地獄からの観戦者   作:hina

16 / 55
この話で終わらせる予定だったのですが、長くなりすぎたので分割します。

残りわずかですが、楽しんで頂けると幸いです。



フリーザ編-Ep.16

■Side:バーダック

 

 

 星が縮み、砕けた大地から溶岩が吹き出す。

 空は星の異状を訴えるがごとく、いくつもの雷鳴を轟かせる。

 そんな死の星と化したナメック星で2人の男が、星の消滅など関係ないとばかりに縦横無尽に飛び回り、いくつもの轟音と衝撃を撒き散らしながら戦っている。

 

 そんなバカ2人が動きを止め向かい合う。

 

 

『あと2分もすれば、死ぬかもしれない……、貴様も哀れなやつよ』

 

 

 ニヤリとムカつく笑みを浮かべるフリーザ。

 その表情は自分が負ける等とは、微塵も考えてねぇ様だった。

 しかし、その表情は呆気なく崩れ去ることになる……。この男によって。

 

 

『哀れなのは貴様の方だ……。

 猿野郎と忌み嫌っていたサイヤ人に、やっつけられてしまうんだからな……』

 

 

 勝者の笑みを浮かべるフリーザに、不敵の笑みで応えるカカロット。

 こちらの方も自身が負けるとは、塵も考えてねぇ様だ。

 

 だが、カカロットの言葉は、宇宙の帝王であるフリーザのプライドを大きく傷つけたみてぇだ……。

 野郎の顔が怒りによって一瞬歪むが、直ぐに元のムカつく笑みを浮かべる。

 

 

『ふん!どんなに強がりを言ったところで、この星が爆発するのを眺められるのは……、このオレだぁーーーーー!!!!!』

 

 

 叫びと共に飛びたしたフリーザの右拳がカカロットに繰り出されるが、それを同じく右の拳で迎え撃つカカロット。

 2人の拳がぶつかった瞬間、ナメック星にまたしても轟音と衝撃が走る。

 衝撃によって、2人の身体が一瞬大きく仰け反るがほぼ同じタイミングで持ち直し、両手で組みあう。

 

 組み合った両者は力比べだとばかりに、押し合う。

 2人の力の圧力で両者が立っている、ナメック星の大地が大きく陥没する。

 ほぼ互角の押し合いをしていた2人だったが、とっさにフリーザが組み合っていた片手を外し、カカロットの顎にアッパーを叩き込む。

 

 アッパーにより背後から地面に倒れ込んだカカロットに、フリーザの追撃が迫る。

 しかし、そのフリーザの顔面に倒れた状態からパンチを叩き込むカカロット。

 一瞬身体が仰け反ったフリーザだったが、瞬時に体勢を整え、倒れたカカロットの右足を掴む。

 

 

『はぁあああーーーーっ!!!』

 

 

 叫びと共に掴んだ右足を持ち上げると、そのままカカロットの身体ごと地面に叩きつけるフリーザ。

 しかも、1度だけでは無く何度も叩きつける。

 その度に大地にヒビが入り、その威力を物語る。

 

 

『この星が爆発するまで、まだ少し間がある……!!

 もう少しこのオレを楽しませろ……!!!』

 

 

 そして、近くの巨大な岩石に向かってカカロットを投げ飛ばす。

 投げ飛ばされたカカロットは、そのまま巨大な岩石に叩きつけられる。

 そして、岩石の方はその威力に耐えられず、轟音を上げながら崩れ落ちる。

 

 だが、フリーザの攻撃はまだ止まらない。

 カカロットを投げ捨てた岩石に瞬時に近づくと、崩れ落ちた岩石の中から飛び出ているカカロットの腕を掴むと、上空へ投げ飛ばす。

 抵抗する事なく上空へ投げ飛ばされたカカロットの更に上空へ瞬時に移動したフリーザは、強烈な蹴りを繰り出し再びカカロットを地面に叩きつける。

 

 背後から轟音と共に地面に激突したカカロットに、駄目押しの追撃を繰り出すべく飛び出すフリーザ。

 移動速度を乗せた強力な膝蹴りがカカロットのボディに炸裂しようたした瞬間、カカロットの両手がフリーザの膝蹴り受け止める。

 

 

『くっ……、ぐぅ……!!!』

 

 

 何とか力ずくで両手をこじ開け様としたフリーザだったが、カカロットの両手はビクともしない。

 これでは埒が明かないと思ったのか、フリーザは瞬時に後方へ跳ぶ。

 

 フリーザが後方に跳んですぐ、カカロットも起き上がる。

 その身体は散々フリーザの猛攻を受けたにも関わらず、ほとんど大きなダメージを受けていない様だった。

 野郎なんてタフさだ……。

 

 そんなカカロットの様子に、当然フリーザの野郎も気付いているのだろう。

 散々攻撃を繰り出していたにも関わらず、その瞳には一切の油断がなく鋭い視線をカカロットに向けてやがる。

 

 再び静かに睨み合う両者……。

 

 しかし、そんな2人の周りは、静寂とはいかなかった。

 順調に爆発までの時間が経過しているのか、空には雷鳴が鳴り響き、海は荒れ、大地はどんどんひび割れ崩れ落ちる。

 2人が立っている大地にも、ちらほら溶岩が吹き出てやがる……。

 

 

『オメェと決着が着けられて、嬉しいぞ……。

 この勝負、オレが必ず勝つ!!!』

『小癪な……』

 

