やはり転生オリ主の青春ラブコメもまちがっている。(リメイク)   作:ヒラメもち

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第10話 玉縄

1度目の会合に来ただけであって、このコミュニティセンターは2度目である。2階には申請すれば利用できる部屋があって目的地である。1階には図書館もあり、また 3階には大きなホールがあって、そこでクリスマスイベントをやることになっている。

 

すでに本牧さんと藤沢さんは着いているはずで、あの空間でたった2人かと思うと ちょっと足早になった。

 

一色さんが扉をノックして、「はーい、どうぞ!」などという活気溢れる声がすれば、こちらは意気消沈してしまう。

 

「おつかれさまでーす。」

「お待たせしました。」

 

「いろはちゃん、伊月君、こっちこっち。」

 

気を引き締め入って挨拶をすれば、海浜総合高校の生徒会長が呼びかけてくる。全く許可した覚えはないのに名前呼びなのはフレンドリーなだけであって、ナンパ野郎ではないはずだ。

 

「君も生徒会の人かな? 僕は 玉縄。海浜総合の生徒会長なんだ。」

 

前回出席していなかった先輩に対して自己紹介をしたので、一色さんが先輩を紹介する。

 

「この人はうちのヘルプ要因ですー」

 

「……ああ、どーも。」

 

「いやー、よかったよー。総武高校と一緒に企画できて。お互いにリスペクトできるパートナーシップを築いてシナジー効果を生んでいけないかなと思っててさー。」

 

俺と一色さんは微笑むことしかできず、先輩は心の中で啞然とするしかなかった。そして生徒会長に同調するように群がってきて自己紹介していく。俺たちは先輩を生贄として置いて、本牧さんと藤沢さんと合流する。

 

どうにか先輩も逃げ出すことができて、今は折本さんと話をしている。中学の時の同級生である彼女は生徒会メンバーというわけではなく助っ人の1人である。

 

ともかく合計10人もの戦力を相手に、俺たち4人は戦っていかなければならない。もちろん先輩は数合わせの手札などではなく、切り札である。隅の席に逃げようとした先輩を2人で誘導して座らせる。

 

 

お互いに持ち寄った菓子類を机にセットすれば、会議開始である。

 

「じゃあ、初参加のメンバーもいることだしアイスブレーキングから始めよう。」

 

しかしすぐにバトルフェイズには移行しない。会議において発言しやすい雰囲気づくりのために、事前になんらかのコミュニケーションを通して打ち解けるというものだ。俺たち高校生が行ったとして、堅苦しい会議の前に行う馴れ合いに過ぎない。

 

自己紹介に加えて好きな本の紹介を全員がしていったため時間は大いに消費された。ビジネス書の名を挙げていったので、それが意識高い系喋り方もとい業界用語の参考書なのだろう。

 

対して、俺たちは「ちょっと時間がかかりすぎていますね。」と言い訳をしておいて、自己紹介だけにしておく。がっこう〇らし!は引かれるかもだし、ニセ〇イとでも言おうとしていた。どちらも実写化は上手くいくんでしょうかね?

 

「よし、前回に引き続いてブレインストーミングをやっていこうか。」

 

とにかく自由にアイデアを並べていくという会議の手法だ。確かに多くの企業でも用いられているらしいし、大学でも経験した。有用性もあって時間がかかるが無駄ではない。ただ 向こう側の会長はいつになっても意見をまとめないがために停滞しているのだ。

 

このままだと言葉を並べるだけであって、進むことはしないのである。

 

 

「俺たち高校生への需要を考えると、やっぱり若いマインド的な部分でのイノベーションを起こしていかないと。」

「そうなると、当然、俺たちとコミュニティ側とのWinーWinの関係を築くことを前提条件として考えなきゃいけないよね。」

「そうなると戦略的思考でコストパフォーマンスを考える必要があるんじゃないかな。それでコンセンサスをとって。」

 

 

「一色 今これ何やってんの?」

「月村君 お願いします。」

「高校生と他の協力団体の需要を考えること。費用についても考えること。……以上です。」

「ほーん……」

 

 

「みんな、もっと大事なことがあるんじゃないかな。」

 

こそこそと現状確認をしていたら、司会の玉縄さんが重々しい声を発する。会議室に緊張が走り、ようやく話を進行させてくれるのかと思うだろう。

 

