強くてニューゲーム   作:トモちゃん
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アインズ「謎は全て解けた!!」



番外編 ナーベラル・ガンマ

仕事がない。

毎日毎日、やることが無い。

他の僕たちは、いつもいつも忙しそうにしているのに。

自分一人だけ、まだ、これといった仕事が与えられない。

 

 

姉妹たちの中で、最も活躍しているのはソリュシャンだろう。

色々なプロジェクトの中で、補佐的な役割であるが、着実に成果を上げ、アインズ様から褒美を与えられたという。

その褒美というのが、畏れ多くも、アインズ様の玉体を清めさせて頂くことだと聞いた。

 

羨ましい。

 

お茶会の時に、散々自慢された。

細身ながらも力強い白磁の体、比類なき至高の美。

それを端から端まで、自らの全身を使って清めさせて頂いたと。

とても気持ちが良かったとお褒めの言葉まで頂いたそうだ。

最近では、彼女を中心としたプロジェクトも進んでいる。

デミウルゴス様が支配下に置いた八本指とかいう組織の長に就任し、諜報機関を設立し、さらに忙しく働いている。

 

 

次点ではエントマだろうか。

彼女は、補助的な魔法を数多く修めている。

幻術なども得意分野だ。

そのせいか、非常に多くの仕事に駆り出されている。

中心的な仕事では無いかもしれないが、いつ見ても忙しなく働いている。

半分くらい、自分に分けてくれないものだろうか。

いや、至高の主からの命令は、ナザリックの者にとって至高の喜び。

特別な命令でもない限り、仕事を分けようなどという発想には至らないだろう。

 

妬ましい。

 

 

ナザリックのギミックのすべてを知る為、外に出ることが無いと思っていたシズは、アインズ様の弟子となった魔法使いやドワーフたちとマジックアイテムの開発に携わっている。

一円シール付きの商品は高額で売れるということで、アインズ様から褒美を頂いたらしい。

アインズ様の御膝に座って、お仕事を手伝わせて頂いたそうだ。

しかも頭をなでなでしてもらったとか。

 

ああ、羨ましい。

 

ルプスレギナは、エ・ランテルを手に入れた時からずっと、神殿でアインズ様の神官として働いている。

毎日、下等生物どもの治療に当たっている。

いつも笑顔で軽口を叩く彼女は、人間や亜人たちの人気者だ。

アインズ様も褒めておられた。

ご褒美に、頭を撫でて頂いたそうだ。

後10秒撫でられていたら、うれションしていたところだったと言っていた。

 

ああ、妬ましい。

 

自分と同じく、仕事が無いと嘆いていたユリ・アルファは、目つきの悪い少女の副官になった。

副官というが、実際は、その少女の教育係のようだ。

やまいこ様に創造されただけあって、人にものを教えるのが好きな長女は、毎日生き生きとしている。

とても幸せそうな姿を見るのは嬉しくもあるが、それだけに自分に仕事が与えられないのが悔やまれる。

 

 

「ああ、仕事がしたい。私も、私も働きたい……」

 

静かな部屋に、自分の声だけが響き渡る。

自身の発した言葉に打ちのめされ、ナーベラル・ガンマは膝から崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

―ナザリック、アインズの執務室―

 

「何? ナーベラルが?」

「はい、自分だけ仕事が与えられないことにショックを受けているようです。最近では、笑うことも滅多にないとか」

 

アインズは、そろそろアルベドから報告があるだろうということは知っていた。

しかし、今世では神として、この世界に君臨することにしている。

前世でのナーベラルの行動を考えると、どうしても人前に出す仕事はさせられない。

かといって、ソリュシャンのように諜報をさせるのは、性格的に無理だろう。

ルプスレギナのように演技が出来るわけでもなく、ユリやシズのように普通に人間に接することも出来ない。

戦闘特化のビルドの為、エントマのような補助的な役割もさせられない。

亜人たちの戦闘教官にさせたとしても、手加減が出来ず、酷いことになるのは目に見えている。

残念ながら、今世ではナーベラルに任せられる仕事が無いのだ。

これは偏見によるものでは無く、前世での長い経験に裏打ちされた事実である。

 

「アルベドよ、外部のものと接することなく、出来る仕事はあるか?」

「難しいかと。国家を運営する以上、どうしても外部のものとの接触は避けられません」

 