 

 周りの事など気にせず静かに睨み合っていた両者だったが、カカロットの言葉がその静寂を破る。

 カカロットの言葉を聞いたフリーザは、不敵な笑みを浮かべ応える。

 

 次の瞬間、2人の姿が消える。

 超高速の打撃戦へ突入したのだ。

 そのあまりのスピードに、このオレでも見えない事がありやがる……。

 

 両者はナメック星の空を縦横無尽に飛び回り、いくつもの轟音と衝撃を撒き散らす。

 

 

「はえぇ……」

「ああ……、これじゃぁ、どちらが優勢か分からねぇな……」

 

 

 他の連中も2人の凄まじいスピードに、驚きを隠せねぇ様だ。

 そんな時、フリーザの拳がカカロットの顔面を捉える。

 フリーザの拳をモロに受けたカカロットは、猛スピードで海に向かって落ちていく。

 

 それを見たフリーザは、空中から地面に降り立つと両手を掲げる。

 

 

『はぁああああ!!!!』

 

 

 掛け声と共に、フリーザの頭上に巨大なエネルギーの塊が現れる。

 その大きさは直径50mを余裕で超える巨大なものだった。

 そして次の瞬間、両手を海に沈んだカカロット目掛け勢いよく振り下ろす。

 

 振り下ろされた腕と共に、巨大なエネルギーの塊が海の中にいるカカロットに向かって真っ直ぐ落ちていく。

 

 

「おいおい、あんなん喰らったらタダじゃすまねぇぞ……!!!」

「それどころか、爆発したらナメック星が今度こそ吹っ飛ぶぞ……!!!」

 

 

 放たれた巨大なエネルギーの塊にナッパやラディッツが驚愕の声を上げる。

 だが、順調に海に沈んでいたエネルギーの塊が途中で止まる。

 まるで、何かに止められている様に。

 

 オレ達が何事だ?と思考した瞬間、その答えは水晶に映し出された。

 

 

『ぎっ……、ぐっ……』

 

 

 海底で巨大なエネルギーの塊を両手で受け止めているカカロットの姿が映し出されたのだ。

 だが、いかに超サイヤ人といえどもあの規模のエネルギーの塊を受け止めるのは容易じゃ無いのか、苦悶の声が上がっている。

 

 

「カカロット!!!」

 

 

 オレの耳にギネの心配そうな叫びが聞こえる。

 

 

『だりゃぁあ!!!!!』

 

 

 ギネの声が聞こえた……なんてこたぁねぇんだろうが、ギネの声に応える様にカカロットは巨大なエネルギーの塊を殴り飛ばす。

 殴り飛ばされたエネルギーの塊は空に向かって飛んでいく。

 

 

『はあっ……、はあっ……』

 

 

 巨大なエネルギーの塊を殴り飛ばしたカカロットは、ゆっくりと空中に浮かび上がる。

 流石に今の攻防は体力を消耗したのか、息が荒くなってやがる……。

 だが、ヤツの戦意はかけらも衰えちゃいねぇ……。

 

 両の目から覗く、その鋭い瞳が何よりもそいつを物語ってやがる。

 しかし、今の攻撃……、確かにカカロットにダメージを与えたが、ダメージを受けたのはカカロットだけじゃねぇ……。

 今の攻撃で仕留められなかった事で、精神的にフリーザにもダメージがあったみてぇだな。

 

 野郎の方が攻撃してやがったのに、ツラに一切の余裕がねぇ……。

 こいつは、まだまだ勝負は分からねぇな……。

 

 

 バーダックの予想した通り、確かにフリーザにとっては今の攻撃で仕留められなかったのは、精神的ダメージがあった。

 しかし、そんなダメージを宇宙の帝王のプライドで覆い隠したフリーザは、苦々しい表情を引っ込め不敵な笑みを浮かべる。

 

 

『ふっふっふ……、流石超サイヤ人だな……。

 いいだろう……、ハッキリと教えてやる……。

 生き残るのはこのオレだという事を……』

 

 

 次の瞬間、フリーザは即座に右掌を悟空に向け気合い砲で悟空を吹っ飛ばす。

 吹っ飛ばされた悟空は、瞬時に体勢を整えフリーザに向かって突撃する。

 そんな悟空に、フリーザの方からも飛び出す。

 

 激突した2人はまたしても、空中で凄まじい近接戦闘を開始する。

 手数はほぼ互角、両者凄まじスピードで繰り出される拳と蹴り。

 埒が明かないと感じたフリーザは、またしても悟空を気合い砲で吹っ飛ばす。

 

 しかし、瞬時に体勢を整えた悟空もお返しとばかり、気合い砲を放ち逆にフリーザを吹っ飛ばす。

 吹っ飛ばしたフリーザに追撃をかけようと、舞空術で追いかける悟空。

 だが、悟空が追撃を仕掛けるよりも早くフリーザは空中で体勢を整え、悟空を睨みつける。

 

 

『ふん!このオレが猿などに負けるはずがない!!

 たかが……、サイヤ人の猿などになぁ……!!!!』

 

 

 怒りの叫びを上げると同時に、フリーザの全身から凄まじい気が放出される。

 そして、凄まじい気を纏いながら悟空に向かって猛スピードで突撃する。

 2人の距離がほぼゼロになった瞬間、ナメック星の空にまたしても大きな衝撃と轟音が響き渡る。

 

 そして、またしても超高速の近接戦闘に入った2人は、今や住人がいなくなったナメック星の居住地を破壊しながら戦闘を続ける。

 先程まではほぼ互角の手数の攻防だったが、現在は若干フリーザが押している様だ。

 

 

『どうだ!!下等生物のサイヤ人なんぞに、オレは負けんぞぉ!!!!

