やはり転生オリ主の青春ラブコメもまちがっている。(リメイク)   作:ヒラメもち

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第6話 俺がいる証明

 

放課後、ある用事を1時間と30分ほどで済ませて学校を出た。

 

寒さから逃げるように素早く駅近くのサイゼに入る。

ドリンクバーはあるのはもちろん、他のファミレスと比べて安価なものが多い。ドリアやピザは美味しくコスパ最強である。和食や焼肉といった別ジャンルに手を出していないところも好きだ。

 

すでに多くの高校生がいて、宿題を終わらせる者、2人でカフェを楽しむ者、晩御飯として来た者、みんな思い思いの青春を過ごしている。待ち合わせしています と店員さんに告げて、比企谷先輩のもとへ向かう。

 

すでに6人という大所帯となっていて、自己紹介を交わしていく。

比企谷先輩のクラスメイトの厨二病の材木座先輩、女子の川崎先輩、男の娘の戸塚先輩。そして、比企谷先輩の妹さんの小町さんと、川崎先輩の弟の大志君。

 

2人掛けの机を引っ付けて、ドリンクバーを頼めばようやく腰が落ち着けた。今のところ、事情を知らないメンバーたちに和気藹々と説明したところのようだ。厳格な会議などではないから、時間がかかることは承知である。

 

「それで、準備はできたのか?」

 

「はい。推薦人を集めることはサッカー部を中心に声をかければ余裕でした。あの熱血担任のサイン……手続きに時間がかかりましたね。」

 

俺が遅れた理由は30人分の署名を集めるためであって、あの担任の長話のせいである。感情豊かにクラス2人目の生徒会立候補を喜ぶのは遠慮してほしかった。比企谷先輩は頷くが、他のメンバーは首を傾げる。

 

「ここから本題に入る。まず雪ノ下と由比ヶ浜の残留という小町の願いを最優先する。他の候補の擁立はないとすると、生徒会長候補は一色いろは しかいない。」

 

ここまでは理解してくれたようで、みんなは頷く。

妹さんを引き合いに出したのはたぶんシスコンだからだ。他の候補の擁立に関しては2年生で顔の広い由比ヶ浜先輩ですら無理だったから、この場の俺たちでは難しいだろう。公示の予備日まで時間はあまりない。

 

「ここに一色も誰もダメージを負わないという条件が追加される。」

 

「一色さんが生徒会長になりたくない理由を全て解決すればいいんです。そうすれば、依頼内容は撤回される。その一手として、俺は副会長に立候補してきたってわけです。」

 

「それって月村さん自身はいいの?」

 

小町さんは鋭いところを突いてきた。

比企谷先輩の言った言葉には重い意味がある。誰かが傷つかない世界を作ることは誰かを犠牲にしていることに相違ない。宝くじで大金が当たる人もいれば、宝くじにお金を費やし続ける人もいる。受験で合格する人もいれば、不合格となる人もいる。

 

「気になる女子と生徒会活動やるって憧れません?」

 

俺にダメージなんてないのだ。サッカー部のマネージャーのサポートを続けていることと同じで、勉強を教えることと変わりない。誰かのために役立ちたいという思いがあるから、ボランティアをやったしアルバイトもやったし教職を履修した。

 

彼女に振り回されてきたけれど、傷つけられたという自覚を持ったことはない。

 

誰も口を開かない、何かまちがっていたのだろうか。

 

「……ともかく、交渉材料を揃えなければならない。川崎、お前が生徒会長にいいかもって思う奴、挙げてみてくれ。」

 

「雪ノ下と由比ヶ浜、それに葉山。海老名は仕事はできるだろうけど向いていないね。三浦だけはないと思う。……それから、相模かな?」

 

「はぁ?相模ぃ?」

 

「文化祭、それから体育祭でも委員長やってたし。」

 

2年生を中心に名前を出しているのだろう。俺や小町さんたちは話についていけないとはいえ、重要なことである。相模先輩は体育祭委員長として、時には あたふたしながらもテキパキと働いていた気がする。

 

「あと、……あんたとか。」

 

「ああ、そりゃ面白い。けど、月村のように30人も推薦人集められねぇんだ。」

 

川崎先輩は比企谷先輩を向いて遠慮がちに言った。

確かに比企谷先輩が生徒会長ひいてはリーダーシップを発揮するのは面白い。多くの人を寄せ付けることはないけれども、確かに俺たちはここに集まっている。大学の研究室のような、小数精鋭の場所でこそ輝きそうである。多数の大学生を相手に、講義ができるかは疑問であるが。

 

「葉山はわざと外して、海老名さん、三浦、相模、ついでに戸部。そして一色に生徒会長候補になってもらう。……その、戸塚も名前借りていいか?」

 

