、特に何を話すでもなく食べることに集中する。

 

そして食べ終えてから少しして、ポツリとレキが呟く。

 

「これは……独り言です。最近、一人で食べる食事が少し物足りなく感じるんです。いつも通りの栄養食なので、栄養に問題は無いんです。ただ、私の中でなにかチクチクして、落ち着かないんです」

 

これはなんなのでしょう?と首を傾げるレキ。本当に変わったな……と少なからず驚いてしまった。

 

「それは、お前自身で見つけるべきことだよ、レキ。誰に押し付けられるでもない、風が教えてくれることでもない。他の誰でもないレキ自身が答えを見つけてみろ。

 

 

それは、楽しい事だぞ。俺みたいに全てが見えちゃ人生楽しくないからな」

 

ポンポンと頭に手を置いてやると目を細める。ホント猫みたいなやつだ。

 

「そろそろ午前の授業だったな。バラバラに出るぞ、レキ。俺はここから降りて正面から入る。お前は上から戻れ」

 

「はい、ごちそうさまでした……また、お願いしてもいいですか?」

 

「おう、勿論だ。明日も持ってきてやるよ」

 

あ、嬉しそうにしてる。そんなレキを微笑ましく思いながら俺は屋上から飛び降りる。

 

ちゃんとワイヤーで体を固定すれば──?!

 

いつまでも減速されないので慌てて上を見るとワイヤーが途中で千切れていた。そんな馬鹿なっ?!

 

「チッ!!」

 

背中からレイピアを引き抜いて壁に突き刺す。突き立てるじゃない、突き刺すのだ。

 

そこにぶら下がる形で一段落する。

 

「あっぶね……流石に落ちたら死ぬからな」

 

俺は、他の人と比べて推理力が高いだけだ。大抵の事はなんとかなるのは確かだが、物理的に高い所から地面に落ちれば死ぬ。別に不死身ってわけじゃない。

 

「ふぅ……危なかった」

 

予備のロープでレイピアにぐるぐるに巻き付けて、そこから降下する。

 

地面に到達したところでレイピアをロープを引っ張って壁から引っこ抜く。

 

「帰ったら一応メンテしておくか」

 

武器に気を使えない武偵は3流以下だからな。

 

「さて、教室に──「くぉら明智ィィイ!!」なんですか」

 

いきなり後ろから声かけないでよ……と溜息をつきながら振り返ると強襲科担当教師の蘭豹先生だ。

 

「お前のせいで折角作り上げた極秘資料が台無しになりよった……どう落とし前つけるんや?」

 

額に青筋が浮かんでるな……仕方ない、あの手を使うか。通学カバンの中に入っている資料を蘭豹に差し出す。

 

「なんやこ………れ……」

 

「極秘資料の補填資料です。もし不足でしたら、それ以上は依頼という形で承りますので俺の携帯に連絡を入れてください」

 

「そ、そうか………今回は不問にしてやる!急用思い出したから急ぐわ!」

 

ものすごい速度で走り去っていった。何を渡したのかって?他の人の依頼で集めてたデートスポット集のコピーと季節のおすすめコーデだ。

 

蘭豹の言っていた資料は恐らくそれであろうと予想して怒りを収めるために渡したのだが、どうやら当たりだったようだ。

 

「また別に情報集めておかないとなぁ……ん、メールか?」

 

校舎に入ったところで携帯が着信を知らせてきた。差出人はアリアね──。

 

『今日の午後4時半、アンタの家に行くから居なかったら風穴!』

 

え、なにこれ怖い。

 

多難な(ほぼ自業自得だが)一日はまだ終わりそうにない。




魔が差した……としか言えません、黒っぽい猫です

反省も後悔もしています、ですが書き始めたからにはどんなに時間がかかっても完結させます

完結……して欲しいなぁ
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