やはり転生オリ主の青春ラブコメもまちがっている。(リメイク)   作:ヒラメもち

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第26話 彼らのステージへ

 

1月29日昼。

天候は快晴。

8℃だけれど、凍てつく寒さではない。

 

スタート地点の公園には1,2年生全員が集まっている。

スポーツ系の進路の3年生もちらほらいるが、数は少ない。

着ているのは学校指定か部活のジャージである。通気性イイナー

 

 

前大会優勝者である葉山先輩の周りには多くの女子が密集している。笑みを浮かべてその『期待』を受けていた。少し距離の離れたところに三浦先輩や海老名先輩、雪ノ下先輩や由比ヶ浜先輩がいる。

 

 

「先生方が各ポイントに着いたそうです。」

 

藤沢さんから報告を受ける。

 

「了解。」

 

生徒会主催であるし、俺たちは走るだけではない。

地域の人に開催することをお知らせしたし、コース確認も何度もしたし、司会進行もする。保護者の方を中心に、ボランティアに来てもらえるように声をかけた。

 

「いろは、準備できたみたい。」

 

「はーい。では、行ってきますね!」

 

マイクを持ったいろはがスタート地点付近に行く。

 

俺も先頭集団にするりと潜り込む。

あまり本気で取り組むメンバーは多くはない。

 

「ではではー、そろそろ始めちゃいたいと思いまーす! 先に男子の皆さんがスタートしてー、30分後に女子がスタートですよ♪」

 

黄色い声援が聞こえてくる。

後方の男子も少し先頭集団へ寄ってきた。

 

「自転車とか車とかに気をつけて、転ばないように気をつけてくださいね! じゃあ、平塚先生お願いしまーす。」

 

葉山先輩やサッカー部3人組は一番前。

先輩や、材木座先輩や戸塚先輩たちも先頭集団にいる。

 

 

 

「いつきー、がんばってねーー!!」

 

女子たちの集団の最前列から応援してくれる。

生徒会長の特権だな。

 

ぎょっとした人たちの視線が、俺やいろはに集まる。

俺は気持ち悪いくらいニヤニヤしてそうだ。

 

うちの母親が気持ち悪いくらいにニヤニヤしている。

 

 

「は、隼人。がんばってね!」

 

ひかえめで、恥ずかしそうな、純粋な応援に対して、葉山先輩は手を上げて返す。

 

「が、がんばれー!」

「がんばって。」

由比ヶ浜先輩も負けじと声を出し、雪ノ下先輩も小さく声を出している。雪ノ下先輩の視線の先は葉山先輩ではない。

 

先輩は葉山先輩のとなりに並ぶ。

交わす言葉はない。

 

 

 

公園にある時計を見れば、14時前。

少しずつ歓声は小さくなっていく。

 

「よし、準備はいいな?」

 

平塚先生はピストルを掲げる。

一番モチベアップさせられる人だと思うし、ていうか本人がやりたがっていたし。

 

「位置について。よーい

銃声が鳴る。

 

俺たちは一斉に走り出す。

 

 

 

白い息を吐きながら、リズムよく走る。

トップ集団にいるのは、先輩、葉山先輩たち。

 

 

それに材木座先輩たち。

 

「はー、はー、…もう、無理…。」

 

公園からようやく離れたくらいだ。

スタートダッシュですでにバテていて、少しずつペースを落としている。

 

材木座先輩の大きめの身体が後続集団の妨げとなった。わざとじゃない。

 

 

戸塚先輩たちテニス部、秦野、相模が後続集団の先頭に出る。横に広がったペースのいい走りが後続集団のペースを決めた。

 

俺やサッカー部3人組が2位集団として走っていれば、マラソン大会中盤の流れは完成する。

 

 

 

「これで、いいんだな。」

 

サッカー部3人組のうち、相田が話しかけてきた。彼らはペース配分が上手いから、真似させてもらっている。

 

 

「場は整えたし…、先輩次第。」

 

ずいぶんと無茶なことだったが、第一関門はクリアしたのだ。こうして、1位を争っている葉山先輩はボッチになっている。

 

「おい、ペース、上げたぞ。」

 

「比企谷先輩…だっけ、よく、追いつけるな。」

 

言葉を投げ合いつつ、2人は走り続けている。

 

「おお…、追い抜いた」

 

すでに満身創痍な先輩が葉山先輩を一度追い越した。

 

 

ここくらいが折り返し地点だ。

いくらか練習したとはいえ、ペース配分を考えずに走っているだけだとはいえ、先輩には制限時間がある。

 

