ゴブリンスレイヤー THE ROGUE ONE 作:赤狼一号
というか、思ったより好評で嬉しいです。なんか速攻で埋まってしまうかと思っていましたが、意外と皆さんから暖かいお言葉をかけていただきました。
大して書き貯めしてないんですが、一応1話5000字くらいの予定で、次の話の半分くらい書き貯めたら投稿しています。
作中の当て字は結構創作が混じっています。気になる方はBBしてください。
我が師へ
吾輩は学んだ。老練盤石な無手と短剣の極意を。
吾輩は学んだ。堅牢巧妙な剣盾の奥義を。
吾輩は学んだ。剛健精緻な長柄の秘伝を。
吾輩は学んだ。俊鋭強烈な投擲の神髄を。
吾輩は学んだ。精確機敏な弓の衣鉢を。
申し訳程度の騎乗の骨子を。
優美華麗な礼儀作法の嗜みを。
極彩整然な文筆の技巧を。
そして、数える事のできぬ程の生きる為の術を。
吾輩は学んだ。道は遥かに遠く、我が師がいかに偉大な騎士であるかを
吾輩は学んだ。謀略の限りを尽くし、幾多の殺戮を経てなお足らぬことを。
故に吾輩は、いまだ成らず者にすぎぬ。
不出来な吾輩は、いまだ貴方が討つに足る大悪には到れぬ。
まったくゴブリンなどという糞虫共は、どうにもこうにも数だけは多い。
より上位の
ここまで来ると
とはいえ、多勢に無勢であることに変わりはない。入り口をふさいで火攻めにでもしようと思ったのだが、巣穴の規模が分からないのでは糞虫共を取り逃がす可能性がある。
しかたなく巣穴の前で見張りをしていた糞虫共の首を手土産に用心棒に収まり、隙を伺っていたわけだ。幸い頭目の
そもそも糞虫共は強い相手にへつらう。相手が自分より弱いと思っていればわざわざ用心棒になどならないで、その場で相手を殺して群れを奪う。
つまり用心棒になることを受諾した時点であまり警戒はしないのだ。
大概の事例であれば、外回りの連中を少しずつ殺し、上位種の寝首をかいて、食料に毒を混ぜ、略奪品の中に燃料を紛れ込ませて火をつける、など手を変え品を変えて丹念に殺していくのだが、今回は思った以上にあっさり片付いてしまった。
骰子の目がうまく転んだか、間抜けな冒険者共がのこのこやってきたのだ。おかげで随分と仕事が早く片付いた。彼らの間抜けさには感謝しなければ。
斥候の糞虫が言うには、入り口からべらべらと無駄口を叩いて入ってきたらしい。洞窟内とあっては話し声はもちろんとして、足音から武器と鎧の接触音に至るまで多種多様な音が反響し、その存在を教えてくれる。
ましてや糞虫共は耳が良いのだ。
どうせさぼりながらだろうが、見張りをしていたという糞虫が襲撃に気づいて報告に来た。
あきれた事に、あまりにも騒々しく押し入ってきたので隠し穴から様子を見るまでもなかったので報告にきたそうだ。
話を聞くに随分と油断しているらしい。そのうえ3人も女がいると言うのだ。報告を聞いた呪術師が飛び上がらんばかりに喜んだのは言うまでもない。
それは吾輩にとっても朗報であり、同時に逃せない機会となった。
連中の抵抗具合にもよるだろうが、最悪で孕み袋が3つも増えるのだ。そうなれば群れの規模は爆発的に増大する。吾輩一人で皆殺しにするには中々に面倒だ。
それに数が増えて下手に巣分けされても困る。逃げたところで、どこまででも追跡して追いつめて追い詰めて殺すのだが、どうせ殺すなら一気に皆殺しにしたい。
沢山の孕み袋によって大きな群れを築き、末は
そんな糞虫らしい輝かしい未来への夢想。それを目の前で粉々に叩き潰す。
これ以上愉快なことがあるだろうか?