そう、外部の人間―亜人も含むが―との接触をしなくても良い仕事というのが無いのだ。

前世で冒険者をやっていた時には、自分が常に側に居た為、そこまで大きな問題にはならなかった。

偶に、ナンパしてくる男を血祭りにあげるということはあったが。

前世で冒険者モモンのパートナーに任命したのは、今にして思えば、ファインプレイだったのかもしれない。

 

だが、今世では、アインズがずっと側に居ることは難しい。

アインズの護衛に就けるという案も無い訳ではないが、そうするとアルベドを始めとして守護者達が黙っていないだろう。

一般メイド達と同様、アインズ様当番に任命するというのも駄目だ。

これは、一般メイド達の特権のようなものだ。

 

元々の設定通り、セバスの管理下で働かせるのも悪くは無い。

セバスなら上手くやれるだろうが、彼は新婚だ。

セバスの上司として、彼の妻に誤解を与えるような職場で働かせる訳にはいかない。

もしも、下らない誤解が原因で、離婚に発展するようなことになったら、どう謝罪すればよいか分からない。

ただ、どうも、セバスの妻は前世とは何かが違う気がする。

まあ、漠然とした違和感があるだけで、何処が違うのかが分からないということは、気にする程のことでは無いのだろう。

と、その瞬間、アインズの脳裏に天啓がひらめく。

 

「メイド服……それだ!」

「アインズ様? いかがなされましたか?」

 

突然、大きな声で叫んだ愛しい夫の姿に、新妻は驚きを隠せない。

 

「ああ、いや、何でもない。気にするな」

「は、はい。あっ(……今夜はメイド服ね。くふふ、アインズ様ったら)」

 

そうだ、前世では、セバスの妻はメイド服を着ていた。

というか、セバスの部下として、メイドをしていた筈だ。

成程、違和感の正体はそれだったのか。

確かに、ずっとメイド服のイメージだったものが、冒険者の格好をしていれば違和感を感じて当然だ。

大したことではないが、ずっと抱えていた違和感が解消し、のどに刺さった小骨が取れたような、スッキリとした感覚だ。

さて、これで安心してナーベラルのことに集中出来る。

 

それにしても、ぺロロンチーノといい、弐式炎雷といい、彼らの趣味のせいでポンコツにされたNPC達は良い迷惑だろう。

確か、弐式炎雷は、真面目で優秀そうなのにポンコツなのが萌えると言っていた。

タブラさんは良く分かっていると褒めていたが、現実になったら全然萌えるどころではない。

 

ナーベラルのカルマ値はー400。

実は、プレアデスの中で、ソリュシャンと並んで最も低い。

これがもし、プラスか、せめて中立だったなら、今とは対応も違っていたのだろう。

弐式炎雷には、創造主として責任を取ってほしいところだが、居ないものはどうしようもない。

 

仕方がない。

ナーベラルは嫌がるだろうが、もうこれしかあるまい。

ナザリックでは珍しい、中立のカルマ値を持つ紳士。

デミウルゴスと並び、最も頼れるあの男に教育を任せよう。

 

 

 

 

 

―ナザリック第九階層、会議室―

 

「という訳で、本日よりナーベラル嬢には、吾輩の指導を受けて頂きます」

 

ここに集められたのはナーベラルと恐怖公、そしてクアイエッセの合計三名だ。

 

「はい、よろしくお願い致します」

 

恐怖公に指導を受けることは、アインズの命令によるものだ。

これで合格点を貰えれば、外部での仕事が与えられると聞いている。

 

「それでは早速、始めましょう。まずはクアイエッセ殿、自己紹介を」

「はっ、恐怖公様。ナーベラル・ガンマ様、私はクアイエッセ・ハゼイア・クインティアと申します。よろしくお願いいたします。」

「黙れナメクジ。お前ごときが神々の居城たるナザリックに足を踏み入れるなど、身の程を知りなさ「喝!」

 

何時ものナーベラルが毒舌を吐き終わる前に、恐怖公の喝が割って入る。

 

「やれやれ、ナーベラル嬢。そのようなことでは、何時まで経っても、仕事など与えられませんぞ」

「な、何故ですか?」

 

全く理解出来ないという表情で、ナーベラルは問いかける。

これは、思っていた以上に手がかかりそうだ。

 

「貴女は、ご自身がアインズ様のメイドであることは自覚しておりますな?」

「も、勿論です」

 

至高の主に仕えるメイドであることは、己の誇りである。

 

