ブリタニア帝国記 If編   作:ADONIS+

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その一(シドゥリ暦2031年)

「くそっ、折角の休暇が!」

 

 陸上自衛隊三等陸尉の伊藤真太郎(いとうしんたろう)はそうぼやきながら現場についた。目標の物体(?)の周りには伊藤の他に同僚達がソレを包囲している。

 

 伊藤は俗に言うオタク趣味の持ち主でゲーム、漫画、アニメなどのオタク文化をこよなく愛し、二次創作でキャラクターのイラストや二次小説を作製してネットに乗せたりするクリエイティブなオタクだ。伊藤にとって今日は久々の休日であり趣味のアニメを満喫するつもりだった。

 

 しかし、緊急事態によりそれが吹っ飛んだ。伊藤は自分の休暇を吹っ飛ばしたそれを睨み付ける。

 

 それは黒い正四角形としかいえないだろう。真っ昼間にも関わらずそこだけ真っ黒だ。まったく持って正体不明の謎の物体としかいえないが、多くの日本人はこれを見て門(ゲート)ではないかと判断して大騒ぎとなった。

 21世紀、日本国は異世界から侵略を受けた。東京銀座にいきなり現れた怪異と兵士達は、その場にいた人々を無差別虐殺したのだ。これが後に銀座事件と呼ばれる異世界とのファーストコンタクトだった。

 

 その後、体勢を立て直した自衛隊が侵略軍を撃退したものの、多くの犠牲者と甚大な経済的打撃を受けた日本は、ゲートを確保して異世界に乗り込んだ。

 

 これはある意味当然である。攻撃された銀座は日本の政治と経済の中心東京の一等地であり、企業などに与えた被害はバカにならないからそれの賠償も必要であるし、何よりこれを放置すればまた攻撃されるかもしれない。その後、数度の戦いを経て帝国と称する異世界の国家から賠償を得ることに成功した。

 

 しかし、ゲートを繋ぎっぱなしにしていた為に歪みがたまってしまい、二つの世界の危機を招いてしまう。日本は、各国の思惑に左右されながらも何とか門を閉ざすことに成功したが、歪みの原因で地球全土に震度5の地震(大震災)が発生した。これによって国際社会は門の危険性を認識する事になった。

 

 それから数ヶ月後に福岡県の田舎町に出現した新たなる門は、日本を震撼させた。いきなり自衛隊を投入して門を包囲したのも、先の銀座事件の影響が大であった。

「それにしても、なんて大きさだ」

 

 前回の門は、首都東京の銀座という通常でさえ渋滞する場所で、おまけに現れた門自体も大型トラックが一台通れる位の大きさでしかなかった。それゆえ、物資の輸送にやたら手間取ったらしい。しかし、目の前の物体は縦横共に200mほどのとんでもない大きさだ。

 

 あれが銀座に現れた門と同じ物ならまた特地と繋がっているのか、それとも全くの異世界なのか?

 

 それに聞いた所によると異世界といってもやたら凶暴な生物がうじゃうじゃいる世界もあるらしい。もし、そんな所なんかと繋がっていたらと思うと不安で仕方がない。それは周りの同僚達も同じなのだろう。皆表情が緊張している。

 そして、伊藤が到着してしばらく過ぎた辺りで、唐突に一人の少女が門から現れた。

 

「なっ!」

「あれは…天使!」

 

 驚く自衛官たち。

 

 その少女は地面を歩いて出てきたのではなかった。いきなり空中から飛び出てきた。白き三対の翼を背に、鳥のように空をかける少女。それはまさしく物語の天使そのものだった。

 

 少女は空に滞空して、こちらを見ている。

 

「門から天使が現れたってのか?」

 

 周囲の注目は上空の少女に集まった。

 

「白…」

 

 下から見上げる状態であったのが災いして、少女のスカートの中身まで見えてしまった。それに気づいたのだろう。少女はスカートを押さえ、慌ててこちらに降りてきた。そして地面に着地するとその翼は消えた。

 

 伊藤は改めて少女を見た。腰の辺りまで伸びた青い髪に金色の瞳、病的にまで白い肌という少女で、外見は10歳程度に見えるが実際の所は分からない。だが人形のように整った完璧な容姿の美少女であるし、身に纏っている青いゴスロリ服が非常によく似合っているが、少女は少し顔を赤くしていた。

 そんな少女は気を取り直して、ゆっくりとこちらに歩いてくる。周りの同僚達は小銃を向けるべきかどうか悩んでいるようだ。

 

 いくら武器の使用許可が出ているとはいえ、明らかに非武装のたった一人の少女に対して集団で銃口を突き付けるのは映像的に良くない。ましてや離れた場所にはマスコミがカメラを回しているのだ。安全のためにとマスコミを遠ざけてはいるものの取材禁止はしていないのがアダとなっていた。

「こんにちわ。いいお天気ですね」

「えっ!」

「おい、日本語を話したぞ」

 

 隣にいた自衛官が驚きの声を上げた。これには俺も驚いた。異世界人であろう少女(?)は日本語を使ったのだ。てっきり未知の言葉を使うと思っていたのだが……。

 

 もしかして日本語が使われている異世界なのか? いや恐らく日本語を学習していたのだろう。となると少なくともこの世界のことをある程度調べてから来ているという事だ。

「貴女は?」

「これは申し遅れました。私はアズライト・ジュエルと申します。異世界に存在するブリタニア帝国から来た使者です」

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