地獄からの観戦者   作:hina

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楽しんでもらえたら嬉しいです。


孫悟空VSバーダック編-Ep.04

 深々と突き刺さる拳に顔を歪めたまま、悟空は眼の前の男に視線を向ける。

 そこには紫電を身に纏った、黄金の超戦士の姿があった。

 その姿は、伝説の更なる向こうへ至った者だけが辿り着ける形態。

 

 かつて、地球を襲った未曾有の危機を救う為、立ち上がった戦士達がいた。

 その中には、とある一族で伝説と呼ばれた、強力な力を持つ黄金の超戦士達が4人もいた。

 その比類なき力は長きに渡り宇宙に君臨し続けた、最強の一族すら下す程のモノだった。

 

 しかし、そんな力を持つ4人すらをも大きく凌駕する強大な敵が地球を襲った。

 多くの者がその存在には、何人たりとも勝つ事が出来ないと半ば諦めた。

 だが、そんな中で黄金の超戦士の1人が父の意志を継ぎ立ち上がった。

 

 彼は誰よりも心優しい少年だった。

 争い事が嫌いで、願うならば夢である学者になる為に、暖かな家族や大好きな動物達に囲まれながら遊び、勉強がしたかった。

 だが、それを成すには強大な敵を打ち滅ぼす以外方法はなかった……。

 

 少年は戦いの中で葛藤しながらも、自身の中に眠る真の力を解放する……。

 そして、誰も到達した事がない領域へ足を踏み入れるのだった……。

 少年はその強大な力を持って、巨悪を討ち滅ぼした……。

 

 そんな奇跡とも呼べる偉業を為し得た力……。

 それを彼らはこう呼ぶ……。

 

 

「超サイヤ人……2……」

 

 

 かつて自分の息子である孫悟飯がその扉を開き、今や自分もその領域に至った強大な力。

 その力が現在、孫悟空を襲っている。

 

 

「続きと行こうぜ、クソガキ!!!」

 

 

 ニヤリと好戦的な笑みを浮かべた男は、そう言うと悟空の腹から拳を引き抜き。

 悟空の顎に強烈なアッパーを叩き込む。

 

 

「ぐぅわぁーーーーーっ!!!」

 

 

 その拳の威力に盛大に吹き飛ばされる悟空。

 何とか空中で体勢を整えようとするが、悟空の視線の先に一瞬でバーダックが姿を現す。

 しかも、すでに拳を構えていた。

 

 

(ヤベェ!!)

「喰らいやがれっ!!!」

 

 

 バーダックの姿を視認した瞬間、内心で焦りながらもとっさに両腕をクロスさせ防御の体勢をとる悟空。

 しかし、バーダックはまるで防御など関係ないとばかりに、防御の上から悟空を殴りつける。

 凄まじい衝撃が悟空の両腕を襲う。

 

 

「ぐっ……」

 

 

 悟空は顔を歪めながらも、なんとかバーダックの強烈なパンチを受け止める。

 だが、とても安心できる状況ではなかった。

 何故なら、バーダックの拳は未だに悟空の防御を突き破ろうと動き続けているからだ……。

 

 防御を破れられないように、更に両腕に力を込める悟空。

 しかし、それを嘲笑うかのようにバーダックがニヤリと笑みを深める。

 

 

「はぁあああああっ!!!」

 

 

 バーダックの掛け声と共に、バーダックが纏う紫電が混じった黄金の炎が一層強くなる。

 それに呼応する様に、バーダックの拳の威力が一気に跳ね上がる。

 そして、ついにバーダックの拳は悟空の防御を突破する。

 

 バチン!!!という凄まじい音と共に悟空の防御を吹き飛ばしたバーダックの拳は、そのまま悟空のボディに深く突き刺さる。

 そして、そのまま力一杯殴りつける。

 その凄まじい威力に、まともに声さえ上げる事が出来なかった悟空は、猛スピードで地面へ落下していく。

 

 轟音と凄じい量の砂塵を上げながら、背中から地面に落下した悟空は、痛みを堪えながら視線を上空に向ける。

 視界は舞い上がった砂塵のせいで最悪だったが、悟空はその姿を確かに捉える。

 上空で両手に高密度のエネルギーの塊を顕現させたバーダックの姿を。

 

 

「はあっ!!!」

 

 

 バーダックは両手に顕現させたエネルギーの塊を備えたまま、凄まじいスピードで悟空に向かって落下して来る。

 その姿を捉えた瞬間、悟空の背中にとてつもない悪寒が走る。

 あのエネルギーの塊を喰らえば、ただでは済まないと本能が察知したのだ……。

 

 そして、悟空が予想した通り、バーダックは両手のエネルギーの塊を悟空に叩きつける算段なのだ。

 悟空との距離を凄まじい速さで埋めるバーダック。

 あと僅かで、バーダックの両手のエネルギーの塊が悟空の身体にヒットしようとした瞬間、悟空は人差し指と中指を立て額に当てる。

 

 

ーーーシュン!

