やはり転生オリ主の青春ラブコメもまちがっている。(リメイク)   作:ヒラメもち

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なんだかまた最終回っぽいですが、最終回じゃないです。


第15話 俺たちのフェアリーテイル

 

 

クリスマスイベントまであと数日しかない。

土日に会議は開かれることはないし 金曜の会合で方針を完全に決定しておきたかったが、状況は滞っているままだ。海浜側が1日の会合休みを利用して作ってきたレジュメには唖然とした。

 

クラシック・ロックバンド・ジャズ・讃美歌・ゴスペル、そして合間にミュージカル、これを全部やるらしい。これだけの種類となると、それだけ多種多様な演奏者や音楽隊を呼ぶ必要がある。その際にかかる予算は大きいし 練習やリハーサルも必要となってくる。もう1週間もないのに、どの団体が協力してくれるのだろうか。クリスマスイブの予定がすでに埋まってしまっている人は多いことだろう。

 

いい食材をとにかく混ぜただけで、いい料理ができるわけではないのだ。

 

 

しかし、『あの日』のおかげで、雪ノ下先輩と由比ヶ浜先輩が協力してくれるようになった。比企谷先輩も心機一転して、奉仕部として依頼を受けてくれる。金曜の会合は2人の現状確認に費やしたとはいえ、奉仕部の時間が動き始めたことに意味があるのだ。協力してくれることは嬉しいし、一部員としても協力は惜しまないつもりだ。

 

 

 

そして、本日土曜日、

東京ディスティニーランドに来ていた。千葉県だよ。

 

平塚先生が参加した『友人の結婚式』の二次会でペアチケット2回分も当たったらしい。貰い手を探しているというお涙頂戴の話は全員でスルーしておいた。頭を悩ませる俺たちにそもそもクリスマスが何たるかを学んで来いって言われ、導かれたのだ。平塚先生はちゃんと俺たちを見ていてくれて、迷ったときには手を貸してくれる。俺個人としては理想の教師像だった。

 

 

 

ともかく雪ノ下先輩は年間パスポート保持者だったので、全員無料で夢の国に来れたのである。

 

「それじゃあ、行きましょうか。」

 

ゲートをくぐれば 一瞬で世界が変わる。

俺にとっては、完全に未知の世界だった。

 

「ツリーの規模が違うわね。」

「ああ、だが……」

「負けてませんね。」

 

巨大な城を背景として、巨大なクリスマスツリーがまず目に入る。計算されつくした完璧な飾りつけだが、俺たちと小学生が作った手作り感溢れるツリーの方が好きだった。

 

 

「ね、ね、写真撮ろ!」

「3人とも早くー!」

 

一応遊びに来たのではなく 参考にするためだ。研修旅行とか取材と言えるものである。そんな建前を言ってみたものの結局は『自分がこの世界を楽しんでこそ大事なことが見つかる』ので、前へ進む。

 

 

写真撮影にすぐには移行せず、列に並んだ。

休日ということもあって9時でも非常に混み合っている。千葉からだと20分で来れてしまうが、電車のピークを避けて少し遅めの集合となった。ちなみに大学生のときは夏休みの時期がずれているので、世間が仕事や学校の日にあえて行くこともできた。

 

「笑顔を振りまき写真を撮り続けるって、プロだな。」

「なんか疲れそうですけどねー。」

 

やはり自然体が一番好きだ、本人も楽だろうし。

 

「ほら、ポーズ決めた方が楽しいですよ!」

「これでいいのか?」

 

ようやく回ってきた番で撮ってもらった最初の写真には、今のありのままが残されていた。これを加工してSNSに投稿する人も多いだろうが、俺たちは携帯をそっとポケットに入れる。

 

「さ、張り切っていきましょー。」

「「おー!」」

 

今日のコースは いろはさんが考えてきてくれた。

来たことがなかった俺は何があるのか分からないし、比企谷先輩もファストパスの話まで出せば不得手だ。雪ノ下先輩はある一定のアトラクションを数回行ってしまうだろうし、由比ヶ浜先輩は楽しみになりすぎて眠らずに来そうだ。選択肢は簡単に絞られた。

 

彼女の千葉県民特有のスキルによって、効率よくアトラクションに乗っていく。その過程でファストパスを取っていくことも忘れない。初めて来た時は苦戦して、結局友達に手を貸してもらった。

 

 

 

 

「ゆきのん、大丈夫?」

「大丈夫、問題ないわ……」

 

