やはり転生オリ主の青春ラブコメもまちがっている。(リメイク) 作:ヒラメもち
水分補給や、汗を軽く拭いた後だ。
公園にあるベンチに座らされている。
「もう、なにやってんですか。ばかですか。2人してばかばっかですか。」
ぐうの音も出ない。
張りきりすぎたのは確かだ。
「イテ、いててて!」
ところで、いろははナース服が似合うと思う。
養護の先生のアドバイスを受けながら、消毒液を含ませたコットンをツンツンと当てる。いや絶対、ツンツンは正しくないよね。もっと研修ちゃんと受けてください。
「隼人はどう?」
「あ、ああ。上手だよ。」
「本当に?」
先輩曰くオカン気質な三浦先輩に、葉山先輩もタジタジである。最近しおらしかったし、久しぶりに積極的になっていることもあるだろう。
「昔、よく転んでいたんだよなぁ。」
何度もジャージを破いてきて、その度に当て布で縫い直してもらった。
その古傷は、今はもう刻まれていない。
「出会ったときもそうでしたね。」
「もう、1年か。」
雪の降る、受験の日だったな。
気づかないフリしていたけど、怪我の心配もしてくれたし。
包帯を傷口に当ててくれる。
痛い。もう少し慎重にしてほしい。
「月村には負けたよ。来年こそリベンジするよ、比企谷にも。」
「受験勉強で忙しくて衰えるだろう、葉山先輩には負けるつもりはないですけどね。」
一度だけ見えた挑発的な笑顔に対して、皮肉を返す。
「いや、なに言ってるんですかね。」
「2人とも負けたっしょ。」
熱血の青春ドラマっぽいことしてただけじゃん。
「いろは、結果発表はあるのかい?」
「はい。表彰式も用意してますよ♪ そろそろですかねー。」
「そうか、ちゃんと終息させる。」
葉山先輩は怪我や疲労をもろともせず広場へ向かう。
俺も、すっごいフラフラしながら広場にたどり着く。
広場では、豚汁やお汁粉を片手に各々盛り上がっている。
誰もがスッキリとした顔をしている。
「ではではー、結果発表です!」
マイクを片手に司会進行していくのは、いろはだ。
「受け取った紙で、ご自分の順位は分かっていると思います。だからこの場では上位3名を紹介したいと思いまーす。まずは、3位 葉山先輩です、壇上にどーぞー!」
葉山先輩は本牧先輩から受け取ったマイクを片手に、壇上へと上がる。
「途中立ち止まってしまったこともあったんですけど、良きライバルと皆さんのおかげで最後まで駆け抜けられました。連覇することができなかったこの悔しさは来年晴らしたいと思います。部活の最後の大会に向けて気を引き締め直すことができるきっかけになりました。……優美子、応援も治療もありがとう。」
近所迷惑なくらい、歓声と拍手が上がる。
雪ノ下先輩との噂もこれで終わりを告げるだろう。
「はい、ありがとうございますー。次は、副会長の伊月ですよー! よろしくです♪。」
壇上へと上がる。
100を超える視線がこちらを向いている。こんなに注目されるのは生徒会選挙以来で、いろはは何度もこの世界を味わっているのだろう。
「趣味を問われればマラソンなんですかね。始めてまだ間もないですし、フォームもペース管理も無茶苦茶。だから、応援と気力でどうにか勝つことができました。 でもって、葉山先輩のようにまた来年この壇上へと上がるつもりです。クラスメイトのライバルたちにも負けるつもりはないです。……いろは、ご褒美の手料理待ってる。」
「はい♪ 特別に、腕をふるわせていただきますね!」
壇上から降りれば、スッと肩の荷が降りる。
なんかもう意地で、告白紛いなことしてしまった。葉山先輩の時も俺の時も『お似合い』というフレーズが出ていることに安心している。ちなみに三浦先輩は顔を赤くしたまま、海老名先輩の鼻血を拭いている。
「というわけで、優勝者の発表ですねー。はい、戸部先輩どうぞ。」