「ですが、今の貴女ではメイド失格ですぞ。良いですか? メイドが挨拶してきた人を罵倒するようでは、主の沽券にかかわります」

「そ、それは、あの、でも、今はアインズ様の御前では」

 

しどろもどろになりながら、何とか弁解しようとするが、上手くいかない。

 

「ほほう? ではナーベラル嬢は、アインズ様の御前でなければ、メイドに相応しくない態度を取っても問題ないと仰るか?」

「い、いえ、そういうわけでは」

 

元々口が上手い方ではないナーベラルは完全に混乱していた。

 

「良いですかな? 貴女の態度を見た者は皆、こう思うことでしょう。この様なメイドを雇っているようでは、主の器量も嵩が知れると」

「アインズ様のことをそのように見るものなど、私が殲滅してみせます」

「喝!」

 

再び、恐怖公の喝が飛ぶ。

 

「そうではありません。客人の名前を覚えることも出来ず、まして罵倒するような貴女は、本当にメイドとしての職務を果たしていると言えますかな? 貴女が非番の時であっても、貴女を見る人にとっては関係がありません。貴女が誰かを罵倒するようなことがあれば、それだけでアインズ様が軽んじられることになるのですぞ」

「そ、それは私の責任であって、アインズ様のせいではありません」

「誰がそう思うのです? 貴女の主はアインズ様ですぞ。どこの有象無象とも分からぬ輩に、配下の躾も出来ない主人だと思わせることが、貴女の忠義なのですかな?」

「そのような事はありません!」

「ふむ、では、最初からやり直すと致しましょう。クアイエッセ殿、すみませんが、もう一度お願い致します」

 

 

クアイエッセは、先ほどと同様に挨拶を繰り返す。

ナーベラルも、今度は堅いながらもちゃんと会話が出来た。

 

「ナーベラル嬢、笑顔ですぞ。お客様をもてなすのに最も大切なものは笑顔です。“アインズ様の御為”ですぞ」

「は、はい!」

「それと、会話を続ける為にどうすれば良いかをもっと考えることです。アインズ様の為に、怪しまれることなく、様々な情報を聞き出すつもりでやってみるのです。アインズ様であれば、取るに足らないと思われるような一言からでも、相手の真意を見抜くことが出来ましょう」

「分かりました。お願い致します」

 

激しくは無いが、厳しい特訓は、夜が更けても続いていた。

 

 

 

 

 

 

―ナザリック、アインズの執務室―

 

遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモートビューイング)といくつかの魔法を併用し、ナーベラルの特訓を覗いていたアインズは感動していた。

まさか、あのナーベラルが、人間と笑顔で対話できる日が来るとは。

前世では―アインズの命令であれば渋々我慢したが―人間嫌いな態度を隠すことは無かった。

それが、鏡越しの彼女は―勿論、演技であるだろうが―にこやかにクアイエッセと対話をしている。

 

それにしても、“アインズの為”という言葉は、ナザリックのNPC達には絶対の意味を持つのだと、改めて実感させられた。

部下たちに、「俺に恥をかかせないように、言うことを聞け」と言うような糞上司にはなりたくなかった為、前世では、ナーベラルの成長を促すような言い回ししかしなかった。

こんなに簡単に言うことを聞くのであれば、言っておけば良かった。

前世の苦労とは一体何だったのか……。

 

「いや、ナーベラルも自発的に、相手のことを思いやれるようにならないといけない。前世で繰り返し注意してきたことは、決して間違っていない筈だ」

 

何度繰り返し言っても変わらなかったということは、全く相手のことを考えようとはしなかったということだが、その事実に触れてはいけない。

まあ良い。過去のことは忘れよう。

今世のナーベラルは、きっと上手くやってくれる筈だ。

とりあえずは、パンドラズ・アクターか恐怖公と共に行動させよう。

彼らなら、ナーベラルも上手くコントロール出来るだろう。

 

 

何にしても、これで姉妹達のお願いは叶えてやれそうだ。

ナーベラルの元気がないから何か仕事を与えてやって欲しいなどと、全く、ナーベラルも良い姉妹を持ったものだ。

ナザリックという大家族の父親であるアインズは、一人、麗しい姉妹愛に支えられた娘を見守っていた。

 

 




ヘロヘロ「もう働きたくない…。誰か、半分で良いから仕事を持って行って……。誰か……」

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