ポケットモンスターLets Go ピチュー 作:エグゼクティブ
まずはお待たせして申し訳ありません。
筆がのらずに気がつけば、社会人になってました。
リハビリ程度ですが、よろしければ…。
トキワシティのポケモンセンター。
その朝は早い。早いとはいっても慌ただしいわけでも騒がしいわけでもなく、静かに一日が始まっていく。騒がしかったのはつい先日までのことである。朝から猛ダッシュでポケモンセンターの中を走り回るガキンチョに手を焼いていたあの日々を思い出し、ジョーイはくすりと微笑みを浮かべる。懐かしくすら思えてくる少年は今頃ニビシティを出た頃だろうか。
あの子はポケモンを大事にする子ではあるが、ジムには挑戦しているのだろうか。
トレーナーズスクールでは、どちらかというとブリーダーになった方が良いと言われていたようだったし、もしかするとジムには挑戦していないかもしれない。
『次の日ニュースです』
ふとTVをつけてみると、何とタイミングの良いことか、件のニビシティの近くにあるお月見山が映っているではないか。しかも、現場からの生中継らしく、入り口付近のポケモンセンターからトレーナーたちが旅立っていく姿がチラホラと見受けられるではないか。
これはもしかするとユウタが映るかもしれない…と感じたジョーイは近くにいたハピナスと共にTVを見守ることにした。
『先日確認された、非常に強力な雷ですが、どうやら異常気象では…』
どうやら、ニュースによれば昨日、お月見山へと繋がる道路に雷が落ちたのだとか。怪我人は特にいなかったことに安堵したジョーイであったが、ふと疑問がいくつか浮かんでくる。
はて、昨日は雨曇などあっただろうか。
むしろ、昨日は雲一つない晴天だったとジョーイは記憶している。
だが、見ているうちに、ウキウキしていたはずの気持ちが一変して沈んでいくのをジョーイは感じていた。
『嘘か真か、ポケモンバトルの相手のトレーナーは
TVをつけてから数十分後、ジョーイは手元のリモコンでTVの電源を切ると一度大きく深呼吸。両手で頬をペシペシと叩き、ニッコリと笑顔を浮かべて日課である洗濯物干しに外へと出て行こうと歩き出す。
だが、歩み始めて数歩で、巻き戻しするかのように前を向いたまま後ろへと数歩下がり、受話器を手に取る。
「あぁ、久しぶり。うんうん、元気元気。朝の忙しいときに突然ごめんなさい。ピチューを連れた10歳くらいのトレーナーがいたら…」
トキワシティのポケモンセンターの朝は早い。
すでにチラホラとトキワシティのポケモンセンターから出発していくトレーナーの姿がある。そんなトレーナーをジョーイは満面の笑みで送り出していく。
ジュンサーはTVを見る暇もなく、外回りにでかけてしまっていたことをトレーナーたちは幸運に思うべきであろう。
もしもいたのであれば、ジョーイとジュンサーの両方の意味で不思議な圧を感じることとなる。
すれ違い様にジョーイの表情を見たトレーナー…特にユウタとジョーイ&ジュンサーの関係性を知っていたトレーナーの感じた事は一緒だった。
触らぬ神に祟りなし…と。
▼ ▼ ▼
「いや、しかしながらお主、とんでもない悪よのぅ…」
「ピッチュ?」
いやいや、『何が?』って首傾げられても尊死するから困っちゃうんだけどさ。それはそれでいいんだけどさ。でも、流石に、いくらなんでも勝手に『わるだくみ』して威力上げて攻撃するのは、酷いと思うの。
しかもめざパ氷まで使えるなんてそんな御無体な!?
自虐な電流バチバチも、夢特ひらいしんで大型バフに生まれ変わりましたなんて、お兄ちゃん認めませんよ!!
そんな房ポケみたいな戦闘方法、お兄ちゃん教えたつもりはありません!!
