ブリタニア帝国記 If編   作:ADONIS+

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その九(シドゥリ暦2031年)

 イズモ条約の結果、日本はイズモ各地の資源開発を進めていき、多くの資源が日本に流入してきた。ここまで順調だったのは、元々日本はブリタニアとの交渉後に資源採掘を行うことを前提に準備を進めていたからだ。この影響で資源価格が低下し、資源輸出国を中心に、いやそれを含めた多くの国で不満が発生した。

 

 何しろ日本が惑星一つの資源を独占しているのだ。無資源国家日本がいきなり資源大国になった。嫉妬や僻みがない方がおかしいだろう。

 さらに日本の与野党で大規模な移民計画が話し合われていた。ゲートの向こうには手つかずの土地が広がっており、開拓を行えば多くの利益があげられると判断した。

 

 これには財界の後押しもあった。彼らから見れば多大な犠牲と費用を投じて特地で多くの利権を手に入れたのに、結局ゲートが閉ざされてしまったせいで無意味になってしまった。もちろんあのままゲートを繋ぎっぱなしにしているよりは遥かにマシであったのは分かるが、逃がした魚が大きかっただけに、この話に飛びつかない理由はなかった。

 

 国民もアズライトの発言に影響されて、資源を他国に握られているという状況から脱却して将来性のあるイズモに進出すれば豊かになれるという考えから、それを支持している。

 

 こうして日本のイズモ進出が加速していた。

「……このように日本はほぼ我々の思惑通りに動いております。後は惑星イズモの領有権の譲渡というカードをどのタイミングで切るかを見極めるべきでしょう」

『ふむ、そうか。それで売国奴の動きは?』

「砲艦外交で牽制しているので、今のところは大人しいですね。其方の方はどうでしょうか?」

『宮廷貴族たちは例の口実で押し通している。実際それなりに効果があるからな。軍部は訓練を兼ねた任務で納得している』

「やはり、そうですか」

 ブリタニア帝国は帝政をしいている。それも皇帝主権という形であるだけでなく、その権威が凄まじいため皇帝の影響力が半端ではない。シドゥリが黒と言えば白でも黒になる。それだけに「皇帝の意志はすべてに優先する」というのがブリタニアだ。

 

 シドゥリが退位して別の皇族が皇帝になれば権威と影響力はある程度低下するだろうが、まだ現役であるのでそれは大分先の話だろう。

 宮廷貴族たちが日本に対する梃子入れをそれほど反対していないのは、やはり政治宣伝に使えるというのもあるが、あまりの衆愚政治ぶりにたとえ余分に支援しても自分たちのライバルになりえないと判断しているからだ。なまじ優秀だと将来的な不安要素になりかねないが、そういう意味では日本は安心してつき合える国であった。

『他国の反応は?』

「各国の大使館がしきりに会談を求めていますが、すべて断っています」

『そうだな。それでいい』

 ブリタニアも監察軍も日本以外に用はない。彼らと接触しても話がややこしくなるだけなので、断るというのが一番だ。

『まあいい。これで報告は終わりだな?』

「はい」

『そうか、では次も報告を頼むぞ』

「はっ」

 そこでモニターが消える。

 

 シドゥリにはああいった物の、本当にこのまま順調にいくとは思えない。前回のゲート事件では米中露の三国がもっぱら暗躍していたが、それ以外の国もいろいろやっていた。彼らは日本の一人勝ちを認めるだろうか?

 

 それらの牽制も考慮しての砲艦外交であったのだが、何か見落としているような気がしてならない。この状況で馬鹿な行動をする国家など存在しないとは思うが……。

 

 まあいい。今はそんなことを考えても仕方ない。問題が発生したら対処すればいいだけのことだ。その結果しだいでは滅亡する国家も出てくるだろうが、知ったことはない。

「アズライトどうだった?」

 ホテルの一室からでてきた私に伊藤がそう声をかけた。

「伊藤さん、ご苦労様です」

「まあ、それが任務だしな」

 自衛官の伊藤は私の護衛についている。それは上層部の命令だそうだ。恐らく護衛というのもあるだろうが、他国がブリタニアと関係を持つのを妨害するという意図もあるだろう。

 

 折角日本が優位にたっているのだから、巻き返されたくないと考えている。それは無駄な心配であるが、こちらの内情を知らない以上仕方ないか。

「それにしても私の護衛ですか。危険なのですか?」

「ああ、アズライトは外国から狙われる可能性があるんだよ」

 先のゲート事件の際に、異世界の要人が外国の工作員に散々狙われていたのは有名な話である。

「勘違いして貰っては困りますが、私は帝国政府の人間ではなくて、三千世界監察軍の隊員に過ぎないんですよ」

「どういうことだ?」

 そういえば、彼らは監察軍の内情とかは知らないから、分からないか。皇帝に直接に声をかけたことから、私がそれなりの立場の人間だと誤認したのだろうか?

