やはり転生オリ主の青春ラブコメもまちがっている。(リメイク)   作:ヒラメもち

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プロローグ 

2月半ば。

とうとう受験日となってしまった。

 

合格さえできればいい、そんな私でもちょっとは緊張している。スマホで友達とやり取りをしていても、なんかイマイチだった。

 

友達と言っても、海浜を受けるらしいし、それなりに話す程度だったし。もう会うことはないか。

 

 

「混んでるわねー。」

 

送り迎えの車でいっぱいのようで校門まで近づくことはできなさそう。寒いし、ここまで乗せてくれただけマシ。

 

「じゃあ、こっから歩いていくから。」

 

「そう?」

 

「うん、行ってくるね。」

 

鞄と傘を持って車から降りる。

 

「がんばってきなさい。ていうか、雪には気をつけてね。あとあと、忘れ物はない?」

 

「だいじょーぶだいじょーぶ」

 

お母さんに降ろしてもらったのは、総武高校から少し離れた場所。

 

 

 

寒い。

傘をさして身を縮こませて歩く。

 

「なんで今日に限って降るのかなー、もう。」

 

ため息は白くなった。

冬に入ってから何回か雪は降ったけれど、昨日までは晴れていたのに。千葉ではあまり雪は降ることはないし、運が悪い。

 

 

 

 

「いってー!!」

 

その声に後ろを振り向く。

学ランを着た男子が見事に転んでいる。

 

心の中だけで笑う。

 

キョロキョロと周りを見ているのは、カッコ悪いとこ誰かに見られたか確認しているんだろうな。血相を変えて鞄の中を確認しているし、いきなり落ち着いて受験票をずっと見てるし、なんていうか挙動不審。

 

顔はまあまあ、か。

 

知らないフリして、私はゆっくりと校門に向かって進む。ここで焦って転んだら、なんか縁起悪そうだし、カッコ悪いし。

 

 

 

総武高校が見えてきた。

スマホを見て時間を確認してもまだ30分以上余裕。

 

 

「はー」

 

また ため息をつく。

 

今から憂鬱。

勉強もそれなりにはやったし、塾の模試でも合格ラインはあるって言われた。でも進学校みたいだし 絶対受かる自信なんてない。去年はほぼ満点合格の人が何人かいたらしいし、できる人も受けるだろうし。

 

それでも受験勉強が今日で終わりっていうのは、いいことか。

 

 

 

「受験票、受験ひょぅ……」

 

ヤバいヤバいヤバい

 

受験票が鞄の中にない。

たぶん部屋だ。

絶対忘れないようにーって、勉強机の上に寝る前に置いておいた気がする。

 

急いで携帯を探すけれども、ポケットの中にはない。

車の中に置いてきたのかもしれない。

 

 

も、もしかしたら、

落としたのかもしれない。

 

後ろを向く。

 

「ん?」

 

「え? あ! えっと……」

 

さっきの男子と目が合う。

試験直前に読むような社会の参考書を片手に持っている。

 

 

知り合いを探す時間もない。

仕方ない、この男子を使うか。

 

 

「ちょっと、お願いがあるんですけどー」

 

「なにかありました?」

 

大体の男子ならドキッとするはずなんだけど。

さっきみたいに動揺しない。

 

「さっき見事にこけてまし、た…ね……。」

 

一体、私は何を言っているのだろう。

明らかに頼み事をする流れじゃなくなってしまった。

 

「そのことか。大丈夫、怪我はなかったから。」

 

「それはよかったです……じゃなくて!」

 

「じゃなくて?」

 

「えーと……」

 

ペースを完全に崩された。

携帯を貸してくれって頼むだけなのに、上手くいかない。

 

なんでこんな簡単なことができないのだろう。

 

 

 

「もしかして、受験票とか?」

 

考え事をしていた彼が、伺うように聞いてきた。

なんか真剣になってくれてる。

 

「そ、そうなんですよー。」

 

「なら、学校事務の人か試験官の先生に頼めばいいはず。仮の受験票で済ませることができるから。付いてきて。」

 

さっきまでより柔らかくなった声がかけられた。

 

凍りついた道を滑らないように、少しだけ早いペースで歩いていく。そんな彼の少し後ろをついていく。

 

「親への連絡はした?」

 

「その、携帯も忘れちゃったていうか……」

 

「なるほど。もし受験票を見つけたら心配するだろうし、携帯を貸すから後で連絡した方がいいな。」

 

「は、はい。そうします。」

 

「あと面接にも筆記にも、成績には全く反映されないらしいな。」

 

「いや、らしいってなんですか…」

 

「一度調べたから知ってるだけ。」

 

ちょっとは安心した。

 

「ところで、ちょっと面接の参考程度にこの高校を受験した理由聞いてもいい? 言いたくないならいいけど。」

 

「なんでまた...まあ、制服がかわいいからですかね。」

 

彼氏作りたいとか、楽しい高校生活を送りたいとかあるけど、一番はこれだ。

 

「……部活とか校風とかどうなの?」

 

「特に知りません。」

 

「そうか…」

 

なんだか心が軽くなっていた気がする。

もし彼が何も話をしてくれなかったら、ずっと俯いていたままだった。

 

 

 

校舎に入ってからもスムーズに進む。

 

白衣を着ている女の先生に彼が話をしてくれて、仮の受験票は呆気なく手に入った。

 

携帯を借りて連絡を入れたとき、泣いているお母さんをなだめる方が大変だった気がする。

 

 

「いろいろありがとうございました♪ 忘れてることに気づいたときは心臓止まるかと思いましたよー。」

 

「どういたしまして。」

 

また社会の参考書を片手で読んでいたらしい。

彼の時間を使ったことになるのか。

 

一応、謝らなきゃなー

 

「その、ごめんなさい。」

 

「じゃあ、高校入ったら責任取ってくれ。」

 

「え?」

 

「冗談だけどな。俺は余裕で受かるつもりだし。またな、一色さん。」

 

なんかいい人すぎるでしょ。

名前、聞きそびれたな。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

入学式の日の放課後には全員が連絡先を交換し合う。

人間関係ができる第一歩。

 

ちなみにラインアカウントが最低限。

メアドや電話番号はあまり開示しない。

 

もし、寝坊だとかサボりだとか、交通事故だとかでこの日に休んでいたら苦労することになるだろう。もちろん私たちのクラスは全員出席している。

 

 

 

「今日からもうサッカー部見に行くのか。超次元サッカーの熱血少年? じゃあ、また明日な。」

 

男子3人の会話がようやく終わったみたい。

鞄を持って早々に教室から出ようとする彼にようやく話しかける。

 

「男子が自分から名乗らないのもどうかと思います。」

 

「それもそうか。俺は…」

 

「私の名前は、一色いろはです。」

 

「俺の名前は……」

 

「いろはちゃんでも、いろはさまでも……、月村君なら特別に、呼び捨てで、いろはでもいいですよ。」

 

「一色さんで。」

 

「むぅ…それで、名前は?」

 

「月村伊月。ていうか、さっき呼んでたよね。」

 

「なるほど。よろしくお願いしますね、月村君。」

 

「よろしく。」

 

「まあ、そんな些細なことはどうでもいいんですけど、携帯出してください。」

 

「絶対、些細なことじゃなかったよな。」

 

そう言いつつも、携帯を潔く出した彼の連絡先を登録する。電話番号とメアドももちろんもらった。

 

 

「では、行きましょうか。」

 

「どこに?」

 

「学校探検ですよー。」

 

今のうちにカッコいい男子の情報を仕入れておかなければならない。

 

なんだか楽しい学校生活になりそう。

 

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