ブリタニア帝国記 If編   作:ADONIS+

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その十一(シドゥリ暦2031年)

 大韓民国の滅亡。それは地球各国が既に予想しており、それ自体はさして驚くにあたいしない物だったが、それでもすべての韓国人がいきなり消失するとは思わなかった。

 

 大韓民国国内にいた韓国人だけでなく、在日韓国人を初めとして世界各地に点在していた韓国人が一斉に消えたのだ。

 

 一体どういう技術を使えばそのような事が可能となるのか、皆目検討もつかない。ただ分かっているのは、大韓民国はすべての韓国人ごとブリタニア帝国によって始末されたという事実だけだった。

 

 想像を絶するブリタニアの力に各国が改めて恐怖した。

「ブリタニアの超科学によって世界その物を作り替えて、すべての韓国人を抹消しました」

 韓国人の消失後、マスコミからその事を質問されたアズライトはそう答えた。

「世界を作り替えたですか。そんな事が可能なのですか?」

「はい。地球でも『進みすぎた科学は魔法と変わらない』と言われていますが、ブリタニアの超科学を持ってすれば、魔法どころか神様の真似事もできます」

 このアズライトの発言に各国に動揺が広がった。

 

 彼らは世界を己の思いのままに作り替えて問答無用で韓国人を抹消したのだ。こんなデタラメなことが出来るブリタニア帝国は、正に神の如き存在である。

 

 これに各国の宗教界が大騒ぎになった。人の身でありながら神の如き力を振るう異世界の巨大星間国家。それは彼らの常識を逸脱した存在だった。

 

 しかし、だからといってブリタニア帝国に敵対的な言動をする者は皆無だった。彼らは、韓国人の二の舞になるつもりはなかった。

 一方、唯一ブリタニア帝国との交流を持っている日本国ではある意味落ち着いていた。元々、日本人は反日国家である大韓民国を毛嫌いしていたから「反日国家が消えてくれてすっきりした」と韓国人に対する同情論もほとんどなかった。

 

 在日韓国人がすべて抹消されたことにしても、「国内の不穏分子が消えただけだ」と冷淡な反応だった。

 

 ここまで日本人が冷たかったのは、例の皇帝謝罪発言がそれだけ日本を呆れさせたからだ。これは韓国が以前やらかした天皇謝罪発言の焼き増しのような行動であり、以前の侮辱行為を忘れていない多くの日本人からは「馬鹿が自滅した」「学習能力がない」などと不評を買っていた。

 しかし、大韓民国の滅亡は国際社会で大きな問題となった。

 

 史上滅亡した国家は数あれど、いきなり国民すべてが抹消されて滅亡した国家など存在しない。前例がないだけに、無人地帯となった旧大韓民国領をどうするかで、国連では大いに揉めた。ここで旧韓国領の所有権を主張したのが北朝鮮「朝鮮民主主義人民共和国」である。

 

 あの「民主主義ってどこが?」とか「共和国じゃなくて金王朝朝鮮王国の間違いじゃないの?」といろいろと国名につっこみ所満載の国だ。

 その北朝鮮は、「朝鮮半島は朝鮮民族の物である」と主張した。これは歴史的に考えるとある意味正統なものだ。

 

 アメリカも不満があったが、文句を付けようにも韓国人が一人もいないのでは、ケチをつけようがない。結果として、旧韓国領は北朝鮮に併合されることになる。こうして朝鮮半島はなし崩しに統一された。

 しかし、ここで転んでもタダではおきないのがアメリカだ。アメリカのイージス艦などの軍事技術が中国や北朝鮮に流出するのを避ける為に、韓国での機密保持の処置はしっかり行っている辺りはなかなかしたたかである。

『ふむ、そちらではそうなっているのか』

「はい。その為、例のカードを切ることになりそうですトレーズ閣下」

『それは時期早々ではないのか?』

「ですが例の韓国人一掃で、日本国でブリタニア脅威論が台頭する恐れがあります。それを防ぐためにはある程度のアメは必要かも知れません」

 韓国人を全滅させたことで一部の日本人に不穏な動きがある。彼らは青臭い人道論を振りかざしてブリタニアのやり方を非難していた。無論それは一部にすぎず、大半の者は韓国人には冷たかった。

 