残念ながらそんなことはない。

 

「ロジカルシンキングで論理的に考えるべきだよ。お客様目線でカスタマーサイドに立つっていうかさ。」

 

意 味 不 明な発言に対して、俺たちは引きつった笑みを浮かべる。加えて 謎の手の動きろくろを露骨に回さないでほしい。これならまだオールイングリッシュの授業を受けていた方が何倍もマシである。大柴さんもビックリな会議である。

 

終わりの見えることはない、空虚でどこかまちがっていると思える空間が ここには広がっていた。

 

 

 

「先輩、どうでしたか?」

 

「いや、なにもわかんなかった。」

 

会議は1時間ほどで終わり、部屋の隅で先輩と話す。ノートパソコンを見せれば、マジかよという顔をする。文書作成ソフトで箇条書きによって内容を纏めながら聞いていた。2ページほどで羅列されたなかで、決まった具体的なことは1つもない。結局まだ場所と日時しか決まっていないという状況なのだ。

 

「うちの仕事は 議事録とー、計画表、課題のチェックリスト?ですね。……その、どうします?」

 

「また議事録書こうかな。」

「計画表を確認しておくよ。」

「なら、私が課題のチェックやりますね。」

 

会議が終わっただけであって残業があるのだ。一色さんから一早く受け取って議事録を纏め始める。俺たち3人は黙々と進めていく中で 時折り一色さんに確認してもらうが、反応はどこかぎこちない。海浜側に対して完成したものを見せつけてやって、帰宅準備に入る。

 

「みなさん、ご飯食べに行きませんか?」

 

先輩は先に帰ったようで、一色さんが俺たち3人に話しかけてきたので頷き合って合意する。

 

「どこにする?」

 

「えっと、その……」

 

「ファミレスでいいんじゃないですか? とりあえず、外に出ましょうか。」

 

本牧さんの質問に対して、一色さんの代わりに俺が答えてしまう。海浜側の人たちに挨拶をして、暖房で温かいけれど空気の籠った場所から風通しのいい駐輪場へ向かう。その途中でどのファミレスが好きかという話題を提示し、話し合って行き先を決める。親に連れて行ってもらうのなら選択肢が増えるが、やはりコスパ的にサイゼが選ばれた。

 

 

ドリンクバーは自然と避け 各自スパゲッティを食べて店を出た。今のところ、俺が話題を出して会話を生んでいるに過ぎない。親睦を深めるために一色さんが提案したものとはいえ、一色さん自身が少し遠慮してしまっている。

 

 

「はぁー、ほんと めんどくさい。」

 

「ああ、厄介な初仕事だよな。……本牧さんと藤沢さんをもっと頼っていいんじゃない?」

 

2人とは帰り道が反対方向なので、今はいない。

 

「男子としては 頼りすぎるのってどう思います?」

 

「そうだな……葉山先輩も頼ってもらうことは嬉しいと思う。協力してもらう?」

 

「……やめておきます。」

 

「そっか。」

 

「月村君は何か相談したいことない?」

 

「今は、特にないかな。」

 

住宅街ということもあって街灯の光があるが、すでに冬の空には星が輝いていた。半分だけ見える月は綺麗だけれど、昨日より細くなっているので だんだんと見えなくなる日が近づいているのだろう。

 

彼女に依頼をするにはまだ勇気が足りなかった。

大学生らしく悩むことはできても、まだ高校生らしく悩むことはできないのだ。

 

 

 

***

 

彼といるといつも調子がくるう。

本気っぽい顔をするようになってからは、もっとだ。

 

1人の男子に頼ることは良くないはず。

 

真剣な表情で愚痴を聞いてくれるし、しつこくないし、最近は自然と助けてくれるし。

 

だからついつい頼ってしまうから、困る。

 

頼ってくれないことが少し気に入らない。

いつも頼ってばかりなわたしがめんどくさい。

 

どうしてほしいのか 教えてほしい

もっとちゃんとしてほしい

 

「それじゃあ、また明日です!」

 

「また明日。ゆっくり休んで。」

 

もう少し話したいと思っているのに

そんな優しい表情を見せないでほしい

 

ほんとに、たちがわるい。

 

 

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