『ミッドチルダの質量兵器研究所でテロ発生、テロリストは元管理局の機動六課!?』
ある元陸士は、そのニュースを見て眉を顰めた。
彼はクラナガンでの戦いで重傷を負ってしまい、死にかけたのだ。幸運にも生き残ることができたが、魔導師としては再起不能となった。しかし日常生活に支障がないだけでも幸運だ。他の同僚達の多くは戦死していた。
自分たちに徹底抗戦をやらせた八神一佐は、俺達を囮にして二人の親友と自分の家族を連れてクラナガンを脱出していたのだ。それを知ったときの怒りは今も忘れない。
新暦78年、時空管理局の崩壊から二年がすぎた。その間、次元世界は大きく様変わりをしていた。
前大戦で帝国と国連に付いた世界は順調だった。各々の世界が、その世界の実状にあった国家改革を進めて世界を発展させていたのだ。
しかし、管理局派の世界の情勢はあまり良くなかった。管理世界を制圧駐留した国連軍は、地球各国の軍隊の集まりに過ぎず、その軍隊の性質で色々と問題が発生したのだ。
某国の場合、略奪と強姦が横行してしまう。そこまでいかなくてもいたる所でもめていた。マジックキャンセラーによる経済の破綻と管理局崩壊に伴う混乱。更に地球各国への多額の賠償金の支払いで疲弊していたのだ。
賠償金は敵手たる管理局に要求するべきであったが、管理局が崩壊してしまったので、管理局派の世界にそれを要求した。管理局は、管理世界の治安維持組織であり軍隊でもあるので、管理世界の軍隊として解釈して管理世界の責任追及したのだ。
これは敵対した管理世界に余計な余力を与えないようにする為に、絞れるだけ絞りとるという考えであった。
勿論地球側の行動に不満に思う者は多かったが、次元世界最大勢力のブリタニア帝国は、これには不干渉であった(というよりもシドゥリは管理世界の人間がどうなろうと興味がなかった)ので、彼等にはどうこうできるものではなかった。
それでも聖王教会の一部の者は、ブリタニア帝国に地球側を抑えるように要請していたが断られていた。最もマジックキャンセラーによる魔法封印の解除だけは比較的初期に行われたのが幸いだった。
帝国としては管理世界で大量に餓死者が出てもどうでもよかったが、制圧している地球側としては食料不足の世界を間接統治するのは嫌だったから征服して管理局員を武装解除させた後で、魔法封印の解除を帝国に要請していた。
最低限の食料ぐらい自分たちで作ってくれないと面倒だからなのだが、これが後のテロリスト(彼等自身はレジスタンスと自称しているが)の活動を許す結果となった。
こうして魔法が復活した元管理世界であるが、当然それまでとは激変していく事になる。かつての魔法至上主義と質量兵器廃絶はなりを潜め、変わって純粋科学技術や質量兵器が研究されるようになった。
今回の大敗の原因は、魔法というたった一つの力に依存しすぎた事である。彼等はそう結論づけたのだ。
魔力炉に代わる動力炉や、魔力を用いない発電などの研究、マジックキャンセラーに対応した戦力として質量兵器の研究が進められ、民衆もそれを支持した。
これには質量兵器と対魔導師用の機械兵器『ガジェット』の導入によって、治安が格段に良くなったのも大きく影響していた。
質量兵器は先天的な才能に依存した魔法とは違い、より均一な戦力を揃えることを可能として、ガジェットはレリック事件を初めとしたJS事件などで長年の実戦データを揃えることができたのでより強力になったのだ。
そう言った意味では、JS事件はAMFを搭載した機械兵器と戦闘機人の実戦テストともいえた。少なくとも帝国はその程度しか考えていなかった。
そうした中で、かつての管理局残党のテロが起きた。
『機動六課』
かつて時空管理局の一部隊であった機動六課は、現在では最悪のテロリスト集団となっていた。彼女たちはテレビ局を占拠するなどのテロ行為を行い、ブリタニア帝国を非難して管理局の復活を民衆に呼びかけたのだ。
しかし、先のJS事件で管理局は支持率が急落しており、更に管理局が勝手に始めた戦争で甚大な被害と負債を抱える事となった民衆の間では、管理局は完全に支持を失っていたのだ。
またクラナガンで、部下に徹底抗戦を命じていた癖に自分たちは敵前逃亡をした事を生き残った陸士達が暴露したので、当然ながら彼女たちの主張は受け入れられなかった。
最近ではミッドチルダを初めとする各世界の質量兵器研究所にテロ攻撃を加えているらしい。テロ集団『機動六課』前線メンバーは何れも高ランクの魔導師や騎士だ。彼女たちは一人一人が戦闘ヘリや戦車並の火力を持っているのだ。ミッドチルダ政府や各世界の政府もその制圧には手を焼いていた。
機動六課side
時間を少し戻して、ミッドチルダ質量兵器研究所。機動六課の襲撃を受けていた研究所で激しい戦闘が行われていた。
