俺と怪盗と狙撃手と   作:黒っぽい猫

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予想以上に反応が良くって慌てて原作を買って読み直してます、黒っぽい猫です

ここまでは、書き溜めなので予定通り投下します


第二話〜武偵殺し〜

放課後、呼び出しチャイムが来客を告げる。

 

「はいはーい、今出ますよーっと」

 

午後4時半ピッタリだ。流石Sランク武偵。時間は正確だな。

 

「いらっしゃい、アリア。上がってくれ」

 

「ええ、お邪魔するわね」

 

俺は男性寮で暮らしている。そんな所に軽々しく女子を招くな?別に依頼で俺の部屋に女子が来ることなんて珍しくもなんともないなでもう誰も気にしてないのが現状だ。

 

慣れって怖い。

 

とりあえずソファにアリアを座らせる。

 

「紅茶とコーヒーどっちがいい?」

 

「そうね、コーヒーがいいわ」

 

「わかった。オリジナルブレンドだから味は保証できないけどな」

 

手早く台所でコーヒーの準備をしているとアリアから話しかけられる。

 

「アンタのこと、調べたわ。明智拓郎。日本の名探偵、東国のホームズとまで謳われた明智小五郎の曾孫。二つ名は『悦楽探偵』ね。自分の楽しさを追求するために依頼を受ける……って言ってるわりには基本的に頼まれた依頼は断らない」

 

お人好しね、と言われ何も言い返せない。

 

「……まあそれで合ってるよ。てか、よく俺の情報を見つけたな。優秀な諜報科でも居るのか?」

 

「まあそんな所よ。そう言うアンタは諜報科もSランクじゃないの。本当に人間?」

 

「失礼なやつだな……っと、そら出来たぞ。味の保証はできないがな」

 

「ありがとう」

 

コーヒーを2つ置いて俺も向かい合って椅子に座る。ため息をついて一口啜るとアリアの表情が綻んだ。どうやら口に合ったらしい。

 

「…美味しいわね」

 

「口に合ったなら良かった。さて、依頼について話を聞こう。アリアが依頼するのはどの俺だ?」

 

「諜報科としてのアンタに依頼があるわ。もちろん報酬も支払うわ」

 

「結構だ。それで?知りたいのはキンジか?それとも裁判所のお前の母親についてか?」

 

「……待って。アンタどうしてママの事知ってるのよ?」

 

「おっと、口が滑ったな。その感じからして欲しいのはキンジの情報か。すぐに出そう」

 

席を立って脇の棚の鍵を開けて強襲科の中からキンジのファイルを探す。元Sランクのアイツの情報はすぐに見つかった。

 

「………銃を下ろせアリア。お前を争うことになんの意味もない」

 

後ろを見ずとも、アリアがこちらに銃口を向けていることはわかった。伝わってくるそよ風のような敵意がそれを証明している。

 

「2度は言わないわ。どうしてママの事を知っているの?もしかしてあの組織と──」

 

「今はそれ以上迂闊に口に出さない方がベターな判断だぞ。これは──No.3からの忠告だ」

 

僅かに殺気を放つとアリアの銃口が揺れる。まだこんなもんか……。

 

「心配しなくても俺の名前はあそこでも限られたヤツらしか知らないし、だからこそ犯罪に加担もしてない。それに何かあればお前達の側についてやる。ほら、これがキンジの情報だよ」

 

銃を下ろして突っ立っているアリアにファイルを握らせる。少し強すぎたかな……あーあ、震えてるよ。

 

とりあえず座らせコーヒーを飲むよう進める。一口、二口飲んで落ち着いたのかこちらを睨みつけてくる。

 

「どうしてこちら側に立つと言いきれるのよ。アンタもあっちの人間なら──「お前はなにか勘違いしてるな」…?」

 

「俺は自分にとって一番楽しいことをやる。それがまず武偵として俺が依頼を受ける一番の理由だし俺の行動原理だ。んで、あの組織にいるのは楽しいがお前達が成長する様を見る方が遥かに楽しそうだ」

 

だから俺はお前達の側にしかつかない。そう付け足して一息に自分の入れたコーヒーを飲み干す。

 

俺と違ってコイツらには伸びしろが有り余っている。今の時点で自分の限界まで自分を育てた俺と違う。

 

