高々と掲げられた日本国旗の下で、戦隊ヒーロー姿の五人組がいた。
「バイコクレッド!」
「バイコクブルー!」
「バイコクグリーン!」
「バイコクイエロー!」
「バイコクピンク!」
「「「「「五人揃って、売国戦隊バイコクダー!」」」」」
そのかけ声と共に五色の煙が派手に出ている。つっこみ所満載な五人組です。そこに「彼らは日本の国益を犠牲にして、日夜他国の為に励んでいるヒーロー(売国奴)である」というナレーションが聞こえた。
おいおい、日本の国益を犠牲にしたらいけないでしょう、と思わず突っ込むアズライト。
そんなバイコクダーの前に怪人A(中の人は真っ当な愛国者)が現れる。
怪人A「バイコクダー(売国奴)め。私の目が黒いうちはお前達の好きにはさせんぞ!」
バイコクレッド「怪人(真っ当な愛国者)め。身勝手に日本の国益のみを追求しやがって、それが戦前の過ちを招いたんだ!」
バイコクブルー「そうだ。他国に迷惑をかけないようにするのは当然の義務だ!」
バイコクグリーン「他国の利益も考えるべきだ!」
バイコクイエロー「国際協調だ!」
バイコクピンク「国際貢献だ!」
五人掛かりで怪人Aを袋叩きにしているバイコクダー。
怪人A「日本国万歳ーーー!」
バイコクダーに破れた怪人Aは、お約束の爆発。
バイコクレッド「正義(売国奴)は勝つ!」
…………
………
……
「夢オチ。なんて、いやな夢です」
日本政府に用意して貰ったホテルの一室で睡眠をとっていたアズライトの朝の目覚めは最悪だった。何が悲しくて、売国奴のヒーロー戦隊が活躍する夢なんぞ見なきゃならんのだ。
あんなおかしな夢を見たのはやはり日本のマスコミの影響か、それとも彼らの影響を受けて売国病にでも感染したのかな?
……なんか嫌な病気だ(そんな病気は存在しません)。
「それよりも早めに陛下に情勢報告をしないといけませんね」
朝食を食べて、身だしなみを整える。朝食は日本政府が用意したホテルだけあってそれなりの物だ。
ちなみに日本政府がアズライトにいろいろ気を使っているのはゴマスリの為であった。少しでも失点を取り戻そうと必死なのだ。
それは兎も角、アズライトはレッドノアに通信を送る。
日本のマスコミがブリタニア帝国皇帝を激怒させて会談がブチ壊れた。この情報は電撃のごとき勢いで世界中を駆けめぐり、各国は日本を激しく非難した。
何故ならブリタニア帝国は地球各国が一致団結しても相手にもならない次元違いの超大国で、そんな帝国を怒らせたら日本だけでなく地球その物が危機に陥る。日本の失敗のとばっちりを自分たちが受けるのは御免だ。そんな思いが各国を動かした。
地球各国は、地球近郊で展開している十万隻の宇宙艦隊を恐れた。それは黒舟来航時の江戸幕府以上の反応だったと後世の歴史家が記しているほどであるから、各国がどれほど恐れたかが伺える。
ついでにいえば、そんなとんでもない大艦隊の派遣を安易に認めた日本政府に対する反発もあった。もちろん各国も日本政府がこのような事態をまったく想定していなかったことは理解できるが、それとこれとは話は別である。
当然ながら東京上空に待機しているレッドノアに対して先制核攻撃を仕掛けるという極端な強硬論もあったが、実行しても核攻撃が通用するか怪しい上に、それをすれば確実にブリタニア帝国と全面戦争になるから各国はそんな強硬論を必死に押さえていた。
それに対して日本政府は状況の激変にまったく対応できず、おまけに与野党では責任追及で大揉めしてしまい、未曽有の国難の時だというのに足の引っ張り合いの政争に右往左往するばかりで国民を大いに失望させた。
そもそも、危機意識能力において、日本政府と各国政府との間では温度差があった。鈍感というか反応が遅い日本政府に対して各国政府は帝国に過敏に反応していた。