 

 確かに皇帝から直接任務を与えられて、更に皇帝に直接報告できるというのはブリタニア政府内では、それなりの重臣ぐらいなもの。それなのにアズライトが直接報告できるのは、シドゥリと同じトリッパーという関係からだ。

 

 シドゥリは自分と同じトリッパーを特別扱いしている。それはトリッパーがはたす役割の重要性もあるだろうが、数少ない同胞でもあるからだが、その辺りは部外者からは分かりにくい筈。

「そもそも私を含めて監察軍メンバーの大半がブリタニア人ではなく、スカウトされて集まった異世界人よ。だからブリタニアでは監察軍は元から外様大名みたいな物で、しかも私は監察軍の幹部ではなく、ただの隊員にすぎないから外様大名の郷士みたいな者なんだよね。そんな私のブリタニア本国への影響力は無に等しいわけね」

 例えアズライトを招待(誘拐)してブリタニアと繋がりを持とうとしても、そもそもアズライトはブリタニアの要人ではないので意味がない。アズライトは本当に下っ端でしかないのだ。

「えっ、そうなのか?」

「そういうことよ。それよりこれから会いたい人がいるから取り次いで貰いたいのだけど……」

「それはかまわないけど誰だよ」

「ええ、その人は……」

夏目side

 選挙に負けて野党となった保守党党首の夏目は、突然のアズライト氏の訪問に驚いた。

 

 ブリタニア帝国という存在は彼ら保守党にとっては未知の存在であった。

 

 異世界といえば前回の特地の印象が大きいが、あの世界は地球の先進国から見れば千年は文明が遅れていた。その為、自衛隊が圧勝できたが、ブリタニア相手では今度は自分たちが圧倒的に劣る存在となってしまったのだ。

 

 彼らからの一方的な情報であるが、あの大艦隊を見ただけでも次元違いの国力、軍事力、文明レベルであるのは分かりきっていた。

 当然ながら、保守党ではブリタニアは議論の対象となったが、何しろ情報が少なすぎて手探りでやっていた。

 

 だからといって日本が直接ブリタニアに赴いて調査することもできない。彼らからの一方的に与えられた情報を分析するしかないのが現状だ。

「突然の訪問を受けていただきありがとうございます。事前にアポイントを取りたかったのですが、情報漏れの恐れがありますから」

 アズライトは夏目に礼を言う一方で、日本の情報管理を信用していないことを言外に伝えてきた。これには夏目も苦笑いする。情報漏れは前回のゲート事件で散々思い知らされている。それもこれも、この国に蔓延る売国奴たちの所為だ。

 

 そして、日本は未だに売国奴という膿を出し切れていない。保守党はそれをやりきる前に選挙で負けてしまったからだ。

 

 銀座争乱事件の際に、マスコミ上層部に蔓延る売国奴を潰したが、その後マスコミが報復として保守党に大々的にバッシングを行った。

 

 本来、日本国民が賢明であれば、それは大した痛手ではなかったが、ここで国民の政治判断力の低さが出た。民衆はマスコミに踊らされて世論はあっさりと動いてしまった。

「残念ですが、この国には売国奴が多いようですね」

 夏目は顔色を変える。そんなことを直接指摘してくる外国人は普通はいない。

「私たち監察軍でも問題視されています。帝国上層部にとってはその方がいいのですが」

「……それは、どういうことでしょうか?」

「帝政国家にとって、衆愚政治となっている共和制国家は絶好の政治宣伝になります」

 衆愚政治か。言い返す言葉もないな。確かに今の日本は衆愚政治その物だ。そして、ブリタニアはそんな日本を国内の統治に利用するのだろう。なるほど、ブリタニアが日本に干渉してくる理由はそれか。確かに彼らからすれば国益になる。

「ここだけの話ですが、皇帝陛下は惑星イズモの領有権を日本国に譲渡してもいいと考えています」

「なんですと!?」

 領有権の譲渡というのは想像以上のカードであるが、何の為にここまで大判振る舞いをする?

