やはり転生オリ主の青春ラブコメもまちがっている。(リメイク)   作:ヒラメもち

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第17話 『偽物』

求めるは、現状打破の一手。

 

雪ノ下先輩主導で現状確認を行った。

足りないものは 資金と人手、そして準備時間。まず、クリスマスイブまで1週間もないため 圧倒的に当日まで時間がない。また、人手に関してはこれ以上増やすつもりはなく、休日と終業式の放課後で追い込みをかける。

 

そして資金について、地域的なイベントであって資金は個人から集めることを今更できず、学校側から支給されるものを頼りにするしかない。資金の割当は、主にパーティーの飲食物と音楽団への人材費となっている。前者はともかく後者が最大の問題なのだ。今のところ多種多様なジャンルの音楽を流そうとしている。しかし複数の団体を呼べば、それだけ額が大きくなっていくのだ。加えて 練習時間も十分に確保できないため、今更協力してくれる団体は多くはないだろう。

 

比企谷先輩は考えた。

なぜ会議に時間がかかっているのか。それは最終決定権を持つ者がいないということにあるのだ。玉縄さんは司会進行をしているだけで、会議が合議制によって成り立っているからだ。

 

反対も対立も否定も、そして勝ち負けもあるちゃんとした場所にするのだ。

 

 

ともかく、今のままだと彼らの理想とする音楽会は完全には成立せず、クリスマスパーティーは しょぼくなる。時間が余るということで、音楽会を求めていない人も楽しめるものを選びたい。雪ノ下先輩にビクビクしながらも、いろは主導で単なる話し合いを行っていく。俺たちは残された時間の中でちゃんとした会議を行っていった。

 

由比ヶ浜先輩が転換の発想を出す。

多くの時間をかけて、多くのお金をかけて、いいものができるとは限らない。それは逆も然りだ。ディスティニーランドのクリスマスツリーに、俺たちの作ったクリスマスツリーは負けていない。ここ数日、子どもたちと俺たちは確かに『成果』と『実感』を得たのだ。手作り感溢れる温もりのある催し物を選ぶ雰囲気となった。

 

 

 

 

「ちっ」

 

可愛い笑顔で小さく舌打ちをするというのは器用だな。

音楽会と被らないように、小学生や園児による演劇が選ばれた。ネットから拾ってきた画像をもとに良さを伝え、セリフを言う子と舞台で演じる子を分けるという画期的な発想まで加えた。急遽用意したプレゼンだったとはいえ、良さは十分に伝えられたはずだ。

 

 

「うん、考え方としてはありだと思うんだけど、2校合同でやることに意義があると思うんだよね。別々のことをやると、シナジー効果も薄れると思うし、ダブルリスクなんじゃないかな。うん、やっぱり音楽会の合間にやってもらおう。」

 

「そうかもですけどー、私的には結構こっちやりたいなーって思うんですよねー。どっちも見れるとか超お得じゃないですかねー。」

 

「それに、今のままだと音楽会の予定時間削減するしかないでしょう。」

 

「うん。だから、できるようにしよう。予算をプラスしてだね……」

 

「何度も言いますけど 時間は? 準備とか交渉とか練習とか。」

 

「時間のことだったら、今から新しい企画を走らせるより、元の1つに絞ってみんなで協力したほうが効率上がるし、コストパフォーマンスもいいと思うんだよね、費用対効果的に。」

 

「でもでもー、今のところ予算で問題あるのってそっちじゃないですかねー?それに、こっちは手作りですし!」

 

現在、会議は平行線を辿っている。

いろはがあざとく攻め、俺が後衛として現実を突き付けてやる。耳の痛くなるような問題点を手札としているが否定されないわけではないので、代わる代わる使っていく。玉縄さんへの援護ももちろんあって理由付けもあるから、完全には攻めきれていない。

 

どちらの意見も間違っていないからだ。

 

 

「そもそも、二部構成に反対する理由って何?」

 

「反対ってわけじゃなくてさ……」

 

「失礼ながら、それぞれの学校で動くというのはどうでしょうか。」

 

本牧さんや藤沢さんは違った方向から意見を言う。

攻めていく中で見つかった本質的なことを俺たちは探していく。もはや意地になって合同に行うことに固執し始めている。その違和感の正体こそが切り札になるはずだ。

 

「それは、合同でやることでグループにシナジーを生んで、大きなイベントを……」

 

「シナジーなんてどこにもないし、それに、大きくって言ったって、このままだと大したことできないだろ。なのに、なんでまだ形にこだわるんだ。」

 

「企画意図とずれているし。それにコンセンサスはとれてたし、グランドデザインの共有もできてたわけで……」

 

「違うな。自分はできると思って、思い上がってたんだよ。だから、まちがっても認められなかったんだ。自分の失敗を誤魔化したかったからだろ。そのために、策を弄した、言葉を弄した、言質をとって安心しようとした。まちがえたとき、誰かのせいにできたら楽だからな。」

 

まるで自身に言っているかのように先輩が言い切った。

玉縄さんは何も言うことができない。

 

グループディスカッションを行う際に、前提として全員が自分の意見を持つことが求められる。責任を分散させることは責任者としていかに心地いいことか。与えられるものに委ねることは楽だけれど、それは痛み分けにすぎない。