東京に残ったアズライトは、「ブリタニア帝国は帝政国家で、皇帝陛下が神聖不可侵な存在として崇拝されており、その陛下に対する無礼がブリタニア人を怒らせた」と指摘しており、マスコミの不遜な行動を抗議していた。
そんなごたごたが続く間に、レッドノアが東京上空から海上に移動した。シドゥリは馬鹿でかいレッドノアが東京上空にいると太陽光を遮ってしまい、真下の地域が日陰になってしまうので、レッドノアを海上に移動させたのだった。
最も各国は、この行動が帝国が現地の日射権に配慮しての物だとは想像できずに、警戒したのは余談である。
『そうか、地球はその様な状況か』
「はい、それでいかがなさいますか?」
アズライトの前のスクリーンにはシドゥリが映っていた。
先日の会談はマスコミの所為で中止せざるをえなかった。シドゥリが親衛隊共々レッドノアに戻っていなければ、彼女たちが暴発していただろう。
『今更、会談を止めるわけにはいかないから、マスコミを遠ざけて会談するしかあるまい』
「そうですね。では日本政府にそう要求するとしましょう」
この会談はいろいろと手間をかけているのだ。今更ダメでしたでは体面上宜しくないし、監察軍内部の計画推進派だけでなく、五個艦隊を動かしたブリタニア帝国軍部にも不満が発生しかねない。
かくして帝国と日本は水面下で調整を進めて会談にこぎ着けた。
シドゥリside
「シドゥリ陛下、お会いできて光栄です。先日は我が国の報道関係者が大変失礼をしてしまい申し訳御座いません」
会談の場で、シドゥリに頭を下げる大神総理大臣はやややつれた顔だった。心労がたたっているのだろうか? まあ別にかまわないが。
大神総理がいきなり頭を下げたのは、やはり圧倒的な格差を理解しているからだろう。元より対等につき合えるような次元の国家ではない。
日米同盟? 確かに日本の同盟国アメリカ合衆国は強いが、それは地球という一惑星での話に過ぎない。とてもじゃないが、複数の銀河を支配している巨大星間国家を相手に出来るワケがない。
仮に日本とブリタニア帝国が戦争になったらアメリカは即座に日本を見捨てるだろう。同盟に基づいて戦っても帝国に勝てるわけなく、日本に義理立てして国を滅亡させるわけにはいかない。その為、日本は土下座外交をするしかない。
今回は前回の反省をふまえてマスコミを追い出している。勿論、マスコミは日本政府のこの行動に猛抗議したが、大神総理は「外交問題を起こす気か! 最悪の場合は戦争になるぞ!」と怒鳴り無理やり押さえつけた。
正直いってマスコミには、これ以上問題を起こして欲しくないのだ。頼むから大人しくしてくれ。これが日本政府の本音だった。
「民主主義国家の指導者というのは、いろいろと大変だな」とシドゥリは軽くジャブを入れておく。マスコミの事で、皮肉を言われていることは理解できたのだろう。大神総理の顔が一瞬だけ引きつった。
「確かに大変です」
大神総理は苦笑いしている。実際、近年の日本政府はマスコミにやたら振り回されている。前回のゲート事件の時もマスコミに引っかき回されたし、銀座争乱事件の時は他国と結託して散々日本の足を引っ張った。まさに売国奴の集団としかいえない存在だ。
報道の自由。国民の知る権利。公平な報道。
マスコミの掲げる建前は全て戯言に過ぎない。そしてこれが民主主義を掲げるこの国の実状だ。
「まあ、誰にでも間違いはあるものだから、今回は不問とする。今後このような問題が起きないようにすればいい」
「勿論、このような事にならないように努力します」
シドゥリはあっさりと許した。彼女にとって、今回の問題をあまり大きくしたくないからだが、同時に「こんな問題をもう起こすんじゃねぇぞ! わかったか。こらっ!」と言外に日本に伝えている辺りマスコミに対する苛立ちが伺える。
一方で大神も、「努力する」という曖昧な言葉を使って巧みに言質をとらせない。彼も自国のマスコミが今後問題をおこさないと信じ切れなかったのだ(爆)。