 

 

 風を切り裂く様な音と共に、バーダックの視界から悟空の姿が忽然と消える。

 しかし、超サイヤ人2に成った事で、更に研ぎ澄まされたバーダックの鋭い感覚は僅かな空気の揺らぎすら感知してみせる。

 

 

「逃すかぁ!!!」

 

 

 バーダックは空気の揺らぎを感知した場所に向かって、左手のエネルギーの塊をエネルギー弾として凄まじいスピードで放つ。

 すると、そこへ瞬間移動した悟空が姿を現す。

 悟空は突如迫って来たエネルギー弾をとっさに、両手で受け止める。

 

 

「ぐっ、ぐぎ……、ぐぅ……」

 

 

 険しい表情で呻き声を上げながらも、全身に力を込める悟空。

 しかし、踏ん張っている両足は、ずざざざ……っとバーダックのエネルギー弾によって後方へ押し込まれていく。

 だが、悟空もやられっぱなしではない。

 

 キッ!と表情を引き締める……。

 

 

「くっ……、はぁああああああ……!!!」

 

 

 悟空の掛け声と共に全身から黄金色のオーラと共に凄じい気が放出される……。

 そして、両足に更に力を入れ、踏ん張る力を強める。

 その結果、悟空の身体は何とかその場に止まる事が出来る様になった。

 

 

「ぐぅぎぎぎぎぎ……、ったぁりゃあ……!!!」

 

 

 歯を噛みしめながら、呻き声を上げる悟空は両腕に力を込める。

 そして、エネルギーを受け止めたまま勢いよく両腕を真上に振り上げ、エネルギー弾を真上へ弾き飛ばす。

 何とか、エネルギー弾の直撃を回避した悟空だったが、バーダックは悟空に安堵の暇を与えるつもりはなかった。

 

 

「よく、弾き飛ばした……。 だがな……、もう1発あんだよっ!!!」

 

 

 両腕を振り上げた状態の悟空の前に瞬時に姿を現したバーダックは、残った右手のエネルギーの塊を悟空のボディに叩きつける。

 

 

「吹っ飛べ!!!」

「ぐぅあああーーーーー!!!」

 

 

 バーダックのエネルギーの塊をモロに受けた悟空は、凄まじいスピードで背後の岩山まで吹き飛ばされる。

 吹き飛ばされた悟空は凄まじい勢いのまま岩山にぶつかる。

 そして、その衝撃で轟音と共に崩壊した岩山は、大小様々な大きさの石や岩となり悟空の全身を埋め尽くした。

 

 バーダックは悟空が沈んだ、岩や石が積み上がって出来た山を静かに見つめる。

 そのまま舞空術で空中へ浮かび上がる。

 10m程上昇したバーダックは、右手に強力なエネルギーの塊を顕現させる。

 

 そのエネルギーの塊は先程悟空にダメージを与えたモノよりも、込められたエネルギーの量が多いのか、スパークがバチバチと走っていた。

 バーダックはその塊ライオットジャベリンを勢いよく、悟空が沈む岩や石が積み上がって出来た山に向け投げ放つ。

 強力なエネルギー弾と化した、ライオットジャベリンはバーダックの狙い通り悟空が沈む場所へ着弾する。

 

 地獄が一瞬にして閃光に包まれる……。

 全てのモノが純白の世界に包まれた次の瞬間、かつて無い程の轟音と衝撃が地獄に響き渡る……。

 爆発が収まった時、その場には巨大なクレーターが出来上がっていた。

 

 そんなクレーターの中心で、1人の男が静かに佇んでいた……。

 あれほどの攻撃を受けた為、既に着ている道着はボロボロになっていた……。

 その男はゆっくりと、空中に浮かぶバーダックに視線を向ける……。

 

 男とバーダックの視線が交差する……。

 男はバーダックを見つめたままふわりと浮き上がると全身から紫電が混ざった黄金のオーラを爆発させる。

 そして、次の瞬間バーダックの眼の前に男が姿を表す。

 