いろは、さっきまでのテンションはどうした。
「えっとー、隼人くんたちに追いつこうと頑張った、おかげさまかなー。サッカー部でやってきた成果だろうしー、大会に向けてがんばるべ!」
「はい、皆さんありがとうございましたー♪」
『いろはすー、そこで止めるのないわー!』って俺や葉山先輩だけに言う戸部先輩だけれど、『これは伏兵だね、腐腐』とニヤつく海老名先輩には『告白』は届かないだろうし、本人も目立つことは遠慮したいって言っていたし。でも、少しはちゃんと見てくれると思う。
それにしても、視線を感じる。
王道の青春ラブコメって結構キツいものがある。
「やっぱり、俺にとって葉山先輩はライバルです。」
いろはが彼を好きでいた頃も、そして今も。
目標としたい先輩の1人なのだ。
「そうか…。俺もやっぱり比企谷にも君にも負けたくないな。」
ハッピーエンドに近づけた。
***
喧騒も、日が暮れるにつれて止んでいった。寒いし。
後片付けについてだが、サッカー部やテニス部のメンバーを中心に手伝ってくれた。俺も葉山先輩もあまり動くことはさせてもらえなかった。俺のかつて見ていた生徒会活動ってもっと閉鎖的だったのだが、これはこれでいいのだろう。
ようやく、生徒会室に戻ってこれたな。
本牧先輩も藤沢さんも仲良く先に帰ってしまった。
「コタツ、入らないのか?」
「となりがいいんですよ。」
傷を負ったままコタツに入るのはキツい。
暖房の効いた部屋で、ソファに2人で腰掛ける。
「ていうか、葉山先輩の進路ってわかったんですかねー?」
「先輩が聞いたからな。でも、三浦先輩もちゃんと自分で考えるだろうな。」
「でしょうねー。」
静寂を楽しむ。
学校にはもう先生方くらいしかいないのだろう。
包帯を優しく撫でながら、労わってくれる。
「も~私、そんなにカワイイですか?」
後ろ手と上目づかいに、的確な傾きで構成される仕草。
さらに、見惚れる。
「今日もばっちりかわいい。」
「む、そういうほめ言葉 私以外に言ってませんよね?」
「言ってない、と思う。」
「ホントですかー? 伊月って、みんなに優しいですもん。」
「性分だからなぁ。でも、ナンパしたことは一度もない、そんな度胸はない。」
「わかってますよ♪」
いろはが素を出せていることが嬉しい。
自分の幸せをあまり考えられないはずの俺が、今幸せだと感じている。
「私、文系に決めました。」
「俺は理系のまま。」
彼女自身の答えが聞けてよかった。
「大学も出て、今のところ将来は専業主婦かなーって。でもでも先輩とは同じにしないでくださいね。子どもの養育費のためにパートとかで働くつもりですよ♪」
「それ専業じゃないよな。もう、未来設計まで決めてるのか。」
「はい。あっ、ほんの少し、楽したいという考えもちょっとはありますが 浪費家にはならないつもりなのでよろしくお願いします。」
「大学院にも進むかもだし、待たせてわるいな。」
「ちゃんと待っててあげますって。」
「ありがとう。」
「まぁ、先生にしろ、研究者?…にしろ、結構たいへんって聞くじゃないですかー?」
「心配かけるだろうなぁ。帰りも遅くなるし。」
ちゃんと考えてくれるし、ちゃんと考えて決めようとしている。
「です。あっ、でも育休はちゃんととってもらいますからね♪」
「はいよ。」
今の時点で、明らかに彼女の尻に敷かれている気がするが、それが俺たちらしさなのだろう。
男子と女子がこれだけ仲良さげだし、
世間の高校生が喜びそうな『青春ラブコメ』だと思う。
「なんか、焼き芋食べたくなってきました。」
「やはり唐突ですね……でも確かにアリだな。行くか。」
夜風が時には俺たちを凍てつかせる。
だがそれが、アタタかさを引き立てる。
帰ったら夕飯が待っているだろうし、半分こしようか
帰ったら今日のこと、根掘り葉掘り聞かれるのだろう。