やはり転生オリ主の青春ラブコメもまちがっている。(リメイク)   作:ヒラメもち

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第2話 俺によって変わる物語

「入学してから半年間を振り返って」

『私はこの高校に来てよかったと思う。千葉県の中でも随一だと信じていたこともあって、高校受験はとても緊張した。無事合格したときの感動を私は忘れることはないだろう。

まず数学と物理の授業が、個人的にも教育的観念から見ても、実に面白いものだ。高校において理系科目の授業は学生の個人差が大きく出てしまう。毎回の課題による復習、これに尽きる。生徒の自主性を高めるとともに、習慣づけを可能としている。さらに教師は教え合いを推奨している。たしかに満足型学級ならではの手法であるが、この進学校なら効果的である。私もクラスの苦手な人に教えることがよくある。教えられる側のメリットはもちろん、教える側としても知識の定着を図ることができる。

さて、本題の青春については、謳歌していると言おう。そもそも青春とは虚像であり透明である。桃色にも灰色にも、何色にでも染まる。十人十色の青春があって、みんな違う色の青春を思い思いに過ごしているのだ。友達100人作れたイケメンもいれば、友達作りに失敗したボッチだっている。青春はまちがいつづけてもいい。なぜなら青春に定義などないのである。

結論を言おう。謳歌していると思うなら謳歌していることになる。成功したかどうかより、『わが生涯に一片の悔いなし』って言える青春こそが理想である。

 

※各行事ごともなんだかんだあったが、無事に終わって一安心している。』

 

 

放課後、国語教師の平塚先生に職員室に呼ばれてしまった。気温が少しずつ下がってきているので暖房の効いた部屋は快適である。ここで仕事をずっとしていたら頭がボーッとするぐらいである。

 

さて、あまり先生に叱られるということは好きではない。自分は世渡り上手と自負しているほど宿題は必ず提出する。期限ギリギリになることが多いが。提出したレポートになにか問題があったのだろうか。たしかに深夜アニメ視聴後のテンションで書いたものだ。誤字脱字があっても、おかしくはない。

 

びっしりと書かれた1枚のA4プリントを読み直して平塚先生のほうを向く。ここは後手に回ることにしようと考えたのである。

 

「なにか、問題でも?」

 

先生は額に手を当てて深々とため息をついた。

「月村、私が授業で出した課題は何だったかな?」

 

「『高校入学してから今までを振り返って』ですね。」

 

高校1年生2学期中盤、それは中だるみの時期の1つとされる。高校生活に慣れていくと、緊張感がなくなる。そして、なんとかなるさ!ってなる。初心忘るべからず。この課題はそれを目的としているのだろう。さすが俺の尊敬する教師の1人である。

 

 

「そうだな。前半部分は『理科教育』、後半部分は『青春』。なぜ論じているんだ?君は大学生なのか?それとも世紀末覇者か?」

 

まさか的確に当てられるとは思わなかった。おそらくそう文章が見えてしまったからで、喩えに使っているだけだろう。確かに一般的な高1が書くようなものではなかったか。

 

よし、ここははぐらかそう。

 

「先生も、北○の拳見るんですね。」

 

「まあな。だが話を逸らすな。」

 

「あ、はい。」

 

失敗しちゃったぜ。

 

 

「普通こういうときは普段の生活を省みるものだろう。例えば、行事や友達付き合いだ。」

 

自主性を重んじる学校ならではの特別活動ばかりで、学生らしさのある催しは楽しいものだった。文化祭については実行委員会と軽食喫茶のことを書けばいいし、体育祭もまだ記憶に新しい。そして、友達付き合いじゃなくてクラスメイト付き合いなら書けるな。

 

ここまでで文章の大まかな構成が決まった。

 

「すみませんでした。書き直します。」

 

「お前もそれを言うか…」

 

素直に頭を下げて挽回のチャンスを求めたが、平塚先生には呆れられた。常套手段は悪手だっただろうか。例えば、以前にこういうやりとりがあったとか。ここは国語の授業に関しても褒めて話題転換してみるか と思案する俺に対して先生は口を開く。

 

「私はな、怒っているわけではないんだ。」

 

たしかに表情を見ても怒ってはいないことがわかる。

ちなみにタバコ吸い始めたことで尊敬の気持ちは少し薄れた。ストレスが溜まる職業でもあることを考慮したとしても、校内で吸うのは問題とならないのだろうか。

 

先生は真面目な顔でこちらを見てきた。

 

「君は部活をやっていないな?」

 

「芸術もスポーツも苦手でして。今はサッカー部の雑用係みたいなものです。」

 

音楽も美術も家庭科も体育も苦手な俺はどの部活を選べるだろうか。理系の部活も見て回ったが、いい雰囲気づくりができている場所はなかった。

 

そして選択肢の1つであるボランティアの部活も見つけることはできなかった。

 

 

「友達はいるか?」

 

「いないです。」

 

その質問には平然と答えた。ふと過去の高校生活のことが思い出されたのである。俺が理系の部活動に入らなかったのは過去と向き合うことを恐れていたからなのだろう。あの3年間を思い出して、前世を感じて苦しんでしまうかもしれない。

 

「……彼女とかはいるのか?」

 

「生まれてからゼロです。」

 

遠慮がちに聞いてきた質問に対して、安心させるがごとく答える。これは平塚先生が未婚であって、心の底から結婚を求めていることが関わってくる。俺たち高校生が青春ラブコメをしていることをどこか遠い目で見ている。

 

―――俺の青春ラブコメはいつになったら始まるんだろう

 

 

先生は何か思案を始めて、顔を上げる。

 

「とりあえず作文は書き直せ。」

 

