ブリタニア帝国記 If編   作:ADONIS+

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その十四(シドゥリ暦2031年)

「クォーターで来るとは随分と凝っているわね」

 監察軍ご一行を乗せた船をアズライトは呆れた様子で見ていた。

 マクロス・クォーター。『マクロスF』に登場する全長402mの可変ステルス攻撃宇宙空母。艦船でありながら人型に変形して格闘戦が可能で、宇宙戦艦としての火力と宇宙空母としての能力まで併せ持っている。劇中では大活躍なこの艦であるが、帝国軍ではゲテモノ扱いされていた。

 

 帝国では戦艦なら戦艦としての機能が、空母なら空母としての機能を追求することが求められていた。戦艦と空母の機能をあせて持つというのは、仮想戦記では航空戦艦として人気であるが、実際にそれを運用しようとするとお互いの長所を潰し合ってしまう。

 

 更に艦船が変形して格闘戦を仕掛けるとあっては、「生産性と整備性が悪化するだろうが!」とか「そんなことをするぐらいなら、最初からガンバスターみたいな超大型の人型兵器を用意した方が遥かにマシだ!」などと言われる始末。

 

 その結果、監察軍がそれの改良艦を作ったとき、帝国軍は相手にしなかった。

 

 当の監察軍にしてもロマンの追求で作ったにすぎず、これが有効であるとは考えていなかった。とはいえあからさまにそう言うわけにもいかなかったので、表向きはデータ収集用の試作艦として建造されたという曰く付きの代物だった。

 

 実はこの手のトンデモ兵器は監察軍では別に珍しくなかった。機動兵器にしても帝国軍では可変戦闘機メサイアとルシファーなど少数に絞っていたが、監察軍ではモビルスーツやパーソナル・トルーパーなどを多種多数に製造していた。

 

 それは実物大のプラモというよりも『スーパーロボット大戦』のようで、オタク魂を大いに満足させるが、生産性や整備性を考えると悪夢でしかなかった。

 監察軍のオタクたちは今回それを東京観光の足として使用していた。東京湾上空に浮かぶクォーターからシャトルとそれを護衛する赤い可変戦闘機が射出させていく。可変戦闘機プロトルシファー。それはブリタニア帝国軍の新型可変戦闘機ルシファーのプロトタイプだ。

「ハルヒか。余計なことを」

 涼宮ハルヒは、監察軍技術部に所属する転生型トリッパーだ。現在監察軍に所属している者で、あの可変戦闘機を使うパイロットといえばハルヒしかいない。ハルヒからすればタダの航空ショーのつもりだろうが、地球各国に余計な刺激を与えたくないアズライトからすれば迷惑だった。

 

 ルシファーは、見事な飛行をしつつもファイター形態からバトロイド形態になり、更にガウォーク形態に変形して着地する。戦闘機が変形したことで周囲がざわめく。「VFなのか」とか「マクロスかよ」といった声が聞こえた。そういえば、ゲート日本ではマクロスシリーズは存在していたね。

 

 プロトルシファーから降りたハルヒは真っ直ぐにアズライトに近づく。

「そんなに余計だったかしら?」

「……聞こえていたのね。凄い地獄耳ね」

「機械で音声を拾っていただけよ」

「それで貴女が来たと言うことは例の件ですか?」

「いえ、今回はシャトルの護衛に来ただけよ。アズライトさんの引き継ぎはあのシャトルに乗っているわ」

「そう」

 アズライトは、いつまでも地球で大使モドキを続けるつもりはなかったので、交代要員を求めていた。その為に派遣された者が今回ついでに送り込まれていた。

 

 そして、少し離れた場所でシャトルから出てくるトリッパーたち(主にオタク)の中から二人の少女が近づいて来た。確か彼女たちは……。

「「お久しぶりですアズライトさん」」

「確か長門有希(ながと ゆき)に朝倉涼子(あさくら りょうこ)だったかしら?」

 彼女たちはハルヒが作り出したアンドロイドで、ちなみに外見と名前は、原作繋がりで決めたらしい。長門は眼鏡無しモードですね。

 

 ちなみに彼女たちは原作のような強力な力を持っておらず、ただのアンドロイドにすぎない。そもそも監察軍を含めてブリタニアではカグヤという例外を除いて、自律意識を持つコンピュータやアンドロイドにはある程度のリミッターをかけるし、余計な力を持たせるのを避けている。それは『ターミネイター』のスカイネットのような機械の暴走を恐れたからだ。

