上手くします。
異論は認めません。
ウォォォォォォォォォォォォ!!!!!
「次で最後の曲だ!今日はありがとう!最後まで楽しんで行ってくれ!!!」
ウォォォォォォォォォォォォ!!!!!
最前列でもみくちゃになりながら、周りに合わせてメロイックサインもどきを掲げる唯ちゃんの姿に笑いそうになってしまう。
唯ちゃん、それメロイックサインじゃなくてキツネや、babymetalじゃないんだから。
いや、「うぉぉぉぉ」じゃなくて。
まぁ、楽しんでくれてるようでなによりである。
河口さん、原さん、コリアスさんと視線を交わす。
次で最後の曲だ、ライブハウスのボルテージは最高潮、体力だけじゃ足りない、魂引きずり出していかないと。
「それじゃいこうか、……全力でかかってこいやぁっ!!!!!」
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「カッコよかったよトシさん!もうぐわぁぁぁってなってどしゃゃゃってなってごぉぉぉぉって!!!」
「はいはい、ありがとね唯ちゃん。最前列にいるの見えてたよ、怪我してない?」
「うん!すごい疲れたけど、すっごい楽しかった!!!」
楽しんでもらえてよかった。
こうして初めて見てくれた人が楽しんでくれるのはバンド冥利に尽きるというものだ。
この瞬間に、バンドをやっていてよかったと心底思う。
「みんなもすごかったって言ってたよ!ね!みんな!ね!」
唯ちゃんの視線の先には、前に唯ちゃんと一緒にギターを買いに来た女子高生3人がいた。
「あぁ、ギターを買ったときの。来てくれてありがとね、うるさかったでしょ」
「いえ、すごかったです。確かに激しかったけど、でも激しいだけじゃなくて綺麗なフレーズもあったし……。な、律!」
「うんうん!ドラムもすごい音量だったし!すごいカッコよかったです!」
「ありがとね、唯ちゃんに話は聞いてるけどみんなも楽器をやってるんだよね?メンバーの人と話してみる?勉強になると思うよ」
「本当ですか!?私田井中律っていいます!パートはドラムです!ほら、澪もベースの話聞きに行こうぜ」
「わ、私、秋山澪って言います。話は聞きたいけど、でも、ベースの人ちょっと怖そうだし……」
この子はちょっと人見知りかな?
……まぁ、人見知りじゃなくても原さんはパフォーマンスだけ見ると狂人のそれだからな。
「原さんはライブ中はあれだけど、普段はすごく優しい人だから大丈夫だよ」
「え、じゃ、じゃあ少しだけ……」
二人をそれぞれ原さんとコリアスさんに紹介する。
二人ともいい人だしすごいプレイヤーだから勉強になるだろう。
「えーと琴吹さんで合ってるかな?」
「はい、琴吹紬といいます。気軽にムギちゃんと呼んでください!トシさんですよね?ライブ、すごかったです!上手く言えないけど、とにかくすごかったです!」
「お、おぉ、ありがとうね。残念ながらうちのバンドにキーボードはいないけど、俺が打ち込みを作ってるから少しなら話もできるよ」
「打ち込み?……途中に入っていたキーボードの音ですか?」
「そ、ノートパソコンを繋いであらかじめ作っておいた音を流してるんだよ」
「そんなことができるんですか!?」
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軽音部のみんなとの話も一段落ついた。
どうやら唯ちゃんが部室にCDを持っていき、みんなで聴いてくれたらしい。
そこで唯ちゃんがレコ発ライブに行くと自慢した結果、せっかくだから軽音部全員で見に行くという話になったそうだ。
ありがてぇ、マジで。
ちなみに、梓ちゃんは途中まで一緒にいたらしいのだが、人の波に飲み込まれてはぐれたらしい。
大丈夫だろうか?
