俺と怪盗と狙撃手と   作:黒っぽい猫

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お待たせしました。何年ぶりの投稿かはもう考えません。やりたいことをやります。はい


第四話〜再会〜

穏やかな午後、先日ホームズから渡されたエジプトタバコを吸いながら安楽椅子に体を預ける。

 

「暇だ………」

 

まぁ、実際に暇な訳では無い。探せば任務など幾らでも転がっている。だが、残念ながら俺の琴線を震わせるような依頼は一つもなかった。

 

それにしても、と肺にタバコを送り込みながら独りごちる。

 

「まさか理子が退学処分にされるなんてな」

 

アリアへ無断で戦闘行為を仕掛けた理子はイ・ウーを退学処分されてしまったらしい。俺自身が今はイ・ウーとの接触を絶っているため裏は取れないが、恐らく事実なのだろう。

 

「一区切りついたら俺も掛け合ってみるか……そうじゃなけりゃやめちまうか」

 

元々あの組織に思い入れはない。理子がアソコから居なくなるのなら尚更だ。まあ、そうは言っても俺も今は動けないか……。吐き出した紫色の煙が換気扇に呑まれていくのを少しの間眺めていた。

 

「で、キンジ。なんでお前はここにいんの?」

 

現実逃避をやめ、目の前で不機嫌そうにコーヒーを啜る男に声をかける。キンジの制服はチラホラ焦げており、頬に傷があったりと随分とボロボロだ。

 

突然窓を経由して部屋に飛び込んできたキンジには流石に驚いたが匿ってくれ、と言われたのでとりあえず部屋に入れたのだがまだ事情を聴いてなかった。

 

「……逃げてきた」

 

「誰から?刺客にでも襲われたか?」

 

イ・ウーの主戦派か、あとはアリアに心酔している間宮あかり辺りならキンジの首を狙いに行きそうだが。

 

「ちげぇよ……アリアと白雪からだ」

 

「あぁ、成程。アリアがいる時に星伽が部屋に突進、刀でアリアを斬ろうとしてアリアも応戦、お前の部屋が大惨事になったと。防弾物置に隠れたものの白雪の斬撃が運悪く貫通、その穴から更にアリアのガバメントの銃弾がビュンビュン入ってたので慌ててワイヤーを引っ掛けて二部屋先の俺の部屋まで逃げてきた、と」

 

「今の話から何処をどう読み取ったらそこまで細かな情景描写まで言い当てられるんだ?!」

 

「初歩的な推理(コト)だ、友よ」

 

それお前の仇敵の名探偵の決め台詞だろ、とキンジは突っ込みながら自分の頬にできた傷を消毒している。仇敵ではないのだが、あながち間違ってはいないので肩を竦めておく。

 

ていうか、こいつもやってるのかFG〇。

 

「あの二人の喧嘩はしばらく放っておかないとどうにもならないだろうし今日は泊まってくか?部屋に空きはあるし、服のサイズも変わらんだろうから下着だけ新しいの下ろすがどうする?」

 

「泊めてくれ………できれば当分」

 

「ほいほい、了解」

 

とことん望むように生きられない親友に同情しつつコーヒーのお代わりを支度していると、キンジが唐突に話を変えてきた。

 

「イ・ウーは、また仕掛けてくるか?」

 

「おいおい、まさにその組織の幹部に堂々と話を振るなんて死にたいのかキンジ?」

 

「遠回しに聞いたってどうせタクはいい具合に煙に巻いてくるだろ。そんなので丸め込まれるよりは百倍マシだよ」

 

帰ってきた回答からは嫌悪も何も感じられない。必要だから聞く。ただそれだけのようだ。ならば俺もイ・ウーのNO.3としてでは無く諜報科の武偵として、そしてキンジの親友として応えるべきだろう。

 

「YESかNOで答えるのならYESだ。アリアがいる場所には必ずヤツらが顔を出す。それがアリアを攫うのが目的か、それとも消すのが目的なのかは分からないけどな」

 

「そうか、それは──」

 

「誰か、などとは聞くなよ?それは俺にあっちを裏切れと言ってるようなものだからな。俺はお前達に協力するとは言ったが、イ・ウーを裏切る気も無い」

 

「………そうかよ」

 

キンジの内心は複雑なのだろう。個人で立ち向かうにはあまりにもデカすぎる組織と戦うハメになったかと思えば友人がその幹部なのだから。

 

「それとも、俺を逮捕するかキンジ?」

 

「まさか……俺じゃタクには手も足も出ないだろ」

 

冗談はやめろ、と言わんばかりに手をひらひらさせるキンジ。だが……まさか、気づいてなかったのか……?