 しかし、放置はできないので手を打って置いたが、更なる追加処置は必要だ。

『君も大変だな。まぁ、しばらくは引き続き日本政府と接触を続けてくれ。だが、アズライト事はエレガントに運ぶべきだよ』

 トレーズはそういって、モニターを切った。トレーズが大韓民国の事を指摘しているのは分かる。一発の銃弾も使わずに丸ごと片づけた事から一部では「華麗なる民族浄化」と呼ばれるが、やっていることは民間人の大量虐殺にすぎない。

 

 これはブリタニア帝国では当然のこととして判断されているが、トレーズはあまり好ましく思っていないのだろう。

 そもそも監察軍と帝国上層部ではその立場が違うからシドゥリが仲介して事前に利害の調整をしている。

 

 今回にしても監察軍は娯楽文化を満喫できる観光地としてゲート日本を見ていて、わずか数十年で日本が潰れてしまうのは勿体ないから異世界進出という梃子入れをして、できるだけ長く観光地として利用できるようにしている。

 

 一方、帝国上層部は民主主義のネガティブキャンペーンの材料としてゲート日本を利用しようとしている。帝国上層部から見ればゲート日本はわざわざ偏向報道などしなくてもありのままの事実を客観的に喧伝するだけで十分効果が見込める存在だった。

 この嘘を付かないというのは案外大切であった。

 

 ブリタニアのマスコミは情報省が管理しており、その方針は国益第一だ。

 

 報道の公平性という点では問題だらけであるが、そもそも真に公平な報道というものは現実的にあり得ない以上、国益を尊重するのが一番無難なのだ。このためブリタニアの報道は『国益を損なわない情報は正確に伝える』という形になっている。

 

 では、国益を損ないかねない情報はというと、勿論報道されることはない。これは情報省がキッチリやっており、もしマスコミが刃向かえば記者だけでなく、その関係者たちまで社会秩序維持局の獲物になるのだ。

 

 結果としてブリタニアのマスコミは無難な情報はともかく、マズイ情報や判断に困る情報に関しては情報省に問い合わせを行って、判断を仰ぎその指示に従う。

 こうしてみるとブリタニアのマスコミもいろいろとヤバイですが、ブリタニアは共和制国家ではなく帝政国家なのでこの方が上手くいっています。

 

 それは、報道の自由や国民の知る権利を主張していても、実際にはただの売国奴になっているゲート日本のマスゴミとは対象的である。

「しかし、エレガントか…」

 でもねトレーズ、貴方は甘すぎるのよ。そもそも戦いに卑怯もなにもない。要は勝てばいいのだ。自衛隊みたいに戦争に人道だの倫理だのを基準にするほうがおかしい。

 

 そもそも戦争のやり方など、密接に交流を進めている国家間であって初めて通用する物だ。まったくの異世界相手にそんなもの通用しない。

 前回のゲート事件において、あれだけ戦力的に圧倒していた自衛隊が苦戦したのは、それが理由だ。便衣兵だのゲリラだのと散々やられれば、そりゃ対応できない。

 

 この場合、ゾルダルは卑劣で、自衛隊は正々堂々と戦って苦戦したと評価されるかもしれないが、私から言わせれば馬鹿馬鹿しいことだ。

 

 確かに彼らの自国民をもすりつぶすやり方は後々の統治に悪影響を与えるので反対だが、まともに戦わないというのは正しいだろう。

 

 結局、他国の人間それも敵国民など潜在的な敵でしかない。

 ちなみにブリタニア帝国軍の戦時の基本方針は『敵と敵と疑わしい者は討て』だ。帝国軍はゲリラや便衣兵など当たり前として考慮している。だから敵国人なら民間人でも怪しむし、怪しければ討つ。故にブリタニアが主体となる戦いは殲滅戦で、民族浄化や民間人虐殺が当たり前に起こる。

 

 例外はブリタニア帝国軍が他国から要請されて支援する場合だろう。帝国軍は訓練替わりにそれを利用するが、これなら戦場で敵軍のみを叩くことが多い。

 

 帝国軍は非情といえば非情であるが、ブリタニア人にとって異世界人の命など羽根よりも軽い。仮に異世界人の民衆を一万人殺すことで、一人のブリタニア兵の命が助かるなら十分価値があるのだ。

トレーズside

 ブリタニアと呼ばれる世界に存在するスペースコロニー群。これらは三千世界監察軍本部であった。

 

 三千世界監察軍はブリタニア帝国皇帝直轄機関で異世界専門の民兵組織だ。それゆえ彼らはブリタニア帝国が存在する次元世界に置いては本部に引きこもって研究を進めている程度でそれほど目立った活動はしていない。彼らの扱いとしては皇帝の私兵集団に近い。