桃色の砲撃魔法が警備のガジェットを打ち抜く。
「この数きりがないの」
なのはは焦る。管理局が崩壊してから管理世界は変わった。信じられないことに、危険な質量兵器を開発生産するようになった。誤った道に進む世界を正すためにも、この研究所を破壊しなければならない。
だが、彼女たちは気付いていなかった。それは旧管理世界の住民達が自分で選んだ道であることに。地球もブリタニアもそれを強制してはいないのだ。
そんななのはに急速に接近する魔力反応。
「くっ!!」
いきなり迫る振り下ろしの一撃。なのははそれをシールドに防ごうとするが、あっさりと破壊されて、吹っ飛ばされる。
「きゃああっ!!」
「なのは!?」
フェイト達も異変に気付く。
「……やはり魔力値が下がっているようね。かつてのエースオブエースとは思えないわ」
高町なのはは、元々幼少期に無理をしており、その後の撃墜でリンカーコアに爆弾を抱えていた。
更にJS事件でのブラスターシステムの使用で、限界を超えて力を使った事により魔導師としてガタが来ていて、本来は安静にしておかなければならないところを、戦いを続けてきた。この代償は大きく、魔力値の減少や身体を苛む慢性的な痛みに前線で戦うのに支障が出ていたのだ。
「お前はルビア・スターゲイザー!覚醒者が何故ここに!?」
覚醒者は現在では最強の代名詞となっていた。彼女たちは総じて古代ベルカ式魔法の優れた騎士から選ばれる上に、覚醒者としての各種の能力は驚異的と言うしかなく、そこいらの高ランク魔導師や騎士では相手にならないのだ。
「管理局の残党がうろうろしているから、掃除しようと思ってね」
その言葉は、スターゲイザーからではなく、別の方向から聞こえて来た。
「ヴィ、ヴィヴィオ!?」
なのはが驚きのあまり声を上げる。そこにいた少女は、JS事件で死んだヴィヴィオの聖王モードにそっくりだったのだ。
「違うわ。予はあんな使い捨てのクローンではありません。まぁ一応名乗っておきましょう。予の名はシドゥリ・エルデルト・フォン・ヴァーブルです」
「「「「!!!!」」」」
周囲に驚愕が走る。ブリタニア帝国の皇帝。かつての古代ベルカ聖王家最後の生き残り。よりにもよって敵の総大将がいたのだ。
「お前が……」
ヴィータがシドゥリに襲いかかる。しかし、鉄槌の一撃は聖王の鎧に阻まれる。
「なっ!?」
「愚かな守護騎士よ。予が誰か忘れたの?」
シドゥリはブリタニア帝国を建国した魔法皇帝で覚醒者としては最上級の強さを誇るが、それ以前にベルカ聖王家歴代最強と呼ばれていた強者なのだ。当然ながら守護騎士が勝てる相手ではない。
次の瞬間、シドゥリの魔力が信じられないほどに高まる。
「あ、ああ……」
「死ね」
刀型アームドデバイスの一振りで、ヴィータの首が切り飛ばされた。
「ヴィータ、おのれ!」
シグナムとザフィーラがシドゥリに襲いかかるが、シドゥリの姿が消えて、次の瞬間シグナムとザフィーラは切り裂かれていた。
「ヴィータ、シグナム、ザフィーラ!!」
はやての悲痛な声が響く。
「いけない!はやてここは逃げるんだ!?」
勝ち目が無いと悟ったフェイトとなのはが、はやてを抱えて転移した。
シドゥリside
「陛下、見逃して良かったのですか?」
「別に構わないわ。あの程度ならば、お前でもあしらえるでしょう?」
「……確かに」
彼女たち高ランク魔導師達は、質量兵器を廃絶して魔法至上主義に走ったかつての管理局でもてはやされていた。
一方、帝国では強力な質量兵器が存在し、魔法にはそれほど重きを置かれていなかった。そんな世界で実力を示すには、それ相応の努力が必要だったのだ。
幸い、覚醒者となった者達は自分たちと同等以上の者達ばかりであったので、鍛錬の相手には事欠かなかった。ぶっちゃけると、ちゃちな質量兵器と遥かに格下の魔導師ばかりと戦ってきた彼女たちとは鍛え方が違うのだ。
「今回は依頼を達成できた訳だし、良しとしましょう」
帝国は、ミッドチルダ政府からテロリストの撃退を依頼されていた。その為、手の空いている貴族を差し向けるつもりだったが、運動がてら自ら動くことにしたのだ。『魔法少女リリカルなのは』のヒロイン達と戦ってみるのも、一興と思っていたが…。
「強くなりすぎるのも考え物ね。あまりにも手応えがないわ」
彼女たちでは余の相手にはならない。戦ってそれがすぐに分かった。
「とりあえず、あいつらの後始末は部下に任せましょう」
それでシドゥリは、なのは達に対する興味を失った。
後書き
マジックキャンセラーにボコボコにされたために、非魔法型の社会の構築や質量兵器の導入を決定した元管理世界ですが、魔法至上主義、質量兵器廃絶、時空管理局の復活を掲げるテロが起きています。