 

「戦闘能力だけならお前はもう俺より強いよ。お前は俺のことを買い被りすぎだ。俺はイ・ウーの中で文字通り()()だぞ?」

 

「………は?」

 

「俺はイ・ウーにいる他のどの構成員よりも弱いんだよ、キンジ」

 

「嘘だろ………」

 

「残念ながらマジだ。なんなら、俺は理子より弱いぞ」

 

「はぁ?!」

 

事実だ。俺の戦闘力は理子の前では無力に近い。常人よりは強いと言ってもそれはあそこでは全く通用しない。

 

「いや、でも──「両者が万全なら、俺は確実に勝てない。イ・ウーってのは化け物の巣窟だよ」……それなら、どうしてお前はNo.3で居られるんだ?」

 

「そりゃお前、相手を万全にさせないからだ……まあ分かりやすく言えば地の利や情報戦で相手を制しておくことだ。それで大体互角までは持っていける。勿論、限界はあるけどな」

 

戦は、何も物理的な肉弾戦のみに限定されない。情報を集めることに始まり外堀を埋め、敵を孤立無援にした状態で叩けるならそれがベストだ。

 

「お前も覚えておけよ、キンジ。戦う時に大切なのはどうやって相手の戦力を削いだ状態で戦いを始めるかだ。特にイ・ウーの構成員相手には絶対全力で戦わせるな。地の利も含めてな」

 

近頃はイ・ウーの内情に関わっていない為なんとも言えないが、恐らくそろそろ次の刺客が動き出す。今度はアリアとの私怨ではなく、次のイ・ウーの首領に彼女を据えるために。

 

もちろん俺もそんなことをさせるつもりは無い。()()()からの連絡があればすぐにでも動くつもりだ。

 

これでも正義の為に探偵家業をしていた祖を持つものとして、その顔に泥を塗るつもりはないのだから。

 

「さて、キンジ。俺は買い物に行ってくるよ。晩飯はカレーでいいか?」

 

「ああ、任せる」

 

「あいよ……っとキンジ、レキがもう少しで来るから入れてやってくれ」

 

今は14:00。レキは四時過ぎには来ると言っていたので恐らく買い物に行ってる間に来るだろう。

 

「また飯を食いに来るのか?」

 

「気に入られたらしくてな。まあ例の固形食よりは身体にもいいだろ」

 

「確かにな。あ、諜報科にはこの情報隠しておくから安心しろよな」

 

泊めてもらう身だしな、というキンジに礼を言ってから部屋を出た。諜報科に情報が漏れた日には火消しに3日ほどかかってしまう。

 

「火消しが普通の武偵にはそもそもできないんだが、不可能って言わない辺りタクだよな」

 

「なんだよそれ。まるで俺が異常みたいじゃないか」

 

「寧ろ、今の今まで普通だと思ってたのかよ?ここに居るやつは多かれ少なかれ異常だよ」

 

「違いない」

 

ニヤッと顔を見合わせて笑った後、俺は外に出た。

 

 

 

 

 

 

 

寮から数キロ離れたところに自転車を止め、人気の無い路地裏に入る。そろそろいい頃だろう。

 

「──出てこいよ、隠れてるんだろ」

 

「フッ──よく見抜いたな。その観察眼には相変わらず驚かされるよタク」

 

コツコツと音を立てながら歩いてくるのがわかる。やはり旧知の様だ。

 

「カッコつけてもさっき側溝に躓いてたの知ってるからな」

 

「なんだと?!あの時誰も見ていなかったはず「まあ、当てずっぽうだけど」……」

 

「おいおい、無言で斬り付けてくるなよ。死ぬだろ?」

 

無造作に振るわれた刀を掴みながら後ろに立つ女に笑いかけるとつまらなそうな顔をしている。

 

「涼しい顔で私のデュランダルを指2本で止めておきながらよくもまあそんなことが言えるな、タク」

 

睨みつけてきた銀髪の女──ジャンヌの言葉を取り敢えずスルーしながら人差し指と中指の間に挟み込まれていた綺麗な刀身をした西洋剣を離す。

 

その剣を鞘に収めたのを確認してから改めて挨拶をする。

 

「久々だな、ジャンヌ。壮健そうで何よりだ」

 

「うむ。久しぶりだな。早速で悪いが理子の件と今回私が来た理由について話したい。付いてこい(フォロミー)、タク」

 