 たかが、サイヤ人なんぞにぃーーー!!!!』

 

 

 叫びと共に、気分が高まったのかフリーザの攻撃に大振りが目立つ様になる。

 だが、今目の前にいる相手は、そんな大雑把な攻撃で倒せる程、安い相手ではない。

 フリーザが繰り出した大振りの蹴りを受け止め、締め上げる悟空。

 

 

『ぐあっ!!!』

 

 

 フリーザが一瞬苦痛の声を上げるが、瞬時に怒りの表情を浮かべ、掴まれた足とは逆の足で悟空に蹴りを叩き込む。

 蹴りによって体勢の崩れた悟空は、締め上げていたフリーザの足を解放してしまう。

 その瞬間、自由になったフリーザは体勢の崩れた悟空の真上に瞬時に移動し、全体重をのせた蹴りを悟空の身体に叩き込む。

 

 しかも、そのまま足で悟空の身体を押さえつけながら、地面に向かって猛スピードで落下していく。

 あと数瞬で地面と激突する瞬間に、悟空はフリーザの押さえつけから逃げ出す。

 そして、地上に降り立った2人はそのまま殴り合いに突入する。

 

 またしても、互角の攻防を繰り広げる2人だったが、フリーザの右ストレートを躱した悟空がカウンターでフリーザを吹っ飛ばす。

 だが、瞬時に体勢を整えたフリーザが再度突撃して拳を繰り出そうとするが、またしても悟空はそれを躱し今度は蹴りによるカウンターでフリーザを吹っ飛ばす。

 吹っ飛ばされたフリーザは、ナメック星人の家に突っ込み家を崩壊させる。

 

 背を向けたまま直ぐに起き上がったフリーザは、怒りの表情を浮かべ振り向く。

 

 

『猿がぁーーーーー!!!!』

 

 

 怒りの咆哮を上げた瞬間、瞬時に悟空の目の前に移動したフリーザは意表をついて尻尾で攻撃するが、悟空はそれをギリギリで回避する。

 そして、フリーザの背後をとった悟空は、フリーザの背後から強烈な拳による一撃を叩き込む。

 その威力にフリーザの口から、空気とツバが一気に吐き出されれる。

 

 だが、なんとか堪えたフリーザは体勢を整え、悟空のボディに強烈なパンチを叩き込む。

 そして、パンチによって身体が前屈みになった悟空の真上に瞬時に移動すると、強烈な蹴りを叩き着込む。

 フリーザの蹴りをモロに受けた悟空は、そのまま地面に激突する。

 

 しかも、星の崩壊によって地面が脆くなっているのか、悟空が激突した衝撃で崩壊した地面から溶岩が勢いよく吹き出す。

 

 崩れ落ちた地面から勢いよく現れた悟空は、猛スピードでフリーザに向けて突撃する。

 それを見たフリーザの表情が苦々しそうに歪む。

 

 

『くっ……くそぉ!!!サイヤ人ごときに何時迄も手間取っていられるかぁ!!!!』

 

 

 すると更に気を放出したフリーザは、突撃してくる悟空に自らも飛び出し殴り飛ばす。

 そして、体勢が崩れた悟空の背後からパンチと蹴りを重ねて繰り出し、トドメとばかり頭上からナックルハンマーで、またしても悟空を地面に叩きつける。

 

 

『はっはっは……!!!どうだ……、猿野郎!!!!』

 

 

 倒れ伏した悟空を見て、腕を組み愉快そうに声を上げるフリーザ。

 だが、そんなフリーザの笑い声も直ぐに止まることになる……。

 

 

『これだけか……?』

『なにっ……!?』

 

 

 倒れ伏していた悟空が声を発しながら、何事もなかったかの様に起き上がる。

 そして、悟空の発した言葉に苛立ちの表情を浮かべるフリーザ。

 

 

『これだけか……?と聞いているんだ……!!』

 

 

 そんなフリーザに、冷めた視線を向け再度問いかける悟空。

 そんな悟空の態度がフリーザの怒りに更に油を注ぐ。

 

 

『なっ……生意気なぁーーーっ!!!』

 

 

 怒りと共に気を爆発させたフリーザは、猛スピードで悟空に迫り右拳を叩き込もうとする。

 しかし、それを最小限の動きで躱した悟空の強烈なパンチがフリーザのボディに突き刺さる。

 その威力が凄まじかったのか、フリーザの顔が苦痛で歪み血を吐き出しながら地面に崩れ落ちる。

 

 信じられないと言った表情で、フリーザが悟空を仰ぎ見る。

 そんなフリーザを冷めた目で見下ろす悟空。

 

 何とか起き上がったフリーザは、再び悟空に向け拳や蹴りによる攻撃を繰り出すが、フリーザの攻撃は1発も悟空に掠りもしなかった。

 そのうち焦ったフリーザの攻撃が大振りになり、繰り出した蹴りを跳んで回避した悟空は、近場の岸壁に着地すると勢いよくフリーザに飛び蹴りを放つ。

 猛スピードで迫る悟空の蹴りを何とか躱したフリーザだったが、悟空はフリーザが躱した瞬間肉体をコントロールし空中で静止させ、躱された足とは逆の足でフリーザの横っ面に強力な蹴りを叩き込む。

