ブリタニア帝国記 If編   作:ADONIS+

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その四(シドゥリ暦2031年)

 ホワイトハウス。アメリカ合衆国の政治の中心ともいえる場所で、マハナ大統領は報告を聞いていた。

 

「大統領、現地の外交官はミス・アズライトと接触できなかったとのことです」

「そうですか。やはり彼の国は我々と関わるつもりはないということでしょうか?」

「そうとしか考えられません」

 

 秘書官は苦々しい表情で答えた。

 アズライトは、先日帝国は今回この世界と関わるに当たって窓口を日本政府のみに絞ることにしたと発言していた。その理由は一つの世界に複数の勢力がある場合、それらと一々交流を持っていると話がややこしくなるし、各勢力の事情に振り回させるからと述べた。これは事実上日本国以外の国家は相手にしないとの発言だった。

 

 マハナは、それでもなんとか交渉しようとしたが、アズライトは用が済むとさっさとゲートを使ってイズモに帰ってしまったので面会すらできない状況だった。

「ではゲートの方は?」

「福岡のゲートにつきましては特に異変はありません。相変わらず自衛隊が牛耳っています。また銀座争乱事件の反省からか、日本国内での外国人の出入りはかなり厳しくなっています」

「……そうですか」

 銀座争乱事件。外国人グループの平和的なデモというのが看板であったが、実際はただのテロ活動であった。

 

 あれは中国、韓国、北朝鮮といった特定アジア諸国が中心となっていたが、アメリカも参加していた。そう、アメリカは日本の同盟国であるにもかかわらずそれに荷担したのだ。この事から、特定アジア諸国は当然のことであるが、アメリカとも関係はギクシャクしていた。

 

 いうなれば自業自得以外の何者でもない。マハナも立場が逆で、同盟国にこんな事をされたら当然不信を抱く。

「帝国に行って直接交渉するというのは無理ですし」

「……」

 

 惑星イズモは、帝国が中継地点として利用しているだけの無人惑星だ。そんなところにいっても精々野生動物ぐらいしかおらず、交渉もなにも話ができる住民自体存在しない。

 

 帝国にいくにしても帝国と繋がっているゲートがなければ不可能だ。そもそも彼等には異世界に行く技術なんてないのだから。

 惑星イズモ。その惑星は、大気成分や重力が人間が居住するに適しており、更に今のところそこまで危険な生命体やウイルスも存在していない。精々狼や熊のような動物がいるぐらいである。

 

 そして日本にとって重要な事であるが金山だけでなく油田、レアメタル、レアアースなどが豊富にあることだ。アズライトから地理情報や資源情報を知らされた自衛隊は確認作業を行い、次々に資源を発見していた。これらの資源は日本にとって、のどから手が出るほど欲しい物だった。

 

 日本政府は惑星イズモに三個師団もの兵力を送り込んでおり、そのイズモに駐留している自衛官達の間で先日日本からこのゲートを使ってこちらの世界に戻って来たアズライトが話題となっていた。

「それで彼女は何をしている?」

「それがこちらでピクニックをしています」

「おい、大丈夫なのか?」

 

 惑星イズモは無人地帯とはいえそれなりに野生動物がいるので、それに襲われたら目もあてられない。

 

「彼女はまるでアニメの登場人物みたいな理不尽な強さでしたから、問題ないと思います」

 

 実は少し前にアズライトは野生動物と遭遇したが、彼女はそれを一蹴していた。それはチート能力を保有するトリッパーとただの野生動物ではこれは当然であったが、常識的な自衛官にとってはインパクトがあった。一部のオタクは、リアルチートだとか騒いでいたが。

 

 そんなアズライトの能力の一端を見た彼はそう述べた。

 

「まあ、なんにしても天使様のご機嫌をそこねないようにな」

「ええ、分かっています」

 

 ブリタニア帝国と称する異世界の国家との窓口は今のところ彼女しかない。少なくとも彼女が窓口である内は機嫌を損ねない方が良い。

「それとだ。彼女には国会からお呼びが来ているんだ」

「やはり資源が欲しいのですかね」

「だろうな」

 

 自衛官達が溜息を零す。

 多くの資源を発見した自衛隊であったが、ここで問題があった。惑星イズモはブリタニア帝国の領土なのだ。

 

 当たり前であるが、国際常識として外国人が他国の領土の資源を勝手に採掘して持ち出したりすれば外交問題になる。ゆえに資源を確認できたが、それを発掘はできない。

 

 この状況に苛立ちを覚えた政界は、アズライトを呼びだして交渉しようとしたのだ。

 そのころ、自衛官の伊藤真太郎は不思議ちゃんもとい自称異世界の使者を名乗る少女とお弁当を食べていた。何故かというと、アズライトに誘われたからだ。

 

 彼女曰く、ビビッと来たらしい。電波系か?

