強くてニューゲーム   作:トモちゃん

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アインズ「お前にはこの剣を貸そう。これは、フロスト・ペインを」
ザリュース「こ、これは! そうか! 私のフロスト・ペインは、これをもとにして作られたのですね? 」
アインズ「そ、うだ。良く分かったな」
ザリュース「これ程の剣をお貸しいただけるとは! 全力を尽くします」
アインズ「う、うむ、期待しているぞ」


13話

―旧王都フェオ・ベルカナ―

「何なんだあれは! どこからあんな化け物が来たんだ? 見張りは何をしていた」

 

街は阿鼻叫喚の地獄絵図。

クアゴア達は突如現れた謎のアンデッドたちに蹂躙されるしか出来なかった。

 

 

アウラの魔獣とリザードマン達はフェオ・ジュラに置いてきた。

大裂け目砦前のクアゴア達は態々残したのだ。

ザリュースとゼンベルの経験値稼ぎと、リザードマンの人気稼ぎの為に精々頑張ってもらおう。

動かないようなら、クアゴア軍の後方に潜ませてあるアンデッドの恐怖のオーラで強制的に突撃させよう。

あそこにいるクアゴアは残しておく必要はないので有効に活用しよう。

 

「さて、こんなものかな」

 

大量の死体の山を見て、アインズが独りごちる。

 

「アインズ様、あそこにまだ潜伏しているみたいです。気配からして、多分あれが王だと思います。」

 

高レベルのレンジャーであるアウラから隠れることが出来るものなど、この世界ではまずいない。

前世から思っていたが、やはりアウラは優秀だ。

能力だけでなく、きちんと状況の分析も出来るし、デミウルゴスみたいに変に深読みし過ぎることも無い。

性格も素直で良い子だ。時々茶釜さんに似て怖い時もあるが。

 

「流石はアウラだな。お前を連れてきて正解だった」

 

優しく頭を撫でてやると嬉しそうに目尻を下げる。

 

「えへへ、アインズ様のお役に立てて嬉しいです」

 

うん、やっぱり子供は素直なのが一番だ。

 

「それでは、クアゴア達の王とやらを捕まえてきてくれるかな? 」

「はい! 行ってきます! 」

 

疾風のように駆けていくアウラ。数秒後、クアゴア達の絶叫が響き渡った。

 

 

「クアゴアの王よ、面を上げよ」

 

ガチガチと煩い位、歯が鳴っている。

恐ろしくて顔を上げることが出来ない。自分たちを蹂躙したアンデッドよりさらに強い闇妖精。

それの主となればどれ程のものか、想像に難くない。

 

「アインズ様が面を上げよって仰ってるんだけど? 聞こえないの? 」

 

パン! と乾いた破裂音が響いたと思ったらクアゴアの王、ぺ・リユロの右腕が吹っ飛んでいた。

 

「も、申し訳ございません。お許し下さい」

 

飛び上がるように顔を上げるリユロ。彼の目は恐怖に濁っていた。今殺されていた方がまだマシだった。

目の前の存在を見たリユロの感想がそれだった。

己の眼前には死を具現化したようなアンデッドが立っていた。いや、そんな可愛いものでは無い。

 

「お前の種族の残りは、凡そ4000匹というところだな」

 

さっきまで8万はいた筈の同胞たちが、もうそれだけしかいないのか。

 

「ど、どうか、お許し下さい。貴方様に永遠の忠誠を誓います。決して裏切るようなことは致しません」

 

クアゴアという種族はここで絶えるのか。いや、そうはさせない。自分はクアゴアの王なのだ。

恐怖を噛み殺し、懇願する。自分は殺されるだろう。だが、せめて数匹だけでも生き残ることが出来れば、クアゴアは絶滅だけは免れるはずだ。

 

「ほう」

 

アインズと呼ばれたアンデッドの声には全く感情が感じられなかった。

自分も王として君臨してきたから分かる。これは、自分に全く興味を持っていない声だ。

 

「わ、我々クアゴアは、暗闇でも目が利きます。地下の鉱石を採掘するのも得意です」

 

何かしら役に立つことを言わなければ、何でもいい、興味を引かなければここでクアゴアは絶滅してしまう。

 

「この私に忠誠を誓うというのだな? 」

「はい!我ら、最後の一匹に至るまで、御身に忠誠を捧げさせて頂きます」

「良かろう。ならば、お前たちが生きることをアインズ・ウール・ゴウンの名において許そう」

「ははあ! ありがとうございます」

 

リユロは、吹き飛ばされた右腕から血を流しながら頭を下げる。失血で意識が飛びそうになるが、何とか踏みとどまる。ここで倒れるわけにはいかない。

パシャッという音と共に何かが自分の体に振りかけられた。と、傷が塞がって、いや、腕が生えてきた。

 

