ポケットモンスターLets Go ピチュー   作:エグゼクティブ

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ep6 『特訓』

現実逃避(ロケット団なんて知らない)

 

お月見山といえば、岩タイプのポケモンが生息している。

 

おなじみのイシツブテはもちろん、運が良ければイワークなんていうニュービーお顔真っ青なポケモンまで生息している。果たしてそれは運が良いのか、悪いのか。

少なくともゲームと違ってあの巨大なイワークと出会ったとなれば、まず逃げなければいけないだろう。

 

普通に考えて勝てない。

 

体格差どれだけあると思ってんだ。

聞いて驚けピチューとイワークの体格の差は8.5mだ。

ついでに重量で表してみると、驚愕の208kgの差がある。

 

 

ピチュー

身長0.3m

体重2.0kg

 

 

 

な   ん    と   尊    い

 

 

その様はまさしく天使。

この身長と体重だけでピチューってわかる。ピチューって素晴らしいって直感してしまう(大錯乱)

 

尊すぎてもうピチュー愛が単元突破しそうなのだが…だがしかし、問題は山積みである。

 

地面タイプのポケモンや岩タイプのポケモンに勝つためには電気タイプの技構成だけでは勝機はない。

 

実は、この山には岩ポケモン以外にも珍しいポケモンが多々生息している。

 

お月見山の代名詞ともいえるピッピ、その進化系であるピクシー、挙句の果てにはポケモンセンターお馴染みのピンクの悪魔ことラッキー先輩まで生息しているときた。

 

「お月見山の生態系化け物か…!」

 

なに?

意外と岩タイプのポケモン少なくないかって?

 

序盤のダンジョンだからね、仕方ないね!

 

 

「ついでに言うと、どれだけわるだくみしてもイシツブテにでんきしょっくは意味ないからね」

 

『ピッチュ』

 

イシツブテを前にニチャァと邪悪な笑みを浮かべる相棒をチラ見し、戦慄する。

 

頬っぺたに電気を帯電させながらも、自分の周囲に氷の礫を展開するピチューなんてこの世界にそうそういない。

 

器用すぎないか…うちの相棒。

 

確かに、めざパ氷があれば、とりあえずはなんとかなる気がする。というよりもなんとかなるだろう。

 

相性こそが全てと言わんばかりにどのトレーナーもピチューをみるや否やイシツブテでドヤ顔してきやがるが、尽くピチューのめざぱ氷に狩られていく。

 

最初こそ怯えた演技をするピチューだが、戦い始まれば一方的もいいところだ。

 

うちの相棒は演技派なのだ。

 

天才である。

 

だがしかしだ。

近接戦闘が不慣れなのもいかがなものか。

 

よくアニメである、『魔法使いだからって近接戦闘を修行しないと痛い目に遭うよ!』という法則からいくと相棒は多いに危ないのではないだろうか。

 

そこで、ユウタは考えた。

 

▼ ▼ ▼

 

ピチューは何故だか嫌な予感がしていた。

 

この嫌な…というか不思議な予感は、トキワシティにいた時、ユウタから何かされる時によく感じていた。

 

それは悪戯であり、好意であり…やはり悪戯だった。

 

「はい、これから俺と一緒にアイアンテールの練習をしましょう」

 

というよりも、正直この人間の時以外は感じたことがないことをピチューは思い出した。

 

そして、改めて実感した。

 

この人間はおかしいと。

 

最初は薄暗い暗闇の中、助走をつけてダッシュし、飛び上がったかと思えば一回転して尻餅をつくという動作を何度も繰り返していた。

 

『尻が尻がぁ…』と悶えつつも、一連の謎の行為が終わるたびにチラリとこちらを見て何度も繰り返すユウタ。

 

理解不能な行動を繰り返し、何度も自分を痛めつけるその様にピチューは戦慄した。

 

20分ほど繰り返した頃だろうか、ユウタは悶えながら謎の行為をやめた。

 

何度も繰り返したせいか地面の所々に凹んだ跡ができていた。

 

ピチューではなく、なぜかユウタがアイアンテール…ならぬ、アイアンケッツを習得しかけていたことを1人と1匹は知る由もない。

 

今度は一体なにをしてくるのだろうかと疑問を抱きながら、警戒するピチューに目の前の人間はしゃがんでバッグから何やら大きな紙とペンを取り出す。

すると人間は、ペンを使って凄まじいスピードで何かを描き始めたではないか。

 

チラチラとこちらを見る様子に半目で睨むピチュー。

 

「ピチュ?」

 

回り込んで背後から人間の頭の上に登り、しがみつくようにして覗き込んでみる。何秒か震えるようにペンと紙を持つ手が震えていたが、ピチューは気にしない。

 

ユウタが描いているのは、どうやら大きな岩とピチューの姿だった。

 

大きな紙に描いているにも関わらず、ユウタは何故か紙の端っこに絵を描いている。

 

ピチューがまたしても頭を傾けて不思議に思う。

 

