強くてニューゲーム   作:トモちゃん
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さようなら異世界。
こんにちは2周目の異世界。


プロローグ

ナザリック地下大墳墓の最奥、玉座の間。

この星を統べる至高の支配者が、最後の瞬間を待っていた。

 

「とうとう終わりか。しかし、楽しかったなあ。本当に楽しかった」

 

ポツリと呟いたその声は荘厳な空間に想像以上に響いた。

 

魔導国を建国し、世界を征服してから、既に30万年が経過していた。

その間、大きな争いもなく、世界はゆっくりと発展を続けたが、星の寿命には勝てなかった。

あと数刻後、この星は砕け散る運命にある。

 

それにしても、僅か30万年で星の寿命が尽きるとは思わなかった。

ブルー・プラネットの話では、地球は何十億年も存在し続けてきたらしいというのに。

ふと、彼がユグドラシルの公式ラスボス、世界喰い<ワールドイーター>戦の時に言っていたことを思い出した。

 

「地球は、本当はもっと綺麗だったんだ。それこそ何億年もね。でも、人間の手で、たったの数百年でこんなに汚れて、もう生物が棲めない星になってしまった。人間こそがワールドイーターと言っても過言じゃないね」

 

それに対して「じゃあ、せめてユグドラシルでは人間種を根絶やしにしてやろうぜ」とか言ったのは誰だったか。

 

まあ、この星が相当年寄だったのか、あるいは元々寿命が短かったのか。

どちらにせよ、今考えても仕方がない。最後までこの星の美しさを維持できたのだ。彼にも自慢できるだろう。

 

建国後入手したワールドアイテムや超位魔法<星に願いを>も使用したが、星の崩壊を防ぐには至らなかった。

世界征服の過程で友人になった白金の竜王は星の運命に任せると言って自分の住処に籠っている。

世界の法則を歪めるのは認めない癖に世界の崩壊は認めるのか、と腹が立ったが、それが竜なのだろう。

友人の価値観だ。命より大事な思いというのは自分にもある。ならば折れるしかあるまい。

 

 

「我が僕たちよ」

 

今度は皆に聞こえるよう、大きな声が玉座の間に響き渡る。

この世界に転移後、初めて全てのNPC達がこの場に集められていた。

その誰もが、敬意の籠った眼、いや、狂信に満ちた眼で支配者を見つめていた。

 

「今日、世界の終わりを防げなかったのはこの私の不徳の致すところである」

 

続く言葉に僕たちは口惜しさを隠せない。至高の主に間違いなどあるはずがない。

事実、30万年に亘る統治において、理想の支配者として君臨し続けてきたのだ。

それはナザリックだけでない。全ての生きとし生ける者たちにとって理想の、完全な統治者だった。

強く、美しく、聡明で、何よりも慈悲深い支配者の役に立てない自分たちの無力が情けなかった。

 

「だが、何物にも終わりというものはある」

 

その言葉には恐怖、憂い、そういった感情は全く感じられない。

 

「最後の瞬間をお前たちナザリックの子供たちと迎えられることに感謝しよう」

 

骸骨の眼窩に宿る赤い光が、僕たちを慈しむように揺らめく。

 

「ユグドラシルの終わりと共に、我らはこの世界に転移してきた」

 

懐かしむように、ゆっくりと言葉を続ける。

 

「二つの世界で長きにわたり、良く私に仕えてくれた。至らない主人であったかもしれないが、お前たちの忠誠に感謝する。私はお前たちの忠誠に見合うだけの主人であっただろうか。そうであったなら、これ以上の喜びはない」

 

堪え切れず、其処此処から嗚咽が聞こえてくる。

 

 

 

「アインズ様に至らない点など!」思わず声を上げたのは守護者統括アルベドだ。

「良いのだ、お前たちの想いに全て応えてやることが出来なかったことは事実だ」

 

アインズは、アルベドやシャルティアの想いに最後まで応えてやれなかったことを悔やんでいた。

もしも子供ができて、それがナザリックよりも大事なものになることが怖かった。

今まで自分が大切にしてきた気持ちが嘘になるのではないか、という気がして。終ぞ、一歩を踏み出すことが出来なかった。

世界が終わるこの時になってようやく、彼女たちの想いに応える決心がついたのは遅すぎると思ってはいるが、言わずにはいられなかった。

 

「アルベドよ、もし、今度も新しい世界に転移出来たならば、私の妻となってくれるか?」

 

長い年月を過ごし、智謀、力、威厳、全てを兼ね備えた本当に完全な支配者となった今でも、アインズには迂闊なところがあった。

しかし、何万年も繰り返されてきたアルベドの暴走は、彼女の翼が広がった正にその瞬間、周囲の守護者達によって取り押さえられた。

 

 

「(何でこの雰囲気でこうなるかな~?)んん、ゴホン、落ち着け、皆の者」

 

取り合えず、話を戻すことにした。

 

「シャルティア、アウラも同様に、私の妃として側に仕えてくれるか?」

「当然でありんす!」「勿論です!」

 

守護者二人の表情はこれから世界が終ろうというのに、これ以上無いくらい晴れ晴れとしていた。

 

「そうか、デミウルゴス、お前はどうだ?来世でも私に仕えてくれるか?」

「勿論ですとも!この身は全てアインズ様のもので御座います。どのような世界であれ、必ずお供いたします」

「ふふふ、お前の智謀があれば来世でも世界を手中に収めたも同然だな。期待しているぞ」

「勿体無いお言葉、この非才の身でありますが、全てを捧げ、忠義を尽くす所存です」

「コキュートスよ、一本の剣、一人の武人であったお前が今は大将軍であり、世界の統治者の一人だ」

「ハッ、コレモ全テアインズ様のゴ指導ノ賜物デゴザイマス」

「ははは、世辞はよせ、コキュートス、今のお前の姿はお前自身の努力の賜物だ。お前の成長を建御雷さんにも見せてやりたかったな。自慢してやろう、コキュートスがどれ程努力してどんなに成長したのか、間近に見てきた私自身の言葉でな」

「ア、アインズ様…」

「さて、マーレよ」

「は、はい!」

 

中性的な美青年が答える。もう女装はしていない。

 

「お前とアウラは立派な大人になった。子育てというのは初めての経験だったが、本当に楽しいものだった。ふふふ、お前たちの成長は私が独り占めしてしまったので、茶釜さんには怒られてしまうかもしれんな」

「そんなことはありません。ぶくぶく茶釜様なら、きっと喜んで下さいます」

「そうであれば良いな。子育てには自信がないが、今のお前たちは私の自慢の子供たちだ」

 

アインズの付けている腕時計がピピッと電子音を立てる。流石にぶくぶく茶釜の声は雰囲気に合わないので切っている。

 

 

「最後になるが、全てのNPC達よ!我が愛し子達よ!ありがとう!お前たちのおかげで私は幸せだった!次の世でも必ず、相まみえようぞ!」

 

玉座の間に熱狂の歓声が沸きあがる。

ーそして世界は光に包まれた

 

 

 

 

 





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