やはり転生オリ主の青春ラブコメもまちがっている。(リメイク)   作:ヒラメもち

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第20話 求めるのは『加速』なのか『停滞』なのか

昼休みの教室は非常にざわざわとしている。

2週間の間会うことがなかっただけで積もる話はあるし、何気ない雑談も変わらずにある。いつもより会話の種が多いことから、盛り上がりも大きいのだろう。

 

冬休みをどう過ごしたかについて問われたとしても、庶民的な年始年末だったとしか言えない。大掃除、紅白、大晦日、正月といったイベントを静かに楽しんだ。家族や恋人と過ごす時間に加えて、宿題を消化しただけだ。冬休み中に変化したことと言えば、受験生である小町さんと勉強会をするようになったことくらいだろう。

 

 

生徒会活動も休止していて、

奉仕部の鍵も開けられることはなかった。

 

3日が誕生日である雪ノ下先輩の誕生日会は本日7日に延期されたのだ。

 

 

「マラソンって1月末だよな?」

 

「そうだな。本来は2月なんだけど。」

 

知り合い以上友達未満、クラスメイトである3人組の話し相手となることが俺にはある。サッカー部に所属していて接点もそれなりに多い。親に作ってもらったお弁当を各自食べながら、月末に開催するマラソン大会について聞いてきた。

 

「去年は葉山先輩が今の3年 圧倒したらしいな。」

「なにか面白いことしないのか?」

 

「生徒会長が提案したパン食いマラソンとか仮装マラソンっていうのは、阻止しておいた。」

 

このグループを見ている女子たちの様子を俺は伺う。

運動面や成績面、容姿について、この3人組は十分モテる要素があるのだが、スポーツ以外には 勉強のことやFG〇やシャ〇バといったゲームくらいしか興味をあまり示さない。学校生活を受動的に楽しむタイプであることは確かだ。

 

「それは流石にな……」

「今年も普通のマラソン大会になりそうなんだなー」

 

「まあな。」

 

相槌を打っておき、いろはの様子を続けて伺う。

 

 

「えー、キープなんかじゃないですよ。生徒会繋がりです。」

 

「月村君といつも出かけてんじゃん?」

 

「えっと、私や本牧先輩がいるときもありますけど……」

 

「でもそれって、ありよりのありじゃない?」

「マジ卍って感じ。」

「でも本命は葉山先輩なんしょ?」

 

「あー、今は違いますよ。」

 

「マ?」

 

 

冬休み明けから、こういった浮ついた話が多くなった気がする。特に葉山先輩を狙う女子が牽制し合う流れができていて、その流行に感化されて動く者も多いようだ。

 

「一色さんと、藤沢さんは大変だな。あと月村も。」

 

「……何が?」

 

もう少しこの3人くらい人気や魅力があったなら、『キープ』なんて言われなかったのだろうか。

 

 

 

 

 

***

 

その流行は治まることはなく、放課後になればさらに盛り上がりを見せている。

 

男子で最も人気のあるイケメンと高嶺の花である美少女の恋愛に尾ひれをつけて広めているのだ。

 

今、最も噂されているのは、『葉山先輩と雪ノ下先輩が付き合っている』というものである。熱盛である。

 

それは有名税なのかもしれないが、

本人たちからすればいい迷惑なのだろう。

 

 

 

「「「お誕生日おめでとう(ございます)!!」」」

「おめでとさん。」

 

「あ、ありがとう……。その、お茶があったほうがいいかしら。」

 

照れ隠しに、雪ノ下先輩は席を立って紅茶を淹れてくれる。

 

「いろはちゃんが作ってくれたチーズケーキおいしい!」

「お前、マジで料理得意なんだな。」

 

「なんですか口説いてるんですか。甘いものだけに甘い言葉を囁けばいけるんじゃないかーとか考えが甘いので先輩は遠慮しておきますごめんなさい。」

 

「いや口説いてないから……。」

 

 

 

「ショートケーキは月村君が作ったのでしょう?」

 

「一色さんに教えてもらいながらですけど。」

 

