やはり転生オリ主の青春ラブコメもまちがっている。(リメイク)   作:ヒラメもち

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14巻が3月中旬くらいに発売されるそうで。時期的に相応しいですね。一体どのように締めていくのでしょうか。


このssも完結目指していきます。



第32話 その花言葉は

桜色のムートンコートと白のフレアスカート、そして珍しく黒いタイツを履いていて、いつもより気合いが入っていることが伺える。いわゆるデートコーデである。胸のピンクのリボンが時折りフワッとしている。

 

いろはとともに、最寄り駅から電車へ乗り込んでいく。

受験日である今日、それは世間一般では平日である。

 

しかしバレンタインデー当日ということもあるし、大学生は春休みであるし、ディスティニーランドが近いし、そういった理由で電車内は混んでいる。

 

13時前だからマシだというレベルである。

暖房の効いた電車において、2人で静寂を楽しむ。

 

ガヤガヤとカップルたちが騒いだまま、ディスティニーランドへ降りて行った。その中にはもしかしたら総武高生もいたかもしれないが、知り合いの顔は見ることはできなかった。ていうか、ディスティニーのガチ勢なら、午前中にはすでに行っているだろう。

 

 

あまり人がいなくなった電車、ほんの少し近づいた。

 

 

 

****

 

改札を抜ければ巨大な観覧車が遠くに見えた。

ここ 葛西臨海公園は、海に面していて自然豊かな場所で、東京とは思えないほど穏やかだ。

 

工事の音があちこちから鳴り響いているけれども、気にならない程度である。

 

そして、雪はもう降っていなくて、すでに暖かい。

春が近づいている証拠だろう。

 

 

俺は、いろはから受け取った折りたたみ傘と合わせて鞄にしまう。

 

 

「まだ30分もありますね。」

 

「ああ。軽く見て回るか。」

 

足取りの軽い彼女に手を引っ張られて、一本道を歩いていく。

 

「賛成です!」

 

 

子供連れの家族や、園児の集団とよくすれ違う。平日ということもあって幅が広い道はかなり余裕がある。他にも、大学生が2人きりで歩いていて、静かなデートをちゃんと楽しんでいる。

 

 

俺たちの歩調は次第に合わさっていく。

 

 

「ネモフィラって、なんですか?」

 

チューリップとネモフィラが花壇に植えられていて、春に咲くらしい。立て札に書かれていた。

 

「たしか、縁起のいい花だった気がする。色は青だったか。」

 

「なるほど。春が楽しみですね。」

 

ここのチューリップには、一体どの色がつくのだろうか。

それぞれの色に宛てがわれた花言葉は思い出せないけれど、どうか望むものであってほしい。

 

「…そうだな。」

 

 

さらに前へ進んでいく。

 

ガラス張りの展望デッキからは海が一望できた。

ここにくるまで、その背景を隠すようにそびえ立っていたのだ。

 

 

「いこっ、いつき!」

 

いろはが見つけた、下の花壇へ降りていく。

2月中旬なのにすでに菜の花が少し咲いていて、その黄色の花の香りがする。

 

そして、のどかな風の中にやさしい潮の香りを感じた。

 

「いつき?」

 

「こんな海、初めて見たなって。」

 

太陽の光を反射して、海面は輝いている。

波は穏やかで、海は綺麗な青色をしている。

海は果てしなく続いていて、遠くに島が見えることはない。

 

潮の香りも、もっと鼻にツンとくるものだったはずだ。

 

 

若い夫婦に話しかけて、2人の写真を撮る。

そして、海をバックに俺たちの写真も撮ってもらった。

 

 

「いつか、一緒に行きましょうね。」

 

「ありがとう。」

 

たぶん、あの変わらない風景が広がっているのだろう。

あの風景は、この記憶は、虚像などではない。

 

小鳥が、潮溜りをつついている。

 

「よしっ、そろそろいくか。」

 

「はい♪」

 

 

 

来た道を引き返す。

今回の目的地である水族園こそが、この公園の名物だ。

 

 

券売機で購入したチケットを見せて、ゲートを通る。

 

 

「あっ、せんぱーい!」

 

入り口に先輩を見つけたので急ぎ足で向かう。

人工的なミストをバックに、スマホを見ている先輩もこちらに気づいたようだ。

 

「…まだ早くない?」

 

「先輩こそですよ。こんなに早く来るなんて明日は大雪じゃないですか、いやですよ、私。1回忘れ物取りに家帰ったらどうですか?」

 

「……15分ちょっとでそんなに怒られちゃうの? 俺、悪くないよね?」

 

「女子にとって15分は価値が高いってことですよー。」

「男子の15分で大事なのはテスト前くらいですね。」

 

「それテスト直前だろ。足掻いてるだけだろ。」

 