そして、コイツらは俺なんかより遥かに強くなる。俺はその様を見てみたいんだ。

 

「何よ偉そうに……まあ、アンタが犯罪に関わってないなら捕まえても意味無いし今は何も聞かないわ。あ、でもアンタ、私が要請したらさっさと手伝いに来なさいよね?たとえそれが同士討ちでも手を抜いたら風穴開けてやるんだから」

 

「ばーか、同士討ちにはならねえよ。俺達は人を殺さないだろ」

 

一瞬キョトンとしたアリアはふっと笑うとこちらに手を差し出してきた。

 

「そうだったわね、一本取られたわ。これからもビジネスパートナーとしてこき使ってやるから覚悟しなさい?」

 

「へいへい……こちらこそ今後ともご贔屓に」

 

俺達は、互いに固く握手を交わした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリアが部屋からいなくなると、俺は携帯のある番号に電話をかける。

 

「もしもし?もう俺にライフルの銃口を向けなくてもええんでないかい、レキさん?」

 

そう、アリアが部屋に入ってきた時からずっと俺はレキに照準を合わせられ続けていた。

 

『…………』

 

「いや、なにか言おうぜ?」

 

『……私は一発の銃弾』

 

「やめろ、撃つな。流石にシャレにならない」

 

ライフルの弾を条理予知なしに躱すことはできない。ましてや、趣味で集めた家具を破壊されてはたまったものでは無い。

 

「毎度のことだがよ、女性が依頼に来る時だけ俺に照準合わせに来るのやめない?」

 

『…………いつ狼になるかわかりませんから』

 

「ならねえよ、アホか。依頼人との信頼関係が何より大事なんだよ、探偵ってのは」

 

『誰かに取られるわけにはいきませんから……』

 

ボソボソと聞き取れない。

 

「あ?何?」

 

『なんでもありません………ところで、今日晩御飯を食べに行ってもいいですか?』

 

「話をぶった切りやがって……おう、いいぞ。メニューは何がいい?」

 

『お任せします、拓郎さんの料理はどれも絶品ですから』

 

「そうか。んじゃいい時間になったら俺の部屋来いよ」

 

『はい、それでは失礼します』

 

ツー、ツー、と音のなる液晶画面を暫くの間眺めていた。

 

「はぁーあ、アイツ(レキ)は本当に俺の心を掻き乱す」

 

全員と同じように接するようにしている俺だがアイツ相手だと調子が狂う。喜んでいる自分がいるのを自覚している。

 

「これを恋とはまだ呼びたくねぇな」

 

レキからさほど嫌われていないことは自覚しているし、恐らくアイツから好意を寄せられていることもなんとなく分かる。

 

ただ、レキより先に惚れてたなんて、そんなの負けた気がする。

 

「ダメだな、俺は曾祖父さん(明智小五郎)程の冒険心とか少年心は持ち合わせてねぇみたいだ」

 

そんなボヤきをを胸に抱きながら俺は料理に取りかかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日、陰鬱に雨の降る日だ。雨は好きだが今日は何やら嫌な予感がする。とりあえずレインコートを羽織りながら学校へと向かっている。

 

「なーんか面倒事に巻き込まれる予感……ほら電話だ──はい、もしもし?」

 

自転車を漕ぎながらではあるが、イヤフォンマイクを使ってるのでセーフだ。憂鬱な溜息を吐きながら耳をそちらに傾けると聞こえるのは昨日も聞いた声だった。

 

『アンタ、強襲科の棟にすぐ来れる?』

 

「ちょうど俺はそっちに向かうつもりだったからな。あと5分もすれば着くが『ちゃんと装備してから強襲科棟の屋上にすぐ集合!武偵殺しのバスジャックよ!!』……了解、急ぐ」

 

事件を聞いてそれに短く首肯して通話を切る。

 

「やれやれ──楽しい依頼か!!」

 

武偵殺しということは、俺の旧知が動いたのだろう。面倒事ということは、俺にとって最高の刺激になる。気分が上がってきた。

 

急ぎ気味に自転車を飛ばして駐輪場に乱暴に止める。もちろん鍵を閉め、銃弾の残りを確認する。そもそも俺は銃使わないから確認するまでもないのだが。

 