「それじゃあ私達は帰るね!またねトシさん!」
「遅いから気をつけて帰ってね、みんなも今日は来てくれてありがとね」
さて、心配だから梓ちゃんを探すとするか。
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「いたいた、大丈夫?これ、水だけどよかった」
「トシさん!?あ、ありがとうございます。すいません、挨拶に行こうと思ってたんですが……」
「いやいや、途中で人波に飲み込まれる梓ちゃんが見えたから心配だったんだよ。怪我してない?」
「はい、大丈夫です。少し疲れましたが、座っていたらだいぶよくなりました」
梓ちゃんは背が低いからステージを見るには前の方に行くしかないんだよね、……次やるときは女性と高齢者用の席でも作ろうかな。
せっかく来てくれてるのに見れないのは申し訳ないからなぁ。
「あの、すごいカッコよかったです!CDで聴いて楽しみにしてたんですけど、やっぱり生で見ると全然違くて……私感動しました!」
「よかった、バンド冥利に尽きるよ」
「新曲も全然違う雰囲気で、インスト曲をライブで聴いたのは初めてだったんですけど、みなさんすごい上手で。私もあんな風にバンドがしたくなりました!」
「梓ちゃんは軽音部とか入ってないんだっけ」
「はい、私の中学には軽音部がないので……」
「それじゃあ外で組むか……知り合いなら紹介できるけど」
「いえ、まだ技術が不安なので外で組むのは……」
「じゃあ高校生になったらかな、桜ヶ丘に行きたいんだっけ?」
「はい、唯さんに軽音部のみなさんに紹介してもらって。高校生になったらぜひ一緒にやらないかと」
「いいなぁ、同じ学校のメンバーでバンドかぁ。そういうの憧れるなぁ」
「みなさん優しい人達みたいなので、今から高校生活が楽しみです!」
「うん、曲ができたら言ってくれれば川上さんに紹介するし、なんなら対バンもしたいしね」
「本当ですか!?ぜひ対バンしてみたいです!!!」
俺は今高校三年だから梓ちゃんが高校生になったら大学生になってるだろうけど、楽器屋のバイトと講師は続ける気だからね。
……大学生になれるよね?なれるはず、たぶん、メイビー。
「もう遅い時間だけど、梓ちゃんは迎えとか来てくれるの?」
「いえ、さすがに両親に悪いので迎えは頼んでないです。駅から近いですし、大丈夫ですよ」
「いや、さすがにこの時間に一人で帰すのは怖いなぁ。……ちょっと待っててくれる?」
「はい、大丈夫ですけど。一人で帰れますよ?」
「いいからいいから」
ここで登場しますは、本日車で来ているはずの我が姉。
機材とか運ぶの手伝ってもらったからまだいるはず。
「いたいた、姉さん」
「トシ、いいライブだったわよ。なにか用?」
「かくかくしかじか」
「まるまるうまうま」
さすが我が姉わかってる。
「と、いうわけで姉さんが送っていってくれるから。遠慮せず足にして」
「いえ!さすがに悪いですよ!」
「なに言ってるのよ、教師としてこんな可愛い子を一人で帰すわけにはいかないわよ。お礼は今度会ったときに猫耳つけてくれればいいから」
「……猫耳?」
「たまに変なこと言うけど教師なのは本当だから、それに姉さんも昔はギター弾いてたから、ギターの話でもしながら乗せていってもらいなよ」
「……本当にいいんですか?」
「いいのいいの、ほら乗った乗った」
梓ちゃんは姉さんに車に押し込まれるとそのまま夜の闇に消えていった。
はたから見たらちょっとした拉致だったけど悪いことはしてないから許してもらえるだろ。
「おーい、トシー!そろそろ打ち上げ始めるぞー!!!早く来いよ!」
「はーい、今行きますー」
とりあえず、初レコ発ライブは大成功ということでいいでしょう。
……いいよね?
今回のオススメバンドは toe
日本のインストバンドで個人的に一番好きです。
ライブは狂ってます。
演奏中に何回かイッてます。
ドラムの人がリリーフランキーに似てます。
エソテリックという曲のライブ動画を初めて見たときに鳥肌が立ちました。
あとリリーフランキーだなと思いました。