ストレンジ・ソルジャー(ゼロの使い魔×FF7)   作:mu-ru

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トリスタニア編
Chapter 07


寄せては返し、その繰り返し。

 

深緑の膨大な情報の波、それは私の精神の中へ、絶え間なく流れ込んでいく。

 

私は流れに身を任せ、その中から興味深いと感じる『知識』だけを拾い集め、観察する。

そうして情報を取捨選択していく中で、私はこの異なる世界の仕組みについて理解を深めていた。

 

こちらに住むヒト-単なる者達は自分たちの住む世界のことを「星」という概念に置き換えているようだ。

 

「星」とはすなわち、夜空の深淵に浮かぶあの光の粒子一つ一つと同義である。

「星」はひとつではなく、無限と呼べるほどの数が存在する。

 

つまり私の住むこちらの世界――単なる者達が「ハルケギニア」と呼ぶ場所も、夜空に浮かぶ「星」の一つなのだ。あの輝きのひとつひとつに生き物の住まう世界がある……それは今まで私が考えもしない概念だった。

 

そして今私が触れているこの深緑のエネルギーは「ライフストリーム」と呼ばれている。

これは死した生命達、そのエネルギーの集合体だったのだ。

 

「星」は生命を創りだす。その産み落とした命……それは成長し、なにかしらの知識を得て、死んでいく。

そしてその生命は死ぬとまた、自分を産み落とした『星』へと還るのだ。

「星」もまた、生きた生命の一つなのだろう。

 

なるほど効率良くできた仕組みであると、私は感心する。

肉体は大地に、魂は「星」に還る。命の循環、その繰り返し。そうして『星』は活力を持ち、より豊かに繁栄していく。

 

すべては循環している。

 

では、と私は考える。この仕組みはこの世界にだけ適用される体系なのだろうか。

夜空に浮かぶ星のひとつひとつに存在する世界はそれぞれ違う仕組みで成り立っているのか。

 

例えば、私のいた世界――ハルケギニアは一体どうだ。

そうあの偉大なる、大いなる意志。

ハルケギニアに古くから住まうもの達がそう呼ぶ、世界を構成する見えない力。

 

あれは、ライフストリームと同じものを指すのではないか。

そう考えれば、原理は違えど、世界は同じようにできているのかもしれない。

 

 

 

その時の私は気付いていなかった。

私が深緑の渦の中を観察している時、私自身もまた、何者かに見られていたこということに。

 

 

 ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 意識の底で何かが揺れているのを平賀才人は感じた。

 ぐらぐらとかすかに、体が振動をとらえている。

 なんだっけ、と才人はまだ覚醒しきっていない頭でぼんやりと考える。

 どこかで覚えている。この感覚、どこだったか……そう、地球にいたころに似た体験をした覚えがある。とても、恐ろしいものだったはずだ。

 そこまで考えて、背筋に寒気が走り、目をかっと見開く。

 思い出した。

 そう……これは、

 

「地震だ!」

 

 意識の覚醒と共にそれは一気に襲ってきた。

 がたん!と部屋の隅にあった本棚が倒れ、仕舞われていた本がばらばらに飛び出してきた。

 部屋全体が縦に激しく揺れている。

 

「うわっ!」

 才人は慌てる、ヤバイ、これはそうとうデカいんじゃないか!?

「なっなに!?なんなの?」

 隣で寝ていたルイズが慌てて起きた。

「ルイズ!じっとしてろ!」

「ちょっ、サイト、むぎゅ!」

 才人はルイズを抱き寄せ、ベッドの上で揺れが収まるのを待った。

 どこか別の部屋でガラスの割れる音が聞こえる。ガチャン!という重い鉄の音は廊下に飾られていた騎士の甲冑が倒れる音だろう。

 そして誰かの悲鳴、他の部屋の人間も揺れに気が付いたようで、慌てふためいた声があちこちから聞こえている。

 やがて揺れはゆっくりと静かになり、しばらくしてようやく収まった。

 

「止まった……」

 ルイズを抱きかかえたまま、才人は辺りを見回す。

 頭上ではまだ照明ランプの紐が大きく揺れているままだ。ルイズが普段使っている本や飾られていた調度品など、部屋の中のものがめちゃくちゃに飛び出してひどい有様である。

 廊下のほうも騒がしい。揺れが落ち着いてから様子を見に出た人がいるのだろう。

 バタバタとこちらにかけてくる慌てた足音が聞こえた。

 

「サ、サイトさん、今の!大丈夫ですか!?」

 部屋のドアを開けてシエスタが戻ってきた。いつも一緒に寝ているはずが見当たらないと思ったら、どうやら朝の支度のために先に起きていたようだ。

「ああ、俺もルイズも大丈夫。シエスタ、他の人たちは?」

「もう、みんな大騒ぎですよ。心配になって……」

 そこで突然シエスタが口を閉じた。目を大きく広げて驚いている。

 どうしたというのだろう、才人を見ているようだが、何か変わった点でもあるのだろうか?

