ゴブリンスレイヤー THE ROGUE ONE 作:赤狼一号
皆さま本当に長い事、お付き合いくださりありがとうございます。
今少しばかりお付き合いください。
王とは大きな騎士であり
騎士とは小さな王である
なれば騎士の中の騎士とは何を言わんや
その名を我は知っている
その名を皆が知っている
寡黙の美徳を知る唇が
唱える事なきその名こそ
千の誉れと語られし
聖なる騎士の御名なるぞ
その名は王にあらざるや
その名は仕える者なるぞ
しかして、剣を奉じるは
ただ祀ろう神の御許のみ
その道こそが騎士の道
その姿こそ戦士の誉れ
騎士の理想を鋳型に鋳造されしものよ
なべて騎士たらんとする者達の偶像よ
どうか永久にあれ
騎士達よ、神と鋼を信奉する修道士たちよ
高きその名を見知りおけ
消して忘れる事なかれ
汝が神に仕える如く
汝が王に仕える如く
なべてその名を信奉せよ
かの御方が黙すが故に
我らはその名に雄弁たらん
偉業の全てを語り讃えん
御名を讃えよ
御業を讃えよ
高きその名を祀り讃えよ
黙して語らぬ彼の騎士の
雄弁なりしその在り方を
~帝都のとある貴族詩人の詩集より~
ギルドの酒場で差し向いに座る。女神官は、時折、深刻そうな相槌を打ちながらゴブリンスレイヤーの話を一つ一つ注意深く聞き、そして全てを聞き終わると、頬に手を当てて深いため息をついた。
重いため息は、俄かに難題を持ちかけられた故だけではあるまい。
短い付き合いだが、目の前の少女が「お人好し」と呼ばれる部類の善良さの持ち主である事は分かっている。
故に持ち込まれた厄介ごとを前に悩んでいるのだろう。
「ゴブリンの王様ですか……。数百のゴブリンに、上位種まで…」
女神官の真剣な声。何かを慎重に検討しているようだった。
――断ってくれても構わない
そんな言葉が喉元まで出かけた。なのに踏みとどまったのは何故だろうか。
言うまでもない話だが、女神官は若い娘なのだ。負ければどんな目に合うなど、分かり切っている。そしてその残酷な末路は、本人も幾度となく目の当たりにしているはずだ。
にも拘らず、これだけ苦悩するのが、目の前の少女の掛け値なしの善良の表れだった。
だからこそ、そこに付け入るのは、やはり間違っているのだろう。
「危険な話だ。無理にとは…」
そうゴブリンスレイヤーが切り上げようとした瞬間、女神官はすくっと立ち上がった。
「…人手がいりますね」
「なに?」
女神官の静かな言葉に、ゴブリンスレイヤーは思わず聞き返した。
「数百のゴブリンですよ。いかにゴブリンスレイヤーさんでも討ち漏らさないようにするのは難しいのでは?」
さも当たり前の事のように言う女神官。
確かにそれはそうなのだ。だからこそ、この場にいるわけでもある。あるのだが……。
「…待て」
「はい?」
何とか絞り出したゴブリンスレイヤーの言葉に、女神官が小首を傾げた。
「お前の言う通りだが……。断るのではないのか?」
ゴブリンスレイヤーが絞り出したその言葉を受けて、女神官がジトリと座った眼を向けた。
「まったく、やっぱりそんな事考えてたんですね」
僅かな呆れと、諦観のようなものをにじませながら、神官の少女はまた大きくため息をついた。
「どうせ、お二人は行くんですよね?」
そう言う女神官の目線が、ゴブリンスレイヤーの頭を超える。
振り返れば、昨日別れたばかりの盗賊めいた騎士が彫像のように立っていた。
「……そうだ」
小鬼殺しの応えとローグの頷きはまったく同時であった。その様子を見て、なぜだか女神官がクスリとほほ笑む。
「ならいきますよ…。私たち、徒党じゃないですか」
何を当然の事をと言わんばかりの口調で、女神官が宣う。
「……きつい戦いになる。俺とローグでも勝てないかもしれない」
ゴブリンスレイヤーの絞りだすような言葉に、女神官が僅かに目を丸くした。