「ふむ、このポーションも早めに作れるようにしないとな。劣化していないかの確認は問題なさそうだな」

 

四肢の欠損すら癒すポーションなど聞いたことも無い。

 

「傷を癒して頂き、ありがとうございます」

「何、ただの実験だ。気にするな」

 

どうも、このクアゴアという種族は好きになれない。

アインズにとっては、前世で友達になろうとしていたジルクニフとリユロがいつの間にか仲良くなっていたせいか、嫉妬のような感情を抱いてしまう。

 

「死体を一か所に纏めておけ」

 

そう、リユロに命令を下し、アインズは王城へと向かう。

 

これから楽しい楽しいドラゴンの素材集めだ。

大したドラゴンはいなかった筈だが、やはりボス戦はテンションが上がる。

殺して捌いて有効活用した後、復活させて、ドラゴン素材量産計画だ。

前世でもドラゴン素材は非常にレアだった。

自分に仕えているドラゴンたちを素材にする訳にはいかなかった為、ドラゴンの素材は本当に少なかった。

前世では、ツアーは同族が殺されても気にしなかった。なので今世でも大丈夫とは思うが、一応、後で確認はしておこう。

王城が見えてきた辺りでアウラが弓を構える。

 

「アインズ様、あの先、何かいます」

 

曲がり角に隠れているのは斥候のドラゴンだろうか?前世でもそんなことがあったような?

 

「ふむ。まあ、止まっていても仕方あるまい。相手は一匹だけだな?攻撃の姿勢を取ったらすぐに仕留めろ」

「はい! やまいこ様も、敵が居たらとりあえず殴ってから考えると、そう仰っておられました」

 

ぶくぶく茶釜と一緒に自分を可愛がってくれた至高の御方の言葉を思い出す。

 

「ふふ、そうだな。良し、偶にはやまいこさんスタイルで行くとするか」

「お、お待ち下さい! 」

 

こっちが殴る前に太ったドラゴンが現れ、驚くべき速さでひれ伏した。

 

「まだ何もしていないが? 」

「お二方の会話が聞こえましたので、こうして出て参りました。私の名はヘジンマールと申します。どうか、私を配下に加えて下さいませ。お願い致します」

「(このドラゴン、どこかで見た気がするな…。あ、あれだ。アウラのペットにやったデブのドラゴンだ。空輸便をやってたら2年もしないうちにスリムになってた奴だ。太ってるドラゴンってこいつしか居なくてレアだったのにな)ほう、私に従うと? 何故だ? まだ何もしていないが」

「貴方様方のお力は見れば分かるものでございます。どうか、お願い致します」

 

怖い。太ったドラゴン、ヘジンマールはただ怖かった。

この二人の装備は見たことも無いほど価値があるものだ。少し鈍っているがドラゴンの本能がそう言っている。

ドラゴンである自分を全く警戒していない。

そして、途中にいた筈の、大量のクアゴア達がどうなったのか、漂ってくる死臭が全てを物語っている。

彼らはドラゴンなど歯牙にもかけない強者だ。ここまで育ててもらった父には感謝しているが、自分の命には代えられない。

 

「お前は本を読めるか? 」

「はい。私の趣味は読書ですので、人間の本は読むことが出来ます」

「良し、お前には我が居城で研究をさせるとしよう」

「はっお役に立てるよう、全力を尽くします」

「え? 研究ですか? ドラゴンに? 」

「うむ、折角の読書好きな珍しいドラゴンだ。魔法の研究などをやらせても面白いだろう。さて、ヘジンマールよ。お前たちのボスは玉座の間だな? 」

「左様でございます。あ、あの、貴方様のお名前をお聞かせ願えませんか? 」

「ん? ああ、名乗っていなかったな。私は魔導王、アインズ・ウール・ゴウン。そしてこの子がアウラ・ベラ・フィオーラだ」

「ありがとうございます。改めまして、ヘジンマールと申します。今後ともよろしくお願いいたします」

 

ヘジンマールは勝った。人生を賭けた勝負に。

 

「魔導王陛下、アウラ様、私にお乗りください。玉座の間までご案内致します」

 

鷹揚に頷きヘジンマールの背に乗るアインズとアウラ。

 

 

―玉座の間―

白き竜王、オラサーダルク=ヘイリリアルは激怒した。

先ほど使いに行かせたはずの息子が帰ってきたかと思ったら、3匹の妃たちの前でアンデッドなどを王だと抜かす始末。

 

「さて、私に服従するなら命は保証しよう。どうするね? 」

「ふん、アンデッドごとき、ドラゴンの敵ではないわ!叩き潰してくれる」

 

怒声を上げ、立ち上がった瞬間、アインズが虚空の何かをつかむように手を伸ばす。

 

心臓掌握(グラスプハート)

 

立ち上がった竜王はそのまま倒れ伏した。そのままピクリとも動かない。

 