 そういえば、さっきからルイズが大人しい。

 こういうとき、もっと大騒ぎしそうなのにと思って下を見ると……。

 

 桃色のブロンドの髪、透けたネグリジェ。柔らかい小さな塊が震えている。

 ルイズだった。彼女は才人にぴったりと密着している。ちょうど、才人の両足の間の付け根に。

 

「あ……」

 そう、必死になっていて気付かなかったが才人は抱き寄せたとき、ベッドにうつ伏せになるように自分に近づけたのだ。それはつまり才人の大事な所にルイズが密着することになったわけで……。

「サイトさん……いつの間にミス・ヴァリエールとそんな淫らな関係に……」

「ち、違う!誤解だ!俺はそんなつもりじゃ」

 慌てて才人が手を放すと、ルイズが無言で起き上がった。

「……」

「ル、ルイズ、お前からも何か言ってく――」

「サイト」

「は、はい!」

 ルイズは顔を真っ赤にしてベッドの上で立ち上がった。

 小ぶりの可愛らしい顔は真っ赤に染まり、目には涙を浮かべて震えている。

 手には杖、今にも爆発しそうな魔力が迸っていた。

 

 才人は悟る。ああ、ダメだこりゃ。

 

「こここここここのぉ、馬鹿犬ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅううううううううううううううううううううううううううううううう!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 室内にまばゆい閃光があふれ、才人はその中に吸い込まれた。

 

 

 ・ ・ ・ 

 

 

 トリステイン魔法学院、ここは魔法を始めメイジに必要とされる様々な教育を行う、貴族の子息たちの為に設立された学院である。

 外国からの留学生も受け入れ、数多くの優秀な人材を国内外に輩出している、トリステイン王国の建国以来続く由緒ある教育機関であった。

 

 その日、魔法学院中央塔にあるアルヴィーの食堂では、いつもより生徒同士のざわめきがいっそう盛んだった。

 内容はもちろん、今朝の地震に関連することだ。皆興奮して、今朝起きた地震に関する感想を述べ合っている。

 だからというべきなのか、朝食に出ているトーストよりもこんがりと焦げている才人とルイズが、並んで座っていても特に気にする者はいない。

 

「まったく……今朝はさんざんだったわよ、サイトのせいで」

「あのな、だから悪気があったわけじゃねーっていっただろ」

「だって!私をあ、あんな、ふ、ふにふにした、男の子のだ、大事な場所にぃい!!」

「わぁ、落ち着け、ここで爆発すんなよ!」

 

 杖を取り出して騒ぐルイズを慌ててなだめる。こんな光景はこの二人の間ではすっかり日常茶飯事だ。

 そんな才人のところに、同年代のキザそうな金髪の少年と、ぽっちゃりとした体系の少年の二人がやってきた。この 学院の生徒で才人とは身分を越えた友人である、ギーシュとマリコルヌである。

 

「やぁ、おはようサイト。君たちはこんな朝でも相変わらずだね」

「あんな騒ぎがあったのにイチャイチャできるなんて、どうかしてるよね」

 反対側の席に二人は座る。

「イ、イチャイチャなんてしてないわ!こいつが、私の、その、ふ、ふにゃ!」

「はいはい、もう勘弁してね。これ以上は僕にとっちゃあ、毒にしかならないよ」

 ルイズの反論をやれやれとマリコルヌが手を振って遮った。その顔はまるで悟りを開いた賢者のようである。

 

「しかし、驚いたな、こっちにも地震があるんだな」才人が話題を変える。

「まったくだ。僕も子供の頃に何回か経験したことはあるけれど、あんな大きいのは初めてだ。サイトのいたところでも地震があるのかい」

 ギーシュが聞く。

「しょっちゅうだったよ。日本は活断層の真下だから年中地震ばっかりだ。大きいのが来ると人がたくさん死ぬし」

「ふぅん、カツダンソウが何かしらないけど、ここではそんなに頻繁ではないよ、だからみんなこんな大騒ぎしてるわけだし、そういえばサイトってずっと東の国から召喚されたんだっけ?」