手が止まったかと思えば、今度は一枚紙をめくり、絵を描く。描き終われば次のページに進んでいく。

 

繰り返して早10分。

 

「よし、できたぞピチ…ぁぁッ!」

 

ユウタの手が止まり、ようやく立ち上がろうとしたその時、ユウタは両手で口元を押さえた。

 

「ピ…」

 

どうやら寝てしまっていたらしいことを実感すると、ピチューはカックンカックンしながらも手で目元を擦る。寝ぼけた目で地面に落ちている紙を見てみるも、どうやら変わった様子は見られない。

 

なんだ、何にもないじゃないか。

 

長い間待ってたことを抗議しようと、プンスカと頭から降りて、ユウタの正面に回る。

 

………………(我が生涯に いっぺんの 悔いなし)

 

『ピ?』

 

何故か固まっている人間に向かって、大きく手を振ってみたり、尻尾でツンツンしてみたりするも、反応はない。

 

仕方ないので、バチリと頬っぺたに電気を帯電させ、でんきしょっくを放とうとして止める。

ドン引きするほどのおかしな人間ではあるが、基本的に悪人ではない。

いや、本当に正気を持った人間ではないと思うけれども。

 

であれば、毎度でんきしょっくをするのは可愛そうな気がしてきたピチュー。

 

腕を組んで、あっちへいったりこっちへいったりを繰り返し、ピチューは考えることを辞めた。

 

頬っぺたに電気を対談させたままユウタに近づいて、頬っぺたを擦るようにユウタの頬っぺたにくっつける。

 

刹那、ユウタの身体にバチバチと電流が走る。

 

俗に言う、頬っぺたすりすりを経験したユウタがまた暴走するのだが、今回は語らないでおく。

 

 

▼ ▼ ▼

 

 

 

幸せでした(いろいろとあった)

 

 

 

気を取り直して、先程から何をしていたのかと言うと、パラパラ漫画を作っていた。

最初は身体で動きを何となく真似をしてアイアンテールを伝えようとしたのだが、何も伝わらなかったらしい。

アニポケのように全力ダッシュで跳躍し、くるっと一回転しながら尻尾を叩きつけるイメージだったんだが、俺の身体に尻尾がないことが悪かったようだ。

 

ユウタの尻は悲鳴を上げているが、傷薬はピチューのためにあるので使わない。

 

ピカチュウとライチュウができて、ピチューができないわけないでしょ?というピチューに対しての高感度MAXなユウタ。

 

ピチューがアイアンテールなんて、技マシンがなきゃ覚えられるわけない?

 

技マシンなんて持ってるわけないやんけ。

 

ふざけるのも大概にしろ。

 

 

俺が技マシンだ。

 

 

異論は認めん。

 

そんなこんなで今度はパラパラ漫画と先程の疑似アイアンテールをピチューに見せたところ、流石賢い相棒。なんとなく理解してくれたようだ。

 

ここまでかかるのにたったの1時間なんてうちの相棒は大天使に違いない。

 

パラパラ漫画にイシツブテを混ぜ、回転したピチューが尻尾で攻撃し、ノックアウトしている1コマが功を成したらしい。

実際、アイアンテールを使う際に重要なのは、自分がどの部位を使って攻撃するのかということと、どのようにして威力を弱めずにぶつけるかである。

それからというもの、ピチューとユウタはアイアンテールの習得に躍起になった。ピチューよりも一回り大きな岩を用意し、ピチューはユウタに真似て全力ダッシュし跳躍、回転の容量で尻尾を叩きつける。

そしてユウタもピチューの隣で同じようにダッシュし、跳躍し、そして尻を叩きつける。

バトルもののアニメやゲームにはよくあるが、まさかポケモンの世界で岩割りの修行をすることになるとはユウタは夢にも思いもしなかった。

ユウタが尻を叩きつけているのは地面なので、岩割りというよりも地割れである。

 

ピチューの尻尾が光を帯びはじめる。

 

ユウタの尻が地面を抉りはじめる。

 

尻尾を叩きつけられた岩がみしりと音を立てる。

 

尻を叩きつけられた地面が小さく揺れる。

 

 

『ピチューーーー!!ピチュピッチュッ!!』

 

それからさらに数時間後、ピチューの尻尾が輝くように光を帯びて岩に向かって叩きつけられる。するとピチューよりも一回り大きな岩は、大きな音と共に亀裂が入り、やがて砕けていった。

 

アイアンテールの習得である。

 

「うおおおおおお相棒!!」

 

『ピッチューーー!!』

 

喜びのあまり駆け寄ってくるピチューをユウタは両腕で持ち上げ、くるくると回る。しかし、ピチューは見てしまった。自身が粉砕された岩の近くにいくつもあるものすごく小さなクレーターのような地面。

 

ユウタから地面に下ろしてもらい、正気に戻ったピチューはユウタの背後へと回りユウタのお尻の部分をペシペシと叩く。

 

そうしてユウタがおかしいことを何度も確認したピチューはドン引きしながらユウタと距離をおくのであった。

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