ブリタニア帝国記 If編   作:ADONIS+

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その八(シドゥリ暦2031年)

 日本とブリタニア帝国の会談。それが円満に終了したとの知らせに世界は驚いた。

 

 何しろ十万隻という馬鹿げた宇宙艦隊の脅威にふるえていたという状況にも関わらず、日本がブリタニア帝国から惑星イズモの利権を確保したという情報に「日本人は魔法でも使ったのか?」と困惑したほどだった。

 

 他国から見たら日本は外交が三流で、政治家の質も著しく低い。そんな日本が外交でここまで成果を上げるとは誰も思わなかったのだ。

・惑星イズモの各種資源の採掘権(金だろうが原油だろうが何でも取り放題)

 

・惑星イズモの土地の使用権(日本人が都市を築いて住もうが、開拓して農地を作ろうが自由。地代も無料)

・惑星イズモの漁業権(イズモには人間が食べられる漁業資源があるが、これも無条件で漁業が出来る)

 これが、この会談の結果日本が得た利権だった。

 

 一方でブリタニア帝国が日本政府に突き付けた条件として。

・ブリタニア帝国皇帝並びに三千世界監察軍が許可した者を日本国に入国させる事を認める事。

・上記の者が日本国で観光するのを認める事。

・また上記の者が日本国で入手したあらゆる物品の持ち帰りを無条件で認める事。

 という物だった。

 

 ハッキリ言って日本政府が圧倒的に有利な条約が結ばれることになった。

 

 この条約は、一見ブリタニア帝国が不利に見えるが、シドゥリと監察軍の目的が植民地の確保ではなく観光地の確保にすぎず、念の為にお土産(娯楽品)の持ち帰り制限を外していた。

 本来ならば惑星イズモの領有権も日本に譲渡しても良かったが、そうすると他国が黙っていないし、日本に蔓延る売国奴が勝手にイズモの利権を売り飛ばしかねない。本当に売国奴世にはばかるという嫌な状況です。

 

 それにいきなり日本領にすれば、日本政府がゲート技術を要求してくるだろう。何せ日本列島とイズモを繋ぐのはゲートのみなので、これを握っておかないと国内統治に支障が出るからだ。別に提供しても惜しくはないが、現時点では余計な技術の放出はさけたい。

 

 まずはブリタニア帝国の領土のままで、イズモを日本に実行支配させる。その上で、時期を見計らって、日本国に領有権を譲渡するというのが望ましい。

 こうしてブリタニア帝国皇帝シドゥリと日本国総理大臣大神との間でイズモ条約が結ばれた。この条約調印後、シドゥリは速やかにレッドノアで帝国軍艦隊と合流し、この世界から撤退した。あまり長居をして他国から妨害を受けることを恐れたのだ。

 

 ちなみに撤退したのはシドゥリと帝国軍であって、アズライトはいまだに日本に留まっていた。

 こうして皇帝来訪は終わったのであるが、我に返った各国は必死にブリタニア帝国の情報を集めるためにアズライトに接触を図った。アズライトは実質的にブリタニア帝国大使のような立場となっていたので、矢面に立つはめになった。というよりも、アズライト以外の者は地球から撤退してしまったので、彼女に聞くしかなかった。

 

 勿論、アズライトは日本以外を相手にしなかった為に、各国の行動は空振りすることになるが、意外な事に日本議会から事情の説明を求められることになる。これは野党の突き上げがあったらしいが、アズライトにとっては迷惑な事だった。

 まあ、その気持ちは分からないでもない。何しろいきなり膨大な利権が手に入ったが、その理由が不明なのだ。議員からすればブリタニア帝国がいきなり破格の譲歩したように見える。これで無邪気に喜ぶならただの馬鹿だ。

 

 地球の常識では小さな島一つでも領土問題として大いに揉めているのに、「惑星一つの利権をまるまる上げるよ」といわれているのだから、真っ当な頭を持っているなら裏を疑うはずだ。

 