さて今頃は
一緒に行った
その隙を冒険者共がうまくつくことが出来れば、吾輩の仕事ももっと楽になるのだが、何事も欲張りすぎるのは良くない。糞虫共を皆殺しに出来るだけ良しとしよう。
報告の通りの間抜けぞろいなら今頃は死体か慰み者だ。あるいは運よく吾輩が糞虫共の尻を蹴飛ばしに行くまで生き残っているかもしれない。
なんにせよ、骰子の目は振ってみるまでは分からないものだ。
ともあれその目がどう転ぼうと、一つ確かなことがある。
たとえ糞虫共が何を選ぶとしても、吾輩の
かび臭い土と動物の匂いが鼻を突く。女魔術師はキッと目の前のゴブリンをにらみつけた。
「かえせ、それは」
お前たちなんかじゃ触れていいものじゃ、そう続けようとして女魔術師は地面に引き倒された。
ごつごつした地面に叩きつけられて、肺の空気が一気に叩き出される。
一瞬、息が詰まったところを醜い小鬼たちが群がった。
賢者の学院を首席で卒業した証の杖。学園一の才女と呼ばれ、末は学士か大臣か、とすれ違う者から尊敬と羨望の入り混じった視線を向けられた学園での日々が目まぐるしく蘇る。
そして、憧れのまなざしを煌めかせる弟の顔。
そんなすべての想い出が詰まった法杖が、目の前で真っ二つにへし折られる。女魔術師は自身の心も同時にへし折られたような気がした。
無残に折られた杖を投げ捨てて、ニタニタと下卑た笑みを浮かべる小鬼。
その顔が、冒険者として大成してみせると宣言した女魔術師を嘲笑った連中と重なった。賢者の学院のかつての同輩達。ほら見たことかと、嘲る声が聞こえるようだった。
こんなはずじゃなかった、そんな言葉が女魔術士の頭をよぎる。
自分は間違っていたのだろうか。賢者の学院で学んだ魔術を混沌との戦いに活かして、輝かしき栄光と名誉を手に入れる。
そんな夢を無謀と笑った連中が果たして正しかったとでも言うのだろうか。
学院で学識を高め魔術を磨くという恵まれた立場にありながら、安泰の道である王都行政府の役人を目指す事こそ賢い。そう宣言して憚らない小才子共。
小役人じみた事を言って、挑戦しようともしない腑抜け共の「賢い生き方」とやらが「賢者」の生き方だとでも言うなら、そんなの私はごめんだ。
私が違うと証明してやる、そんな気持ちで賢者の学院を後にしたはずだった。
だが、それは結局のところ、夢見がちな子供の戯言に過ぎなかったのだ。
直前に、初めて実戦の場で行使した奇跡が一撃で小鬼を屠った時の確信はもはや無い。無情な現実が彼女の上で蠢いていた。
女魔術師は破れかぶれになって手足を振り回した。大声で叫び声をあげて必死に暴れる。
抵抗を続ける彼女に興奮し同時に苛立った小鬼が、手にした短剣を振り上げた。
洞窟の薄明りの中で、薄汚れた短剣の刃が鈍く光る。毒に濡れた短剣が女の柔らかい腹目がけてまさに振り下ろされようとしたその瞬間。
洞窟の奥の方から断続してなにかの断末魔が響いたのは、まさにその時だった。
決して人間のものではない悲鳴。女魔術師に群がっていた小鬼たちが一斉に動きを止める。
小鬼たちが戸惑った様子で洞窟の奥を交互に振り返り、互いを見合っている。
何故だかわからないが小鬼たちの意識は洞窟の奥の方へ引かれているようだった。
ふと先ほどまで怯えていた女神官と目があった。ビクビクとした頼りない印象の少女。
その目の中になけなしの勇気の火がともるのを女魔術師は確かに見た。
ゆえに彼女は
渾身の力で短剣を振り上げたままの小鬼を蹴飛ばし、腕を押さえる小鬼を振り切って、思い切り真横に転がった。
女神官が大声をあげて錫杖を振り回したのはその直後の事だった。
目暗滅法の剣幕に虚を突かれて、小鬼たちが思わず後ずさる。
そこへ女魔術師の悲鳴を聞いて戻ってきた剣士たちがゴブリンたちを追い散らす。
かくして
小鬼は今までにないほどに苛立っていた。
先ほどまで女を捕まえていた仲間たちが、唐突に起こったもう一人の女による反攻に呆気に取られて女を離してしまったのだ。
しかも自分も捕まえていた魔術師の女にひどく蹴られた。
仲間たちに押さえつけられた女の豊満な身体。それだけでも欲望がそそられるというのに、女の高慢な顔が悔しそうに歪む顔と言ったら…。