そんな言葉を使わないといけない辺り、総理の悲哀を感じる。そして、その事に気付かないシドゥリではないが、それは意図的に流す。
「さて、確か惑星イズモの資源の件で、予と話があるそうだな」と話を切りだしておく。
ここで大神総理は話を切り出す事を躊躇った。その気持ちは分からなくもない。
そもそも今回の会談は、ブリタニア帝国を格下と誤認してしまった日本政府が惑星イズモの利権を確保する為に行われる筈の物だった。その為に、軍事的な圧力もオプション入れていたのである。それが土壇場になって、実はブリタニア帝国が次元違いの超大国だったと判明したのだった。
日本政府から会談を要請してしまった手前、今更「やっぱなしね」と言い出せるわけもなく、だからといって帝国から利権を確保するのも難しい。帝国に通用しそうな交渉材料が存在しないからだ。
ふむ、少し後押ししておくか。
「実の所、余や帝国にとって惑星イズモは二束三文程度の価値しかない」
そもそも惑星イズモは、今回の計画において中継地点として利用するのと日本政府との交渉材料にするためだけに皇帝直轄領として領有した惑星だ。
まったく開拓を行っておらず、やったことといえば領有宣言をしてそれに関係する書類処理しただけで、統治するつもりなど最初からまったくない。
おまけにイズモは、ブリタニア帝国が存在する『魔法少女リリカルなのは』の世界ではなく、『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』の世界に存在しており、政治的、軍事的に見ても統治する意味はないし、統治コストも採算が合わない。
「そうなのですか? やはり帝国ではその辺りの価値が地球とは違うワケですね」
大規模な宇宙開発を進めていて資源が豊富に手に入る国家と、そうでない国家では資源の価値というのも違うのは当然だ。レアメタル、レアアースにしても稀少な資源であるから高いのであって、それが土砂と同じように豊富に手に入るようになれば、その価格は暴落する。ブリタニア帝国は、多くに資源が安く大量に手に入る富める国で、資源がない国からみたら羨ましい限りだろう。
「だから条件次第では交渉も成立するということだ」
「どんな条件でしょうか?」
大神総理が食いついてきた。そう、それでいい。シドゥリは微笑しながら会談を進めていった。
おまけ
※ここから先の文章は電波ネタです。本編とは関係ないので、読まなくても問題ありません。
『売国戦隊バイコクダー!』最終回
バイコクダーは、激しい戦いの末に、悪の怪人たち(真っ当な愛国者たち)を倒した。
こうして反対する者を排除したバイコクダーは、理想の日本(但しバイコクダーにとっての)を実現させた。
平和と友好を唱えて、自衛隊の予算を大幅に削減して、予算を周辺諸国の経済支援に回し、外交問題を円満に解決するために北方領土のロシア領有、尖閣諸島の中国領有、竹島の韓国領有をそれぞれ認めた。
これら様々な活躍の結果、日本国は滅亡した。
当然であるが、『隣国を支援する国は滅ぶ』というのは地政学の常識である。大体、自国の国益を無視して他国に奉仕する国家など普通は存在しない。そんな国はすぐに潰れるからだ。
この最悪の結果に、バイコクダーは責任を感じるでもなくぬけぬけと他国に日本再建を求めたが、既に他国は日本に見切りをつけており彼らを相手にせず、バイコクダーの後ろ盾であった特定アジア諸国ですら、用済みになったバイコクダーを切り捨てたのだった。
国を失った日本国民はバイコクダーに怒り投石するが、ここまで来てしまってはどうしようもない。こうして日本は歴史から姿を消した。
完
あとがき
売国戦隊バイコクダー!の中の人は、マスコミだったり議員だったりと妄想が広がります。ゲート日本では銀座争乱事件で売国奴の一部を処分できたが、いまだに多くの者が残り、更に増員しているという笑えない状態です。