昨日予備のワイヤーに取り替えてあるのでそれを使って強襲科の壁をよじ登って屋上まで辿り着く。もう既にアリアはフル装備で来ており、レキも居た。

 

「ん?レキか、お前も呼ばれたの?」

 

「はい、要請されたので来ました」

 

コイツは、なぜだかは知らんが俺と二人でいる時以外は無表情を貫いている。もう少し愛想良くすればいいのにと本人にも一度言ったが、その後狙撃されたので二度と言うまいと誓った。

 

「んで、ジャックされたバスは?」

 

「もう少しでバカキンジも来るわ。その時にまとめて説明──」

 

アリアが何かを言い切る前に俺の携帯に電話が入る。アリアに断って電話に出る。

 

「もしもし、明智です」

 

『蘭豹や。お前は今どこにいる?』

 

「神崎の依頼で強襲科の屋上に。男子寮を通って武偵校に向かうバスがジャックされたとのことですので──『女子寮側のバスもジャックされとる、厄介なことにお前達三人以外に動けるSランクもおらん……スマンが頼めるか?』」

 

ホント、運があるねぇ…俺。

 

「わかりました、大至急バスのルートを送ってください。武偵殺しが犯人なら車内に爆弾を仕掛けているはず。それを解体します」

 

『任せたで。アンタはウチの学校のエースなんやからな』

 

「厄介なものですよ…要らないんですけどね、そんな称号」

 

軽口を叩いて電話を切る。

 

「アリア、非常事態だ。女子寮から武偵校へ向かうバスもジャックされた。犯人は同一犯と断定して動く。すまねえが、俺はそっちに迎えと指示があった」

 

「…わかった。私達は私達でなんとかするから明智はそっちを片付けなさい」

 

「……次の俺への依頼料は三割引してやるよ、だから死ぬなよ」

 

「バカ言わないで!武偵殺しなんてさっさと逮捕してやるんだから!」

 

「レキ、お前はアリアと協力してそっちのバスをなんとかしろ。俺は一人でやる」

 

「ですが「俺の強さを疑ってんのか?」……」

 

不安げな顔をするレキの頭をポンポンと撫でてやると少し顔を赤くして俯く。

 

「まあ、そういうわけだ。キンジには上手く言っておいてくれ」

 

それだけ言い残し、俺は屋上から飛び降り地面に着地する。

 

「さ、早く終わらせようか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず駐輪場においてあるバイクを一台お借りして(これは返すから借りてるだけだ)バスの走行ルートをリアルタイムで教務科から受け取りながら走る。

 

「やーたら蛇行してやがるな……でもこの先は一本道…その辺のビルから飛び乗るか」

 

決めるが早いか、取り敢えずバイクをパーキングに止めてビルの屋上にエレベーターで上がっていく。

 

屋上のドアを開けた瞬間に、強風で探偵帽が飛ばされそうになるのを慌てて抑える。

 

「さて、ルートをわざわざ俺がこのビルに登るであろうルートに設定してまで話しかけようなんて、探偵相手に頭脳戦とか、命知らずにも程があるんじゃないのかい?武偵殺し」

 

「あっちゃちゃ〜。流石に気づいちゃった?」

 

姿は見えないが、しっかり声は聞こえる。

 

「どうせ、バスの運転手の家族を人質に取ったって嘘でも吐いたんじゃねえの?あんなに蛇行運転してるのは不自然がすぎる」

 

武偵殺しだと一言言えば、たちまち上手くいくだろう。それ程に恐れられている存在なのだから。

 

「ピンポーン。さっすが名探偵のたっくん!よーく私の事もわかってらっしゃる〜」

 

「そうまでして俺と話すことってなんだ?いい加減姿を見せろよ。この場で捕まえたりしねえからよ。一応同じ学び舎にいた仲だろ?」

 

そう言うと、いきなり後ろから抱き着かれる。柔らかな感触と甘い匂い。案の定俺の旧知の人間だ。

 

「久しぶりだな、理子。それ以上は呼ばない方がいいだろう?」

 

峰・理子・リュパン4世。変装の名手であり、世紀の大泥棒アルセーヌ・リュパンを継いでいる。まあ、俺も明智の一族だから一応天敵同士ではあるのかもしれない。

 