 自律意識を持つ人工知性体との対等に共存していくのは案外難しい。少なくともブリタニア人は彼らと対等の存在になるというのは認めないだろう。

 

 確かに自分たちが作り出した存在が自分たちと対等だとは認めがたいし、潜在的な恐怖もある。

 

 高度な文明を誇るブリタニア人といっても、そのスペックは大したことはない。身体能力では、どこぞの戦闘種族ではないので、戦えば戦うほど強くなるわけでもないし、限界を超える戦闘力を手に入れることができるわけじゃない。知能面でも、自称“新人類”みたいに遺伝子調整をうけているわけじゃないので、天才的な知能を発揮することもない。

 

 つまり極ありきたりな平凡な種族にすぎない。とてもじゃないがハイスペックを誇る人工知性体に対抗できない脆弱な種族。それがブリタニア人なのだから、彼らは潜在意識では恐れているのだろう。まあ、プライドの高い彼らは表だってそれを認めないだろうが、その他諸々の問題の為にそれらの問題は保留にしていた。

「長門が貴女の後任で、朝倉はそのサポート役よ」

「そう、それはよかったわ。でも彼女たちで大丈夫なの?」

 確かにこの世界でいつまでも貴重なトリッパーを配置できないから彼女たちに任せればいいとは思うが、「アンドロイドを帝国の代表のごとき立場にしていいのか?」と考えてしまう。

「本当はシルバレルが候補にあがっていたんだけどね」

「シルバレルですか」

 

 アズライトは嫌そうに表情を歪める。シルバレルは『Rance』世界の憑依型トリッパーで、そのブスさ加減からあまり好まれていなかった。

 

 実はブリタニア帝国は『魔法少女リリカルなのは』の世界設定からか上位世界よりも容姿はいい。凄い美人が多くて最低でも普通という世界だからブスというのはいないし、トリッパーも総じて容姿は平均して高いし、アンドロイドも美女美少女で構成されている。

 

 つまり、みんな美男美女ばかりで、そんな中でシルバレルは悪い意味で目立つ。伝説のブスの名は伊達ではない。面食いのシドゥリなど露骨にシルバレルを毛嫌いしているほどだ。

「冗談でしょう? シルバレルなんて送り込んだら印象が最悪になっちゃうよ」

 

 外見年齢が10歳ほどとはいえ容姿端麗な美少女の後が、あのブスでは落差が大きすぎる。

 

「ええ、だから長門たちにやらせることにしたのよ。この際アンドロイドでも容姿がいいなら問題ないわ」

「……背に腹は代えられないわね。いいでしょう。シルバレルよりはマシだしね」

 

 下手に文句を付けてシルバレルが来たらたまらないので、アズライトはしぶしぶ妥協した。とりあえず後で日本政府にはお別れと、後任人事についてお知らせしておかないといけないわね。

伊藤side

「おいおい、マクロスかよ」

 

 伊藤は目の前で着地した戦闘機モドキ、というより可変戦闘機を見てそう呟いた。ゲート日本でアニメに詳しい人間ならばマクロスは大半が知っている。

 

「さすがはブリタニア帝国だな。あんな物まで実用化するなんて」

 可変戦闘機というのはアニメでは知られているが、所詮は創作物に登場する兵器にすぎない。それがこうして実物を見ることができるとは思わなかった。オタクとしては興奮するものがある。それは見物人もそうだったのだろう。彼らの可変戦闘機を見る目が熱い。

 

 その可変戦闘機から降りてきたパイロットはEX-ギアのような物を装着していたが、それがいきなり消えて監察軍の制服を着た16歳ぐらいの少女が現れた。

 

 粒子変換か? いずれにしても想像もできないハイテクだ。

 その少女を含めた三人はアズライトと少し話した後でシャトルの方に戻り、しばらくするとアズライトが来た。

 

「伊藤さん、そろそろこの任務も終わりですからお別れをいいにきました」

 

 詳しく聞くと彼女は監察軍に帰るらしい。後任を聞くとアズライトよりは外見年齢が上であるが、それでも女子高生ぐらいにしかみえない少女だった。

 

「そうか。まあ、あちらでも元気でな」

「ええ、ありがとう」

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