 

 その凄まじい蹴りに吹っ飛ばされたフリーザは、地面を擦りながら倒れ臥す。

 

 

『くっ……』

 

 

 倒れたフリーザが自分を蹴飛ばした悟空に視線を送ると、先程までの場所に悟空はいなかった。

 それどころか、フリーザが気付かぬうちに、いつの間にか倒れ伏したフリーザの横に悟空は立っていた。

 それに気付いたフリーザは、急いで起き上がろうと両手に力を入れ上半身を起こす。

 

 その瞬間、フリーザの首に悟空のラリアットが叩き込まれる。

 またしても地面に倒れ伏したフリーザに、悟空の追撃の蹴りが炸裂する。

 悟空の蹴りで吹っ飛んだフリーザに瞬時に追いついた悟空は、空中で更にフリーザに強烈なパンチを叩き込んだ。

 

 続けざまに強力な攻撃を受けたフリーザは、為す術もなく近場の岩石にその身を激突させる。

 その衝撃で崩れた岩石がフリーザの上に降り注ぎ、その姿を覆い隠してしまう。

 

 その様子を静かに見つめている悟空。

 

 それから数秒後、フリーザが壊した岩石の山がグラグラと音をたて崩壊を起こす。

 そこから、肩を上下に揺らし息の荒いフリーザが姿を現した。

 その様子から、一連の悟空の攻撃が確実にフリーザにダメージを与えているのが理解できる。

 

 姿を現したフリーザは悟空を一瞥すると、悟空と距離を開ける様に後ろに跳ぶ。

 しかし、フリーザが着地した際、背中にトンと小さな衝撃が走る。

 フリーザが背後を見ると、そこには距離をとったはずの孫悟空の姿があった。

 

 驚愕の表情を浮かべたフリーザだったが、またしても悟空から距離を取ろうと飛び上がる。

 今度は先ほどよりも早く、更に遠くへ。

 だが、フリーザがどんなに悟空から距離を離れようとしても、フリーザが着地したその場に必ず孫悟空の姿が付いて回った。

 

 それに苛立ちを覚えたフリーザは、距離をとるのをやめ悟空に向かって飛び出す。

 フリーザから繰り出される無数の拳と蹴りを、悟空は最小限の動きだけで躱してみせる。

 どれほど拳を振るっても当たる気配が無い事に、ついにフリーザの表情に冷や汗が浮かび上がる。

 

 そんなフリーザに鋭い視線を向ける悟空。

 次の瞬間、悟空の強烈なパンチがまたしてもフリーザのボディに突き刺さる。

 先ほど同様、フリーザの顔が苦痛で歪み血を吐き出す。

 

 更に畳み掛ける様に、今度は悟空の無数の拳と蹴りがフリーザに繰り出される。

 だが悟空と違いフリーザは、避けることも受けることも出来ずそれらをほぼ全部まともに喰らってしまう。

 痛みで顔を歪めるフリーザの頭上に現れた悟空は、ナックルハンマーでフリーザを地上へ叩き落とす。

 

 地上へ落下したフリーザは、轟音と衝撃、そして凄まじい量の砂埃を上げ地面に激突する。

 だが、直ぐに立ち上がったフリーザは、地面に降り立った悟空から距離をとる様に離れる。

 

 

『はあっ……、はあっ……』

 

 

 悟空からある程度距離をとったフリーザは、荒い呼吸を上げながら悟空を睨みつける。

 しかし、その表情には僅かばかり先程までには見えなかった感情が、込められている様な気がした。

 

 

『くそぉ……』

 

 

 その感情を認めたく無いのか、フリーザの口から悪態が溢れる。

 だが、それ以上にフリーザの心を締める感情があった。

 

 

『ぐぅ……、この10倍……、いや100倍にして返してやる!!』

 

 

 それは、屈辱だった……。

 宇宙の帝王であるフリーザにとって、ここまで自分に屈辱を与えた存在はいなかった。

 いや、そういう存在は、存在自体フリーザが許さなかった。

 

 しかし、今自分の目の前に、その許されざる存在がいる。

 そんな事、フリーザのプライドが許せるはずなかった。

 

 そんなフリーザを構えをとったまま、静かに見つめる悟空……。

 まるで、何かを見極める様に……。

 その瞳はフリーザの心に宿る屈辱や、フリーザ自身が目を逸らした感情さえ見透かしている様だった……。

 

 しばらく、無言で向かい合っていた2人。

 だが、唐突にその時間は終わりを迎える事になる……。

 

 

『やめだ……』

 

 

 構えを解きながら、言葉を発したのは悟空だった。

 その言葉と行動に驚愕の表情を浮かべるフリーザ。

 

 

『なっ、なんだとっ!!や……やめだ……とは、どういうことだっ…………!!!』

「なっ……、嘘だろう……!?」

「何で……、もうあと少しでフリーザをぶっ殺せるのに……!!!」

 

 

 だが、それは地獄のサイヤ人達も同じだった。

 あと少しで自分達から全てを奪ったフリーザを倒せるというのに、それをしないと言っているのだ。

 彼等はフリーザを討ち亡ぼす瞬間が見たくて、今までこの戦いを見守ってきたのだ。

 

 そんな彼等が驚愕の反応を見せるのは、仕方のない事だろう……。

 