「あはっ☆懸命だね、たっくん♪それにしてもいいのかな?天敵に裏を取られちゃって〜」

 

固い筒のようなものを突きつけられているのだろうが、そんな事は関係ない。互いに互いを害さないことはこれまでの関係が証明してる。

 

「いいんだよ。そのワルサー、弾を込めてねぇだろ。俺をアリアから遠ざけるのがお前の目的なんだろ?であれば、お前に俺を撃つ理由は無いはずだ」

 

──理子の目的は先祖を超える事。その為にアリアとキンジ(ホームズとワトソン)が欲しいのだろう。

 

「ピンポンピンポーン!大正解♪幸いにもアリアがキンジと組むことを決めてくれたからね!だったら早くくっつけて理子の踏み台にしてやるのです!!」

 

だからその為にたっくんっていう障害物を取り除いたの!そう言いながら俺から離れる理子。

 

「だったら爆弾解体してさっさと人質を解放してくんね?俺の手間を増やさんでくれよ、理子」

 

「ん〜、どうしよっかな〜?」

 

「……今度は何が望みだ、理子」

 

「そうだな〜、今度デートしよっ♪勿論たっくんの奢りでね!」

 

一応Sランク武偵なのでそれなりに金はあるから問題は無い。無いのだが──

 

「…お前、デートという名の荷物持ちを俺にさせる気だろ」

 

コイツは俺をよく荷物持ちにする。何かと理由をつけてはこちらにそれを強いてくる。

 

まあ、別に不快感などは感じないが。

 

「あはっ☆バレたか〜、それじゃあ断る?」

 

「ハイハイ受けますよ、受ければいいんだろ」

 

「うんうん、素直なたっくんは好きだよ♪あ、それと(武偵殺し)の仕事も邪魔しないでね?私の邪魔、たっくんだったら簡単に出来ちゃうでしょ?」

 

「──神崎・H・アリアと遠山キンジ以外の人間を巻き込まないと誓うなら、邪魔しない」

 

俺の予想が正しければ、彼等が理子に負けることは考えられない。これは推理でもなくてただの期待なのかもしれないが。

 

「んー、だったらたっくんが手伝って!!」

 

「……殺人の片棒担げってのか?」

 

「違うよ〜?ただ、横っ腹に穴が空いた飛行機から理子が逃げた後どうするのかなーって気になるだけ」

 

…成程、そういえば俺がどう足掻いてもついていかざるをえないって事か。うまく考えられている。

 

「いいだろう、その代わり──」

 

「ふぇっ?!」

 

さっきまで余裕綽々だった理子の表情が真っ赤に染まった。抱きつくような格好で耳元で囁いてやる。

 

「報酬は、ちゃんと貰うぞ?」

 

「〜〜〜〜〜!!」

 

全く、色仕掛け(ハニートラップ)もまだまだ甘いな。この程度で表情を緩めるとは。

 

「わ、わかったから離してっ!恥ずかしいよたっくん!!」

 

拘束を緩めてやると涙目でこちらを睨む理子の顔が映った。

 

「おいおい、そんなに睨むなよ。そもそもお前に色仕掛けを教えこんだのは俺だぞ?」

 

「それはそうだけど負けるのは悔しいの!いつか絶対ドキってさせてやるんだから!!

 

……後、もうバスは止まってるしUZIも手を引かせたから理子はもう行くね」

 

おふざけは終わりか、真剣な目をした理子はこちらを見てくる。顔が赤いのは隠せていないが。

 

「ああ、ハイジャックの時は俺も搭乗するから前もって連絡を寄越せよ」

 

紅潮した頬は先程のままだが、理子は真剣な顔で頷く。

 

「わかってるよ……ビジネスで大切なのは依頼人との信頼関係でしょ」

 

それだけ分かっていればいい、こちらも頷くと理子はビルから飛び降り去っていく。

 

「さて……俺も後処理に行きますか」

 

理子の姿が見えなくなったことを確認してから俺はバスの方へ急いだ。

 

「結局アイツ、爆弾解体してねぇぞ……」

 

そのあと溜め息を吐きながら爆弾解体をしたのはまた別の話になる。




いかがでしょうか……ご期待にそえていなかったら申し訳ありません

次回もよろしくしていただけると嬉しく思います
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