女の目の前で奪い取った杖を真二つにへし折った瞬間の顔など最高だった。そのままむしゃぶりついてやろうとしたら女がひどく抵抗し始めたのがケチの付き始めだ。
お楽しみを邪魔されてイラつき、頭目である
何が起きているのだろうか、この間抜けな冒険者たちの仲間が他にもいたのか、と混乱する小鬼の頭に、数日前に巣穴に訪れた風変わりな「渡り」のことが思い浮かんだ。
『あいつがやったんだ』
小鬼のささやかな脳に確信めいた答えが浮かぶ。
その「渡り」は変わり者だった。冒険者のように鎧兜に身を固め靴まで履いている。
持っている武器も上等な物で、特にその片手斧は複雑な浮彫の施されたえらくキレイなもので、しかもよく切れそうだった。
頭目である
だというのにそれらをひけらかす事もしなければ、その素晴らしい武器を振り回して偉そうに振る舞う事もない。なんとも変わった
斥候に出ていた仲間の首を蹴り転がして、堂々と巣穴へ侵入してきた「渡り」。その時の
体つきは上位種特有のもので、
そして全身からは匂い立つような奇妙な凄みがある。
ありていに言えば
小鬼は最初、群れの長が替わるのかと思ったが、それは杞憂に終わった。
奇妙な事にその「渡り」は
正直言って拍子抜けであり、実は見かけほど大したことないのかと嘲笑い。多くの仲間たちは同じように新入りは運よくいろんなものを拾っただけだと侮り、その持ち物を虎視眈々と狙っていた。
だが、その認識を改めるのにもさして時間はかからなかった。愚かな仲間の1匹が「渡り」の持ち物を盗もうとしたのだ。あの複雑な彫刻が入った片手斧。古びてはいるが小鬼の目から見ても、一目で分かる上等な品。大きさも両手で持つには丁度良い。
「渡り」はなんの躊躇もなくその仲間を惨殺した。
まず掴んだ手をへし折り、五体を満遍なく斧の背で滅多打ちにする。すべてが瞬く間に起きた。「渡り」は≪命までは取らない≫と一見寛容な言葉を吐いていた。
しかし、今思えばすべて計算の内だったのだろう。体中の骨という骨を砕かれた仲間は、3日ほど苦痛にのたうち回った末に息絶えた。
実を言えば小鬼もあの斧を狙っていたのだ。先を越されて幸いだったと思いながら、仲間の無様な悲鳴を聞いて大笑いした事を覚えている。
それ以外にも「渡り」は妙に孕み袋を長持ちさせたがった。
仲間たちが使った後の孕み袋を磨いたり飯を食わせたりするのだ。一応、
せいぜいを餌をやるのを忘れた奴とか、興奮したり抵抗されたのに腹を立てて武器を使って痛めつけた奴を殴り倒したりする程度だった。
故にそんな面倒なことを自分からやる奴など、あの風変わりな「渡り」を他にすればまったくおらず、好き勝手に使ってそのままだ。大小便は垂れ流しにさせていたし、餌を食わせることも忘れるのさえ日常茶飯事だった。
「渡り」はこまめに女の世話をした。体を拭き、餌を食わせ、穴を掘って大小便を片づける。
だが奇妙な事に手入れをする割には自分で使おうとはしない。かといって独占して他の仲間に使わせないようにするでもなく、ただ孕み袋の近くにいるのだ。
時折、孕み袋に興奮して殺そうとしたり嬲ろうとする仲間が出ると、「渡り」は躊躇なくそいつを殺した。決して怒りを見せたりする訳でもない。
ただ何の前触れもなく、虫を潰すように殺すのだ。
呪術師は最初は食って掛かったが≪このほうが長持ちする≫という言葉にすぐに納得して、むしろ「渡り」が女の番をするのを歓迎するようになった。
そういった風変わりなところを気にしなければ、「渡り」は非常に頼りになる奴だった。巣を乗っ取ろうとやってきた別の「渡り」を苦も無く殺して見せた。それもこれも機会をうかがっていたと言う訳だ。この群れを乗っ取るために。
間抜けな冒険者達が現れ、田舎者が迎撃に向かった隙をついて、「渡り」は見事に千載一遇のチャンスを手にしたのだ。
ともあれ、その間抜けな冒険者たちに隙を突かれたのは業腹だった。さて、どう殺してやろうかと間抜け共を観察する。前衛の剣士の男が邪魔だ。