 

「どうしたの?」

 

 アズライトは首をかしげている。青いゴスロリ服に身を包んだ妖精のような印象すら与える少女。こうしてみるとお人形のようだ。

 

「いや、可愛いなと思ってな」

 

 面とむかって少女をくどくようなセリフをいうが、(ちなみに伊藤にはロリコンではない)

 

「はあ、それはどうも」とアズライトはあっさりと返した。

 

 アズライトはTS転生者であったので、そもそも男に興味がないからこの辺りは淡泊である。

「それはそうと、あのゲートは本当に安全なのか?」

 

 前回のゲートは、世界を歪ませ結果的に地球規模で震度5もの地震を起こしていたのだ。その為、ゲートの安全性に不安を持つのは当然である。

 

「ええ、国会でも言いましたが、あれは個人の特殊能力という不安定なものでゲートを繋げっぱなしにした事が原因です。だから定期的にゲートの開閉を繰り返せば問題ないわ」

 この『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』の世界は『魔法少女リリカルなのは』の世界と同じように膨大な数の世界を内包している次元世界が存在する珍しいタイプの下位世界だ。その特性からベルカ式魔法が使える上に次元航行も可能という特徴もあるが、それは置いておく。

 

 ブリタニア帝国でも、次元航行船や魔導師が個人レベルで簡単に別の次元世界に行くことができるように、ゲート世界でも内包する次元世界内部であるのならば行き来は簡単に出来る。

 今回のカラクリはこうである。まずブリタニア帝国から目標のゲート世界の無人世界の惑星(惑星イズモ)にユグドラシル・システムを用いて移動して領有化する。次に惑星イズモとゲート世界とを次元転移技術の応用でゲートを展開する。

 ただこのゲートを永続的に繋げるのはマズイ。やはり悪影響が出るのだ。

 

 そもそもリリカル世界の次元転送は一瞬で行われる物であるし、次元航行船にいたっては次元航行機能を有する船舶自体が移動しているわけだからこれまでは世界間を繋ぎっぱなしという事はやっていなかった。というよりもこれまでやる必要がまったくなかった。

 

 しかし、魔法技術も次元航行技術を持たない地球人が地球と惑星イズモを行き来するにはゲートを展開して惑星イズモと繋ぎっぱなしにしないといけない。しょうがないのでゲートを12:00~13:00の一時間だけ切るという方法を用いた。つまりこの一時間だけゲートが消えて、その後ゲートが再び現れるというわけである。これならば毎日23時間ずつ接続している状態であり、影響もごく僅かなのだ。

 

 悪影響といっても、何ヶ月も繋ぎっぱなしにしないかぎりそこまで影響はでないからこうすることにしたのだ。とはいえ、一々こうしていると面倒なので、最悪次元転移関係の魔法技術を提供するというのも手ではあるが、それは余計な技術流出を極力さけるという監察軍の方針に反するからやめるべきだ。

 

 最も魔法技術といってもリリカル世界の時空管理局程度の物であるならば、例え流失しても何ら脅威にならない。

 

 そもそも地球が存在するゲート世界から、ブリタニア帝国が存在するリリカル世界に移動する事はできない。リリカル世界の魔法技術は、良しも悪しも次元世界内部で使うことに特化し過ぎているからだ。

「そういうものなのか。まあ、安全ならばいいけどな。ところでこの弁当はどうやって用意したのだ?」

 

 これは市販の物ではないようだ。この何もない世界では弁当なんぞ作れないだろう。

 

「それは仲間に送って貰ったんだよ。こんな辺鄙な場所じゃピクニック位しかできないからね」

 

 確かにそうだが、ピクニックをしたいので弁当を送ってくれるとか監察軍って一体。伊藤はちょっと疑問に思う。異世界のことであるし、とあまり考えない方がいいだろう。

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