 動揺するフリーザや地獄のサイヤ人達の事など気にするそぶりも見せず、冷静に言葉を重ねる悟空。

 

 

『貴様は100%のパワーを使った反動でピークを過ぎ、気がどんどん減っている……。

 これ以上戦っても無駄だとオレは思い始めた……』

 

 

 そんな悟空を驚愕の感情を隠しきれない、唖然とした表情で見つめるフリーザ。

 

 

『もう、オレの気は済んだ……。

 貴様のプライドは既にズタズタだ……。

 この世で誰も超えるはずのない自分を、超える者が現れてしまったのだからな……。』

 

 

 今まで冷静に言葉を発していた悟空が、ここで一旦言葉を切る。

 そして、その表情に不敵の笑みが浮かぶ。

 

 

『しかもそいつは……、ふん……たかがサイヤ人だった……』

 

 

 その瞬間、唖然とした表情を浮かべていたフリーザが顔を顰め身体を震わせる。

 そんなフリーザを視界に収めても尚言葉を続ける悟空。

 

 

『今の怯え始めた貴様を倒しても意味はない……。

 ショックを受けたまま生き続けるがいい、ひっそりとな……。

 オレは地球へ帰る。今からならギリギリ間に合いそうだ……』

『…………な……な……』

 

 

 悟空のあまりの物言いに、怒りや屈辱等で頭に血が上って上手く言葉を発する事が出来ないフリーザ。

 そんなフリーザの事等気にするそぶりも見せず、超サイヤ人を解除し言葉を続ける悟空。

 

 

『フリーザ……、二度と悪さすんじゃねぇぞ……。

 おめえのツラはもう見たくねぇ……』

 

 

 その言葉を最後に、悟空はフリーザに背を向け舞空術で空へ飛び立つ。

 

 

 

「あぁっ!!カカロットのヤツ本当に飛んで行っちまいやがった……」

「せっかくフリーザをあそこまで追い詰めたってのに、何考えてやがんだ……!!!」

「甘いのだ!!カカロットのヤツは!!!」

 

 

 水晶が映し出したカカロットの背に向かって、地獄のサイヤ人達は怒りや落胆の気持ちを吐き出す。

 正直オレもこいつ等と気持ち的には似た様なもんだった……。

 だが、こいつ等は肝心なことを忘れてやがる……。

 

 オレはそいつが、無性に腹が立って仕方なかった……。

 

 

「ごちゃごちゃ、うるせえぞ!!てめえ等!!!」

 

 

 オレは無意識に怒声を上げていた……。

 しかし、今のこいつ等がこんな言葉で止まるはずがなかった……。

 

 

「バーダックは何とも思わないのかい……!?もう少しで、あのフリーザを倒せたんだよ!!!」

「そうだぜ!!オレ達サイヤ人の悲願があと少しで叶ったんだぜ!!!」

 

 

 オレに言葉を返したのは怒りを浮かべたセリパとパンブーキンだったが、他のヤツ等も似た様な表情でオレに視線を向ける。

 例外なのはギネくらいなもんか……。

 

 ちっ……、どいつもこいつも、しょうがねぇ……。

 オレはそのザマに吐き気がした……。

 そして、こいつらに思い出させてやる事にした……。

 

 あいつが齎した勝利によって……、こいつ等が目をそらしている現実を……。

 

 

「確かに……、オレもお前達と気持ち的には似た様なもんだ……。

 カカロットの野郎が下したこの決断も、正直あめぇと思ってる……」

 

 

 オレを睨みつける同胞達に、オレは静かに自分の正直な意見を語り出す。

 その言葉を聞いたヤツ等は、若干安堵した様な表情を浮かべる。

 

 だが、オレの話はまだ終わっちゃいねぇ……。

 大事なのは、こっからだ……。

 

 その気持ちに呼応する様にオレの目に力が籠る……。

 オレの雰囲気が変わったことを感じたのか、周りの奴らの顔色が変わる……。

 

 

「だがな……、勘違いすんじゃねぇ……。

 この戦いに勝ったのは……、オレ達じゃねぇ……」

 

 

 そう……、同じサイヤ人であるあいつがフリーザに勝ったから、こいつ等は勘違いした……。

 まるで……、自分達までもがあのフリーザに勝利した様に……。

 

 だが、違ぇだろ……、そうじゃねぇだろ……。

 思い出せ……。

 オレ達は…………。

 

 …………オレ達は、あの憎っくきクソ野郎に敗北して、星ごと滅ぼされちまったってことを…………。

 

 

「フリーザに勝ったのはカカロットだ!!!」

 

 

 オレは自分の中に溜まった怒りを吐き出す様に、大声で周りのヤツ等に現実を突きつけた。

 大声を上げたことで、幾分か落ち着きを取り戻したオレは、静かに言葉を続ける。

 

 

「戦いに身を置くオレ達にとって勝者は絶対だ……。

 その勝者であるあいつが決めたのなら、そいつが全てだ!!!