スペースユニバースマウンテンっていうコースターに乗れば、この光景である。雪ノ下先輩が由比ヶ浜先輩に支えられている。絶叫系に対して耐性がある俺と違って、程度の違いはあれど皆ふらふらしている。加えて、人気アトラクションであるので人混みも非常事態レベルである。

 

ので、

 

「あ、ありがとうございます。」

「その、嫌なら、やめるけど……」

「そんなことないですよ。」

 

距離をゼロにして、腕を背中に回して隣から支える。

ふらつくいろはさんが人の流れに巻き込まれそうだったのだ。

 

これで合っているのか分からないが、ちゃんとしたいという想いだけは確かにあった。

 

大丈夫と思ったところで そっと肩から手を離せば、惜しむように見つめてくる。

 

寒空の下で、温かさと熱を実感した。

前にいた先輩たちには見えていなかったようで 白い息を2人同時にそっと吐いた。

 

 

 

 

 

「これを待っていたわ。」

 

雪ノ下先輩の大好きなキャラクターの、パンさんのアトラクションである。笹が大好きなパンダでカンフーの達人だ。先ほどまでの疲れは吹き飛んで 足早となっている。

 

「ちょっと、1人で乗っていいですか?」

 

組み合わせを決めようとしたときに 自然と声が出た。比企谷先輩が一早く了承したことで、3人は戸惑いつつも先に乗って行った。

 

 

ふと思い出したのだ。

ある遊園地で迷子になったことがあるって両親から聞いたことがあった。泣きながら探したのに、ハチミツが大好きな優しいクマの側で笑っていたらしい。

 

 

「パンブーファイトの世界へ行ってらっしゃーい!」

 

他に人はいるけれども、独りだ。

 

ライドは暗闇の中へ移動していく。

光が弾け、未知の世界が広がる。

 

 

今の自分を、そして前世の自分を否定してきて、これからの自分を肯定することなんてできないのだろう。思い出を上書きしていったくらいで、俺が変わるなんてことはなかった。忘れようとしても思い出そうとしても、胸が痛む。

 

そもそも過去に囚われるということは間違っているのだろうか。未来志向の人が多いと言われるけれど、過去志向の人だって現在志向の人だっているのだ。

 

ともかく、痛みを誰かに傾聴してもらえれば痛みは治まるのだろう。しかし痛みを悪化させることが怖いから、俺は痛みを治すことを選ぶことはしなかった。だから人から優しさを貰っても人を頼ることはなかったし、繋がりを作ることから逃げ続けた。

 

『PTSD』を自覚しつつも隠し続けたのだ。

 

 

それでも、

理屈抜きに認めてくれる先輩たちがいる。

ちゃんとしてほしいって言う女の子がいる。

 

 

俺にも居場所ができたのだ。

出口では彼らがちゃんと待っていてくれた。

 

「さて、パンさんグッズ買いましょうか!」

 

雪ノ下先輩の最大目標がサンタ服のパンさんグッズであるし、ショップに寄ることは確定していた。

 

 

それでも自然と、笑顔と声が出ていたのだ。

ありのままの直感で選んだ、たった1つのぬいぐるみに手を伸ばした。

 

 

 

 

 

***

 

今は半月と言えど、確かに満月になりつつある。

 

夜になっても夢の国は明るいままで、

色とりどりのライトで幻想的な綺麗さを醸し出している。

 

 

パレードにおける進路確保のためのロープで 比企谷先輩と雪ノ下先輩とははぐれてしまい、さらにアトラクション乗り場でトラブルが生じてしまったようで、先に3人だけでスプライドマウンテンに乗った。いろはさんは絶叫系の耐性があまり高くないようで、今はベンチで休憩中である。

 

 

「ふぅ……結衣先輩は先に先輩たちと合流しておいてください。」

 

「え? うん、じゃあ後でね!」

 

電話をかけて集合場所を決めた後に、走っていった。

 

 

 

「聞いていいですか?―――何を隠しているの?」

 

先ほどまでバクバクと音を立てていた心臓は自然と落ち着いた。何かを抱えているというヒントを与えすぎたと自分でも思う。本気の目をして聞いてくれたのだから、ちゃんと応えることにする。

 

もう、ここで間違えるわけにはいかない。

 

 

「『転生』ってわかる? ………中学3年の末に人生をリスタートしたってところか。大学3年まで生きていた世界は この世界じゃない。このディスティニーランドはディ〇ニーランドだったし、パンダのパンさんなんていなかった。だから俺の魂?はこの世界の『異物』ってこと。」

 

いざ説明しようとすると、こんがらがってきた。そういったラノベを読んでいた比企谷先輩ですら信じがたいことだろう。当事者の俺ですら非現実的なことだと思っているし、まるでお伽話のことなのだ。

