やはり転生オリ主の青春ラブコメもまちがっている。(リメイク) 作:ヒラメもち
卒業式があって、その後プロムがある。
そのどちらもが俺たち生徒会と奉仕部が主体となって動いていた。多くの在校生を借り出した準備とは違い、プロムの後片付けは終わるまで学校に残っていた有志によって行われた。
したがって、あまり体力のない雪乃先輩や、うちのいろははこの1日を乗り切って、死んだ魚の目となった。明日は休日にも関わらず、大々的な企画をしたために各書類が溜まっている。だが、今日のところはみんなで休もうと意を決した。
そう、みんなでである。
「あぁぁぁ」
濁音にも聞こえるだろう、おっさんのような声を俺は発していた。いや、前世を考えると、この場にいる誰よりもおっさんになるのが早いだろうけれど。
流れ続ける汗とか疲労とともに、老化成分も流れでてほしいものだ。
「っべー! これマジ熱いわ!」
戸部先輩もサウナの中に入ってきたようだ。他にも、露天風呂に浸かっていたメンバーがぞろぞろと入ってくる。それはもう、サウナの中に知り合い以外入ってこれないような混み具合である。
「はちまーん、隣いい?」
「あぁ」
タオルで上半身を隠した美少年が俺の2つ隣に座りこんだ。
戸塚先輩を見て、八幡先輩はごくりと息を飲んだ。
「っつーか、サウナってなにすんの?」
静寂に耐えきれなかった戸部先輩が声を発した。
備えつきのテレビでニュース番組をやっているが、それは彼の暇つぶしにはならなかったらしく、サッカー部を中心に話しかけている戸塚先輩はこの熱気でむしろテンションアゲアゲだ。
「つーかさ、ヒキタニくん。雪ノ下さんと付き合ってんの?」
座ったまま後ろを振り返るように、こちらへ話しかけてきた。
厳密には、隣にいる先輩なのだが。
「八幡、それは誠か?」
俺たちの目の前の席にいるのは材木座先輩なので、会話に混ざることを余儀なくされる。非リア充仲間だったはずなのに、裏切られたような気分なのだろう。それでいて、親友としては祝福したいというジレンマ。
で、質問された八幡先輩はというと、顔を少し逸らす。
赤いのはサウナの暑さか、それとも。
「へぇー! そうなんすか、お兄さん!」
「お兄さん呼ぶなし。でもほんと今日は助かったありがとう」
小町さんと共に協力してくれた川崎大志君は雪乃先輩とも面識があるらしく、懐いている先輩の2人が付き合っていることを素直に祝福している。それに、八幡先輩は早口で照れを隠した。
「その、八幡、由比ヶ浜さんとは?」
「いろいろあったけど、なんとかなった。
続くだろ、たぶん」
彼女はほんと強い女の子だ。
たぶん八幡が見ていないところで涙を流して、それでも前を向いている。八幡先輩の表情を見た戸塚先輩は『そっか』と笑顔を零した。3人に近しい人ほど、その関係がどうなっていくかが気になるものだからだ。
「いいなぁ、ヒキタニくん。ほら、なんかアドバイスとかさ」
「んあー、そのまま前向きでいたらいいんじゃないか」
まだ海老名先輩のことを想い続けているらしい戸部先輩に、八幡先輩はそうアドバイスを返した。
「まじ!? おすみつきってやつ!?」
「まあ、結構いい線はいってるんじゃないか?」
葉山先輩のお墨付きまでもらえて、戸部先輩は歓喜の声をあげる。良くも悪くも海老名先輩にかっこいいところを見せようとしていて、最近戸部先輩はちゃんと気が使えるようになっている。それに、八幡先輩や葉山先輩よりも、その前向きさが引っ張っていってくれる男って感じがする。
「月村先輩は、たしかあの生徒会長の人でしたっけ?」
「ああ。いろはだな」
美少女で生徒会長っていう属性の女子と付き合っているということで、川崎大志君から尊敬の目を向けられた。そういや、君の想い人である小町さんって、中学では生徒会に所属していたんだったか。
小町さんもあざとかわいいところあるから、いろいろとアドバイスできると思う。今の君って結構弄ばれているし。
「よくあのめんどくさいのと付き合ってられるな」
「我もそう思う」
「めんどくさいの引っくるめて好きになったんで」
八幡先輩が言えたことではないだろう。雪乃先輩も結構素直ではないところが多いし、寂しがりやで甘えたがりであるし、それに雪乃先輩は……
「それに、ほんと優しいですよ。責任お化けだし」
「あいつ自身もかよ」
八幡先輩も責任お化けなところあるしな。
いろはに言われたんだろう。
「葉山くんは、ゆみこといい感じだよね?」
「まあな。あれからアプローチかけられてるよ」
葉山先輩に関しては好きな人がいるとは噂程度に聞いたことがあるが、ここ最近は三浦先輩のことを意識し始めている。元々好きだった人っていうのは、雪乃先輩ではないらしい。
雪乃ちゃんって名前呼びしていたくらいの、幼馴染とはいえ。
「先輩、いつ名前呼びするんですか?」
「それは、雪ノ下のやつだってだな」
まあ、先輩たちなりのペースでいいだろう。
いろは的には、結衣先輩を応援しているらしいし。
「まあ、来年度も奉仕部が続けられそうでよかったです」
部員としても、後輩としてもだ。
奉仕部に所属していないメンバーも大きく頷いた。
この繋がりは、奉仕部を中心にして集まったものだ。
テニスの特訓のため、サブカルチャーに生きる夢のため、姉を助けるため、いつメンの関係を守るため、そして一色いろはを助けるため、奉仕部にもたらされた依頼をこなしてきた。
「じゃあ、俺も奉仕部にはいるっす!」
「不純な動機のため認めない」
えー!と驚愕する川崎大志君だ。
こういうところが小町さん的には好みなのだろう。
「大丈夫。雪乃先輩が部長だから」
「なるほどっす!」
怨めしそうに見てくるが、先輩も大志君のことはそんなに嫌いじゃないだろうに。
「ほんと、みんな熱いね」
「あー、我も青春したーい!」
気づけば、リア充爆発しろって言われる側になるとはなぁ。
しみじみと熱気が漂う天井を見上げた。