 そのあまりの移動速度にバーダックは思わず目を見開く。

 

 

「なっ!? ……がはっ!!」

 

  

 バーダックが気がついた時には、男の右拳がバーダックのボディに容赦なく突き刺さる。

 そのあまりの威力に、バーダックを体内の空気を一気に吐き出す。

 バーダックは痛みで顔を歪めながら、顔を上げる。

 

 拳を喰らった際、思わず顔を下げてしまったのだ。

 しかし、バーダックの眼の前にいたはずの男は、忽然と姿を消していた。

 だが、バーダックの鋭い感覚がすぐさま背後に強大な気を感知する。

 

 バーダックは、ゆっくり振り返る。

 すると、眼の前に男の右掌が突きつけられる。

 そして、次の瞬間、空気がドン!という音と共に大きく振動したかと思ったら、バーダックの全身をとてつもない衝撃が襲う。

 

 

「がっ!!!」

 

 

 あまりの衝撃に、思わず声を上げるバーダック。

 しかし、男の攻撃はそれだけでは終わらない。

 続けざまに、ドン!ドドン!!という音と共に空気が大きく揺れる。

 

 それに伴ってバーダックの全身が大きくグラつく。

 そんなバーダックのボディを、一瞬で眼の前に現れた男の拳が再び容赦無く撃ち抜く。

 

 

「ごはっ!!!」

 

 

 さらに、続け様に左アッパーを顎に叩き込むと、追い討ちとばかりに強烈な右拳を顔面に叩き付ける。

 

 

「ぐわぁ!!!」

 

 

 そして、おまけとばかりに強烈な回し蹴りでバーダックを地面へ蹴り飛ばす。

 凄まじい勢いで、落下したバーダックは轟音と共に地面に叩きつけられる。

 叩きつけられた衝撃で、大きくひび割れた大地に横たわるバーダック。

 

 

「くっ……」

 

 

 痛みで表情を歪めたバーダックは、よろよろと立ち上がる。

 立ち上がったバーダックは、視線を空中へ浮かぶ男へ向ける。

 そこには、紫電を含んだ黄金の炎を纏った超戦士、超サイヤ人2孫悟空がバーダックを見下ろしていた。

 

 

 

☆★☆

 

 

 

「なっ、なんだよ……? 何なんだよ、この闘いは!?」

 

 

 2人の余りの闘いっぷりにナッパは身体をプルプルと震わせながら、驚愕の表情を浮かべ声を上げる。

 生前は、数多の星々に攻め込み生涯を戦いに費やして来た。

 だが、そんなナッパでもここまで凄まじい闘いは見た事がなかった。

 

 

「超サイヤ人同士の闘いとは、ここまで凄まじいモノなのか……」

 

 

 呆然とした表情で呟くラディッツ。

 しかし、その言葉を彼の母親であるギネは否定する。

 

 

「違うよ……。 この闘いはもう超サイヤ人同士の戦いじゃ無いよ……」

 

 

 ギネの言葉に、その場にいた全ての者が首を傾げる。

 そして、皆の気持ちを代弁する様にセリパが口を開く。

 

 

「それって、どういう意味だい……? ギネ」

 

 

 皆の視線が集まる中、ギネは激しい闘いを繰り広げる悟空とバーダック眼にを向ける。

 

 

「あれは……、超サイヤ人を超えた超サイヤ人……超サイヤ人2同士の闘いなんだよ……」

 

 

 ギネの発した言葉に、その場の全員が怪訝そうな表情を浮かべ再び首を傾げる。

 

 

「超サイヤ人……2……?」

「何だよ……それ……?」

 

 

 安直なネーミングだったからだろうか?何名かは眉を潜める者もいた。

 ギネは思わず苦笑いを浮かべ、口を開く。

 

 

「あたしもよくは知らないんだけど、前にバーダックの師匠と話した事があったんだけど……」

 

 

 ギネが超サイヤ人2について説明しようとした時、ある言葉に反応したトーマが思わず声を上げる。

 

 

「ちょ、ちょっと待て! バーダックの師匠だと!?」

 

 

 その声量と、普段は冷静なトーマにしては珍しく狼狽た様子に、思わず目を丸くするギネ。

 

 

「えっ? う、うん……」

 

 

 トーマの剣幕に驚きながらも、ギネは彼の質問に吃りながらも返事を返す。

 当のトーマは、その言葉に驚愕の表情を浮かべる。

 だが、それはトーマだけではなかった。

 

 

「バーダックが誰かに教えを乞うなんて、信じられないんだけど……」

「まったくだぜ……、あいつが誰かの言う事を素直に聞く姿なんて想像がつかねぇ……」

 

 

 セリパやパンブーキン……、トテッポといった古くからの仲間達は皆一様に驚きの表情を浮かべていた。

 

 

(うーん、そんなにバーダックが誰かに教えを乞う姿が意外だったのかな……?

