やはり転生オリ主の青春ラブコメもまちがっている。(リメイク) 作:ヒラメもち
書いた時期的に次話から作風ががらっと変わると思います。
夏休みにおける生活リズムの崩れがようやく元通りになってきた頃にあるのが、体育祭だ。私立高校である総武高でも毎年開催される。運動が苦手な人や体力があまりない人、そしてボッチは好きになれない行事である。
総武高では 各クラスのメンバーが半分ずつ白組と赤組に分かれて競う。自由な校風によって、学年やクラスを横断的に競技に参加するのだ。
『さぁー、体育祭もいよいよ大詰め。ここまでは白組が優勢。我らが葉山隼人の活躍を大きな得点源に、試合を優位に進めてまいりました。ですがー、』『まだまだ勝負の行方は分からない!』
定番である競技な100m走や200m走は葉山先輩の圧勝だった。文武両道を掲げているとはいえ陸上部が強豪とはいえないため、運動量の多いサッカー部が主力メンバーとなっている。黄色い声援を投げかけられ、囲まれている彼は困惑気味である。
「ちっ」
そんな様子を見て悔し涙を流す男子、嫉妬に駆られる男子、状況に同情する男子、そして歯痒さを味わっている赤組女子がいる。
「なんなんですかあの女たち。体育祭だからって、調子に乗るな。勢い任せに抱きつくな。」
ここは葉山先輩たちがいる場所から離れた位置にある木陰だ。クラスメイトに付き添われて、休んでいるように見せかけておいて、策士は敵情視察を行っている。ちなみに草むらや木の裏に隠れるという選択は 古典的で重い女と思われるらしい。
「あーもう、なんで私赤組なんですかねー!」
『一色さんの出席番号が奇数だったから。』というマジレスは心に閉まっておき、別の返答を用意する。
「そこは、ほら。 葉山先輩なら赤白関係なくちゃんと見てくれるって。」
「そうですけどもー。それとこれとは別ですよー。」
「あそこでがっつくと、葉山先輩は嫌がりそうだけどな。」
「え、まじですか、それどこ情報ですか?」
「ちょ、近い近い。」
急に立ち上がって近づいてくるから心臓に悪い。
熱中症を心配して、様子を見に来てくれるという作戦はどうやら上手くいかなかったらしい。
「あの、一色さん、そろそろなんだけど、大丈夫?」
「はい、もうバッチリですよー!」
クラスメイトの藤沢さんが呼びにきてくれたようだ。友達がいないに等しい一色さんにも、それなりに話す者はいる。仮面とも呼べる笑顔を貼り付けて競技の集合場所へ向かっていった。
俺もそれなりに話す者たちのもとへ行こうとすれば、一色さんが小走りで戻ってくる。
「月村君、賭けは忘れないでくださいね。」
「あっ、はい」
計算された『後ろ手』のポーズにドキッとすれば、そんな返事しかできなかった。白組と赤組に分かれてしまったことに対して、気を紛らわせるための一色さんの提案が『賭け』だった。
負けたほうはなんでもいうことを聞くというもの。
俺も一色さんもそれなりには互いを分かっているので、せいぜいジュースかスイーツを奢る程度のものだろう。
だから、こんなにドキドキする必要はない。
「どこ行ってたんだ?」
白組の待機場所であるブルーシートに行けば、談笑する3人のうち1人が話しかけてきた。3人ともクラスメイトであって サッカー部に所属している。体育祭を自分で楽しむというより、観戦することを楽しんでいるようだ。
「ちょっと 日陰で休憩。」
「なるほど。今日暑いしな。」
「ところで次ってなんだ?」
「騎馬戦。」
正式名称、女子対抗千葉市民騎馬戦。
ルール的にはただの騎馬戦であるようだが、騎馬に乗る者が洋風の鎧を身に着けている。
「なあ、あれセイバーだよな?」
「運営、絶対FG〇好きだな。」
「……動きやすそうにしているみたいだけどな。」
