「「ありがとうございました」」
ここは高町家の敷地内にある道場。その道場で道着に着替えた悠一と美由紀が頭を下げながら礼を言う
「はぁ~~~~今日こそは1本取れると思ったんだけどな~。悠一君、前に手合わせした時よりも強くなってない?」
「そうですか?特にこれといったことはやってな・・・・ん?」
「何か思い当たる節でもあるの?」
「いえ、特に何も(久しぶりの士との本気の戦いのお陰だなんていえねぇよな~~)」
心当たりがありまくっていた悠一だったがそのことについて話すわけにもいかず、とりあえず誤魔化すことにして、持参した特製のはちみつレモンをバッグから取り出して飲む
「やってるね」
「お父さん」
「士郎さん」
すると、道場の持ち主である士郎がやってきた。道着き、木刀をもって
「珍しいね、お父さんがここに来るなんて」
「剣を捨て、引退したとはいえ、後進に伝えきるまではさび付かせておくわけにはいかないからね。そうだ!悠一君、僕の訓練がてら、模擬試合をしてみないかい?」
「士郎さんと模擬戦?」
「おぉ!お父さんと悠一君の試合!恭ちゃんと試合は何度か見たことがあるけど、これは何気に初だね」
「言われてみれば」
美由紀の言う通り、悠一は今まで何度か恭也や美由紀と手合わせをしたことはあったが、士郎とはやったことがなかった。そして、悠一は前に恭也が父、士郎から剣を教わった言っていたのを思い出す
「(恭也さんを鍛え上げた人・・か。一剣士として興味があるな)お願いします」
「美由紀、立会人を頼む。それと僕たちの試合をよーく見ておくように」
「う、うん」
士郎に言われ、美由紀は2人の間に立つ
「「・・・・」」
「・・・始め!」
それぞれ木刀を構えた悠一と士郎は美由紀の合図で模擬試合を開始した
「(手加減しているとはいえこの速度についてこれる・・か。恭也が褒めるだけのことはあるということか)」
「(速さは恭也さんより少し劣るけど充分に速い。それに緩急をつけているから少しでも見失えば一気に畳みかけられそうだ)」
道場の中を駆けまわりながら士郎と悠一は剣を交える
「(この年ですでに剣士として完成され、いまだ成長を続ける。いったいどれほどの鍛錬を積んできたんだい、君は?)」
剣を交えながら士郎は悠一の剣士としての力量を図りつつ、悲しい目をするが、その感情を今は抑え、悠一との試合に集中する
「(さすがは恭也さんの剣の師。これだけ打ち合ってるのに隙が全くできない。それに恭也さんと同じ流派で剣士だけど、まったく違うな。恭也さんの剣は若さゆえか少し荒々しいのに対し、士郎さんのは鮮麗されてる。解ってはいたけど、一筋縄ではいかないな)」
「そろそろ温まってきたから少し速度を上げるよ?」
何度目かの交差の時に士郎が悠一に呟くと、速度が上がる
「っく」
上がった速度を乗せた一撃を士郎は悠一に繰り出す、悠一は木刀で士郎の一撃を防ぐも、体格の差から弾き飛ばされるも、宙で体勢を整え、着地する。その瞬間を狙ったように士郎が詰め寄り、今度は膂力を加えた2刀1撃を放つ
「伍の型“残月”」
士郎の2刀1撃を後ろに下がって躱した悠一は抜刀の構えをとり、1歩前に出て木刀を振るう。士郎は2本の木刀を交差させ、挟むような動きで悠一の木刀を抑え込み、滑らせ反撃した
「かは!?」
諸に士郎の2刀1撃を受けた悠一は道場の壁まで吹き飛ばされ、衝突する。痛みに耐えながら起きあがった悠一の首筋に2振りの木刀が添えられる
「・・・・降参です」
形成逆転するのは無理だと判断した悠一は木刀を手放し、両手を上げ負けを認めた
「・・・しょ、勝負あり。勝者、高町士郎」
ハイレベルな戦いに呆然として美由紀だったが、気を取り直すと腕を上げ勝者の名を告げた
「さすがは恭也さんの剣の師。見事な腕前でした」
「そういう悠一君こそ、その年であそこまでの力量、感服したと同時に、少し悲しくもなったね」
「え?」
「だってそうだろう?大卒の資格を持っていても君はまだ子供だ。友達を作って、遊んでいたい年頃なのに君は剣にすべてを捧げている。これを悲しいと思わない親はいないよ」
「そんなものですかね」
士郎の話を聞き、悠一は3回も青春を謳歌した手前、どう答えたらいいのか分からずあいまいな言葉と苦笑いで誤魔化した
「だけどもし今度、手合わせをするときは本当の本気の君と戦いたいな」
「っ!?」
自分のにのみ聞こえる声量で言われたことに悠一は眼を見開く
「さて、美由紀。久しぶりに僕が稽古をつけてあげよう」
言いたいことを言うと士郎は美由紀に近寄り、指導を始めた
「・・・・あの人にはじいちゃんと同じで一生敵わねぇ気がするな」
悠一は自分を鍛え上げた転生先に祖父のことを思い出し、苦笑いすることしかできなかった