相変わらず強引な所は変わっていないらしい。路地から足早に立ち去ろうとするジャンヌを追いながら声をかける。

 

「晩飯の買い出しもあるから早めに頼むよ、ジャンヌ」

 

その言葉に、目の前の女は振り返らぬまま手をヒラヒラさせることによって答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近くのファミレスに連れ立って入った俺とジャンヌはとりあえず適当なツマミとドリンクバーを頼み各々飲み物を手に持って座る。その時ジャンヌにドリンクバーの仕組みを教えるのに手間取ったがそれはそれ。ツマミが来たのでとりあえず再会を祝して乾杯する事にした。

 

「まあとりあえず互いの健康と無事な再会を祝して」

 

「うむ。乾杯だな、タク」

 

プラスチック製のカップをぶつけ合い喉に炭酸を流し込む。その爽快感に目を細めつつ揚げたエビに舌鼓を打つ。相変わらず値段の割に美味いものだ。

 

「ふむ…たかだかチェーン店と侮っていたが中々に美味だな、タク」

 

「そうだろ?それに料理が来るのもそこそこ早い。いい店だぜここは……んで、理子の件は?」

 

そう尋ねた俺に対し不機嫌そうな顔でジャンヌは答えた。

 

「お前はあの女の話となるとがっつくのだな、いかな私とて妬くのだぞ…まあいい。峰・理子・リュパン4世の事だが──休学させると、教授からの命令だ」

 

よかった。最悪の事態だけは免れたか。仮に理子が退学にでもなろうものならアイツが姿を現してしまう。それだけは何としても避けなければならない事象だ。

 

「本来であれば退学ものの所業ではあるのだが、あれにはまだ利用価値があるというのが教授の判断だ」

 

「それはどういう……?」

 

「お前を組織に縛り付けるためだよ、タク。お前のような逸材を手放すわけにはいかないが、理子を処分し退学にしてしまえばお前が此方から完全にアリア側へと寝返るだろう」

 

「それはそうだな。理子の保護が俺の最優先事項だし、組織に残っているのもその一点に尽きる。隠れ蓑を理子が失うのに護衛の俺が残っても仕方がない」

 

「護衛、か…………」

 

理子の事情を知るジャンヌはしばらく目を閉じ思案していたが、こちらに提案をしてきた。

 

「なあ、タク。そろそろお前も私達の陣営に来ないか?十分な資金も武装も我々なら整えられる。理子のスキルは是非とも欲しいし『不敗の男』がいれば抗争でも有利に立てる。手厚く保護すると約束する。

 

そして何より、私はお前と戦いたくない」

 

「お前は嘘をつかないからな、そう言うのなら本当にそうしてくれるのだろう。確かに悪い話じゃあない」

 

「なら──「でもダメだ。その提案は受け入れられない」……何故だ」

 

コーヒーを一息で飲み干して一度熱くなった場に間を作ってから改めて話を切り出す。

 

「お前達──イ・ウーの研鑽派(ダイオ)の狙いは神崎・H・アリアを拐かしホームズ亡き後のイ・ウーの首魁に置くことだろう。それはこの国の法では許されない。武偵として、俺はそれを看過できない」

 

「……非合法集団の中心で動きながら何を今更」

 

「……っ」

 

そこを突かれると痛い。俺自身の心情はともかく、あの組織に属していることは間違いようのない事実なのだからそう言われると何も言い返せない。

 

「とはいえ、お前は実際『不殺の男(ノーキリング)』の名を持っているからな。人を一人として殺さずにここまで偉業を幾つも成し遂げてきた。アホくさい、と一蹴する訳にも行くまい。

 

ともあれ、スカウトと歓談は終了だタク。交渉が決裂した以上、私は神崎・H・アリアを力づくでも攫っていく。お前の戦闘力では私を止めることはできれど私を降すことはできん。精々、あの正義の味方の子孫とでも連携をとることだ。勘定を支払う、釣りはいらん」

 

そう言って財布から数枚の紙幣をこちらに押し付けるとジャンヌは去っていった。成程、わざわざ宣戦布告に来て、しかもあんなにかっこよく去っていくのはなんともジャンヌらしい。

 

「ジャンヌ……換金忘れてユーロで払ってるぞお前」

 

しかも足りないし。いや、あの空気に水を差したくないし、大した金額でもないから全く気にはならないんだけどね、などとひとりツッコミを入れる俺なのであった。




次回へ続く!!
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