よく気づいてくれてツッコミ入れてくれる。

ちなみに、ギリギリの暗記は単位を救うことすらあるので大事だ。

 

「ていうか、リラックスできましたー?」

 

「緊張しすぎじゃないですかね。」

 

妹さんの受験、そして昨日のこと。

他にも、本当に自分でいいのか、とか。

 

「……ありがとうな。」

 

「なんですか なにかっこつけてるんですか。口説く人ちゃんと考えてください、私には彼氏がいますので。」

 

「こいつ……、はぁ」

 

先輩の目が腐る。

ようやくいつも通りの先輩に戻ったようだ。

 

 

 

「みんなー、やっはろー!」

 

白いコートを着た由比ヶ浜先輩と、黒い上着を羽織った雪ノ下先輩を引っ張ってやってきた。

 

「こんにちはでーす!」

「こんにちはです。」

 

「……よう。」

「…こんにちは。」

 

浮かない顔をする雪ノ下先輩を見て、先輩もまた浮かない顔をする。

 

「ではでは、いきましょー!」

 

「う、うん!」

 

いろはが機転を利かせ、ゆっくりと先輩や雪ノ下先輩も付いてくる。

 

 

 

水族園に続く長いエスカレーター。

少しずつ暗く幻想的な世界へと向かっていくことは高揚感を感じる。

 

この高揚感も楽しむべきものなのだろう。

それは先輩たちも例外ではないようで、少しずつ表情が変わってきている。

 

 

「「わぁー」」

 

感嘆の声が上がる。

もちろん俺たちも声にならない声を出していた。

 

「サメっ!」

「…サメね。」

 

迫力満点の大水槽には、数々の海水魚が泳いでいる。

いろははすでに激写タイムである。

 

「かっけぇな。」

 

先輩も、独特な特徴を持つサメに年相応に興奮していた。

 

ハンマーヘッドシャークと呼ばれるように、その頭部はトンカチのようになっている。エイ、そしてそれよりも小さな魚も多くいるが、餌やりが十分されているようで1つの水槽で共存している。

 

 

「ふふっ。」

 

「……な、なんだ?」

 

「いいえ。少し意外だっただけよ。撮ってあげるわ。」

 

「マジか、頼む。」

 

雪ノ下先輩に携帯を意気揚々と手渡した。

そして、興奮を隠しきれない顔を見せたまま水槽の前に立つ。

 

「ハンマーヘッドシャークな。ハンマーヘッドシャークが来た時にシャッターを押してくれ。できればハンマーの部分が横になってよく見えるときだ。」

 

「細かいわね。」

 

早口で注文をつける先輩に対して、嬉しそうに呆れる。

何度か撮影をして、チェックしてもらっている。

 

 

「いつき! 次、行きましょ!」

 

「わかった。足元、気をつけろよ。」

 

「はーい!」

 

水族園内は暗い。

注意したけれども、はやる気持ちは抑えきれていない。

 

 

『世界の海』という文字を見かけた。

どうやら、各海洋で生息する魚たちをそれぞれ展示しているようだ。

 

 

赤、青、黄、

先ほどまでと違ってカラフルな魚が目立っていた。

 

「おっ、ニモか。」

 

「あぁ、あの。」

 

カクレクマノミには興奮を隠しきれない。

イソギンチャクに隠れながらも、そのオレンジ色の輝きはちゃんと見える。

 

はしゃぐことはなく、ナンヨウハギは優雅に泳いでいる。

 

「映画、今度見ませんか?」

 

「了解。後で予定立てるか。」

 

たしか、ドリーが主人公の映画もあったはずだ。

 

 

珍しい熱帯魚を見ながら、さらに進んでいく。

また少しずつ暗くなり、深海の生き物が見られ始めた。

 

泳いでいるタチウオは見事だ。

背ビレは縦波のように揺らめていて、刀のように真っ直ぐだ。

 

 

「うぇ、なんですか、これ。」

 

グソクムシは白い甲殻を持っている。

そして、その複数の脚でチョコチョコ動いている

 

ここでは魚だけではなく、カニやエビも多く展示されているようだ。

 

「こっちはもっと大きいですよ…」

 

ダイオウグソクムシは手のひらよりずっと大きく、もはやあのダンゴムシの仲間とは思えない。

 

 

通路を進んでいけば、大水槽がまた目の前に広がった。

マグロやカツオといった銀色に輝く魚が縦横無尽に泳いでる。まるで海の中にいるようで、自然の雄大さを感じる。テレビ越しで見ただけだけれども、市場で売られているマグロより生き生きとしているけれども、忙しなさは感じた。

 

「ていうか、先輩たち置いてきちゃいましたね。」

 

「まあ、ここは通るだろ。」

 

先輩たちと合流して、外に出る。

ここでようやく半分といったところか。

 

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