「はい、わかりました。」

 

帰宅後の課題が増えてしまったが大した痛手ではない。

 

文化祭楽しかったです(キャピ) って書けば、赦してもらえるだろう。深夜テンションとアニメ視聴後に書いたことが原因だったのである。そして、このまま挨拶して帰ろうかなと思った矢先に 呼び止められた。

 

「本当に君は似ているな。比企谷、いや由比ヶ浜だろうかか。」

 

由比ヶ浜さんっていう人の名前は軽く聞いたことがある。確か、美少女で男子から人気があったはずだ。

 

 

「ともかく、君にはある部活に所属してもらう。」

 

平塚先生が顧問をしている部活ということだろうか。平塚先生はタバコを灰皿に押しつけ、パソコンをログオフする。詳しく聞こうと口を開く前に席を立って背を向けた。

 

背中で語る系の教師で ついていくしかなかった。

 

向かっていった先は特別棟。放課後であるため、楽器演奏の音や歌が響いている。

 

「あの、校舎の中ってことは、音楽か美術で?」

 

どちらも未経験の上に、小学生レベルあるかどうか不安なところである。人数と許可さえあれば部活が作れるこの学校ではバンドや軽音が多い。せめて遊戯部がいいんだけどな。

 

どこかへ連行される途中 おそるおそる聞いてみた。

 

 

「着いてから詳しい説明をしよう。……着いたぞ。」

 

立ち止まった先は1つの普通教室。

 

今の俺からすれば、

―――何の変哲もない場所だった。

 

 

先生は、ドアをノックする。

 

「どうぞ。」

 

男子の低い声が聞こえて、平塚先生は先に中へ入っていく。

 

男子1人と女子2人が暗い表情を浮かべていた。

1つの長机の長い辺で、男子と女子たちには距離があった。

 

「お前は……」

 

先輩と雪ノ下先輩はそれなりに知っているけれども、もう1人の女子は知らない。。

 

 

「新入部員を連れてきたんだが……なにかあったのかね?」

 

誰も答えないという沈黙が続き、ようやく、どこか猫背の男子が口を開く。

 

「……いや、何もありませんよ。」

 

「そうか。改めてきたほうがいいかな。」

 

先生は苦笑した。

それは誰にでも嘘だとわかる。

 

2年生は最近修学旅行に行っていたし そこで何かトラブルがあったのだろうか。

 

「それでも、構わないですけど。」

 

続けて低い声で先輩が言う。

その言葉からはすぐに解決するような問題ではないことがわかった。

 

事情も知らなければ、彼らの事をよく知らない、そんな俺がこの暗い雰囲気を少しでも緩和する方法は話題転換だ。

 

 

「はじめまして。1年の月村伊月と申します。どこかの部活に入部を希望したいと相談しまして、平塚先生に連れてこられました。できればどのような部か教えてくれませんか?」

 

雪ノ下先輩がようやく口を開く。

 

「……そうね、ではゲームをしましょう。ここが何部か当てるゲーム。さて、ここは何部でしょう?」

 

思わず首を傾げた。

一体なにがはじまるんです?と脳内でダンディな男が言うほど、出鼻を挫かれてしまった。加えて、先輩が目を見開いていることが目に入った。

 

 

 

周囲を見渡して情報を集める。冷めてしまった紅茶、読んでいた本、1つしかない長机、そしてここは屋内なのだ。

 

「文芸部、でしょうか?」

 

「はずれ。」

 

フッと笑みを零して雪ノ下先輩は不正解を言い渡す。

 

 

手作りであろうお菓子の包みから独特な甘い臭いがする。クッキーが出していい香りではない。焦げてしまったようで色は黒い。

 

「調理部、いや化学部でしょうか。」

 

「し、失礼だし!」

 

茶髪の女子に怒られてしまった。

しかしどこか顔は明るくて、ツッコミ属性持ちなのだろう。

 

 

「奉仕部だ。困っているやつに救いの手を差し伸べる。それがこの部の活動だ。」

 

先輩がそっぽ向きながら口を開けば、気まずさは少しだけ穏やかになっていた。

 

 

 

平塚先生も笑みを零す。

彼らの場所に俺が介入することで どういう風に物語が変わっていくのか楽しみにしているとでも言わんばかりだった。ここがどの物語の世界か分からないし、もしかしたら単なる平行世界かもしれない。バイオハザードが起きて、奉仕部ぐらし!なんてさせないでくれよ。異世界転移もしたくない。まあ、それらはもちろん転生経験のある俺の妄想に過ぎない。

 

 

そうそう、先生の出した『依頼』は

「高校生の悩みを聞かせろ。そして高校生らしく悩ませろ。」

 

 

先輩も、俺の『違和感』が何かを考えていた。

 

 

 

 

 

 






雪ノ下雪乃
2年の国際教養科で、この奉仕部の部長。黒髪ロングで、美人。大和撫子のような落ち着きを持っているが、毒舌であって標的は比企谷先輩である。さぞ優秀なキャリアウーマンとなることだろう。

由比ヶ浜結衣
2年の普通科で、ムードメーカー。もはやピンクにも見える茶髪。見た目は都会のJKだが、気が利く。さぞ優秀な奥さんとなることだろう、料理以外。 

比企谷八幡
2年の普通科で、この部唯一の男子部員だった。寝癖がひどい黒髪で、目や性格は腐っている。鋭い観察眼を持っていて頭の回転も速い。さぞ優秀な社畜となることだろう。

そして俺こと、月村伊月。
1年の普通科で新入部員。校則を守るがごとく短めの黒髪で、どこか大人びた雰囲気をたまに出してしまう。ちなみに教師を目指して頑張ってます。


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