真選組のとある傭兵の話   作:ささら.

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こんにちは。
久しぶりの投稿です。
なんか途中から文体が変わりますが、書いてる気分が真逆だっただけなので気にせずに。


03:真選組の隊服の縁の所って原作だと白らしいけど金の縁の方が断然カッコいいよね

翌日。

「えー、これから新島千重さんの紹介をします。どうぞー」

千重の正式な歓迎会が行われた。ちなみに先日行われたものは近藤、土方、そして隊長の10名と監察の山崎退の計13名で行われた打ち合わせのようなものであり、覗いていた残りの隊士達はただの野次馬である。

 

「こんにちは。」

その一言で入ってきた千重の制服は、先日のものではなく、隊長格のスカーフ付きのもの。普通であれば有り得ない話だ。新参がいきなり隊長格まで上り詰めるなど、例えるなら、平社員…いやバイトか派遣社員が一夜にして課長になるようなもの。逆に分かりにくくなった感も否めないが、要するに、普通ならあり得ない。

案の定隊士達がざわざわと騒ぎ出した。ちらほら、「近藤さんがおかしくなったか…?」とか「制服間違えたのか…?」というような声も聞こえる。

「説明するんで、聞いてくんしゃい。私は新島千重。幕府の役人…みたいなもん。厳密には違うんだけど、そう思ってもらって結構。」

またざわざわと隊士達が騒ぎ出す。幕府の役人。それは真選組との相性がすこぶる悪い。大抵は真選組の気質に嫌気がさしてしまうし、彼らは高慢で無能だ。

「黙ってくれない?個人的には、馬鹿は嫌い。説明するから、黙って聞いて。」

その言葉に含まれた微量の殺気に、隊士達は一斉に沈黙した。冷たい殺気が首筋を撫でる。

「はいありがと。私は幕府の役人だけど、報告の義務とかは無い。何故なら、私がここに来た理由の一つは、これだから。」

そう言って右手を掲げる。人差し指を曲げて、曲げた親指にくっつけ、輪っかを作る。おそらく文化、言語問わず通用するであろうそのジェスチャーは、確かにそれを表していた。

「「「金っ⁉︎」」」

 

*******************

 

「会津家の役目は昔から勘定方を務める家でね。『テメェら金使い過ぎなんだよ真選組!国庫圧迫してんだ!国家予算の10%も使ってんじゃねえ!』by清花様…って事で、少し自重しろってさ。」

三度ざわざわと隊士達が騒ぎ始める。無理もないだろう。武器を安くして死ねと言っているのと同義なのだから。

「あ、うちが言ってんのはそこの、備品無駄に使ってたり、破壊活動で無駄に金使ってる隊長とか副長の事だから。普通に備品使う分には問題ないよ。

ちらり。

千重に視線を向けられた沖田と土方は、全力で目を逸らした。それはもう、ザッ、という音がしそうな勢いだった。

「それともう一つ。」

真選組の隊服のポケットから何やら紙を出して千重は言った。

「私、清花様直属の暗殺部隊に所属してるんで、別に今のところ誰も殺るつもり無いけど、あんまり酷い背信行為があったら遠慮なく殺させてもらうので。つっても、反乱ぐらいやらないと殺すわけにはいかないけどね。…私なんて存在自体が背信行為みたいなものだし。」

台詞の最後は、独り言だった。小声過ぎて多分、誰にも聞こえなかっただろう。

そして隊士たちは、あまりにも物騒過ぎる千重の物言いにぞっとしたのだった。

 

*******************

 

昔、俺たちがまだ武州にいた頃、たまに訪ねてくる男がいた。何処からともなく現れて、俺の家の縁側で夜酒に誘ってくる。何でそんな素性も分からない怪しい男に気を許していたのかは今となっては分からない。多分、何となくだろう。あの男は、何処か死神のような雰囲気を纏っていた。得体の知れない、でも何か人の心にするりと入り込んでくるような。そう、まるであの落語の死神のようだった。さしずめ俺は寿命を奪われる青年か。

 

俺達はほとんど何も話さなかった。ただ酒を呑み、時々ぽつりぽつりと呟くように自分のことを話した。あの男は本当に自分の事は喋らなかったが。

 

気まぐれにやって来て、いつのまにか居なくなっている。ふと席を立つと居なくなっているのだ。

 

武州を出る前の晩、俺たちは最後に酒を呑んだ。その日の俺は珍しく饒舌で、色々なことを話したと思う。いつもはちびちびと呑む酒は不思議にどんどん進んだ。酔いは全く感じなかった。話したのは近藤さんの事、沖田の事、未来の事、俺の事、それからミツバの事。俺はいくらあいつから嫌われたっていい。だから幸せに暮らして欲しかった。俺たちについて来たところでいつ死ぬか分からない日々。そんな死んだかも知れない奴のこと、いつまでも想ってたって仕方なかろうよ。ただただ、幸せになれ。あいつにはその権利があったし、みんなそれを願ってる。そんな事を話した。

 

いつもより時が短かった。全てを話し終えたのは、満月が落ちかけた頃。話を聞き終えてあいつは言った。ただ、そうか、と。

 

代わりに一つ、と言ったあいつの声はいつもより低く聴こえた。

 

俺の名は、野村十佐と云う。妹がいてな、そいつが今度新島って名家に養子に入るんだよ。凄い事なんだぜ、あいつは女なのにとにかく腕が立つんだ、とか。俺の母さんがボケ始めててさ、介護とかするのかな、とか。応えるように色々な話をした。

 

そして、最後に言った。

 

「後悔しない人生なんてないし、後悔しない奴なんていない。けど、前に進め。今持ってる後悔は____この俺が貰っといてやる。江戸に行くんだろ?気張りな。ほら。」

その指が指した方向は、東だった。夜明け。蒼い空に太陽が、神々しいまでに輝いている。

 

「あんたの夜明けだ。」

 

その男は、まるでそこに見える夜明けのような金の髪と、桃色の瞳を朝日に輝かせて言った。そうとは言わない、別れの挨拶だった。

 

近藤さんの声がした。俺を呼んでいる。

 

「また会えるなら、いつか。」

 

俺たちの進む道には、一筋の光が差していた。そして、その光はやがて周りの全てを照らす。

 

その時から俺はこの男に一度も会っていない。

 

*******************

 

「おい、そこの女。」

 

真選組に女は一人。無視するわけにはいかず、嫌な予感がするものの千重は後ろを振り返った。そこにいたのは、ムサいおっさん。隊士の一人だろう。

 

「何?私、そこまで暇人じゃないのでナンパだったらお断りしておくけど…」

「そんな訳無いだろう。俺は、お前に…」

 

眼光鋭い男は言った。

 

「決闘を申し込む。」




ご覧いただきありがとうございました。
次回は決闘やらせます。
局中法度どうしよっかなー
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