やはり転生オリ主の青春ラブコメもまちがっている。(リメイク)   作:ヒラメもち

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第8話 今年もクリスマスがやってくる

12月も半ばというところ。

年の瀬が近づき冬休みが近づいてきた。特別棟までの道のりで、あっという間に過ぎた日々を思い出す。

 

 

先輩方からの引継ぎも終わって生徒会活動はようやく本格始動となった。予想通り小規模で、文化祭や体育祭を除いた各行事の運営が主だった仕事だ。校風が生徒の自主性を重んじることもあって、企画及び実施が比較的簡単に許されて活動資金まで提供してくれる。

 

ふと考える。

高校生向けイベントの考案って一色さんの得意分野であるし意外と天職なのではないか。俺を含めて仕事大好き人間が3人もいれば、なんか行ける気がする。

 

他にも、定期的なアンケートによって生徒の意見を取り入れることもあるが、めだかボ○クスみたいに目安箱を設置して依頼を受けることなどしない。もしそんな仕事をしたらSKET D○NCEみたいに生徒会vs奉仕部が起こり、生徒会は大敗するまである。そもそも俺が板挟みになるのは嫌だし、そんな対立は起こることはないだろうが。

 

生徒会長によって丸パクされた公約の、進学研究室の創設と部活動部費給付基準の緩和についてはすでに進めている。進路科の先生に話をすれば、時間と労力をかけて前者は解決する。後者は、学校事務に頭を下げて資金を確保し部長会の財布の紐を緩くすればいい。それほど、雪ノ下先輩はもたらした公約は無難かつ需要の高いものだったのだ。

 

 

ドアを軽くノックして「どうぞ。」と聞こえれば、「こんにちはです。」と部室の中に入る。それがいつも通りの入室方法であって、俺が来たと知らせることができる。

 

「よう。」

「こんにちは。」

「ツッキー! そっか、今日は生徒会ないんだね!」

 

奉仕部にヒッキーあって、ツッキーあり。

冷たい風と温かい言葉が同時に迫ってきた。挨拶を交わして、空いていたたった1つの椅子に座る。そうすれば、腰を落ち着けたという確かな実感を得る。

 

ともかく生徒会活動は毎日あるわけではない。生徒会長は極力働きたくない系女子だし、生徒会メンバーはすでに書類仕事が速い。まだ外部組織との連携がなかなか上手くいかないくらいだろうか。

 

「調子はどうかしら?」

 

「ありがとうございます。ようやく慣れてきたってところでしょうか。」

 

雪ノ下先輩に手渡させた紅茶の淹れられた紙コップから温かさが染み渡る。こういった嗜好品の良し悪しは気にしないはずの庶民に最高だと感じさせるほどの腕前である。紅茶の淹れられた紙コップを片手に本を広げる比企谷先輩のように、持参したラノベを開く。そんな先輩は雪ノ下先輩を心配そうに見ていた気がした。

 

時折り、由比ヶ浜先輩が会話を始める。

クラスで聞いた加湿器の話、スマホの機種変更の話、次々と話題を出して会話を続けるのだ。会話に特別な意味などないし雑談に過ぎないが、3人が別々の道を選んでいた時よりはマシと思ってしまう。

 

「そういえば、もうすぐクリスマスなんだねぇ……あっ!平塚先生にストーブとかお願いすればつけてくれるもらえたりしないかな!?」

 

「それはさすがに難しいんじゃないかしら。」

 

「あの人の場合、自分へのご褒美のほうが先だろ。」

 

「余ってる石油ストーブ持って来ましょうか?」

 

「え、ほんと!?」

 

「マジかよ……言ってみるものだな。」

 

こうして、何気ない日常が過ぎていく。

由比ヶ浜先輩が沈黙を破ることで馴れ合いを続けているに過ぎない。そもそも奉仕部のカタチは元々こうだったのかもしれない。彼らの出会いの場面に立ち会ったわけでもなく、彼らが解決してきた依頼について聞いたことはない。奉仕部という場所に享受してもらうばかりで、奉仕部の過去も未来も知ろうとしたことなどないのだ。