 フリーザに負けたオレ達に、あいつを責める権利なんてハナからねぇんだよ……」

 

 

 オレの言葉を聴き終えたあいつ等は、まるで夢から覚めた様にその表情を苦々しいモノへと変える。

 

 こいつ等だって本当は分かってんだ……。

 カカロットが勝ったからといって、自分達まで勝者になった訳では無いという事を……。

 

 

「でっ……でもっ……!!!」

 

 

 だが、頭では分かっちゃいても消えねぇドス黒いモンが腹に収まってるのもまた事実。

 

 そいつがこれまでの自分の在り方を変えるモンだったとしても……。

 託すしかなかった……。

 自分達の願望を……、自分達の願いを……。

 

 

 自分達が目を逸らしていた現実を思い出しても、フリーザを諦められないセリパ達はその想い何とか言葉にしようとしていた。

 だが、そいつを言葉にしようにも上手く言葉に出来ないでいた。

 その様子を見ていたオレはこいつ等が言葉を発する前に、別の考え方を提示してやる事にした……。

 

 まぁ、気休めにもなんねぇかもしれねぇがな……。

 

 

「それによ……、ある意味ここで簡単に倒しちまうよりか、生かしておいた方がフリーザにとっては地獄かもしれねぇぜ?」

 

 

 オレの言葉に、周りのヤツ等に疑問の表情が浮かぶ。

 

 

「どういう意味だい?バーダック」

 

 

 怪訝そうな顔でこちらを見るセリパ達へ、オレは自分でも分かっちまうくらい人の悪い笑みを浮かべる。

 

 

「あいつがこれまで宇宙の帝王なんて名乗ってこられたのは、最強無敗だったからだ……。

 あいつがこれまで同様強者である事実は変わらねぇが……、これまで通りにはいかねぇだろう……。

 今まで散々好き放題やってきたんだ、あいつに恨みを抱いているヤツは結構いんだろう……。

 そいつ等は言葉にしないまでも、必ず目や表情に無意識に蔑みの感情を浮かべるだろうぜ……。

 そんな屈辱を……、あのプライドが高いフリーザが耐えられると思うか??」

 

 

 オレには怒りと屈辱で身を震わせているフリーザの姿が容易に想像できた。

 その姿を思い浮かべるだけで、笑いが込み上げてくるぜ……。

 

 

「あっ……」

 

 

 オレの言葉に何名かは、何かに気づいた様な表情を浮かべた。

 まぁ、今オレが言った事が本当に起こるとは限らねぇ。

 だが、それでもこいつ等の頭を冷す分には……自分を納得させるには十分だろう……。

 

 

「ある意味死んで地獄に来るより、生きてる間そうやって晒されモンになる方が、あいつにとってはここなんかよりよっぽど地獄かもな……」

 

 

 

 地獄で一悶着あっている頃、ナメック星ではフリーザが空を飛ぶ孫悟空の背中を見つめていた。

 屈辱で全身を震わせ、怒りと憎しみの表情を歪めながら。

 

 

『ふ……、ふざけるな……、オレが……、オレがぁ……、オレが負けるかぁ…………!!!!!』

 

 

 プライドを踏みにじられたフリーザは、ついにその憎悪を爆発させる。

 

 地上を離れ宇宙船へ向けて飛行していた悟空は、後ろから迫ってくる気配を敏感に察知し、とっさに身を捻る。

 すると、次の瞬間、頰に痛みが走る。

 攻撃元へ悟空が視線を向けると、そこには攻撃が外れた事に悔しげな表情を浮かべるフリーザの姿があった。

 

 

「カカロット!!!」

 

 

 バーダックがセリパ達と話している間も、ちょくちょく水晶に視線を向けていたギネは悟空が攻撃を受けたその瞬間を見逃さなかった。

 地獄のサイヤ人達はギネの叫び声で水晶に視線を向ける。

 そして、フリーザと悟空の戦いが、まだ終わっていないことを悟るのだった。

 

 フリーザの姿を捉えた悟空の顔が歪む。

 その表情は、様々な複雑な感情を押し殺している様だった……。

 

 

『どうしようもねぇバカなヤツだ…………。

 オラは、最後のチャンスを与えてやったんだぞ……』

 

 

 悔しさを滲ませた様に吐き出されたその言葉には、僅かながらの遺憾の意が込められている様だった。

 

 

『くっ……、フ、フリーザーーー!!!』

 

 

 フリーザの様子を見た悟空は戦いに備え、気を高める。

 悟空の気持ちに呼応する様に、全身から吹き出した黄金色のオーラが全身を包み込む。

 

 

 

「だっ、ダメだよ!!カカロット!!!」

 

 

 水晶に映し出された悟空の姿を見て、戦いを続ける気だと気付いたギネは声を上げる。

 

 

「どっ、どうしたのさっ!?ギネ」

 

 

 必死な表情で声を上げるギネに、セリパが驚いた様に声を上げる。

 そんなセリパに焦った様な顔を向けるギネ。

 

 

「忘れちまったのかいっ!?

 もうこの星が爆発するまで1分もないんだよ……、戦いを続ければ、フリーザはともかくカカロットが死んじまう!!!」

「あっ!!!」

 

 

 悟空の勝利宣言とその後のいざこざで、爆発までの時間が頭から抜けていたセリパ達の顔に驚愕の色が浮かぶ。

 

 

「でっ、でもよ……、地球にもドラゴンボールってやつがあるんだろう?

 だったら、そいつで生き返れるんじゃねぇか??」

「いや、そいつは恐らく無理だろう……」

 

 

 パンブーキンの意見で皆の顔が一瞬幾分か明るくなった。

 しかし、その意見をバーダックが斬って捨てる。

 皆が何故?という表情を浮かべバーダックに視線を向ける。

 

 

「さっきカカロットの野郎が、姿が見えねえ奴と話してただろ?