 まぁ、普段が普段だけに分からなくは無いんだけど……)

 

 

 仲間達のあまりの驚きぶりに、逆に冷静になったギネは、ふとそんな事を内心で思い浮かべる。

 そんなギネの肩をトントンと誰かが叩く。

 ギネがそちらに視線を向けると、ラディッツとナッパが立っていた。

 

 2人は無言だが、眼で先を話せと促していた……。

 

 

「えっと……、話を進めていいかな……?」

 

 

 ギネがそう言うと、無言で頷くラディッツとナッパ。

 そして、今まで周りで狼狽た面子もようやく復活して来る。

 

 

「あ、ああ……。 悪いな、話の腰を折って……」

「それで? バーダックの師匠が何て言ってたんだい……?」

 

 

 ようやく話が出来る場が戻り、再び口を開くギネ。

 

 

「えとね……、バーダックの師匠の話では、超サイヤ人2とは超サイヤ人の壁を超えた超サイヤ人の事を言うらしいんだ……」

 

 

 ギネの言葉にまたしても、周りは首を傾げる。

 

 

「超サイヤ人の壁を越える……? それは、どういう意味なんだ? オフクロよ……」

 

 

 ラディッツの言葉に、ギネは顎に手を当て少し考えた様な表情を浮かべると、再び口を開く。

 

 

「えっとね……、超サイヤ人……、ちょっと分かり辛いから、超サイヤ人の事を超サイヤ人1って言うね……。

 超サイヤ人1には、全部で4つの段階が存在するんだって……」

 

 

 ギネの言葉に、周りから驚きの声が上がるが、ギネはそれを無視して話を進める。

 

 

「超サイヤ人の4段階目……それが超サイヤ人1の状態での完成形なんだってさ。

 さっきまでバーダックやカカロットが成っていた形態がこれなんだと思う……」

 

 

 ギネの言葉を受け、ナッパがギネに質問する。

 

 

「と言う事は……、オレ達が見たフリーザとの戦いで初めて超サイヤ人に覚醒した時のカカロットは、超サイヤ人1の1段階目だったって事か……?」

「そう言う事になるんだろうね……」

 

 

 ナッパの言葉を肯定する様に頷くギネ。 

 その言葉に、再び周りから驚きの声が上がる。

 

 

「あんなスゲェ戦いをしといて、未完成の超サイヤ人だったって事かよ……」

「流石伝説と呼ばれるだけはあるよね……」

 

 

 フリーザとの戦いを見ていたパンブーキンやセリパは、あの時の悟空の戦いぶりを思い出す。

 しかし、それすらも超サイヤ人の力の入り口でしか無いと知り、唖然とした表情を浮かべる。

 そんな、周りの連中を尻目に、ギネは説明を続けるべく再び口を開く。

 

 

「それで、超サイヤ人2なんだけど、そもそも超サイヤ人1の完成形と言うのが、超サイヤ人の状態でも平常心を保てる状態の事を言うらしいんだ……」

「平常心を保つ……?」

 

 

 セリパがギネの言葉に首を傾げる。

 言っている意味がイマイチよく分からないのだろう……。

 そこで、ギネは分かりやすい例を提示する事にする。

 

 

「思い出してほしいんだけど、初めてカカロットが超サイヤ人に成った時、それまでのカカロットと人が変わったみたいじゃなかった……?」

「言われてみれば、変身前に比べるとかなり荒々しい雰囲気や口調になっていたな……」

 

 

 トーマはフリーザとの戦いで、超サイヤ人へと覚醒した時の悟空を思い出し口を開く。

 ギネはトーマの言葉を肯定する様に頷く。

 

 

「どうやら、超サイヤ人というのは、大猿化ほどじゃないけどサイヤ人の本能が強く表に出るみたいなんだよね……。

 そして、変身すると軽い興奮状態になるらしいんだ……」

「なるほどな……。 サイヤ人の本能である凶暴性が表面化した上、更に興奮状態か……。

 説明されてみれば、確かに思い当たる節はいくつもあるな……」

 