 この辺りの常識の違いをすり合わせないと疑心暗鬼にかられて面倒な事になりかねない。なので、アズライトはしぶしぶ国会に出席した。

「……この事から、アズライト氏にはこの条約を結ぶ背景を説明していただきたいのです」

 国会が開始すると、さっそく条約を結ぶことになった事情を議員が質問してきた。

 

 大神総理は支持率の為に条約に飛びついた。それは圧倒的な格差のある相手に対して抵抗が無意味だと理解していたのもあるだろうが、あまりに大きすぎる利権に眼がくらんだというのもあるはずだ。

「その事ですが、説明するとなると話が長くなりますが、宜しいですか?」

「ええ、かまいません」

「では、最初に言いたいのは、惑星イズモに対する価値はブリタニア帝国と日本国では大きく違うということです。確かに日本にとっては多くの利益を得たわけですが、帝国からみれば二束三文の価値しかない物を日本との交渉材料にしただけです」

 実際、イズモにはまったく資本を投下していないので原価はタダ。適当な惑星を領有宣言しただけだ。勿論、領有宣言するだけならタダですむ。

「それと『ブリタニア帝国の目的が、地球を植民地にする事かもしれない』と一部の方々が疑っているようですが、私たちが求めているのは植民地ではなく観光地です」

 そもそも文明が発達すると植民地なんていらなくなる。宇宙開発すれば資源も土地もいくらでも手に入る。

 

 労働力にしてもロボットを量産すればそれですむから、『銀河英雄伝説』の銀河帝国みたいに人力に拘って農奴制を採用するなどという非効率極まりない愚行でもしない限り奴隷などいらない。

「私たちは日本国で観光するために友好を求めているワケです。日本との関係が悪いと観光もやりにくいですから」

 まあ、正確にはブリタニア帝国の観光地ではなく、トリッパーたちの観光地としてだけどね。この世界の日本は前世日本の代用品でしかないが、それでもトリッパーの要望を満たすには十分だろう。

 

 また日本を観光地にするといっても、実際に日本に来る観光客は極少数だ。元々、トリッパーの数が極端に少ないからね。

 

 大体、条約上では監察軍と皇帝の許可がなければ日本に行けないから、どのみちただの民間人は日本にこれない。

 

 ブリタニア帝国の総人口は二兆五千億人にも及ぶから、日本が観光地として活用されたら観光産業が大いに潤うと期待するかもしれないが現実は厳しいのです。

「ハッキリ言いますと、惑星イズモは日本国民に対する手土産なのです。相手と仲良くしたいときはプレゼントを贈るに限りますから」

「友好のために星一つプレゼントしますよ」と言っているわけで我ながらとんでもない話だ。話を聞いている議員もあまりのスケールの大きさに唖然としている。きっとSAN値がガリガリ削られているのだろう。

「で、では何故あのような大艦隊で来たのだ! 本当に友好を求めているなら必要なかった筈だ」

 議員が思わず発言する。どうやらそれを疑問に思っていたらしい。理由は分かりきっているのだが、この国の政治家では理解できないのか。良しも悪しも平和ボケしているからね。

「それも平和と友好のためです。適切な力の誇示はその為に必要です」

「馬鹿な! あの艦隊は各国を威圧していたんだぞ!」とヤジが飛んでくる。

 

 分かっていないね。なら補足しておくか。

「勘違いしてもらっては困りますが、平和というものは平和憲法を掲げて念仏のように平和主義を主張すればそれで維持できる物ではありません。皆さんも銀座事件をお忘れではないでしょう。あの時にそれが役に立ちましたか?」

 その言葉に議員が表情を変える。日本が異世界からいきなり侵略されて民間人が大量虐殺された事は、いまだに記憶に新しかった。

「あの国は日本国の実力を知らなかったが故に戦争を引き起こしましたが、事前に知っていればそれは防げました。つまり異世界との接触に置いては強者がその実力を相手に知らしめる事こそ戦争の抑止になり、ひいては平和と友好の為になるのです」

 これは前例があるだけに説得力が抜群だ。実際ブリタニアがそうしなければ、イズモの利権やゲート技術を手に入れるために各国は圧力を掛けてくるなり強硬手段に出るなりして、火種になっていたのは目に見えています。