 フリーザに殺されたあのハゲは1度蘇ってるから、2度とは蘇れねぇって……。

 カカロットは1度死んで蘇ってんだろ?

 だったら、あいつがここで死んじまえば……2度と蘇れねぇってことだ……」

 

 

 バーダックの説明を聞いたギネは益々表情を青くする。

 

 

「あんたには、悟飯が待ってるんだよ!!!早く逃げて、カカロット!!!」

 

 

 

 ギネが地獄で必死に自身に向かって叫んでいるのを知りようがない悟空は、戦闘へ意識を切り替える。

 

 黒から碧へと変わった瞳が、先ほど自身へ攻撃し、今尚背後に留まり続けているエネルギーを円盤状に圧縮した塊を一瞥する。

 その攻撃は悟空の仲間であるクリリンが、第2形態のフリーザの尻尾を切り落とした気円斬にとてもよく似ていた。

 

 悟空が気円斬へ視線を向けたその瞬間、フリーザは腕を振る。

 すると、フリーザの意思を汲み取った様に空中に留まり続けていた気円斬が悟空目掛け再度攻撃を開始する。

 猛スピードで迫る気円斬を超スピードで躱す悟空。

 

 しかし、フリーザが放った気円斬はいくら悟空が回避したり舞空術で引き離そうが、何度でも執拗に悟空に向けて攻撃を繰り返す。

 

 

『ふはははははっ!!!そいつはどこまでも追いかけていくぞ!!!

 そしてどんなモノも切り裂くんだ!!!』

 

 

 空中で悟空が気円斬を避ける様子を、地上から笑い声を上げながら愉快そうに見上げるフリーザ。

 しかし、件の悟空は愉快そうなフリーザとは対照的に完全に冷めきっていた。

 

 

『こんなのが最後の技だとはな……、見損なったぞフリーザ!』

 

 

 しばらく、気円斬を空中で回避していた悟空だったが、避けるのをやめフリーザに向かって飛び出した。

 気円斬の方も悟空が飛び出した事で、悟空の背後を追いかける様に追従する。

 その様子にフリーザは悟空の考えを瞬時に予測する。

 

 

『む、ふん!作戦は読めるぜ、こっちに向かってきてギリギリで躱し、オレに当てようってんだろ!!

 オレがそんなつまらん作戦に引っかかると思うか…………!!』

 

 

 悟空に向けてフリーザが怒声を上げるが、フリーザの言葉など無視して悟空はフリーザに向けて猛スピードで突っ込んでくる。

 

 

『そんな古い手には引っかからんぞ!!!』

 

 

 そして、フリーザの予想した通り、悟空はフリーザにぶつかる寸前で急上昇する。

 それに合わせて、フリーザは腕を上に振り上げ追従していた気円斬を悟空目掛けて操作する。

 

 フリーザに操作された気円斬は、これまでよりも更にスピードを上げ上昇している悟空目掛け飛んでいく。

 しかも、どんどんその距離が詰まっていく……。

 もう、悟空と気円斬の距離はあと僅かというところまで迫っていた……。

 

 そして、ついに気円斬は悟空の身体を切り裂いた……。

 

 

『やった!!!』

 

 

 その様子を見ていたフリーザは、喜びのあまり満面の笑みで歓声を上げる。

 しかし、その表情はすぐに崩れ去る事になった。

 切り裂いた悟空の身体がブレたと思ったら、忽然と姿を消したのだ。

 

 

『!?』

 

 

 驚愕の表情を浮かべるフリーザの背後から声が響く。

 

 

『こっちだフリーザ!!』

 

 

 声の方に顔を向けると、そこには五体満足の悟空の姿が存在した。

 悟空が移動した事に全く気づけなかったフリーザは、冷や汗を流しながらも苦々しい顔を浮かべる。

 そして、先程の気円斬を自分の手元へと呼び戻す。

 

 

『ふっ、残像だったか……猿め、なかなかやるじゃないか…………』

 

 

 冷や汗を流しながらも無理やり強気な笑みを浮かべる、フリーザ。

 そんなフリーザを静かに見つめる悟空。

 

 しばらく、見つめあっていた2人だったがそんな時間も長くは続かなかった。

 悟空はため息を吐くとフリーザから視線をそらす。

 まるで、もう興味がないとばかりに……。

 

 

『やはり今の貴様とは、まったく戦う気が起きねぇ……。

 そんなつまらん技で望みを繋ぐ様じゃな……』

『くっ……』

 

 

 悟空の言葉にフリーザ自身多少は自覚があるのか、無理やり浮かべていた強気な笑みから悔しげな顔に変わる。

 そんなフリーザに視線を向ける悟空ははっきり告げる。

 

 

『どうしても決着を着けたかったら、体力を回復させ、さらに腕を磨くんだな』

 

 

 悟空から言外に相手にならない宣言をされたフリーザは、その事が納得出来ていないのか、屈辱に顔を歪め身体を震わせている。

 

 

『こ……このオレの技が……、つ……つまらん技だと……』

 

 

 フリーザはおもむろに左手を上げると、そこに2枚目の気円斬が顕現する。

 

 

『ならば、2つならどうだぁ!!!』

 

 

 フリーザの叫び声と共に2枚の気円斬が悟空に迫る。

 それを、冷めた目で見つめる悟空。

 

 

『分からんヤツめ!!』

 

 

 気円斬が直撃する寸前で舞空術で上空へ移動する悟空。

 しかし、2枚の気円斬も悟空を追う様に上空へ進路を変更する。

 