 

 ギネの説明を受け、トーマは顎に手を当て自身の記憶を探る。

 記憶の中の超サイヤ人となった悟空と、ギネが言った事を照らし合わせると、思い当たる節がいくつも出て来た。

 それはトーマだけでなく、あの戦いを見ていた全ての者達がそうだった。

 

 皆の表情で、自身が言いたかった事が伝わった事を確信したギネは、再び口を開く。

 

 

「それに引き換え、さっき迄のカカロットやバーダックはどうだった……?」

 

 

 ギネの言葉を受け、その場の全員が先程までの悟空達の様子を思い出す。

 

 

「なんか、ごく自然というか当たり前に超サイヤ人の姿でいたよね……。

 2人共変身する前と、性格が変わった様には見えなかったし……」

 

 

 記憶を思い出しながら喋っているせいか、どこかハッキリしない様子で口を開くセリパ。

 そんなセリパの言葉を肯定する様に頷くギネ。

 

 

「つまり、あの2人は完全に超サイヤ人をコントロールしているって事なんだよ……。

 そして、その状態から更に力を付け、超サイヤ人の限界を超えた者だけが、超サイヤ人の壁を突破する事が出来る……。

 それが……、伝説の戦士の更に先……超サイヤ人2なんだってさ……」

 

 

 ギネの言葉を受け、地獄のサイヤ人達は改めて2人の超戦士に目を向ける。

 視線の先では、伝説の戦士を更に超えた者達の戦いが、更に激しさを増していくのだった……。

 

 

 

☆★☆

 

 

 

「だりゃあ!!!」

「オラァ!!!」

 

 

 超サイヤ人2へと姿を変えた悟空とバーダックの拳が激しく激突する。

 激突した衝撃で互いに弾け飛んだ瞬間、瞬時に体勢を立て直しバーダックの間合いに飛び込んだ悟空はバーダックに向け右拳を繰り出す。

 バーダックはそれを左手で捌く、しかし追撃の悟空の左拳がバーダックの右頬に突き刺さる。

 

 そして、更に鋭い右蹴りでと左膝蹴りを連続で叩き込み、体勢が崩れたバーダックをアッパーで上空へ殴り飛ばす。

 だが、悟空の攻撃は終わらない。

 上空へ吹き飛んだバーダックの元へ瞬間移動で一瞬で移動する。

 

 

「波ぁーーーっ!!!」

 

 

 瞬間移動したと同時に、両手を突き出した悟空。

 悟空の放った気功波は一瞬にしてバーダックを飲み込む。

 だが……、次の瞬間気功波が弾け飛んだ……。

 

 バーダックが瞬間的に気を全身から爆発させ、気功波を吹き飛ばしたのだ。

 そして、今度はこちらの番だとばかりに悟空に向かって飛び出す。

 悟空は自身に向かって来るバーダックを迎え撃つべく拳を構える。

 

 しかし、悟空の間合いに入るよりも早くバーダックは右拳を振り抜く。

 次の瞬間、何かが悟空の顔の横を凄まじスピードで通過する。

 なんと、バーダックの拳の拳圧により圧縮された空気が塊となって悟空に襲い掛かったのだ。

 

 更に、バーダックは続け様に左右の拳を数回振り抜く。

 

 

「はっ!! だりゃあ!!!」

 

 

 凄まじいスピードで振り抜かれた拳から、合計4発の拳圧の塊が悟空を襲う。

 しかし、悟空はそれを左右の腕と足を使い、弾き飛ばす。

 だが、その隙に悟空の背後を取る事に成功するバーダック。

 

 自身の背後をとったバーダックに向け、悟空は振り向きざまに拳を放つ。

 だが、悟空の拳は体勢が不十分だった事もあり、あっさりとバーダックの左手に受け止められてしまう。

 そんな悟空のガラ空きとなったボディへ、強烈なボディブローを叩き込むバーダック。

 

 更に、ボディブローで体勢が完全に崩れた悟空へ、追撃の右蹴りを勢いよく振り抜く。

 まともに喰らった悟空は、後方へ吹っ飛ぶ。

 しかし、吹き飛ばされた悟空は空中でくるりと体勢を整えると、気を開放しバーダックへ向け凄まじいスピードで飛び出す。

 

 一瞬で距離を詰めた悟空がバーダックの間合いに入った瞬間、2人は同時に拳を繰り出す……。

 