「そうだよ」

 マリコルヌの質問に才人は曖昧に頷いて、ルイズをちらりと覗いた。

 まだ顔が赤かったが、どうやら落ち着いたようで今は粛々と食事に手を付けている。

 

 そう……、才人はこの世界、ハルケギニアの人間ではない。この少女、ルイズ・フランソワーズ・ド・ラ・ヴァリエールに地球から召喚された使い魔なのだ。

 右も左もわからぬまま召喚されて、キスをされて、使い魔になって、それがガンダ―ルヴとかいう伝説の使い魔で、ルイズは伝説の虚無の魔法使いらしくて……。

 いろんな冒険をして、何度も衝突して、彼女のために七万人もの軍隊に一人で戦いを挑んで、離れ離れになって……、 そういった経験を積み重ねるうちに才人にとってルイズはとても大切な存在になっていた。

 今では二人ともこうして並んで食事をするくらいにまで仲良くなったわけで。

 ギーシュやマリコルヌといった気軽に話せる友人も増えてきて、才人はこの世界に自分の居場所を見つけ始めていたのだった。

 

「サイトさーん」

 シエスタがルイズたちのいる席にやってきた。ルイズがむすっとする。

「なによ、シエスタ。給仕の仕事はどうしたのよ」

「私はサイトさん専属のメイドですもの。あんなことがあった後じゃミス・ヴァリエールをサイトさんと一緒にはしていられません」

 ツンと澄ましてシエスタは言う。

 シエスタはもともとこの学院の給仕だったが、今はトリステイン女王アンリエッタの命を受けて才人専属のメイドとして雇われているのだ。

 

「そうだシエスタ、厨房のほうはどうだった?」

「もう、大変でしたよ。いろんなものが飛び散って。あやうく朝食用の鍋がひっくり返っちゃうところで、マルトーさんたち大慌てでした。……あれが地震なんですね。ひいおじいちゃんの話を昔、聞いたことがあります。建物が崩れて、その下敷きになって死んじゃう人がいっぱいいたって」

 シエスタのひいじいちゃんの話は大正の時代に起きたことだろうな、と才人は思う。実はシエスタの曾祖父は日本人で、つまりは才人と同郷の出身なのだ。地球に帰れなくなってハルケギニアに居つくことになったらしい。その子孫がつまりシエスタということになるのだ。

「そういえばこの学院も、けっこう古い建物だよなぁ。ああいう揺れで崩れたりしないんだろうか」

「その心配はないわ」

 ルイズが言う。

「なんでだよ」

「このトリステイン魔法学院は歴代の校長たちによって何重もの“錬金”の魔法が地盤ごとかけられているから。あれくらいの揺れじゃびくともしないわよ」

 校長という単語で才人はこのトリステイン魔法学院の校長であるオスマンの顔を思い浮かべる。あんなスケベじいさんでも校長をやっているだけあって、本当はとんでもなくすごいのだろう。

 言われてみれば確かに、と才人は納得する。この学校で才人は喧嘩を吹っかけてくる貴族の学生相手にしょっちゅう決闘騒ぎを起こしているが、建物事体が魔法などで破壊されるようなことは一切なかった。

「へー、そうなのか。あれ?でも確かお前の魔法で宝物庫の壁が……」

「わ、わー!む、昔の話じゃない!今はどうでもいいでしょそんなの!」

 慌てて才人の口を塞ごうとするルイズに、ギーシュ、マリコルヌ、シエスタは何の話かと首を傾げていた。

 

「はぁ、元気でいいわね、あなたたち」

「あ、モンモン」

「モンモランシ―よ」

 今度やって来たのは、巻き毛の金髪とそばかすが特徴の少女、モンモランシ―である。

 浮気性のギーシュとくっついたり離れたりを繰り返すガールフレンドだ。

「ああ!モンモランシー!今朝は怖かっただろう!安心して、僕がどんな時もきみのことを守ってあげるから――「うっさい」――ああ!そんな冷たいきみも素敵だ!」

 モンモランシーは全身から不機嫌なオーラを立ち上らせて、悶えたままのギーシュの隣に座った。

「どうしたんだ、ずいぶん不機嫌そうじゃないか。今朝の地震で香水でも割ったのか」

「そうじゃないわ。家庭の事情でね」

「家庭?確かラグドリアンの?」ルイズが聞いた。

「そう……それであなたたちに聞きたいことがあるの」

 聞きたいこと?と、才人とルイズが顔を見合わせて首を傾げる。

 