「えっへん。」

 

「謙遜することはないわ。炭ではないのだから。」

 

「え、それってもしかして私のこと言ってる……?」

 

雪ノ下先輩への誕生日プレゼントとして、いろはと俺はケーキを作ってきた。俺たち自身が食べたいから、お互いに食べさせたいから といった目的もないことはない。比企谷先輩はブルーライトカット仕様の眼鏡を、由比ヶ浜先輩はルームソックスを、それぞれ当日に渡したらしい。

 

ちゃんと見ているから2人は最高のプレゼントを選べる。

 

 

新年初となる活動だ。

食べてばかりではなく、奉仕部が所持しているノートパソコンを雪ノ下先輩が取り出して仕事に入る。『千葉県横断お悩み相談メール』及びSNSアカウントへの投稿の確認だ。総武高生を対象とするネット上の目安箱といったところだろう。後者のSNSについては ひっそりとやっているとはいえ、総武高生の集団的な悩みの傾向を見ることに役立つ。

 

 

『文系と理系、どうやって決めてるの?』

こういった内容がいくつかあることに注目することにしたようだ。

 

先輩からプレゼントされた眼鏡をかけた雪ノ下先輩がパソコンを操作しながら、その内容を口に出した。その雪ノ下先輩の姿に対して先輩はキョドっていて、由比ヶ浜先輩はどこか羨ましそうである。

 

 

「あー、進路ってやつですか。」

 

「3年になってから文理に分かれるんですよね。やっぱり2年の皆さんは迷ってます?」

 

ケーキをモグモグと食べながら、最高の紅茶の香りを楽しみながら、俺やいろはは尋ねる。文理選択の時期が遅いとも思ってしまったが、それはかつての高校が2年からだったからかもしれない。

 

 

「まぁ、クラスではそういう話題で持ちきりだったな。俺は文系で決まりだが。」

 

「ヒッキーってね、文系だけはスゴいんだよ!」

 

「文系だけって強調しないでくれない?」

 

「すごーい。先輩って成績いいんですねーー………わー、先輩って 頭よさげ風なだけありますね♪」

 

興味なさげに反応していたことにハッとした。

よって、いろはは気を取り直してあざとくなる。

 

 

「いや、頭よさげ風ってなんだよ……はぁ」

 

「それなりにはいい成績よね。といっても、国語でもトップは取れないのだけれど。」

 

得意げに微笑む雪ノ下先輩は、2年で文理とも葉山先輩とトップを争っている実力者である。ちなみに由比ヶ浜先輩は雪ノ下先輩のサポートがなければ進級が危うい。よって、飛び火しないように俺たちの成績や進路について聞いてくる。

 

「ふ、2人はどうなの?」

 

 

可愛くちょこんと顔を傾ける。

続けて、

フォークを可愛く唇に当てて、目を逸らす。

 

「えっ、あー、月村君はやっぱり理系ですよね。」

 

「そんな生徒会長さんはテスト前に泣きついてきます。」

 

「ちょっと!言わないでくださいよー! 月村君だって文系苦手なおかげでトップじゃないくせに。」

 

「一色はともかく、意外だな。」

「ともかくですとぉー!?」

 

「センター試験用の勉強じゃ解けないことも多くて。特に英語。」

 

「そうね。大学入学共通テストへの転換期ということもあって、定期テストでも変わった問題が多くなってきたわ。」

 

「ああ、確かにな。」

 

「慣れるまで時間がかかりますよね。」

 

「な、なんとかなるんじゃないんですかねー。」

「えっと、なにか変わったの……?」

 

プレテストを俺もやってみたが、出題方法が一味違うものとなっていた。その影響を受けて、進学校である総武高の定期テストも少しずつ変化している。理系科目すら俺もまだ慣れそうにもないし、どちらかというと文系であるいろはも全科目の傾向の変化に苦戦している。由比ヶ浜先輩はあまり変化に気づいていないようなので、雪ノ下先輩主導なスパルタな受験勉強が待っているだろう。

 

 

 