「さて、まだ戦いたいものはいるか? 」

 

3匹のドラゴンたちは一斉にひれ伏した。

 

「お前たち。この城にいるドラゴンたちを全員連れてこい。行け」

 

これで十数匹のドラゴンが手に入った。前世同様、空輸便として活用するとしよう。

オラサーダルクの死体を転移門に突っ込んでナザリックに送る。

ばらした後は復活させよう。何度も剥ぎ取りが出来るドラゴンなんて夢のようだ。

 

「さて、それでは凱旋といこうか」

 

 

 

―フェオ・ジュラ、ルーン工匠の工房―

アインズ一行が旧王都へ出立して暫く後、鍛冶工房長は、魔導国への招聘を断るよう、ルーン工匠達を説得に回っていた。

あんなアンデッドが治める国になど行ったら奴隷にされてしまう。

鍛冶工房長は、真剣に、必死に説得して回った。

 

一軒目は、ぶん殴られた。

二軒目は、インゴットを投げつけられた。

三軒目のルーン工匠がハンマーを振り上げる姿を見て、這う這うの体で逃げ帰った鍛冶工房長は、説得を諦めた。

 

 

 

―フェオ・ジュラ大裂け目の砦―

魔導王が出立して数時間後、クアゴア達の猛攻が始まった。

何かに追い立てられるかのように、決死の形相で突進してくるクアゴア達にザリュースとゼンベルは必死に防衛を続けていた。

 

「おうザリュース!そっち2匹行ったぞ」

「任せろ」

 

斬撃耐性のあるクアゴアの毛皮もゼンベルの打撃には効果が無い。

ザリュースの持つ短剣<真・フロストペイン>は斬撃属性であるが、この剣は斬撃耐性を貫通するという効果を持っていた。

まるで熱したナイフでバターを切るがごとく、容易くクアゴア達を両断していく。

これが本物のフロスト・ペインなのか、とザリュースは驚きを隠せなかった。

出立の前、ザリュースとゼンベルは、魔導王より装備を一式、貸与して頂いた。

その一つがこれだ。リザードマンに伝わるフロスト・ペインは、これを模して作られたらしい。

なるほど、確かにこれは神が持つに相応しい武器だろう。先祖がこの剣を作ろうとしたのも頷ける話だ。

 

「オラオラ、どんどんこいや」

 

大きなガントレット<女教師の鉄拳>で殴りつけるゼンベル。

これも真・フロスト・ペインに勝るとも劣らない逸品だ。

喰らった相手は数メートル吹き飛ばされる効果が凶悪で、今回のような地形では特に有効だ。

クアゴア達が面白いように大裂け目に飲み込まれていく。

 

都市の入り口はアウラの魔獣が守っている為、侵入される可能性は無い。

 

「なあ、お前ら、あの魔獣に助けてもらったら良いんじゃないか? 」

 

誰もが思っていたことを、ついに総司令官が口に出した。

 

「何言ってんだよ。それじゃ意味ねえんだよ」「俺たちの修業にならないからな」

「いや、これは国の防衛戦なんだが」

「おっ列が切れてきたぜ」「良し、そろそろ打ち止めっぽいな。最後だ、気合入れろよ! 」

 

犠牲者も出ていないし、良いのだが、リザードマンってこんなに好戦的なのか。

総司令官は少しの不安を抱いたが、今は頼もしい味方だ。

 

「我々も行くぞ! リザードマンだけに良いところを取られるなよ! 」

 

日が暮れるころにはクアゴアの姿は一匹も無くなっていた。

 

―フェオ・ジュラ広場―

ドワーフの国は、王都奪還の報に沸きに沸いていた。

魔導国と同盟を結ぶことが正式に決定し、ルーン工匠を招聘するという式典も滞りなく終わった。

魔導国の食糧品は非常に評判が良く、しかも安い。

当初、魔導王の機嫌を損ねることを恐れた摂政会は、貿易によって赤字になることを覚悟していたが、意外なことに魔導王自身に止められた。

 

「私はアンデッドだ。永遠の生を持つもの。君たちが考えるやり方では、いつかドワーフの国は破綻する。そうなれば取引相手を失う魔導国にも損失が出るのだ。良いかね? 取引というものは、両者に得が無くてはならない。結局のところ、それが最大の利益を得る方法なのだよ」

 

滔々と、まるで諭すかのように説明する魔導王。

寿命がある自分たちと永遠を生きる偉大な王とでは見ているものが違いすぎた。

この後、エ・ランテルからドワーフの国までの街道を敷設すること、アンデッドの労働力を受け入れることが正式に決定し、ドワーフの国は好景気に沸くことになる。

 




ゼンベル「クアゴアを大裂け目の谷底にシュゥゥゥーッ!! 」
ザリュース「超! エキサイティン!! 魔導国オリジナルから」
デミえもん「出~た~」

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