「それでも、ゴブリンスレイヤーさんは行くんですよね?」
「当然だ」
女神官の優しい問いかけに、ゴブリンスレイヤーは決然と答えた。
「ローグさんも、ですよね」
そうして女神官が今度はローグの方に笑いかける。盗賊騎士が再び首肯で答えれば、女神官は咲き誇る花のような笑みを浮かべた
「それで……どうやるんです?」
可憐な少女の満面の笑み。それが何故か、背後の盗賊めいた騎士と重なって見えた。
女神官と詳細は詰めた。人手が要ると言う結論に代わりはない。そして、それを確保する手段は一つしか無い。
無意識にそれを避けようとしていたのは、やはり何処かに諦観があったからだ。
心が落ち着かない。それはこれから慣れないことをする不安のせいだけではないのだろう。あの日、姉を失ったように、幼馴染も失うかもしれないと言う恐怖のせいだけではない。
全てはあの呪わしき昔日をなぞる様であり、そうではなかった。
同じ流れのようでありながら、投じられた一石より始まった流れは予想外の事ばかりが起きる。
それでも、その流れを起こしてくれた者達の為にも、出来る事をしなければならない。
聴きなれたギルドの喧騒。それが今日に限っては妙に心をざわつかせる。
―――俺は……恐れている。
これから己が口に出す言葉を拒絶される事に対する不安。
妙に上手くいってしまったがゆえに生まれかけた希望。それが次の瞬間には潰えてしまう絶望。
―――俺の時は誰も来てくれなかった。
失ったものが脳裏をよぎる。それでも、答えてくれた者がいた。
ふとゴブリンスレイヤーの視界に入ったのは奇妙な縁から冒険を共にする事になった男。己より頭一つ高い偉丈夫。己と同じ道をあるいてきたその男は、同時に己がかつて憧れた「冒険者」そのものだ。
そして優しく微笑む神官服の少女。
だから、と言う訳ではないが、踏み出すための決意に迷いはなかった。
「みんな、聞いてくれ」
――小鬼王が来る。
幸か不幸か、彼の言葉を疑うものはいなかった。だからこそ、その後の冒険者たちの反応が芳しいものではない。
――そんな事は最初から分かっていた筈だ。
これが当然なのだ。冒険者は己の身一つが商売道具。見知った顔の為とは言え、命まで掛ける義理はない。
声を潜めて、皮算用をするもの。出ていく算段をするもの。ただ己の不運を嘆くもの。様々なようだが、総じて戦う気がある様にはみえない。それが小鬼殺しの現実だった。
――ゴブリン退治は危険度の割に実入りが悪い。
それは彼自身が一番よく分かっている。だからこそ、己がやるしかないのだと心に誓ったのだ。
わざわざ何の報酬もなく命を懸けるわけはない。今回の事だって、つまるところ災害のようなものなのだ。
なべて自己責任の冒険者だからこそ、報酬もない他人事に首を突っ込むよりは嵐が過ぎ去るのを待つ方が賢い選択だ。
遠くで妖精弓手が不甲斐ない同業者達にいきり立っているのが聞こえる。傍らの盗賊もどきの冒険者と言えば、一言たりとも発することなく仁王立ちしている。そのせいかこちらに何か文句を言おうとした冒険者達は、みな即座に目をそらした。
だからであろうか。
「おいおい、さっきから何言ってんだお前」
よく通る声がその場を一喝した事に、ゴブリンスレイヤーは驚くと同時に妙な安堵を感じた。
声を上げたのは辺境最強を自負する槍使い。彼はゴブリンスレイヤーをまっすぐ見つめると、堂々たる態度で口を開いた。
「……俺たちは冒険者なんだからよう。何かさせてぇなら報酬を出せよ」
それは至極もっともな要求だった。そしてそれは明らかな譲歩でもある。交渉の余地があると言う明確な宣言。
辺境最強となのる男は腕だけでなく、人となりも確かだった。ゆえにこそ徒党の者たちを除けば最も信用できる冒険者なのだ。