まあ、おふざけなしでマジレスするのであれば、とんでもない才能である。
なんと言っても、厳選個体かつ、色違いなんて、そうそう現れるものではない。むしろ厳選された故の色違い。または色違い故の厳選個体なのだろうか。
とにもかくにも、これから先ポケモンジムやトレーナーと闘っていくのであれば、まず必要不可欠になる戦術だろう。努力値は特攻素早さ振りしてしまって、とにかく先手必勝サーチ&デストロイである。
防御に振ってあげたいところではあるが、だってもともと装甲は紙なんだもん。
TVをつけて見れば、昨日のハイライトを彷彿とさせるようなニュース番組が目に入り、ピチューを抱き上げてマジマジとTVの映像を見せつけようとするも、恥ずかしがり屋なピチューはパチリと電気をほっぺたに帯びさせ慌てて飛び降りる。
そうしてすぐに近くの椅子に隠れようとするのだが、手だけ椅子の足にしがみ付いているだけで、身体は全く書かれていない。
「あっ…」
意識がタイムスリップするのをなんとか堪えつつも、出発の準備を整える。お月見山入り口のポケモンセンターを出発する時には人気も大分減っていた。時刻はすでに11時を守ろうかというところ。
今から出発するにしては微妙な時間帯だからこそ、少ないのだろう。
「トキワシティのジョーイさんとジュンサーさんとお話することがあったらよろしく伝えておいてください」
自分で連絡しろと思うだろう。
思うだろう。
俺だって思うよ(逆ギレ)
もしも…もしもだが、今朝のニュースをジョーイかジュンサーのどちらかが見ていたとしよう。あの人たちなら、俺と相棒の仕業だと秒でバレる。ご丁寧に『でんきしょっくの指示』とかニュースで言ってくれちゃってるし。
間違いなくお説教が始まる。
なので、本日はご連絡致しません(白目)。
以上。
そんなこんなで出発しましたお月見山。
俺の左肩に乗っかり『進めー!!』と言わんばかり、腕を前方に伸ばすピチュー大先輩に悶えつつ、目の前に聳え立つゴツゴツな石の山を見上げる。
お月見山といえば、ゲームでは化石を手に入れられる重要なダンジョンである。グレン島にたどり着くまでは化石のまんまだが、進化させることができれば強力な戦力になる。
しばらく物思いに耽っていると、肩に乗ったピチューが頬っぺたツンツンしてくるので歩みを進める。
あれでも、横顔が可愛いからずっとこのままでも…。
「ピッチュッ…」
チラリと肩のピチューに目を向けてみるとそこには、頬っぺたに電気を溜めつつある大先輩。
慈悲はなかった。
「はいはい今進みますよ」
石でできた巨大な入り口をくぐり、中に入るとゴツゴツとした硬い地面と洞窟の中特有のヒンヤリとした感覚。
相棒は新鮮なのか、辺りをキョロキョロと見回している。しかし、俺は入った途端から目の前のグループから視線が外せずにいた。
お月見山は、通行量も多いこともあって、ある程度は整備されているのかフラッシュを使わなくとも、足元はしっかりと見えている。故に、目の前でコソコソと喋っている男と女の姿はバッチリと目視で確認できていた。
コソコソと喋っているはずなのに、どうしただろうかその話し声は何故だか耳に聞こえてきてしまう。
「このあたりにはないみたいね」
「もうすこし、奥に行けばあるんじゃないか?」
入り口の上で寝ていたニャースなんて俺は見ていない。何も見ていない。
オレ、ニャース、シラナイ。
聞こえなかったふりをして、その場を去ろうと二人の横を通り過ぎようとするも、ガッシリと肩を掴まれる。
突然肩を掴まれたことによって、ピチューがビクリと反応し、無意識に放たれた放電が俺と背後の二人を含めた全員に放たれる。
「あばばばばばばば」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!?」
無論、回避する術はない。
慈悲はないが、悪意もない。
驚かせた背後の二人が悪い。
強いて言うならば、肩をホールドされた俺も悪い。
ピチュー大先輩からのギルティ宣言(特殊)は見事に炸裂した。
振り返ると背後の二人がプスプスと煙を上げながら突っ伏していた。
俺はといえば、もう慣れた。
だいぶ痛いし、ビリビリくるけど、愛の力で克服してやった。
スーパートキワマンと呼んでくれてもいいんですよ?
「ピチュ」
ドヤ顔でサムズアップしてくる相棒に思わず苦笑。
このピチュー確実に不審者を退治してやったと思っているに違いない。
「…あんた、今の話聞いてなかったでしょうね」
「アッハイ。モチロンデス」
プスプスと煙を上げながら、美女から語りかけられる。
投げやりに答えて振り向かずに、顔を見られないように、とにかくその場から立ち去ろうとした。
刹那、ユウタの頭上を何かが通り過ぎ、目の前で着地する。
「ここの化石はニャーたちロケット団がいただくのニャ!! …ニャんでおにゃーたち黒こげニャんだニャ?」
ユウタは さくらん した!
その正体はニャースである。
しかも喋るニャースである。
せっかく何も知らぬで突き通そうとしたにも関わらず、どうしてこうも
現実逃避しようにも否応なく引き戻される。
いい加減にしろ。
泣く子も黙るロケット団、その中でもエリートと呼ばれる部類に入るこの3人はムサシ、コジロウ、ニャースのヤナカンジトリオで間違いない。
ニャースの登場に背後でプスプスと煙を上げていた2人が勢いよく起き上がり、俺の目の前へと移動、ニャースの頭をペシンとハリセンで叩く。
「ニャース!! あんたなんでわざわざ私たちの目的バラしちゃうのよ!」
「ニャ? おにゃー、何にも聞いてニャかったのニャ?」
「というか、あんた! いきなりでんきしょっくなんて卑怯じゃない! いくらロケット団だからってそれはないんじゃない!?」
「ピチューは驚くと放電しちゃうんですよ。突然肩なんて掴まれたら驚いちゃうに決まってるじゃないですか」
「そんな生態知らないわよ!」
「そうだそうだ! 暴力は何も生まないんだぞ!」
ピチューに悪意は決してない。
チラリとピチューを見てみる。
ピチューは わるだくみ している。
うん、前に原っぱでお話したことをちゃんと守ってるようでお兄さん安心。自衛の時に威力は気にしないよね!(白目)
「というか、あなたたちロケット団なんですか?」
「あ…」
ムサシ、墓穴を掘る。
「まあまあ、こんなガキンチョに聞かれたところで何にもないって。それより、俺たちより先に化石を見つけられる前に、とっとと探そうぜ」
俺の肩から手を離すと『さらばガキンチョ! ナーハッハァーィ!』と言ってロケット団トリオは走り去っていく。
なんだこいつら。
ゴッソリとSan値が削られた気がした。