「ねぇ、あなたたち、覚えている?ラグドリアンに行ったときのこと……」

 言われて、才人は思い出す。ルイズが誤ってモンモランシーの惚れ薬を飲んでしまった事件の出来事だ。

「解毒剤の材料を取りに行ったときのことだよな、タバサとキュルケを敵と間違えて戦ったりしたんだっけ」

「あんまり思い出したくはないけど……確か、あの時水の精霊が湖の水を増水させていたのよね」

 ルイズが少々恥かしそうに言う。惚れ薬を飲んでしまった間のことを思い出してしまったのだろう。

「そう……、それでね」

 モンモランシ―はぼつりと言った。

「今度は減っているの」

「何が?」

「湖の水が」

「え?」

 才人、ルイズ、そしてギーシュが声を上げた。

「減っているって、どうしてよ?まさかまた水の精霊が怒っているとか?」

「そうじゃないわよ」

「じゃあ、なんだっていうんだよ」

「いなくなったの、水の精霊が」

「いなくなった?」

 驚く才人とルイズにモンモランシ―が疲れたように言った。

「突然、湖の水位が減ったものだから、驚いて調査したんだけど、どこにもいないの。せっかくまた、水の精霊との関係が回復したと思ったのに……、ねぇ、あなたたち、何か知らないの?水の精霊と何か約束していたじゃないの」

「うっ、それは……」

 そう、水の精霊から惚れ薬の解毒剤の材料をもらうとき、約束を交わしたのだ。“かわりにクロムウェルという男に盗られたアントバリの指輪を取り返してほしい”と。

 しかし、そのクロムウェルというのがトリステインと敵対していたレコン・キスタの長であり、先の戦争の混乱の中でとうに死亡しており、指輪の行方もさっぱりわからずじまいで指輪探しはそれっきりになっていた。

――そういえば、そうだった。すっかり忘れていた。

 才人は内心で慌てた。

 

「でも、おかしいわ。水の精霊は指輪が戻るまで何年でも待つ、と言っていたもの。彼女の方からその約束を破るかしら?」

 反論したのはルイズだ。才人も彼女に同意する。

「そんなことも言ってた気がするなぁ」

「はぁ、じゃあ結局どこに行ったのかはわからないのね……」

 顔を俯かせるモンモランシ―。

「まったく、なんなのよ。せっかく水の精霊との交易で家業を再建できると思ったのに。このままじゃ我が家は破産よ」

「まぁまぁ、モンモランシー。今は楽しいことを考えよう!もうすぐ何があるか知っているかい。スレイプニィルの舞踏会さ!これは面白い催しでね、魔法を使って理想の姿に変装するんだ。どうやるかっていうと――」

 ギーシュがモンモランシー相手に励ましている間に才人とルイズは身を寄せて話合う。

 

「どう思う。これって俺たちのせいなのかな」

「そんなはずないでしょ。さっきも言ったとおり、水の精霊が自分から約束を破るはずがないわ」

「そうかそうだよなぁ」

 才人はうーんと頭を悩ませる。

 地震に、ラグドリアンの減水、水の精霊の消失。知らないところで何か悪いことが起きているような気がする。隣の席から話声が聞こえる。トリステイン国境付近で目撃された謎の飛行物体の話題らしい。ぼんやりと溜息と共にぼやく。

 

「なんだか、いやな感じだな」

 

 

 ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

おまけ

 

 嫌な展開というものは突然やってくるもので。

 

「断る!俺は絶対にそんなもの着ないぞ!」

「ん、もう~クラウドちゃん、そんな恥かしがらないの!」

 

 トリステイン城下町、トリスタニア。その繁華街であるチクドンネ街の一角、「魅惑の妖精亭」でクラウドは世にも恐ろしい風貌の男に迫られていた。

 筋骨隆々の身体に、ドレスで着飾った大男。メイクを決めているのに無精ひげはそのままなのが気色悪さを増している。クラウドが宿泊したこの「魅惑の妖精亭」の主人・スカロンである。

 彼はまさにオカマという言葉を全身で体現した姿で、腰を上下左右に高速回転させてクラウドに迫る。

 

「いいじゃない、きっと似合うわよ」

 