 

「暗くなってきたね。」

 

「……そうね、今日はこの辺にしておきましょうか。」

 

思考に囚われそうになったとき、部活のお開きを部長は告げて各自荷物を纏め始めて席を立つ。そして、電気を消せば一気に冬の夜を感じてしまう。

 

別れの挨拶を交わして、由比ヶ浜先輩がバスの時間に間に合うように元気よく走っていき、雪ノ下先輩は儚い微笑を浮かべて鍵を返しに行く。俺も先輩もその奉仕部の鍵に触れたことは一度もない。

 

 

言葉を交わさず、それぞれの駐輪場へ歩いていく。基本的に校門に俺が少しだけ早く着いて合流する。いつも通りだからこそ息が合うだけであって、お互い知らないことだらけである。結局、転生のことは言っていないし聞かれることもない。

 

「コンビニ寄るぞ?」

 

「え、お腹空いたんですか? あ、もしかして小町さんにご飯抜きの刑に処されたとか!」

 

今日もまた自転車で並走しながら雑談を交わしていたなかで、先輩は言う。ただ呟き合っていた時よりも確かな言葉の投げかけ合いがそこにはあった。

 

「……いつかマジでありそうだからやめてくれ。洗剤買いに行くだけだ。」

 

「それならスーパーかドラッグストアじゃないですか?」

 

「それもそうだな。ここでいいか。」

 

道路沿いにあったカ〇チに自転車を停めて店内に入る。仕事帰りの人や大学生で賑わっている。飲料はもちろんのこと 食料品や菓子類も充実していて、もはやドラッグストアを超えた何かである。目的地である洗剤売り場にはコンビニよりはるかに多種多様なものが揃っていた。

 

「ところで、家で何を使っているとか知っているんですか?」

 

「……どれでもよくない?」

 

「洗剤自体の香りの好みもありますし、合わせる柔軟剤にもよりますよね。」

 

これ絶対一番安いものを選ぼうとしていたな と心の中で思った。

 

面倒くさい表情になっている先輩が手紙を取り出したので、横から覗き込む。クリスマスのシールが貼られていて、洗剤を帰りに買ってきてほしい旨が書かれている。しかし、今求めているどの洗剤を買えばいいかについては書かれていないようだ。

 

ところで、『小町のクリスマスプレゼントリスト』という目立つタイトルの下に、図書カード・ギフトカード・白物家電が箇条書きされていることはジョークでいいのだろうか。

 

ところで、『でも、お兄ちゃんの幸せが一番欲しいです。きゃー!今の小町的に超超ポイント高い!』という追伸は本気にしていいのだろうか。

 

 

「図書カードもギフトカードも最近いいデザイン売ってますよね。プレゼントとしても申し分ないと思いますよ。」

 

「残念ながらそんな金はない。もうこれでいいか。」

 

選ばれたのは 攻撃的な名前のメジャーな商品でした。液体タイプと粉末タイプ、それぞれのメリットについて話そうとしていたのだが、粉末タイプを持ってレジに向かってしまった。

 

俺は何も買うことはなく先輩とともに外に出る。

 

 

「先輩だったら、何が欲しいですか?」

 

「……さあな。」

 

子どもたちはクリスマスには欲しいプレゼントを願う。もしクリスマスに願えば なんでも1つだけ貰えるとするなら、何を願うだろうか。ここにいる証明を探し続け、ここにいる証明を創り始めた俺は一体何を求めるのだろうか。金券のように変換できる物でもなく、家電製品のように形ある物でもないことは確かだ。

 

クリスマスを彼女と過ごしたいという願いには、何かが足りない気がしたのだ。

 

 

ちなみに翌日聞いた話では、お願いされていたのは洗濯用洗剤ではなく食器用洗剤であったらしい。言葉というものはなかなかどうして上手く伝わらないものである。

 

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