「いいけど、変なことに使わないでよ。」

 

「ありがとう、戸塚。」

 

「ん?候補は一色さんにやってもらうんじゃないの?」

 

「ああ、最終的には一色だな。だからまぁ、これは当て馬だな。勝手に名義を借りる。そして、とにかく推薦人を集めまくる。」

 

「推薦人を集める過程が署名制である以上、1人につき1票。もし候補者を多くすれば、雪ノ下先輩と由比ヶ浜先輩が得る票が減ります。しかし、実際に立候補させるのではなく牽制に過ぎませんが。」

 

「つまり最後の一手として一色いろはへの交渉材料に使う。もちろんリスクはあるし、俺は負いたくない。だから、人じゃないものに責任を託す。ツイッ○ーだ。」

 

今や全国的に普及されたSNSの1つだ。この場で使っていなかったのは比企谷先輩くらいだろう。リアルで起こったことをネット上で呟いたり、知り合いや他人のツイートに反応したりする。。大学生にとっては必須アイテムとなっているまである。授業を実況したり、板書をアップするのは先生によっては緊張することらしいからやめてさしあげろ。

 

「それを使って、選挙の事前予想を作ります。」

 

その最大の利点は拡散力と秘匿性だ。

ハッシュタグで総武高の名を使い、グー○ルフォームにつなげることでそれらしさは出るだろう。架空のグループが『俺たちで生徒会選挙やってみた』などと呟けば、すぐにリツイートの連鎖となる。完全な捨てアカになるだろうし、それぞれの票数を開示する必要はない。そもそも比企谷先輩が挙げた人たちは立候補しないから、各数値をパーセンテージで示すことで雪ノ下先輩と由比ヶ浜先輩を仮定上で負けさせる。演説も何もしていないから完全な人気投票と化し、3人の中で最も顔の広い一色さんなら勝てる。

 

重要なのは投票者の考えを乱すことで票を分割させて、雪ノ下先輩への牽制及び一色さんへの説得材料とすることである。

 

詳細説明に対して、うまくいくのかな という声が出始める。

初めに比企谷先輩が考案した各応援アカウント作成よりは確実性がある。後から名前を変更して全てを一色さんの推薦数にしようとまでしていたのだ。しかし一色さんがそのツイートを見ないわけがないし、葉山先輩を応援するまである。もう少し、そのSNSが流行する前であったなら、一色さんや由比ヶ浜先輩がツイッ○ーをしていないという前提条件は満たされただろう。

 

「まぁ、やってみなければわかるまい。他になにかあるでなし。」

 

材木座先輩の言う通り、俺たちには想像以上に手札がなかったのだ。比企谷先輩が自分自身をカードとして使うことを避けた場合、新たなカードを創造するしかなかったのである。それが成功するのは必然とは言えない。期間が3日間という短期決戦であるからこそ成り立つはずだ。

 

 

 

 

お開きとなって帰宅すれば、

まだ両親は仕事に行っているようだ。

 

帰宅後、

ノートパソコンを開いてアカウントを取得する。

転生してからはそのSNSを一度も使ったことはなかった。

 

 

俺は、人を頼ることも求めることもしなくなった。

 

比企谷先輩は、求める人だけが自然と集まる。

だから、羨望を抱く。

一色さんは、人を求めて頼ることに長けている。

だから、憧れを抱く。

 

自分にないものを求めることは人を好きになる心理である。

 

大切だからこそ、比企谷先輩を傷つけたくないし、一色さんを傷つけたくなかったのだ。これが残された時間で成すことのできる最善手であって、今から一色さんを傷つける。異世界転移といった非現実的トラブルに巻き込むのではなく、俺自身が選んだ行動によってである。

 

誰も傷つかない世界なんてない。

だから責任をもって償うつもりだ。

 

 

大きな力を持つ者には責任が伴うというけれど、

力のない転生オリ主でも責任が伴うのではないか。

それは正しいとは断定できず、まちがっているとも証明できない。

 

この世界で生まれた比企谷先輩たちには歩んでいたはずの人生(ストーリー)があって、転生オリ主である俺が介入することは許されるのか許されないのか。誰にも『依頼』することができず、この悩みを解決することができるのは神様だけなのだろう。

 

近づくことも遠ざかることもできないままだった。この世界の人、特に好意を持っている人を傷つけることがたまらなく怖いのだ。一色さんや比企谷先輩たち、そして両親とも一定の距離を保ち続けてきた。

 

『異物』がこの世界で生きることを楽しむなんて自己中心的でひどくおぞましいことなのだ。それでも生きていたいから独りをわざと選んできたし、近しい者を作ることを避けた。

 

だから俺はここにいる証明を独りで探しつづける。

 

 

 

 

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