「報酬は俺の持っているもの全てだ」
相変わらずの決然とした答えに、槍使いが僅かに顔をしかめる。
「分からねえな。具体的に言え」
「財産、装備、その他、俺が所有する全てのものだ」
「命もか?」
そう槍使いが聞き返した瞬間、傍らの冒険者が一歩前に出ようとしたのを手で押さえた。
「……そう言いたいところだが、もう俺一人のものではないらしい」
そう答えた瞬間、カウンターの向こうにいた女魔術師と目があった。何やら、妙に厳しい顔をしている。
そして意を決したようにローグの方をキッと睨むとカウンターの上に飛び乗った。
「代書屋組合はっ! この街あっての組合です!! 【参加した】全ての冒険者に金貨一枚の報酬をお約束いたします!!!」
普段、恋文や手紙を代読するときの穏やかな調子とは打って変わった凛々しい声。
先程まで姦しかった酒場の中がシンと静まり返る。
一瞬あっけにとられていたギルドの受付嬢が、我に返って大声でそれに続く。
「ギルドもこの街の危機に対して立ち上がってくれた皆様にゴブリン一体につき金貨一枚を支給いたします!」
「――やるよ」
その声に誰よりも早く答えたのは、落ちついた女の声だった。
「こんなに美味しい依頼はなかなかない。やらないなんて選択肢はないよ」
立ち上がったのは徒党のリーダー格らしき剣士の女だ。わざとらしく声を張り上げながら、悪戯っぽい笑みを浮かべている。
「それに、鋼鉄等級の冒険者たるもの借りは返さないとね」
最後の言葉は呟きに近かったが、女がチラリとローグに流し目をくれるのが見えた。思い返してみれば、初めて見る顔ではない。
確かローグが単独でゴブリンの巣穴を討伐した際にかち合ったという鋼鉄等級の冒険者だ。お互い協力して戦ったとかで、冒険者ギルドでも顔を合わせれば、にこやかに話しかけている姿を何度か目にしたように思う。
ローグの方はあいも変わらずの調子だったが、会うたびに距離が近づく様子に、女魔術師が鬼神の如き形相を浮かべていた気がする。女神官がその度に全力で目をそらしていた。
そうして見れば女の後ろに居並ぶ者たちも、なるほど見覚えのある顔だ。
やや複雑な表情で会釈する森人の魔術師。対照的に笑いながら手を振っているのは園人の斥候。只人らしき神官が伏し目がちに頭を下げる。
「私らはもちろん行くわよ」
彼女らに負けじと立ち上がった森人弓手が薄い胸を張る。
「おうさ」
「危機にあるものを見捨てたとあらば、父祖に顔向けができませぬ」
徒党の者たちが次々と同意の声を上げる。
「俺もいくぜ。悪くねえ仕事だ」
重戦士が男臭い笑みを浮かべて、チラリとこちらを見る。
「……感謝する」
そう頭を下げれば、妙に気まりの悪そうな顔になったのはなぜだろう。
「素直にならないから」隣でニヤニヤ笑っていた女騎士がからかうような口調で重戦士を小突いていた。なんだかよく分からないが、手が増えるのはありがたい。
それを皮切りに方々から「やれやれ」とか「仕方ねえな」と溜息交じりの同意の声。難色を示していた者たちも、どこかできっかけを求めていたのだろうか。続々と参戦を表明する。
ふと小鬼殺しの肩を叩くものがある。そちらに目をやれば、盗賊めいた騎士が何やら手言葉を作っていた。
「ふむ…良いのか?」
提案は確かにありがたいものだった。ローグが黙ってうなずく。
「素直に郷里を救ってくれた礼だと言えば……「ローグからも報酬があるらしい」なに?」
なにやら重戦士を小突いていた女聖騎士がこちらへ視線を戻した。
「活躍した者には、沈黙の聖騎士への
一瞬、その場の時間が止まったかのような静寂。
ふと視界の外れにいた重戦士が必死に隣を見ないようにしているのが目に入った。
女聖騎士の開き切った瞳孔の中心より溢れていく怪しい輝き。
何故だか妙に背筋が寒くなる。