 

「気持ち悪いだろ? 意味不明だし。」

 

伝えたいと思っているけれど、伝えてしまったら終わるかもしれない。そんなジレンマにこの数ヶ月悩まされ続け、今ようやく楽になれた。一番言いたくて一番言いたくなかった人に言ってしまって、俺はまちがいだらけなのだと再認識した。

 

それでも、―――

 

「それでも、俺は『本物』が欲しくなった。」

 

だから踏み出した。

 

 

「そうなんだなーって感じです。納得がいったっていうか……でも特に変わることはないですよ。あっ、でも私 年上好きみたいですね。」

 

「……そうか。俺も年下好きみたいだ。」

 

「私も、『本物』が欲しくなったんですよ。昨日の先輩の話 スッと入ってきたんです。………あなたはちゃんと見ていてくれて、不器用ながらも本気で向き合ってくれる。でも本当は女子って可愛いところだけ見せておきたいものなんですけどね。」

 

一度、言葉を区切り素の笑顔を見せる。

 

「それはもう振り回されっぱなしで、いろんな私を見せてしまう。わたしが好きになれないところも好きになってくれた。」

 

計算高い女子、一喜一憂する女子、真剣な女子、素の女子、1人の女の子、すべてが合わさって『一色いろは』である。その想いは本気で向き合っている今も変わることはない。

 

「だからわたし もっとあなたの気持ちに触れたい。いつも助けてくれて、優しさをくれるのは嬉しいけど、不満や不安も言ってほしい。そうじゃないと、『本物』の恋愛じゃないと、もう満足できないから。」

 

人の笑顔が俺の幸福に繋がると思っていた。

誰も傷つけたくなかったから 負の感情を隠してきた。

 

「………確かに痛みを言わないことは辛かったけど、でも否定されるのが怖かった。でも これからはちゃんと全部気持ちを伝えていくから、辛い時はちゃんと頼るから。―――だからありがとう。運命の人。」

 

でも、いろは相手には見せてしまうようになったのだ。好きな人に 弱い自分を見せることで助けてほしかったのだと今ならハッキリと分かる。俺が傷つくことで傷ついてくれる彼女がいるから、この世界で俺はもう絶対に独りじゃない。

 

「わたし もっとあなたのこと知れてよかった。」

「ありがとう……聴いてくれて……」

 

抑え込んできた『傷み』と『想い』が全て溢れる。

抱え込んでくれる『温もり』が涙を幸せのものにしてくれる。

 

 

距離は縮まり ゼロになった。

 

 

繋いだ手の温もり、染まる頬、潤んだ瞳、長い睫毛、優しい香り、ふわふわの亜麻色、柔らかった唇、そして華奢な身体と温かい心、つまり彼女の全てに見惚れる。

 

 

「あなたの前で私は私のままでいられる。ワガママで、めんどくさい私のいろんなところをちゃんと側で見てくれる。―――それが私にとっての『本物』。」

 

「いろんな君を側で見ていたい。中途半端で、めんどくさい俺を振り回してちゃんとさせてくれる。―――それが俺にとっての『本物』。」

 

「伊月が本物(すき)。」

「いろはが本物(すき)。」

 

君が教えてくれる『本物』は透明だった世界を彩ってくれた。

素直に笑顔になれたのはあなたのおかげ。

 

 

 

2人揃って立ち上がり、囁き合う。

 

「私のどこが好きか具体的に。」

「これからのお楽しみということで。」

「ここで必死にポイント稼ごうとしないとこ、好きですよ。 それじゃあ 毎日教えてくださいね♪」

「ああ、毎日教える。教えてほしいって言うところが好きだから。」

 

 

『本物』を見せまいと 人混みに紛れていく。

俺もいろはも意外と独占欲が強いみたいだ。

 

 

とある転生オリ主はそう簡単には見分けがつかないだろう。

なぜなら―――

 

「「やばっ」」

 

先輩たちを見かけて手を離す。

 

俺もいろはも実は純情みたいだ。

これから彼女のいろんなところをもっと知って、もっと好きになっていくのだろう。

 

 

「お、お待たせしましたー!」

「さあ急いで! お土産買いに行きましょうか。」

 

ホント、俺たちは締まらない。

俺たちの青春ラブコメはまだまだ続くし、これでいいのだ。

 

 

むしろ物語はようやく序章を終えた。

 

 

物語を締めるために―――

約100年かかる以下の『証明』を解くこととする。

 

『俺たちの本物(すき)はまちがっていない』

 

 

 

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