 2枚の気円斬が自分を追いかけている事を確認した悟空は、急遽反転し2枚の気円斬の間をすり抜けフリーザへ迫る。

 そして、当然の如く2枚の気円斬もそんな悟空を追う様に進路を変更する。

 

 猛スピードで突っ込んでくる悟空に嘲笑を浮かべるフリーザ。

 

 

『同じパターンとは芸のないヤツめ…………!!!』

 

 

 だが、フリーザの予想は外れる事になる。

 突っ込んで来ていた悟空が右手をフリーザに向けると1発のエネルギー弾が発射される。

 しかし、発射されたエネルギー弾が着弾したのはフリーザではなく、フリーザが立つ数m前の地面だった。

 

 エネルギー弾が着弾した地面は、威力が小さかった為か大きな崩壊を起こすことはなかった。

 しかし、変わりに大きな砂埃を上げる。

 それは、フリーザの視界を覆い隠した。

 

 

『うっ!!!』

 

 

 視界一面が砂埃で覆われたフリーザだったが、事態は刻々と迫っていた。

 悟空を追っていた2枚の気円斬がフリーザ自身に迫っているのだ。

 

 

『くそっ!!こんな子供騙しに引っかかるもんかぁ…………!!!』

 

 

 とっさに上空へ飛び上がる事で、2枚の気円斬を回避する事に成功するフリーザ。

 

 

『猿野郎はどこだ……!!!』

 

 

 とっさの事態への対処で、フリーザは悟空の存在を見失ってしまった。

 フリーザが首を左右に向けても悟空の姿を確認する事は出来なかった。

 その為、上に視線を向けた瞬間そいつは現れた。

 

 フリーザが視線を上に向けると、自身の目の前に悟空によって繰り出されたエルボーが迫っていた。

 とっさに回避しようとしたフリーザだったが、時すでに遅し……。

 悟空の超強力なエルボーがフリーザの頭に炸裂する。

 

 

『げはぁ……!!!』

 

 

 あまりの威力に、フリーザの口から血が吐き出される。

 しかし、何とかそれを堪えたフリーザは体勢を立て直し悟空へ向けて拳を振るう。

 だが、その悟空は身を逸らすだけで躱してしまう。

 

 その様子に憎々しい表情を浮かべたフリーザは、さらに何発もの蹴りや拳を繰り出すが、全てあっさりと躱され1発も当てる事が出来なかった。

 

 

『ひぃやぁ……!!!』

 

 

 苛つきがピークに達したフリーザは、掛け声と共に渾身の一撃を悟空の顔面めがけて繰り出す。

 しかし、その拳による一撃もあっさり悟空の手によって止められてしまう。

 

 悟空はフリーザが繰り出した拳を、左手で受け止めそのまま握りしめる。

 そして、そのまま力任せに引っ張りフリーザの身体を自身の元へと引き寄せ、ボディへ強烈な膝蹴りを叩き込む。

 

 

『貴様では、相手にならんわ!!!』

 

 

 膝蹴りの痛みで前かがみになったフリーザの顔に、悟空の往復ビンタが炸裂する。

 何十発もの往復ビンタを間抜けな表情を晒しながらフリーザは為す術もなく受け続ける。

 

 だが、何とか往復ビンタから抜け出したフリーザは悟空と距離を取る為、後方へ飛ぶ。

 しかし、着地するより前に悟空がフリーザの頭上に瞬時に現れナックルハンマーを頭へ叩き込む。

 強力なナックルハンマーによって猛スピードで地上へ落下するフリーザ。

 

 それを超える超スピードで追いついた悟空はさらに追撃の頭突きを叩き込む。

 追撃の頭突きによって、更に落下スピードが増したフリーザ。

 これまでの悟空の攻撃+駄目押しの強力な2発の攻撃に、ほとんど気を失いかけていたフリーザだったが、地面に激突する寸前で意識が覚醒する。

 

 意識を覚醒させたフリーザは、空中でとっさに体勢を整え両足で地面に着地するが勢いを殺す事までは出来なかった。

 フリーザが着地した地面は、星の滅びと相まって脆くなっていた事もあり衝撃を吸収しきれず、着地した瞬間陥没してしまう。

 

 

『はぁ……はぁ……、くぅ……このオレがサイヤ人なんかに……』

 

 

 陥没した穴の中で、屈辱で顔を歪めたフリーザは空に浮かぶ悟空に視線を向ける。

 まるで見下されている様に感じるその視線に、苛立ちを覚えたフリーザは戦いを続行するべく地面を蹴り穴から飛び出す。

 

 その瞬間、フリーザの頭上から声が響いた……。

 とっさの事でその内容を理解できなかったフリーザ……。

 だが、それを理解した時には全てが遅かった……。

 

 長く続いた戦闘民族サイヤ人の伝説の戦士と宇宙の帝王の最期の戦い……。

 それは、本人達すら予想し得なかった形で結末を迎えてしまう……。




訂正というかお詫び。

以前感想で、ナッパとラディッツは惑星ベジータが隕石の衝突でないことを知っていた。
という内容のものをいただきました。
今回この話を書くためにアニメを見直したら、確かにナッパがベジータとラディッツに話しているシーンがありました。
今作では2人は惑星ベジータが消滅した理由を知らないって書いてますが、原作はともかくアニメ版では知っていたみたいです。
自分の勉強不足で混乱させた方は申し訳なかったです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。