「話を戻すわね。文理選択や進路の悩みということだけれど……、比企谷君はどう思う?」

 

雪ノ下先輩から視線を向けられた先輩は 少し考えを巡らせる。

 

「進路って悩む必要ないだろ。メリットやデメリット、得意不得意、あと好みとか考えて、『やりたくないこと』を排除して考えればおのずと答えは出る。まぁ、やりたいことあるならそれを目指せばいい。」

 

「……そう。」

 

「どうした?」

 

「あ、いえ、三浦さんでも悩むというのが少し意外だったの。」

 

「へぇー、三浦先輩も質問してきたんですねー。」

 

「ええ。」

 

「そりゃ、優美子だって悩むことくらいあるよー。進路だもん。ほら、みんな、ばらばらになっちゃうじゃん? そういうの考えると、迷ったりしない…?」

 

「それは、まあ、確かにそうですけども……」

 

「……クラス分けはともかく、大学選びに関わってきますからね。」

 

 

「だがいつかは終わりはくるぞ。まぁ、文理分けってそういうもんだろ。」

 

始まりがあれば、いつかどこかで終わりが来る。今この場所で会話している先輩たちと、そしていろはと卒業後会わなくなる可能性はゼロではない。彼女たちと過ごす時間を大切な光にしたとしても、有限であるという事実は常に影となって俺を蝕んでいる。

 

転生による傷はずっと刻み込まれたままだ。

 

 

「三浦先輩って葉山先輩の進路が知りたいんじゃないんですか。」

 

静寂と呼べる時間を進めたのは、優しい表情をしたいろはだった。

 

この場で俺だけが彼女の『不安』に気づけた。

 

 

「あー、なるほどー。教室でも気にしてたっぽいし、そうかも。」

 

「直接聞いてもいいんじゃないかしら。」

 

「クラスでね、隼人君は自分で考えるべきだーって言って、教えてくれなかったの。」

 

親しい人に対しても、聞けないことやどうしても話せないことはある。未来、現在、過去、どこに地雷が埋まっているかはわからないし、もしわかっていれば話すことは憚られる。無理に聞いて、話してしまって、『自分の望まない結果』がもたらされたなら。そんな不安が言葉を詰まらせる。

 

だから、自分を傷つけてしまう。

そして、大切な人を傷つけてしまう。

 

何度も傷つけていく。

 

 

「この相談、どうしましょうか。」

 

「学校全体のことなら、生徒会にお任せです!」

「新設された進学研究室と連携して、2年生向けの進路相談会をちょうど企画してまして。」

 

「あー、あの丸パクしたマニフェストの。」

 

「ちゃんと役立っているようなら私は構わないわ。」

 

先輩は仕返しとばかりに皮肉を言ったものの、発案者様は誇らしげである。

 

 

「そういうことで、奉仕部にはあまり参加できなくなります。」

「左に同じくでーす。」

 

「ええ。わかったわ。」

「いや、一色って部員じゃないだろ。なんでいつの間にか居座っているの。」

 

「ま、細かいことは気にしないでくださいよー。」

 

 

「じゃあさ、隼人君には私がまた明日聞いてみるよ。教えてくれるかわかんないけど……。」

 

声は尻すぼみになっていく。

葉山先輩は進路について話さないというスタンスを貫きそうである。

 

 

「……仕方ない。俺が聞くか。」

 

「え?ヒッキーが?」

「大丈夫なの? 会話、できる?」

「先輩、まさか狙ってるんですか?」

「海老名先輩のご注文はハヤハチですか?」

 

「お前ら……。 はぁー、親しい人間には教えないならその逆を試してみるしかないだろ。」

 

 

「なるほど。そういう方針でいい、かしら……?」

 

「ん、ああ。 とりあえずは、な。」

 

雪ノ下先輩が比企谷先輩に確認を取れば、奉仕部のこれからの方針が決定される。

 

 

「じゃあ、今年もみんなでがんばろーっ!」

 

「「おーーっ!」」

「おー……」

 

新年初となる奉仕部の活動はこうして終わった。

 

 

また1日が過ぎていった―――

 

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