 

「だりゃぁあああ!!! ……がはっ!!!」

「オラァアアアア!!! ……ぐはっ!!!」

 

 

 凄まじい轟音と共に地獄に衝撃が走る。 

 悟空の右拳はバーダックの左頬に突き刺さり、バーダックの左拳は悟空の右頬を捉えていた。

 2人は受けた拳の威力に、お互い顔を仰け反らせる。

 

 しかし、ギリッ……と歯を噛み締めた2人は、ほぼ同時に逆の腕を振り抜く。

 再び凄まじい音が響き渡る。

 今度は悟空の左頬にバーダックの拳が突き刺さり、バーダックの右頬を悟空の拳が捉える。

 

 

「ぐっ!!!」

「がっ!!!」

 

 

 2人は互いの拳の威力に、正反対の方向に吹き飛ぶ。

 しかし、悟空は吹き飛びながらも、両手を右腰だめに移動させる。

 対するバーダックも右手を大きく引く。

 

 

「かぁ、めぇ、はぁ、めぇ……」

「はぁあああああっ……!!!」

 

 

 2人は己の内に内包する力を引き出し、集約させ形にする。

 それに伴い2人の全身を包む、紫電を発した黄金色の炎が激しく燃え上がる。

 顕現させた力の塊は2人のテンションに呼応する様に、更に輝きを増していく。

 

 悟空とバーダックの視線が交差する。

 その瞬間、2人の口元に不敵な笑みが浮かぶ。

 まるで、互いの技のどちらが強いのか比べるのが楽しみだと言わんばかりに……。

 

 そして……、その勝敗は間も無くハッキリする事となる……。

 

 

「波ぁーーーーーっ!!!!!」

「くたばりやがれぇ!!!!!」

 

 

 まるでタイミングを合わせた様に、2人は集約したエネルギーを一気に解き放つ。

 想像を絶する程の破壊力が込められたエネルギーの塊が、互いに向け繰り出される。

 轟音と共に発せられた、一筋の極大の光の波と、力を極限にまで凝縮された塊が正面からぶつかる。

 

 悟空の全力のかめはめ波とバーダックの本気のライオットジャベリンがぶつかった瞬間、大気と地面が木っ端微塵に吹っ飛ぶ。

 込められたエネルギーが尋常じゃ無いからか、2人の技がぶつかった衝撃は地獄全体を大きく揺らす。

 だが、技を繰り出した当人達はそれどころではなかった……。

 

 

「はぁあああああーーーーーっ!!!!!」

「だぁあああああーーーーーっ!!!!!」

 

 

 2人は周りの事などお構いなしに、己の技に力を込め続ける。

 悟空のかめはめ波とバーダックのライオットジャベリンは、まるで互角と言わんばかりに一進一退の攻防を繰り広げている。

 かめはめ波が少しでも押し込めば、ライオットジャベリンが押し返し、また逆に、ライオットジャベリンが押し込めば、かめはめ波が押し返す。

 

 その様な攻防が先程から幾度となく繰り返されている。

 

 

(スゲェ……!! オラがこんだけ力を込めているのに、押し込めねぇ……)

(チッ!! カカロットの奴、どんだけ気を内包してやがんだ……)

 

 

 2人は更に互いの技に力を込める。

 込められたエネルギーが増えたからか、かめはめ波とライオットジャベリンが一回り大きくなる。

 

 

「ぎっぎぎぎぎ……!!!」

「ぐっぐぐぐぐ……!!!」

 

 

 歯を食いしばりながら己の中から力を引き出し、技を出し続ける悟空とバーダック。

 額に血管と大量の汗を浮かばせている姿から見ても、お互い余力がある様には見えない。

 正に意地の張り合いだった……。

 

 いつまで、その様な時間が続くのかと思われたその瞬間、2人の意地の張り合いは思わぬ形で終わりを告げる事になる……。

 これまで互いに拮抗していたかめはめ波とライオットジャベリンが突如、大爆発を起こしたのだ。

 超サイヤ人2の全力が込められていただけいに、その爆発は凄まじいモノだった……。

 

 地獄全体が光に包まれたと思った瞬間、轟音と共に凄まじい衝撃が全身を襲う。

 その衝撃の威力は星の爆発にも引けを取らないのでは無いか?と錯覚してしまうほど、観ている者達に本能的恐怖を与える。

 そんな、破壊と光に包まれた世界で、2人の男の姿が浮かび上がる。

 

 

