「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしています」
普通の学生なら学校に行き、勉強をしたり遊んだりとしている時間帯。我らが氷室悠一は何をしているかというと
「悠一君。コーヒー2つとサンドイッチを3番テーブルにお願い」
「ウィース」
高町家が経営している喫茶“翠屋”でバイトをしていた。なぜ悠一がこんなことをしているかというと、ほかならぬ恭也の提案だ。飛び級で大学を卒業し社会人1年目とはいえ悠一はまだ子供、とても働ける年齢ではない。亡くなった親(都合上)が残した金銭があるとはいえ無限ではない。そこで恭也が自分の家族が経営している喫茶店でバイトをしないかと話したのだ。悠一はメリットとデメリットを考えた後、その提案を了承し、1週間前から働いているのだ
「お待たせしました。コーヒーとサンドイッチになります」
「ありがとう。その年齢でもう働いているんだなんて大変ねぇ~」
「いえいえ。それではごゆっくりどうぞ」
悠一はお客に一礼すると下がった
「ふふ、お客様との会話もそうだけど、接客にもずいぶん慣れたね悠一君」
「まぁ、1週間もあればこれぐらいは」
悠一がカウンターに戻ってくるとこの店のマスター、高町士郎が笑みを浮かべながら話しかける
「(これで3児の父親なんだからな。師匠並みに化け物な人だよな)」
悠一は自分にとある剣術を教えてくれた者も高年齢だったというのにいまだ青年で通すことができるその容姿に戦慄する。だが実際、悠一も35歳だったのにもかかわらず青年期で通せるほど、老けていなかった
「いらっしゃいま・・・・なんだはやてか」
「なんだ・・はないんやないか?私はお客様やで?」
来店を知らせるベルの音を聞き、悠一が接客にでるとそこにいたのははやてだった
「今日は一日中、図書館にいると思ってたんだが?」
「私も最初はそうしようと思ったんやけどね」
「まぁいい。いつもの席でいいんだな?」
「うん」
悠一は車いすを押してはやてを窓側の日当たりのいい席に連れて行く
「さて、ご注文は?」
「お昼がまだやったからユウ君特製のオムライスと紅茶、食後にシュークリームで」
「あいよ」
注文を取った悠一は席から離れカウンターに戻ると
「士郎さん、すいません。少し」
「構わないよ」
士郎に一声かけると悠一は厨房に入ると冷蔵庫から必要な食材を取り出し調理を始めた
「お待たせしました。ご注文のオムライスにサラダと野菜スープです」
料理が出来上がり、はやての座るテーブルに料理を並べる
「わぁ~~~おいしそうやわ~」
「食べたければ家で作ってやるのに」
「家の厨房は私の聖地やもん。それじゃあ、いただきます」
食事を始める際の挨拶を行うとはやては悠一の作った料理を食べ始める。すると、悠一は持ってきたもう一つのトレーからオムライスをテーブルに置き、席について自分も食べ始める
「なんでユウ君も食べてるんや?」
「昼飯まだだったからな。ちゃんと士郎さんに許可は貰ってる」
「でもこういうときってお店の奥で食べなあかんのと違うんか?」
「そうなんだが、士郎さんが“今はあまりお客さんがいないからはやてちゃんと一緒に食べてあげなさい”だとさ。まぁ、要はあれだ。1人で食べるより2人で食べたほうがもっとおいしく感じられるってやつだ」
「「ごちそうさまでした」」
食後の挨拶を行うと悠一は空になった食器をトレーに乗せて厨房へと持っていき、はやてが注文した紅茶とシュークリームを持っていく
「ほい、食後の紅茶とシュークリームだ」
「ありがとうなユウ君」
悠一にお礼を言うとはやては持ってきたバックから1冊の本を取り出した
「今日は何の本を借りてきたんだ?」
「タロットカードの種類とそれを使った占いについて書かれた本や」
「占いでも覚えるつもりか?」
「興味本位で借りた本やからね。でももし覚えられたら“美少女占い師はやて”としてデビューするのも悪くないな~~」
「美少女?」
「私のことや。どこからどう見ても美少女やろ?」
「っは」
「は、鼻で笑うことないやないか!!」
自分の体を見た後、鼻で笑った悠一にはやては憤怒するが
「お客様。他のお客様の迷惑になるので大声は出さないでください」
「ムキィ――――」
一瞬で仕事モードに戻り自分に注意する悠一ははやては物いえぬ怒りを覚えるがシュークリームを一口食べ、紅茶を飲んで怒りを鎮め、本を読み始めた。本を読み始めたはやての邪魔にならないように悠一は静かに仕事へと戻った。その後、学校が終わり戻ってきた士郎の娘である高町なのはとその友達、アリサ・バニングス、すずかの3人ははやてを見つけるなり席に行き、学校での出来事等を話していた。どこにでもある普通の日常、そんな日常がずっと続けばいいなと4人を見ながら悠一は思った