それまでに葉山先輩からいろいろ聞きだせるかどうか。

 

 

「ふぅ…」

 

海沿いの歩道はアスファルトで、硬い。

一歩一歩重ねるごとに痛みを感じる。

 

ここ数日、同じコースを何度も走った。だがまともなフォームではないから、この痛みには慣れない。それでも、最初よりマシになっている。

 

俺たち文化部が運動部に喰らいつけている最大の理由だ。彼らのペースに合わせていることもあるし、このコースを何度も走ってきたから、段差に気を取られにくい。

 

 

 

「止まった……?」

 

折り返し地点の橋。

そこで葉山先輩が立ち止まり、先輩も立ち止まった。

 

向かい合う。

肩を上下させて言葉を発している。

 

 

『だから君の言う通りにはしない』

 

追い越したときに、それだけちゃんと聴こえた。

儚い笑みじゃなくて、挑発的な笑顔だった。

 

 

 

「そういや、この後…、どうするんだ?」

 

気づけば、俺たちは1位集団だ。

2位集団が追い抜いたのだから、当たり前だ。

 

「え……、1位…争い?」

 

「へぇー、それ…、いいね!」

 

植田がスピードを上げて、距離が少しできる。

やっぱり『一緒に走ろう』なんて嘘なのだ。だって大会なのだから、勝ったやつが一番目立つし、一番誉めてくれる。

 

俺たちも負けじとスピードを上げて再び、俺たちは集団となった。

 

 

 

 

「はぁ...はぁ……」

 

広場がようやく見えてきた。

息が苦しい。脚が重い。身体が重い。足が痛い。息が苦しい。

 

なんか重複した気がするがどうでもいい。

流れている汗は冷えて身体を凍てつかせる。

 

葉山先輩も集団に加わってきたけれど、交わす言葉は必要ない。

 

 

 

独りの世界、自分自身との戦いと言うべきだろうか。

腕を目いっぱい振って、力いっぱい地面を蹴って脚を前へ前へと動かそう。元々、フォームなんてクソくらえだ。カッコ悪くてもハッピーエンドさえ掴めればいいのだ。

 

中学の長距離走、高校でダムを走らされたこと、大学で何気なく出た民間マラソン。いろんな風景が浮かんでくるし、視界も思考もボロボロだし、フラフラしてきたし、胸が傷むし。

 

不思議と、無心にはならない。

 

 

『自分にだけは負けたくない』

このセリフ、カッコいいよな。

 

 

 

 

 

「…くそっ!」

 

その声にふと気づけば、葉山先輩も追い越していた。

もちろん一度立ち止まったというハンデもあるけれど、この人にだけは勝ちを譲りたくない。彼女が応援すればイライラしたし、デートに誘ったのに断ったのも腹立たしいし。結局は自己中心的で、中途半端で、同族嫌悪と言うべきだろうか。とにかくムカつく。

 

凡人だとか異物だとか、そんな言い訳はもうやめよう。ご都合主義だとか奇跡だとか、もう何でもいいから勝ちたい。

 

だから、俺はまだ走れる。

もっと先へ。

傷つく覚悟はできた。

 

 

ゴールラインにもうすぐ手が届く。

ゴールラインまであと100mほど。

 

 

 

「がんばってーー!」

 

なんでもう女子は3割ほどゴールしているんですかね。そういえば、5㎞じゃなくて、4㎞って言っていた気がする。雪ノ下先輩をはじめ、あまり体力のいない人もいるから交渉したんだっけか。

 

 

応援したかったからだ。

いろは、珍しく髪が乱れてるし。

 

「いけーーーっ!!」

「がんばれーーーっ!」

 

 

眼をつぶって、身体に全ての力をこめる。

負けるもんか、、

 

「「……っ!」」

 

不意に視界が傾く。

 

 

鈍い音が2つ。

そして、女子の悲鳴が響く。

 

陽が陰った。

 

 

 

「いって……」

 

1人、誰かが俺たちを追い抜いたのを感じて這いつくばるように立ち上がる。

 

10㎞のうちたった20mをボロボロになりながら、それはもうカッコ悪くゴールした。

 

ジャージを破くほど膝を擦りむいている。

腰を地面につけてへたり込めば、手のひらの怪我にも気づく。

 

せいぜい、風呂がキツそうだなくらいか。

傷は、あまり気にならなかった。

 

 

 

マラソンの後って、清々しいんだな。

慌てて駆け寄ってきてくれる彼女の姿に、笑顔を見せた。

 

 

 

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