 

まちがうことを躊躇ったら、青春は停滞する。

 

 

 

「そういうことじゃなくてさー、君がコミュニケーション不足なだけだと思うんだよね。」

 

「否定も反論も、不満も言わないことがコミュニケーション不足なんじゃないのか。自分に言い訳して自己完結して全部肯定してやる。いや、全部肯定するって 単に考えることを放棄しただけかもな。ブレインストーミングって取捨選択をいつかはしないといけなかったんですよ。難しいことを 誰かに委ねたら楽、ですよね。」

 

しこりを残したまま、誰かを傷つけたまま、不安要素を持ったまま、次のステージに行くのは ひどく怖いことだと思っていた。もう何も失わないようにって全部求めてしまうけれど、そんなことはできない。

 

 

痛みを抱えたままでもいい。

そうでないと、本当に大切なものをちゃんと見ることができなくなる。

 

 

 

「ねぇみんな、クールダウンの期間を置くとかして、もう一度落ち着いて話し合うよ。」

 

甘く思える言葉で、まだ馴れ合いを続けようとする。同意する声も多い。誰も傷つかない世界にしようと停滞して、結局は誰かを傷つける。

 

痛みから逃避すること、痛みを分かち合おうという数の暴力に対して、俺や先輩は歯噛みしてしまう。

 

「ごっこ遊びがしたければ余所でやってもらえるかしら。」

 

雪ノ下先輩の凛とした声は、場を静めた。

 

「さっきからずいぶんと中身のないことばかり言っているけれど、覚えたての言葉を使って議論の真似をするお仕事ごっこがそんなに楽しい?」

 

いつもの罵倒より はるかに鋭く冷たいものだった。

 

「曖昧な言葉で話をした気になって、わかった気になって、なに1つ行動を起こさない。そんなの前に進むわけがないわ……。何も生み出さない、何も得られない、何も与えない、―――ただの『偽物』。」

 

いつもの凛とした表情に戻って言い切る。

 

「これ以上、私たちの時間を奪わないでもらえるかしら。」

 

静寂の中で、由比ヶ浜先輩は口を開くことができる。

 

「無理に一緒にやるより、2回楽しんでもらえるって思ったほうが良くない? ほら、それぞれの学校の個性とか出るじゃん!」

 

「ね、いろはちゃん?」

「あ、はい。い、いいと思います…」

 

「ど、どうかなー?ねー?」

「え、あ、うん……。それあるんじゃない?」

 

肯定する者を増やせば、

長かった会議は終わった。

 

 

 

 

本格的に準備が始まれば、誰もがせわしなく動いている。いや、玉縄さんだけは何か思うことがあったのか、息を前髪に吹きかける謎の行動でクールダウンの期間を設けている。

 

そして、いろはに俺たちは立たされる。

 

「なんで3人ともああいうこと言っちゃいますかねー。雰囲気最悪ですよ。結衣先輩いなかったらヤバかったですよ。」

 

「私はまちがったことは言ったつもりはないけれど。」

 

「正論かもしれないですけど、もっと空気を読むって言うか、いろいろあるじゃないですかー。」

 

 

「その男に空気を読むことを期待するなら無駄よ。部室でも文字列しか呼んでいないのだから。」

「残念だったな、俺クラスの読書家ともなると行間までちゃんと読んでる。ていうか、今怒られてるのお前じゃないの?」

「一色さんは今、正論だと認めたじゃない。だったら怒られる謂れがないわ。」

「あー、それそれそういうところ怒られてんだよ。話聞け、話。」

 

雪ノ下先輩と先輩の会話って聞いてて飽きないよな。

 

 

「ツッキーもなんかスゴかったね。」

「愉悦を覚えそうでした。たまには理屈っぽいことを並べて追い込むのもいいものですね。」

「性格わるっ!?」

「会議だからお仕事だからって許されるとこありますし。」

 

 

コンコン

「あのー、私の話聞いてますかねー?」

 

放置されたいろはは拗ねてしまったようで、ホワイトボードを叩きつつ意識を向けさせる。

 

えっ、なにこの可愛いウサギさん。

俺の彼女である。

 

 

「ま、まぁまぁ丸く収まったんだしいいじゃんか。」

 

「はぁ、まぁ、良かったんですけどね。……いや、ちょっとスッキリしましたし。」

 

かなりスッキリしたのが5人全員の本音だろう。

 

 

「向こうのフォローは 私といろはちゃんでやるよ。」

 

「えー、私もですかー?」

 

「あなたは代表者なのだから当たり前でしょう。」

 

「は、はい! やらせていただきます!」

 

いろはは雪ノ下先輩に敵わない。

 

「さー、月村君も行きましょう!! 先輩たちは さわちゃんたちのお手伝いよろしくお願いします。」

 

「はいよー。」

 

 

 

こそっと耳打ちし合う。

 

「いろはが生き生きできててよかった。」

「伊月のおかげですかね。ていうか、伊月だけは言いすぎくらいがちょうどいいんですよ。」

 

会議中に時折り手を繋いでいたことは俺たちだけしか知らない。

 

 

 

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