 困惑するクラウドを見て楽しそうに煽るのはスカロンの娘、ジェシカだ。カウンターに頬杖を突いてにやにやと笑う彼女の横ではタバサが興味深げな瞳でじっとこちらを見詰めていた。

 クラウドが今、何を要求されているのかというと――

 

「断る!俺は絶対に女装なんかしない!」

「ん~!そんなこと言わないでちょうだい。クラウドちゃんスタイルいいから、絶対似合うと思うの、わたしのカンがビビッと来るの、間違いないわ!」

 

 そう、クラウドはスカロンに女装をするように迫られているのだ。

 そもそも、ジェシカに案内されてこの店を訪れたときから嫌な予感はあった。

 際どい衣装で着飾った少女たちの接客を売りにする店、そして極めつけにこのオカマ店主。

 それを見た途端、クラウドはすぐにでも宿を変えたい衝動に陥ったのだが、どうやらタバサはこの店と過去に縁があったようで結局この店に落ち着くことになってしまった。

 今となっては過去の己の浅はかさを後悔するばかり。

 ともかく今はこの場を脱出しなければと後ずさる。しかし、誰かに背後から掴まれる。

 

「タバサ?」

 いつの間にか背後に回りこんでいたタバサはクラウドが逃げられないように行く手を阻んでいた。彼女の瞳に、いたずらっぽい光が見えた気がした。

 

「興味ある」

 死刑宣告であった。

 

「タバサ、お前……!」

「ん~!そうこなくっちゃ、タバサちゃん!」

「ま、観念しなさい」

 

 スカロンに加えジェシカまでもが手をわきわきさせて迫ってくる。

 その光景に、クラウドは過去のトラウマの記憶を思い出した。

 ミッドガルスラムのウォールマーケット、蜂蜜の館の中にある通称“団体様の巣箱”でムッキーなる人物と“みなさん”に囲まれた悪夢の記憶である。

 

――どうだ、ぼうず!気持ちいいだろ?――

 

(またこんな目に会うなんて、思っていなかったな……)

 

 何かを諦めながら、クラウドはそう思った。

 忘れたい“思い出”だって、中にはあるのだ。

 

 ・ ・ ・

 

「きゃああああああああああああああああああああああ!」

「すっごい似合うわ!素敵よ!クラウドちゃん!!」

「は~、これは想像以上だったわ」

 

 スカロンの嬌声とジェシカの息を呑む声、そして妖精亭で働く若い女性給仕たちの黄色い声が店内に響き渡った。

 クラウドは銃士隊と呼ばれるトリステイン近衛兵の女性隊の服装を着せられていた。(ドレスは絶対に嫌だと入ったらそうなった)インナーニットの上に草色のチュニックを着込み、腰のベルトを締めている。下はミニスカートに黒のレギンス。頭にはピンクブロンドの長いかつらを被り、肩に垂らしている。化粧を軽く施され、胸に詰め物をされていた。

 背中に羽織った赤いマントと、携えた巨大な大剣も合わさって、まさに気品漂う女騎士といった風貌だった。

 給仕の女の子の一人が唐突に「お姐さんと呼んでいいですか!?」と叫んだ。

 だれが姐さんだ、と思わず言い返すと、悶えながらその場に崩れた。なんなんだ、一体。

 

「トレビアン!前にルイズちゃんがいた時、あのピンクの髪の色が素敵だと思ってこの鬘を注文しておいて良かったわ!」

「タバサちゃん、何か一言感想を」

 ジェシカに言われてタバサはクラウドの前に出る。何処か満足げな表情をした彼女は一言、クラウドに告げる。

 

 

「“ライトニング・クラウド”」

「えっ」

 

 

 言葉の意味が掴めず、その場がしんとなった。

 

「何、それ?二つ名?」

「そう、ある神話に登場する伝説の女騎士の名前。別名“光速の異名を持ち重力を自在に操る高貴なる女性騎士”」

「タバサ……それ、長いぞ」

 

 きっと、誰も覚えられない。

 しかし、それ以上突っ込む気力は沸かないクラウドだった。

 

 

 

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コスチューム「ライトニング」を手に入れた!

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†††再 臨 : 骨 太 の お な ご†††

【補足】
 才人の地球にはFF7というゲームが存在しないものとして扱っています。
 ストーリーの主軸にメタな視点を挟みたくなかったのと、上手いこと物語に設定を反映させる実力が私になかった故、このような改変となりました。ご了承いただければ幸いです。
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