女武闘家も厄介であるが、女は使い道がある。剣士と女武闘家の後ろで魔術師の女と神官の女が怯えた様子で抱き合っていた。
それを見て小鬼の脳裏に天啓がひらめいた。あの「渡り」にこの女達を差し出そう。
あの「渡り」は強い。強い頭目の群れは大きくなる。もちろんおこぼれにだって預かれる筈だ、そう思って小鬼は生唾を飲み込んだ。
怯える神官の女は痩せているが嬲れば面白そうだし、豊満で生意気そうな女魔術師の方は言うまでもない。武闘家の女も捕まえられればもっと良いだろう。
とびかかった仲間の一人が串刺しにされながら剣士の男の足を刺す。剣士が痛みに悲鳴を上げるのを聞いて、小鬼は笑みを浮かべた。
取り乱して棒切れのように剣を振り回す剣士の無様を笑いながら、仲間たちはじりじりと冒険者達を取り囲んだ。このまま包み込んでしまえば、忌々しい冒険者共を嬲り殺しにできるだろう。
剣士と武闘家が必死で群がる仲間達と戦っているが徐々に分断されつつある。
「邪魔だあああっ!!」
怒鳴り声とともに振り上げた剣士の剣が天井に引っかかって澄んだ音を立てる。剣が間抜けな冒険者の手からすっぽ抜けるのを見て、小鬼は喝采を上げた。
四方から仲間たちが取りつき、地面に引き倒す。それを助けようと武闘家の女が取り付いた仲間たちを蹴飛ばし、殴り飛ばす。意外に抵抗する。
だが、それも長くは続かない。振り向きざまに放たれた武闘家の蹴り足を、田舎者が掴んでいた。
もう一匹の用心棒がとうとう合流したのだ。これはもう勝った、と小鬼は心の内で喝采を上げた。
「痛っ・・・放せっ! あぐっ!!」
2度ほど壁に叩きつけられて、女はおとなしくなった。周りにいた小鬼たちが取り付いて押さえつけて服を破る。甘美な悲鳴と、絶望にゆがんだ表情に興奮しながら、小鬼は凌辱の宴に混ざろうと武闘家の方へ向き直った。
先ほどの計画も忘れて、頭にはただこの後の快楽の事しかない。
洞窟の奥から風を切って何かが飛んできたのは、その時だった。
どさり、と何かが倒れる音が聞こえる。音のしたほうへ目をやると、田舎者が後頭部に剣をはやして倒れていた。
巣穴の奥の連中が持っていた片手剣。人間にはやや短い剣が鍔元まで突き刺さっている。
ふと巣穴の奥から見知った血の匂いがした。仲間たちの血と臓腑の匂い。それがどんどん近づいてくるのだ。小鬼は先ほどとは別の意味で生唾を飲み込んだ。あの「渡り」だ。
黒革の
腰の剣帯に
左の手には髭刃の片手斧が握られていた。
斧頭からは血が滴り、刃には脳漿と思しきものがこびりついている。緩やかな動きで「渡り」の左手が上がった。
次の瞬間、流れるように投擲された斧が、仲間の一匹の胸を叩き割った。
倒れた仲間の周りにいた仲間たちが「渡り」に向かって叫び声をあげる。仲間に駆け寄った仲間の一匹が斧を引き抜いて自分のものにしようとした。
一瞬、その周囲の仲間たちの注意が斧に集まる。
「渡り」は滑るように走り出した。走りながら左手で腰にぶら下げた
近づいた「渡り」に気付いた仲間の一匹が武器を向けようとするが遅い。「渡り」の
肺腑と心臓を一気に切り裂かれた仲間が、血反吐を吐き散らしながらその場に崩れ落ちる。
その仲間を押しのけるように襲い掛かった一匹。その眼前に置かれた
「渡り」が猟刀を一振りして別の仲間に向けて死骸を投げつける。それを受け止める形になった仲間を猟刀で死体ごと串刺しにした。死体に足をかけ、鋼の刃を引き抜く。
一連の動きはまるで最初から一つの動作であったかの様に滑らかで、同時に、ぞっとするほど淡々としていた。
一体どれだけ同じ動きを繰り返してきたのだろう。瞬く間に小盾を突き出され、動きが止まったところを猟刀が斬りつける。単純な動きであるが恐ろしく精確で無駄がない。
手足が飛び、頭が搗ち割られ、首が刎ね飛ばされる。
機械的な繰り返しが1匹また1匹と仲間たちを屠っていく。
「渡り」は猛るでもなく喜悦に浸るでもなく、まるで雑草を刈り払うように周りにいた仲間たちを皆殺しにした。
それは不気味な光景だった。
こいつは一体何だ、そんな疑問が頭の中を駆け巡る。
なぜ、こんなに仲間を殺す? 群れが欲しいのではなかったのか?