「だだだだだっ!!!」

「おりゃりゃりゃりゃりゃっ!!!」

 

 

 なんと、かめはめ波とライオットジャベリンが爆発した瞬間、2人はほぼ同時に相手に向かって飛び出していたのだ。

 今の打ち合いで、互いに大きく気を消耗しているはずなのに、そんな事を微塵も感じさせず2人は空中で拳と蹴りを高速で繰り出し続ける。

 そして、2人は互いの右腕を大きく引くと、勢いよく振り抜く。

 

 2人の拳がぶつかった瞬間、轟音と共に、大気が弾ける様に衝撃が走る。

 互いの拳がぶつかった衝撃の余波で、先程の気功波による打ち合いで生じていた多大な砂塵等が一瞬にして吹っ飛ぶ。

 2人は即座に、互いの右腕を引く。

 

 

「だりゃ!!」

 

 

 悟空がバーダックの顔面に向かって、風を切り裂く様な鋭い右蹴りを繰り出す。

 それを頭を下げ躱したバーダックは、悟空の蹴りが頭上を通過した瞬間、即座に身体を起こし悟空の顔面に向かって左拳を繰り出す。

 

 

「オラァ!!!」

 

 

 バーダックの放った拳が悟空の右頬に突き刺さる。

 その衝撃で、悟空は後方へ吹っ飛ぶ。

 吹っ飛んだ悟空に追撃を仕掛ける為、猛スピードで飛び出すバーダック。

 

 吹き飛ばされた悟空は視線の先に、自分を追って来るバーダックの姿を捉える。

 だが、まだ迎え撃つ体勢が出来ていない悟空は、とっさに右手から気弾をバーダック目掛け放つ。

 

 

「はっ!」

 

 

 悟空が放った気弾は真っ直ぐ、バーダックへ向かって飛んでいく。

 あと僅かで気弾がバーダックにヒットしようとした瞬間、バーダックが右手を一閃して気弾を弾き飛ばす。

 だが、悟空にとってはそれで十分だった。

 

 そもそも、今の気弾はダメージを与える為のモノではなく、時間を稼ぐ為のモノだったのだから。

 気弾の処理をした事で、ほんの僅かだがバーダックの動きに遅れが生じたのだ。

 その僅かな時間で、体勢を整える悟空。

 

 そんな悟空との距離を一瞬で詰め、拳を握るバーダック。

 バーダックが拳を振り抜こうとした瞬間、悟空は後方斜め上へと飛び退く。

 そして、バーダックが拳を振り抜いた瞬間、全身から気を爆発させ推進力を上げる。

 

 

「だりゃあ!!!」

 

 

 凄まじいスピードでバーダックの懐に飛び込んだ悟空は、合わせた両手でバーダックの頭をおもいっきり殴り飛ばす。

 

 

「がっ!!!」

 

 

 カウンターという形でナックルハンマーをモロに受けたバーダックは、凄まじいスピードで地面へ落下して行く。

 バーダックは落下しながら、思わず顔を顰める。

 だが、それは今の攻撃の痛み故では無い……。

 

 今の悟空の攻撃は間違いなくバーダックの攻撃のタイミングを完全に読んだ上、通常のカウンターよりも更にダメージを与えるために繰り出された攻撃だったからだ……。

 

 

「チッ!」

 

 

 それに気付いてしまい、簡単に攻撃を読まれてしまった自分自身にバーダックは思わず舌打ちする。

 だが、今のバーダックには自身に怒りをぶつける様な余裕はなかった……。

 何故なら、視線の先にはバーダックに追撃をかけるべく、凄まじいスピードで真上から迫って来る悟空の姿を捉えていたからだ。

 

 

(チッ! おちおち考え事も出来ねぇじゃねぇか……。

 しかも、さっきのカウンターのせいで、ちっとばかり身体の反応が鈍い……。

 今、接近戦になったら分が悪いのは、間違いなくオレだな……。

 あと数秒もすれば回復すんだろうが……、それじゃあ間に合わねぇ……)

 

 

 僅かな時間で、冷静に自身の状況を分析するバーダック。

 

 

「しょうがねぇ……」

 

 

 そう言うと、バーダックは右手を突き出し、掌を向かって来る悟空の方に向ける。

 

 

(正直、さっきの打ち合いでかなり気を消耗したから、あんまデケェのは打ちたくねぇんだがな……。

 けど、このまま接近戦に持ち込んでも、分が悪いのは目に見えている……。

 ここは時間を稼ぐか……)