「……重剣士」
先ほどとは打って変わって静かな声音で、女聖騎士が重戦士の方を振り向いた。
「私は手柄を立てねばならぬ。……協力してくれるな?」
「」
重戦士がカクカクと頭を上下させているのが見えた。何か助けを求めるような眼で見られているような気がするが、どうにもできない。
何故かカウンターの裏からも「ちょっとギルド長!? 現役時代の装備なんて持ち出してどうするつもりですか!!」「この街を守るためにぃ!! ギルド長たる私が戦わねばならんのだぁぁっ!!!」「絶対、沈黙の聖騎士様に会いたいだけじゃないですかっ!!!」「それの何が悪い!」「悪いに決まってるでしょうがぁぁぁぁっ!!!!」「会いたいったら、会いたいんだもん!!!!」などと言う怒鳴り合いが聞こえてくる。
と言うか騎士関係の冒険者達の瞳孔が軒並み同じように開いてる。怪しげな輝きに満ち満ちているのは言うまでもない。
ゴブリンスレイヤーは、珍しく深く考えるのを辞めた。
「なんだか妙な展開になったな…」
どこか呆然と推移を眺めていた槍使いが、気を取り直したように顔を引き締めた。
「そこまで言われちゃあ、張り切るしかねえな!!」
自慢の槍を肩に担いで美丈夫が、ギルドのカウンターの方を見る。
「お嬢さん方、報酬の貯蔵は大丈夫か?」
冒険者達が、ギルドの職員たちが、歓声を上げてそれに応えたのは直後の事だった。
胸奥がざわつていた。何かこそばゆいような、それでいてワクワクするような何かが込み上げてくる。
言葉にし難くも、懐かしい。「久しく忘れ去っていた筈の何か」をゴブリンスレイヤーは確かに感じていた。
そして訪れたのが翌日の決戦であった。
郊外の牧場を背にした平原に集結した冒険者達。各々、得意の武器を携え、緊張した面持ちで決戦の時を待っている。
出来るだけの準備はした。望外の援軍とて来てくれた。
ゴブリンスレイヤーが当初考えた状況よりも、格段に良くなっていると言えた。
――あの時と同じになると思っていた。
だが、それは違った。何もかもあの時とは違う。だからこそ、その結末も違えなければならない。
故にこそこれまでとは違う手段を講じる必要があった。
「あの盗賊もどきはどうしたんだよ」
その時、傍らにいた槍使いが怪訝に当たりを見回した。
「…奴はここにはこない」
「はぁっ!?」
辺境最強を自称する冒険者が思わず出した驚きの声は、当人が考えてた以上に注目を浴びたようで、少なくない数の視線を集めたのに気付いて、槍使いは「なんでもねえ」と手を振って誤魔化す。
視線が散ったことを確認した槍使いは、ゴブリンスレイヤーの兜のそばまでよると低い声で囁く。
「…どういう事だよ。野郎、逃げるようなタマじゃねえだろ」
槍使いの言葉の通り、かの騎士は逃げるような男ではない。故にこそ、この場に居ないのだ。
「へっ、まあそれも作戦の一環ってか? 何にせよ、この俺が居りゃ十分て事だな」
槍使いが何かを察したように軽口を叩く。どうやら深く尋ねるつもりはないらしい。
やはりここぞと言う時に頼りになる。だからこそ信用できるのだ。
「それじゃ、始めようぜ」
「ああ、ゴブリン共は……皆殺しだ」
風変わりな指揮官の、この時ばかりは頼りになる常套句を受けて、冒険者たちは破れかぶれの気勢を上げた。
出来ることはやった。すべき備えはした。それでも、不安の方が多い。これから先もきっとそれは変わらないのだろう。
「なんてひどい事を……」
最前線に出てきたものを見て、女神官は顔をしかめた。
戸板のようなものに縛り付けられたそれは、人間であった。おそらく半年途上に捕まえた女たちであろう。それを盾としたのだ。
小鬼の悪辣さと小賢しさを聞いてはいても実際に目にするのは初めての者も多い。
だが意外な程に戸惑いの声は少なかった。事前に聞かされていたからだ。