始まって早々、赤組の優勢。
国際科2年の雪ノ下先輩が無双している。
「鮮やかすぎるだろ……」
「お、一色さんも鉢巻取られたな。」
「ああ。……なんでニヤニヤしてるんだ。」
「さあー?」
「次、俺たちの出番だし行くか。」
立ち上がった3人に俺も続く。
棒倒し。
騎馬戦よりは知名度が低い競技だろう。総勢30名によって1本の棒を倒すという簡単なものだが、攻めと受け守りをちゃんと配分することが求められる。策や司令塔、士気が重要となってくるのだ。
葉山先輩が大将に対して、向こうは男の娘の先輩。
士気については互いに申し分ない。戦力で言えば、サッカー部をはじめとする運動部が偶然にも多いこちらが有利だ。策も、連携を重視するという定石だ。
平塚先生の合図によって、選手も応援席も一斉に盛り上がる。特に放送席の女子の先輩が白熱している。
「我が人生に一片の悔いなし。むねんーーーっ!! くっ、右手が疼くッ!!」
赤組の作戦は、『ガンガンいこうぜ』に則って、自由自在に攻めと受けを行ってくるものだ。単騎突っ込んできた厨二病先輩によるオーバーリアクションに困惑し立ち止まり、白組の陣形は乱れる。
「行かせませんよ、先輩。」
「……どうしてわかった?」
「身近に策士がいますんで。とびっきりあざといのが。」
緑のジャージを着た先輩の行く手を阻む。
赤の鉢巻の上に白い包帯を被せて紛れこんできた。
「あと、サッカーにはMFっていう遊撃がいるんですよ。そして葉山先輩はFW。棒倒しは攻めと受けの2つに分けることはルールではない、ですよね。」
厨二病先輩に意識を集中させて、多角的に攻めていくという作戦だったのだろう。確かにDFの陣形は崩れているが、俺たちが補助的に守備に回ればいい。赤組の受けも、攻めに集中しているメンバーによって崩されようとしている。
「そうか。だが詰めが甘いぞ。」
「それはどういう……っ!」
広角的に受けに徹していた俺たちに対して、厨二病先輩を援護するような一点突破が襲う。
攻め方を急に変更することでまた陣形が乱された。
本当は裏を突く作戦をいくつも用意していたのかもしれない。
棒自体を守る人数は5人であって少なめだ。
攻めに集中していた葉山先輩たちが戻れるはずもなく、棒は倒れた。
「先輩、やりますね。」
「なあ、お前もしかして……」
「断じて違います、好きな女の子がいるので。 ていうか放送席のせいです。」
「……ああ、よくわかった。」
犯人はヒートアップしすぎて鼻血を出しておられる。
***
「だーかーらー、なんでもいいんですよ。女子がこんなチャンス言ってくれるの もうないかもしれませんよ。」
「いや、勝ったとはいえ、煮えきらない勝利だったというか……。」
あの棒倒しは赤組の反則負けだったらしい。
お互いに策を練りすぎた気がするし、体育祭の熱に感化されてしまっていたようだ。
久しぶりに俺は本気になっていたから、曖昧な決着に満足していない俺がいる。
ともかく、総得点的には白組の勝利となったのだ。
「はぁー、まぁ、それが月村君らしいんですけど。ていうか珍しく行事にやる気出してましたね。」
夕暮れの下の公園、綺麗な指が硬貨を入れていく。
そうして、俺に自動販売機に1つのボタンを押させてくれる。
「ふむふむ、それが好きなんですか……ってもしかして私のこと意識して買ったんですかちょっと揺れてますけどごめんなさい好きな人がいるので。」
その早口を聞きとることはできず、水分を口に含む。
聞き返しても誤魔化されるだろう。
「じゃあ、また来週……ってなんで飲んでいるのでしょうか。」
「このいろ〇すはとっても価値ありますよね。 ではではー!」
透明な果実水はいつもより甘酸っぱくて、お砂糖とスパイスを感じて、その甘さと刺激が心地よかった。