 

 

 バーダックの右掌にエネルギーの塊が顕現する。

 そして、次の瞬間、バーダックの右手から巨大なエネルギー波が放出される。

 バーダックは悟空の動きを止めるために、あえて大きめのにエネルギー波を繰り出した。

 

 向かって来る悟空に向かって、バーダックのエネルギー波がぐんぐん迫る。

 バーダックの予想では、次に悟空が起こす行動は、防御もしくは回避。

 最悪なのは、エネルギー波を弾き返される、もしくは、エネルギー波による打ち返しだった。

 

 だが、仮に後ろの2つが起きても、対処する方法が無いわけでは無い。

 そう考えるバーダックだったが、次の瞬間、彼は大きく眼を見開く……。

 

 

「なっ!?」

 

 

 まるで、巨大な光の柱の様なエネルギー波が悟空に迫る。

 悟空の視界から見たそれは、まさしく光の壁が自身へ迫って来る様だった。

 悟空は、その光景につい笑みを浮かべる。

 

 そして、次の瞬間悟空は、自身の周りに高密度の気のバリアを展開しエネルギー波の中に突っ込む。

 その光景は、かつてナメック星でフリーザに悟空自身がやられた事の再現だった。

 悟空は、バーダックのエネルギー波を見た瞬間、規模は確かにデカイがそちらに気を取られすぎて、全体的に力が散漫になっている事に気が付いたのだ。

 

 そんな攻撃だったら、突っ切る事は可能と判断した悟空。

 その考え通り凄まじいスピードで、バーダックのエネルギー波を突き進んでいく。

 そして、ついにバーダックのエネルギー波を突破した悟空がバーダックの前に姿を表す。

 

 

「だりゃぁあああ!!! 」

 

 

 そして、突破した勢いそのままにバーダックの顔面に強烈な右拳を叩き込む。

 

 

「がはっ!!」

 

 

 悟空の拳をモロに受けたバーダックは、凄まじいスピードで地面へ落下していく。

 バーダックは背中から轟音を経て、地面へ激突した。

 あまりの衝撃に、凄まじい量の砂塵が巻き上がる。

 

 その光景を尻目に、悟空はシュタッと音を立て地面へ着地する。

 しかし、次の瞬間悟空の体勢が大きく崩れ、思わず膝をつく……。

 

 

「はぁ……、はぁ……、はぁ……」

 

 

(流石に超サイヤ人2同士の闘いとなると、ダメージがデケェ……。

 オラが思っていた以上に、気も体力も消耗しちまったみてぇだ……)

 

 

 そんな事を悟空が考えていると、横からズザッという音が聞こえて来る。

 悟空は音がした方に視線を向け、思わず驚きの表情を浮かべる。

 

 

「なっ!?」

 

 

 悟空の視線の先には、先程地面に沈んだはずのバーダックがしっかりとした足取りで立っていた。

 その姿からは、確かにこれまでの攻撃で受けたダメージが容易に確認できる。

 だが、闘いを続けるのにはまったく問題を感じさせなかった……。

 

 

(こ、こいつ……、なんてタフさだ……)

 

 

 バーダックの想像以上のタフさに驚きを隠せない悟空……。

 そんなバーダックは膝をつき、肩を上下させている悟空に、どこか挑発的な笑みを浮かべ口を開く。

 

 

「おいおい……、もうヘバっちまったのか……?」

 

 

 その言葉に、思わずムッとした表情を浮かべる悟空。

 悟空は足に力を入れ、立ち上がるとバーダックに向け、笑みを浮かべる。

 

 

「へっ……、まさか!! オメェが起き上がるのが遅かったから、ちょっと休憩してただけさ……」

 

 

 そんな悟空の言葉を聞いたバーダックは、フッと笑みを浮かべる。

 

 

「そうかよ……。 そんじゃ、続きと行くか……」

 

 

 そう言うと、バーダックは好戦的笑みを浮かべ構える。

 

 

「臨むところだ!!!」

 

 

 バーダックに応える様に悟空も笑みを浮かべ構えをとる。

 

 悟空とバーダックの親子対決……。

 互いに限界以上の力を行使する2人の闘いは、更なる展開に突入しようとしていた……。




ブログサイトの方で新章「孫悟空VSバーダック編」の5話を投稿しました。
活動報告で紹介しているサイトで公開しています。
興味がある方は、そちらを見てもらえると嬉しいです。

Thank you.

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