ブリタニア帝国記 If編   作:ADONIS+

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その十七(シドゥリ暦2032年)

 現在は惑星出雲の領有権を日本国に譲渡してから、一年余りが過ぎていた。この時期のゲート日本は、出雲の開拓に力を入れていて、その一環として陸上自衛隊を増強していた。それは、出雲の野生動物を排除するために必要だったからだ。出雲開拓で人手が必要な以上、人員を増やすしかない。

 

 自衛隊の増強にはいろいろと揉めたらしいが、現実問題として増やさないとやっていけない為に議会も渋々認めていた。こうして確保した土地はすべて国有財産となっているが、資源地帯は国有地として投資を行い、残りは民間に売却する計画が進められている。

 

 そうなれば膨大な国の借金は一気に解消されるだろう。借金返済で国は大万歳という状況だ。そんな明るい未来図によって日本政府は大いに浮かれていていた。

 秋葉原。そこは電化製品とオタク文化の一大拠点。

 

 それ故に、オタクなトリッパーたちが観光地として最も活用したのは言うまでもない。というよりもトリッパーたちからアンケートを取った<観光地に行きたい場所の第一位>が秋葉原だった。

 今回、アズライトとシドゥリは、そんな秋葉原を観光している。

 

 アズライトはいつもの青のゴスロリであるが、シドゥリはお忍びの観光なので、清楚な白いワンピースに白い帽子と、普通の美少女な恰好をしていた。なんか見た目だけなら、どこかの深窓の令嬢に見える。とても二千年もの月日を生き、巨大帝国に君臨している人物には見えないだろう。

 そんなシドゥリが、お忍びとはいえ、それを伝えられた日本政府は色々と慌てていたようだが、それは余談である。

 

 情報管理の甘い日本のことだから情報が他国に漏れる恐れがあるが、それでもブリタニアにちょっかいを出してくる国は存在しない。ゲート事件の際にアメリカ、中国、ロシアが帝国皇女を誘拐しようとしていたが、あれは帝国が弱小国家だったからだ。ブリタニア帝国にそんなふざけた真似をすればどうなるか? それが分からない国など地球上に存在しない。

 

 その上、日本政府が念のために護衛を付けていたので、その二人の案内人をやっている梨紗は、落ち着いて秋葉原を歩いていた。

「確かにいろいろと興味深い場所だけど、この空気の汚さは困りものね」

 

 シドゥリが表情を歪めている。覚醒者は感覚が鋭い為にこの臭いが鼻につく。まあ、覚醒者でなくても、空気が綺麗な場所で生活しているブリタニア人にはこれはキツイだろう。

 

 ゲート世界のように自動車の排気ガスや工場の排煙などを垂れ流ししていれば、汚いことこの上ないし、健康にも良くない。

「効率ばかり追求して、環境問題が疎かになっているもの。仕方ないと思うよ」

 

 文明の発祥段階から環境に十分配慮していたブリタニアでは、当然ながら環境問題はおきていない。というよりも車は電気自動車だし、工場も環境対策は万全であった。その辺りは環境省が大活躍しており、その手の規則に違反すると罰則が厳しい。

 

 シドゥリが環境問題を早期に取り組んでいたのは、その手の問題は発展してから修正する場合多くの痛みを伴うからだ。それは現在の地球を見ていればよく分かる。だから、発展する前から対策を講じることで、そういった問題を効率よく解消していた。

 

 この様に、ブリタニア帝国でも人間が快適に居住できる惑星は貴重であり、その環境にはかなり配慮していた。かつてのミッドチルダの大都市ですら、クリーンで安全を掲げていただけあって環境対策では地球よりもかなり良かったのだ。

「こういう基礎的な部分は大切だよ。それを無視して経済効率ばかり追求するなんて、これでは地球の文明レベル以前の問題ね。これなら中世の時代の方がまだマシね」

「確かに、なまじ中途半端に文明を発達させているから、かなり歪んでいますね」

 地球では環境対策が大きく遅れている。深刻な影響が出てから初めて議論を開始しており、それにしても経済発展を優先する国々はまともに対策をとらず、環境の悪化は深刻な物となっている。

 

 小手先だけの環境対策で満足している状況ではない。もっと根本的な対策が必要になるのは子供でも分かることだが、国益や経済が絡んでそれができない。というか小手先だけの環境対策すらやらない国も多いのだ。

「人の欲望は大きな力になるわ。でも悪い方に転がると…」

「こういう風になると。でも、これは仕方ないのでは?」

 

 確かに地球に比べればブリタニア帝国は上手くやっている。

 

 しかし、その成功は前世の知識やベルカの知識などを利用してチートの限りをつくした結果手に入れたもの。それらがない世界では、失敗するのは当たり前かもしれない。この拙い状況は、ある意味必然ともいえた。