「先日もいいましたが、ブリタニアにとってあの惑星はどうでもいいものですから、貴方達からすれば異常なまでの大盤振る舞いもできるのです」

 価値観の違いというわけか。地球という一惑星で領土問題を起こしている私たちとは考え方が違う。宇宙にまたにかける彼らのなんと壮大な事か。彼らからすれば私たちは小さな存在なのだろう。

「さて、ここまで話すのは貴方に協力して欲しいことがあるのです」

「それは何でしょうか?」

 やはり来たか。一体どんな無理難題だ?

「イズモへの進出を後押しして欲しいのですよ。そして将来的にはイズモに国家を移転することになると思います」

「なっ、国家の移転だと!?」

 何だと、何を言っている。そんなことが……。

「出来ないわけではないでしょう。イズモには多くの可能性があります」

 確かにそうだ。しかし、何故国家移転などしなければならない。

「何故かと言いますと、ゲートに頼らない体制作りのためです」

 ゲートに頼らないか。

 

 確かにイズモの領有権を手に入れてイズモに国家移転をすれば、わざわざゲートを使わずとも問題なくなる。惑星イズモの土地も資源も日本が独占して好きなだけ引きこもればいいのだ。ついでに日本に住み着いている在日朝鮮人や在日韓国人といった邪魔な特定アジア諸国の人間を日本列島に置いていけば、新天地での厄介事は減るだろう。

 というよりも彼らはゲートを使うことはできない。ゲートの権利を握るブリタニアは、地球人でゲートを通れるのは日本国籍を保有する者に限定するとイズモ条約で決めており、日本人でないとゲートは使えない状態なのだ。

 

 現在、ゲートの警備は陸上自衛隊が行っており、条約に基づいてゲートの不正使用を阻止しており、仮に外国人がゲートを潜り抜けたとしても日本が責任をもって侵入者を速やかに地球側に追い出すことになっていた。

 

 更に日本は、ゲート使用を求める各国の圧力もこの条約を盾に断っている。

「どうですか。将来の事を考えると悪い話ではないですよ」

 アズライトは微笑を浮かべた。

ホワイトハウスside

「アズライト嬢とはまだ接触できないのか!」

 マハナ大統領は、駐日大使を電話で怒鳴りつける。彼は地球の唯一の超大国アメリカ合衆国大統領だ。地球最強の権力者といってもいいだろう。

 

 しかし、ブリタニアはアメリカの存在その物を無視するかのようにまるで相手にしなかった。

 

 いや、彼にも分かっていた。地球最強の国家といってもそれは高々一惑星の地方勢力で、彼らから見れば遅れた弱小国家でしかない事を。アメリカの覇権というものが吹けば吹っ飛ぶような軽い物に過ぎないことを。その事で、国内では動揺が広がっている。国民は不安になっているのだ。

 

 マハナは大統領として、この事態をなんとかするためにブリタニアと関係を持とうと、まずアズライトと接触をはかった。何しろアズライト以外の者は異世界に帰還しており、彼女に接触するしかないのだった。

 

 しかし、アズライトは相変わらず日本以外と接触しようとしない。駐日大使の会談の申し込みは全て断られた。

 おまけに日本政府もブリタニアが他国と接触するのを嫌って、それを妨害していた。これは銀座争乱事件で、各国がこぞって日本に敵対行動をしたことで、日本が他国に不信を抱いていたのが大きかった。これでアメリカだけでなく多くの国が悪影響を受けた。

「いいか。できるだけの事はしろ」といって電話を切る。

 

 しかし、こうなるとしばらく様子見をするしかないな。そう、考えていたマハナであったが、秘書官が凶報を届けてきた。

「大統領閣下、大韓民国がブリタニア帝国に謝罪と賠償を要求しています」

「なにっ! どういうことだ!?」

「今回の艦隊来訪で被った迷惑を抗議していますが、彼らはゲート技術を手に入れたいようです」

「……韓国政府は丸ごと火病を発症したのかね?」

 マハナは呆れ果てた。ブリタニアから見ればこちらは辺境の蛮族だ。その様な相手からこんな要求が出て面白いわけがない。

 

 大体、相手の事をろくに知らないのにいきなりこれは無謀すぎるだろう。

「彼らの行動は、あまりにも軽率すぎます」

「うむ、最悪の場合は、在韓米軍の撤退も視野に入れた方が良いな」

「確かに韓国の巻き添えはごめんです」

 もしもブリタニアがその気になれば韓国どころか地球その物が危機に陥る。そうでなくても韓国はただではすまないだろう。

 

 こうしてアメリカは新たな厄介事に対処するべく動き出した。




あとがき

 大韓民国お得意の謝罪と賠償が炸裂。これによって朝鮮半島が世界間戦争の舞台となるフラグが成立しました。といっても戦争にもなりませんが。
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