 

 地球各国は、危うく圧倒的強者に戦いを仕掛けるという、かつての帝国と同じ立場になりかけていたのだ。これには議員たちも言い返せない。

 ちなみにアズライトは特地の帝国をあえて「あの国」と言っている。アズライトからみれば帝国は中世欧州程度の文明レベルでしかない弱小国家でしかなく、そのような国家をブリタニアと同じ帝国と呼ぶには抵抗があるからだ。

「それにブリタニアは別に武力を振りかざして日本に譲歩させたわけではありません。むしろブリタニアの方が日本に配慮していますよ」

 あれだけ利権をくれてやったんだから文句言うなよ。帝国上層部が機嫌を損ねたらどうするんだ。シドゥリはともかく帝国上層部は今回の事にあまりいい顔をしていないんだぞ。まあ、共和主義の幻想を潰すために衆愚政治の情報収集をするという理由で宥めたんだが。

 

 これは日本人には言えないが、この国の議員とマスゴミはいい反面教師になる。これらの存在によって、臣民は衆愚政治の愚かさを認識して共和主義者を未然に潰せるのだ。本当に売国奴が蔓延るこの国は、帝政の維持のためのいい喧伝材料で、おまけにマスコミを統制する大義名分になります(ゲート日本のマスゴミがあまりに酷すぎて、国益のためにマスコミを国家が統制するべきだと宣伝できる)。

 

 そういう意味では、バイコクダーもとい売国奴様々といえる。

「いろいろと意見の相違はあるかもしれませんが、皆さんも将来の事を考えると、我々と友好関係を築いて置かないと拙いことになりますよ」

「それは、どういうことかね?」

 私の言葉を不穏に感じたのだろう。議員がそう質問してきた。

「この地球は多くの問題を抱えています。人口問題、食糧問題、資源の問題、環境問題などです。それに宗教や民族対立などもあるでしょう。こういった問題を平和的に解決するには地球はあまりにも小さすぎる」

 地球という一惑星だけでは、資源も食料生産能力も限界があるんだよ。大体今でさえ無茶な食料増産体制をしているわけだからそのツケが後々出てくるだろう。

「問題が解決できない以上、いずれ限界がきて爆発しますよ。宇宙開発が大きく進んでいるのならまだ良かったのですが、現状は停滞していますからね。恐らく間に合わない。そして、実際にそうなると資源と食料を自給できない日本はかなりまずいことになります。それこそ国家滅亡の危機です」

 うん、暗黒の未来予想だね。第三次世界大戦か。もしくは核戦争か。

 

 何しろ馬鹿みたいに核兵器を作りまくっているから、ぶちきれると被害がシャレにならない。地球を何回滅ぼせるんだよ。

「それでなくてもこの日本列島は土地は狭いし、ろくな資源もないから将来性はないわけです。おまけに災害だけが豊富というデメリットが大きすぎます」

 資源を他国に握られている上に、食糧自給率なんて涙が出るほど酷いからね。

「それに日本は近所付き合いがかなり面倒で、もうウンザリしているでしょう?」

 これは、国内の不満を事あることに反日でガス抜きする特定アジア諸国を揶揄した言葉だ。実際、あんな国が隣国だとすごく迷惑します。

「ゆえに今後数百年の日本の発展を考えるなら、異世界に進出して日本人の生存権を広げるしかありません。そうなるとゲート技術を保有するブリタニアとの友好関係は最優先にしなければならないわけです。お分かりいただけましたか?」

 私の言葉に場は騒然となる。ふふ、これだけいっておけば、お馬鹿な議員でもブリタニアとの関係をこじらせるのは避けるだろう。

 

 将来におこるであろう日本滅亡。それは冗談抜きでありえることだ。それだけ地球各国が抱える問題は深刻なのだ。

 

 宇宙開発が間に合わない以上、ブリタニア帝国と手を組んで異世界に進出することが日本国存続の唯一の手段である。その主張が国会中継によって日本全土に伝わっていった。

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