「やはり地球はそう長く持たない。日本を出雲に進出させたのは正解だったわね」

 

 ゲート日本を出雲に進出させたのは日本という観光地を長期間確保するためだ。将来的に地球がダメになる可能性が高いために、日本人の生存権を異世界に広げさせて、日本国の延命処置を施した。それは大成功を収めて日本は着々と惑星出雲に進出している。

 

 最も、ブリタニアがやっているのは日本に土地と資源を与えただけだ。知識や技術などは流石に提供していない。テコ入れはするが、無制限にはやらない。

 その理由は、ブリタニアはライバルなど必要としていない事が上げられる。

 

 ブリタニアにとってライバルがいれば将来的に脅威になる可能性がある。だから他国に支援するのはかなり慎重になる。といっても、ブリタニアは余程のことがない限り、脅威になりうる下位世界であっても潰したりはしない。

 

 勿論、下位世界は無限に存在している為、ブリタニア帝国とある程度張り合える星間国家も無限に存在しているので、それらを一々潰していたらキリがないという理由もある。

 

 重要なのは異世界転移技術を漏洩させないことだ。そうすればいくらそれらの国々が厄介であってもこちらに干渉できない。

 

 それでもブリタニアは念には念を入れて、自分からライバルを育てる様なことをしないだけで、自分たちが追いつかれる危険性を最低限に押さえる事ができた。

 

 そうして、自分たちが一番であり続ければいい。

 

 

 アズライトたちは、先程まで国立国会図書館分館を、実際はまんが文化の博物館を満喫していた。途中でシドゥリがモデルとしか思えないキャラが登場する18禁同人誌を見つけてしまうなどのハプニングがあったらしく、それはシャレにならないので、日本政府に苦情を伝えることになった。

 

 それはともかく、流石に国立だけあって、かなりの規模だ。そもそも日本の同人誌の数だけでも膨大な物になるから、それらを見るのはそれなりに面白かった。

「シドゥリ、次はどうする?」

 

 彼女たちは分館を堪能していたが、まだ時間が残っている。

 ちなみに軍資金(観光資金)は有り余っている。資金調達は金塊を日本政府に渡して日本円に交換して貰っている。何しろ金などブリタニアでは二束三文だが、地球では十分価値を持っている。

 

 これは中世欧州でコショウなどの香辛料を高値で売りさばいているかのような悪辣なやり方だったが、日本政府は損をしていないのでこれは正統な取引といえた。その為、梨紗に百万円を気軽に渡せたというワケである。

 ちなみに金がブリタニアで二束三文なのは、宇宙開発が進んで金が稀少ではなくなったのと、原子変換技術で金をいくらでも作れるからだ。かつて人々が求めた錬金術がブリタニアでは科学で実現されていた。また、この原子変換技術は様々な資源の製造にも使われていた。

 

 ブリタニアでは資源は採掘されるものではなく、機械で製造されるものが主流になっていた(一々採掘するよりも原子変換装置で大量生産した方がコストが安い)。

「そうだな。適当に店を回ってみようか。折角の秋葉原だ」

「確かにね」

 

 秋葉原は日本オタクの聖地とも言える。当然ながらシドゥリもアズライトも秋葉原を見て回るのは興味がある。

 しかし、漫画やライトノベルとかの本ならばともかく、アニメやゲーム(テレビゲームやパソコンゲーム)は、電気がないと使えない。日本の規格はブリタニアと異なるので、一々発電器から道具一式揃えないといけない。

 

 幸い秋葉原は電気街でもあるので、その手の物が豊富にあるからそれを見ておこう。

「まあ、こんなものかしら」

「沢山買ったわね」

 

 梨紗が言うようにシドゥリ達はかなり多く買い物していた。それらの品物は、シドゥリのデバイスに格納している為に持ち運びには問題がなかったが、そのため発電器からアニメDVD、ゲームソフト、漫画などなど色々買いあさった。

 

「さすがは秋葉原、品揃えが良いわね」

 

 オタグッツを買おうと店を回ると出てくること、おかげで飽きることがない。

「でも、これ三日じゃちょっと足りないね」

 

 既に予定の三日間を終えようとしていて、秋葉原を観光するだけでもまだ時間が足りない。もっと時間が欲しいぐらいだ。

 

「次の機会があるからいいんじゃないの。時間はいくらでもあるんだしね」

 

 そうアズライトがいうように、シドゥリ達には時間はいくらでもあった。シドゥリとアズライトだけでなく監察軍に所属するトリッパーの多くが不老不死あるいは不老長寿であるため、長生きが可能なのだ。

 

「そうね。次の機会にしましょう」

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