 

 この様な組織が創設されたのは、下位世界に点在するトリッパーたちがお互いに協力しあって各々の目的を達成しようとしたからだ。つまり監察軍とはトリッパーの相互扶助組織なのだ。

 この組織はシドゥリ暦2000年に勃発した第一次ベヅァー戦争(超戦士伝説参照)で壊滅的な被害を受けたが、戦後トレーズ・クシュリナーダが監察軍総司令官になり組織を立て直して、短期間で再び下位世界での活動を可能にした。

「まさか、こうなるとはな…」

「これは韓国がこちらの想定以上に愚かだったから発生した事態です。トレーズ様の気になさることではないと思います。彼らの自業自得です」

「そうだな。ありがとうレディ」

 長年自分に付き添ってくれるレディにトレーズは礼をいった。

 

 大韓民国の暴走はトレーズの計算違いだった。地球各国との対立を避けるために彼は砲艦外交という手段を認めた。それが一番いい方法だと思ったからだ。

 

 問題はこちらの想定を超えた愚行を彼らがやったことだった。おかげで穏便に華麗に事を収めようとしたトレーズの思惑は台無しになった。

 そもそもトレーズはこの計画には中立だった。トレーズ本人は、別に日本の大衆文化(サブカルチャー)にはさほど興味はなかった。しかし、組織のメンバーに興味を持つ者が多かったので、彼らの為に観光地を手に入れるという計画をやらざるを得なかった。

「レディ、日本国の影響はどうだ?」

「幸い日本国と大韓民国との関係は険悪であったので、日本国民の間では韓国人に対する同情論はほとんどありません。むしろ『邪魔者を始末してくれた』と内心歓迎されている意見すらあるようです。まあ、これはアズライトの工作も影響しているようですね」

 アズライトはマシンチャイルドとしての能力で、ネットでゲート日本の世論誘導工作を行っていた。

「マシンチャイルドの面目躍如だな。ではゲート日本のマスコミの動きは?」

 今回の一件でどのような影響が出るか。まず、それを見極めないといけない。

「それに関しては好意的ではないようですね。帝国に批判的な記事が掲載されています。日本政府はそれを必死に押さえているようですが」

 売国奴を中心にマスゴミはブリタニアに対してバッシングを開始していたが、これは政府や国民から顰蹙を買っていて、遠からず不買運動に発展する動きとなっていた。状況をわきまえない彼らは国民からも危険視されつつあったのだ。

 

 近々、それらのマスゴミには警察の一斉捜索が開始されるらしい。元々叩けばいくらでもホコリが出てくるマスゴミだ。捜索を行って微罪でもいいので、何か問題があれば徹底的に叩けばいい。これらの動きはアズライトが日本政府に要請したものらしい。

 

 日本政府としても、ブリタニア帝国というとんでもない超大国と付き合っていくにあたって、邪魔になる売国奴を少しでも排除しておきたかったから、それに便乗していた。

「つまり日本政府は今後国内の掃除に力を入れるということかな?」

「はい。そのとおりですトレーズ様」

「うむ、それは歓迎するべきことだろうな」

 帝国上層部はゲート日本がマスゴミや売国奴が蔓延る衆愚政治国家であることを望んでいるが、トレーズとしては仮にも自分たちと交流を持つ相手が愚にも付かない国家だという状況は好ましくなかった。

「是非とも彼らにはいいプレイヤーに成長して欲しいものだ」

ホワイトハウスside

 ヴァーブル朝ブリタニア帝国の登場で一番煽りをくらった国家としてアメリカ合衆国の名が上げられるだろう。

 

 冷戦の終結によって、アメリカは地球で唯一の超大国となっていた。現代の世界帝国にして覇権国家だった。世界の警察官を自称しているだけあってアメリカは突出していた。

 しかし、ブリタニア帝国の登場が、ここで世界情勢に大きな影響を与えた。アメリカを快く思わない所謂反米国家は何とかあの巨大星間国家との繋がりを持とうとしだしたのだ。

 

 勿論アメリカもその動きは把握していた。その為、アメリカもブリタニアと接触を図ることを進めていた。最も反米国家とアメリカだけでなくその他の国家にとってもそれは空振りとなっていた。そもそもブリタニアは日本国に窓口を限定していて他国には目もくれなかったのだ。