「手筈どおりやるぞ」
決然と響いた声に、まわりの冒険者達が奮い立つ。
ボロボロの鉄兜に中途半端な長さの片手剣。いつもの小鬼殺しの冒険者がこの時ばかりは何より頼もしい。
正直に言えば、あの盗賊じみた騎士と言う恐ろしい相棒がいるにも拘わらず、いまだに彼を小物狙いと軽んじる者がいない訳ではない。だが、少なくとも、今日、この瞬間に限ってはそのような目で彼を見る者はいないだろう。
小鬼を相手にする事にかけては辺境随一、その積み重ねてきた実績こそ何よりの説得力だ。
それが女神官には少し誇らしく感じられた。
「奇跡は行けるか?」
鉄兜がこちらを向く。女神官はそれに軽く頷きを返して詠唱を始めた。
いつも通りのやり取り、ただ一つ違う事があるとすれば、小鬼殺しの腰に古びた髭刃の斧がある事だ。
盗賊めいた騎士に無理やり持たされたそれは、対になる斧で持ち主の居所が分かるとか。
『もし貴殿が糞虫共に殺されたら、吾輩が地の果てまで追い詰めてそれらを殺す』
だから安心してもっていけ、と物騒きわまりない餞別が手渡されたのはつい先ほどの事だ。
――思えば、あの方とも不思議な縁でしたね。
不器用きわまりないやり取りを思い出して、思わず笑みがこぼれた。
先行して樹上に陣取った者たちが何やら粉のようなものをばらまき始める。風向きはおあつらえ向きの追い風だ。風上から流されたのは入眠効果のある粉薬。
同時に鉱人導士と魔女の奇跡が紡がれる。
≪酩酊≫と≪睡眠≫を受けて、盾持ちの小鬼達が矢継ぎ早に地面にフラフラと倒れ込む。
女性を括りつけた戸板が次々に倒れ、悍ましい防壁が崩れ去っていく。
「今だ!!」
間髪入れずに走りだしたのは軽装の冒険者達だった。眠っている小鬼には目もくれず、女たちが括りつけられている戸板を担ぎ上げ、そのまま一目散にもと来た方へと駆けだしていく。
あとに残された小鬼の軍勢が、してやられた事に怒りの声を上げ、冒険者達の後を追いかける。無防備なその背に襲い掛かろうとした瞬間、矢玉と奇跡のつるべ打ちがそれを阻んだ。
効果は残酷なまでに覿面である。矢に臓腑を引き裂かれて地面に崩れ落ちるもの奇跡に焼かれのたうち回るもの、身体を貫く矢を掴んで抜こうとするもの。
「よっしゃ、かっとぶぞ!!」
とは辺境最強を自称する槍使いのものであったか、手に手に得物を持った冒険者達が、混乱冷めやらぬ小鬼の雑兵どもへ襲い掛かる。
奇襲はすれども、奇襲されるのには慣れていない。かねがね小鬼殺しの策が図に当たっていた。
閉鎖空間でもない平野で冒険者が隊伍を組んで戦えば、小鬼など鎧袖一触である。数の多さに手古摺りこそすれど、虐殺の様相となるのは至極当然の結果と言えた。
「……このまま」
――全部、うまくいってくれれば!
女神官はそう願わずには入れなかった。女たちを助けられた事には、安堵があるものの
「次が来る」
冷静なゴブリンスレイヤーの声と共に、不穏な遠吠えがあたりに響き渡った。
~ダクソ風武器解説~
「とある騎士への紹介状」
ある高名な騎士への紹介状。
この書状を持つ者は、彼の騎士がその手を取り、偉業を称えると言う栄誉を得る。
その騎士の名をかたるものは数あれど、
その騎士が自ずからその名を広める事は無かった。
己が名すら語らぬ沈黙こそが、何より雄弁であったから。
彼の騎士は誰の前であれ、その沈黙を破る事は無い。
騎士たれば、何人たりとも彼の前で沈黙を守る事はできない。
皆さん、大変お待たせいたしました。ついに最終章中編です。
やりたい事を全部つ込め込み過ぎて、大変なことになったシリーズですが、今までよくお付き合いいただけたと思います。あと少し(このフレーズも使って長いですが(-_-;))
ともあれ、あともう少しだけよろしくお願いいたします。