なにより
理不尽な暴力によってのた打ち回る様に歓声を上げるはずだ。
熱狂のままに身を任せて暴れまわるはずだ。
そこまで、考えて小鬼は渡りを見た。半死半生でのたうち回る
決して逃げられない状態の連中ではなく、逃げそうな相手を追い詰める。目の前の
そんな訳はない。
静かな、しかし執拗なまでの熱情。そういう熱狂の形もあるのだと唐突に理解した。
つまりこの
小鬼は自分の計画が間違っていたことを悟った。どんな貢物を捧げようとあの「渡り」はこの場にいるものを皆殺しにする。
今度こそ鎖綴りに隠された顔が、見知った笑みを浮かべていることがはっきり想像できた。
自分を含めた小鬼たちが良く浮かべる
してみれば最初から簡単な話だった。
誰よりも
ただ、その対象が
つまり、こいつは悪いゴブリンなのだ、悪逆非道にして残酷無慈悲な大悪党。
それが目の前にいる相手なのだと、小鬼はハッキリと確信した。
その瞬間、小鬼は新米の冒険者たちを押しのけて巣穴の出口へと走った。
冗談ではない、付き合っていられるか、こんなところで死ぬのはまっぴら御免だ、そんなことを考えながら入り口の明かり差す方へと走る。
彼の選択は正解だった。脅威に立ち向かわずに逃げる。渡りとなって生き延びる。どこかの農村を襲って運が良ければ群れを作ることもできる筈だった。
その出口の光の中に一人の人影が立っていなければ。
剣先? それを認識した瞬間、中途半端な長さの剣の先端が、眼窩を押しのけるように脳髄を貫いた。雷電のような苦痛と衝撃が、体中を駆け抜ける。
びくり、と痙攣した小鬼の頭蓋にブーツの足底を当て、冒険者はさらに剣を押し込んだ。
骨の砕ける音と、断末魔のひときわ大きな痙攣。
「まず一つ」
鉄兜の奥に揺れる鬼火のような眼差しが、洞窟の奥の闇へと注がれていた。
一話5000から6000字の予定が大幅に超過してしまいました。
書き始めて結構難しいのは設定をどこまで開示するかですね。
全部書いたら説明過多になりますし、何にも書かずにいきなり作中で描写するにも限界がありますので前書きにぶち込むような感じになりました。
これがダメな方はダメかと思いますが、個人的にはこんな形で何かの引用文であるとか、誰かの手紙とか寸評みたいなものが抱えれているは好きなんですよね。
CODのリスボーン中の格言集とか結構好きです。
なんか視点人物? の小鬼さんやたらと頭が回る感じになってますが、まあ上位種になる素質のある個体だったと思ってください。書いてていろいろな意味で人間と対極な生き物だと思いますねゴブリン。というか依頼の段階では脅威度の判定がほぼできないのが性質悪いですよね。
家畜をさらったと言っても、巣分けした集団なのか、焼け出された少数なのかも分かりませんし、旅人や別の村で行方不明になっている女の子が実はなんてこともありそうです。