 そうこうしている内に、大韓民国が暴走して滅亡した。

 

 その後の後始末で、イージス艦などのアメリカの軍事技術流出を阻止する事は成功したものの、朝鮮半島全土が北朝鮮の手に渡ってしまった事が痛手だった。将来の仮想敵である中国の影響力の拡大が懸念されるからだが、それよりももっと差し迫った問題があった。それがブリタニア帝国の動きだった。

 現在アメリカは悲鳴を上げていた。彼らは強者だった。圧倒的な強国として地球に君臨し続けた超大国だった。

 

 しかし、現状は次元違いの巨大星間国家の外圧に怯える始末で、アメリカ人はこの状況に免疫はなった。免疫がないがゆえに、一体どう対処していいのか分からず恐慌状態だった。

 

 例えるなら、圧倒的な欧米列強の脅威に怯えていた頃の明治政府の様な物。いや、それよりも酷い状況だった。

「では、アメリカがブリタニア帝国に対抗するのは不可能なのだな?」

 会議の場で、マハナ大統領は分かりきったことであるが、現状を確認するように発言する。閣僚たちもそれに頷く。

「ではブリタニアを刺激しないように融和外交を行うということでいいな。韓国人と同じ末路は嫌だからな」

「問題は彼らの目的です。一体何を企んでいるのか?」

 ブリタニア帝国は大規模なゲートを日本国内に出現させ、更に皇帝が十万隻もの宇宙艦隊と共に来訪した。おまけに日本に異世界の惑星イズモの利権を与えていた。

 

 やることが派手でかなり大規模だ。どう考えても国家規模の大きな目的で動いている筈なのに彼らの目的が推測できない。

 

 表向きは「日本で観光をしたい」「観光を円滑にするために日本国との友好関係になりたい」とか言っているが、それを真に受ける国家指導者はいなかった。

 

 事実は小説より奇なりとはよくいったもので、あまりにもトリッパーたちの動機が非常識であったために彼らは深読みしてしまい、疑心暗鬼になっていた。

「それが分かれば苦労はしない」

「だが分かっていることがある。ブリタニア帝国皇帝を侮辱してはならないということだ」

 確かにあの時戦争になると思っていたが、まさか戦いにもならず問答無用で抹消されるとは思わなかった。その結果、韓国人は一人残らず消えた。

 

 戦争で民間人が犠牲になるというのは常識だが、すべての国民を一気に消滅させるとは思わなかった。それは人の所業ではなく、まるで韓国人に神の天罰が下ったかのような印象すらあった。

 

 次元が違うとしかいえない。

 そんなブリタニア帝国にアメリカが対抗する? それは無理だ。

 

 ここで地球各国が束になったらと仮定する。例えば現在の国連を発展させて地球連邦でも結成したとしても、それでブリタニアに対抗しようとしても一蹴されてしまうだろう。ブリタニアと我々の差はその程度で埋まるような生やさしいものではない。下手に反ブリタニアを唱えて結束でもしようものなら、即座に潰されるだけだ。

 

 このような相手に対して強行策はとれない。

「しかし、やはり気になるのが彼らが何故日本に関心をよせているかですね」

「そうだな」

 ブリタニアは明らかに日本の何かを狙っている。その気になれば武力で容易く占領できるにも関わらず、強行策をとらない。

 

 日本のマスゴミが問題を起こしても注意程度ですませて、その後すぐにあれほどの贈り物をしているなど異様なまでに寛容な態度である一方で、大韓民国の侮辱に関してはあれほどまでに冷酷な行動を取っている。この差は何だ? 彼らにとって日本とその他の国を分ける何かがあるのか? それがさっぱりわからない。

「大統領閣下、大変です!」

 そんな会議に最中に補佐官から緊急の連絡が入った。マハナは「ブリタニア帝国が何か動きを見せたらすぐに報告しろ」と命令していたので、補佐官は会議中であっても報せてきたのだ。

「何があったのです?」

「ブリタニア帝国が、惑星イズモの領有権を日本国に譲渡する条約を近々結ぶことを検討していると発表されました。また、その為に皇帝が再び日本に来訪するらしいとの事です」

「「「なっ、何だと!?」」」

 マハナ大統領だけでなく、閣僚たちは驚愕する。

 

 イズモの領有権の譲渡だと、どういうつもりだ? この派手な動きは一体どんな裏があるのだ?

 

 マハナ大統領は思わぬ事態の展開に頭を悩ませた。

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