強くてニューゲーム   作:トモちゃん

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ゲームの時はDQNギルドだったからっていう理由で攻撃したりするかな?



番外編 ユグドラシルプレイヤー

勝ち組はどこの世界でも勝ち組で、負け組はどこの世界でも負け組なのか。

リアルとは違う、この異世界においてさえ。

 

 

ユグドラシルの最盛期において、数多くの有名ギルドがあった。

ランク一位の天使系ギルド、セラフィム、最も多くの発見をしたギルド、ワールド・サーチャーズ、猫好き大歓喜のギルド、ネコさま大王国、超巨大(烏合の衆)ギルド、2ch連合等々。

ただ、それら数多のギルドの中で、最もゲームを盛り上げたギルドと言えば、アインズ・ウール・ゴウンをおいて他には無いだろう。

 

伝説となった1500人の大侵攻を筆頭に、数多くの逸話を持つ悪のギルド。

僅か41名の少数でありながら、戦士職最強のワールド・チャンピオンたっち・みーや魔法職最強のワールド・ディザスター、ウルベルト・アレイン・オードル等、実力者も多い。

戦闘職メンバーのそれぞれに、攻略Wikiが作られたギルドなど、ここ以外には無いだろう。

 

癖しかない連中の中で、最も有名な人物こそ、ギルドマスター“モモンガ”だ。

非公式魔王というニックネームが示す通り、魔王のロールプレイで有名な人物だ。

PvPの実力においても、ロマン重視のネタビルドにも拘らず、ランク上位のプレーヤーと戦っても勝率の方が高い程の実力者だ。

一戦目は負けることが多いが、二戦目、三戦目で連勝するという、相手の情報を入手する毎に手強くなっていくという玄人好みの戦闘スタイルで、試合巧者振りには定評があった。

その試合巧者振りから、運営がバランス確認の為に送り込んできたテストプレイヤーだという疑惑もあった位だ。

ただ、その噂は「あの糞運営がゲームバランスとか考える筈がない」という、どこの誰が発したかも分からない言葉によって霧散したが。

1500人の大侵攻においても、開戦の口上は正に魔王そのものであり、モモンガ無しでこのイベントの盛り上がりはあり得なかっただろう。

 

全員が社会人という異色のギルド。

大学教授や有名声優など、勝ち組も多く所属している。

いや、きっと、あのギルドは勝ち組達による遊びだったのだろう。

課金の額も、相当なものだという噂を聞いたことがある。

モモンガなど、ボーナスを全てガチャに突っ込んだことを笑って話していたとか。

生活に不安がない勝ち組っていうのは本当に羨ましいことだ。

負け組(こっち)は毎日、その日を暮らすのに必死だというのに。

 

 

 

 

 

魔導国建国から凡そ200年が経過したある日、一人のプレイヤーが、拠点毎この世界に転移してきた。

彼の悲劇は、アインズ・ウール・ゴウンを知っていたこと、そして、アインズ・ウール・ゴウンを知らなかったこと。

 

そのプレイヤーの青春の全てを捧げたゲームは終了したが、別の未来が待っていた。

暗い未来しか見えないリアルではなく、自分でも圧倒的な強者になれるファンタジーの世界。

美しい自然に囲まれた、リアルでは映像の中にしか存在しない遠い過去の世界。

ギルド拠点を囲むように作られた村の人たちは皆、純朴で、突然現れた自分に対しても親切で優しい。

 

自分は死んで、楽園のような異世界に飛ばされたのだろうか?

それでも良い、搾取されるだけのリアルになど未練はない。

この世界なら、自分だって勝ち組になれるかもしれない。

幸せになれる、そう思っていた。この国(アインズ・ウール・ゴウン魔導国)の名前を知るまでは。

 

 

 

 

 

―アインズ・ウール・ゴウン魔導国首都、エ・ランテル―

 

魔導国の首都、エ・ランテルの街並みは美しく、歴史を感じさせるものだった。

けれども道幅は広く、まるで建設当初から、今日の繁栄を予想していたかのように機能的でもあった。

この都市は、魔導王自らが都市計画を行ったという。

道を歩く人の顔は、リアルとはまるで違う生き物ではないかという程に明るい。

まるで違う生き物も沢山存在してはいたが。

 

自分が転移してきた辺境の村だけではない、この国に住む民は皆、魔導王こそが至高の神と崇めている。

実際に、為政者としても素晴らしい人物だということは想像に難くない。

誰に聞いても、魔導王を讃える言葉しか出てこない。

強制されているのではなく、間違いなく本心だと断言できる。

 

アインズ・ウール・ゴウン魔導王は恐らく、いや、間違いなくギルドマスターのモモンガだろう。

自分も、あの大侵攻に参加していた人間だから分かる。

きっと、あの人はリアルでも人を使う側の人間、勝ち組なのだ。

件の口上も高い教養を感じさせるものだったし、その堂に入った態度も、あれが演技だとしたら相当な役者だと言えるだろう。

いや、ひょっとしたら、本当の役者なのかもしれない。

演技の練習の為に、ゲームでロールプレイをしていたのかも。

アインズ・ウール・ゴウンには有名声優も所属していた位だし、あり得ない話ではない。

モモンガは、ユグドラシルプレイヤーとしての力と、リアルでの知識と経験によって、この異世界でも不動の地位を得たのだろう。

もし神というものが自分を転移させたとしたら、そいつは何と残酷な奴なのだろう。

勝者は生まれつき勝者だと、身の程知らずの野望など捨ててしまえと言いたいのだろうか。

 

 

「お兄ちゃん、どうしたの? 大丈夫?」

 

見知らぬ、まだ幼い少女が、心配そうな顔をして自分の顔を覗き込んでくる。

何故だろう、目から涙があふれていた。

 

「ああ、ゴミが目に入ったのかな。大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」

 

無理やり笑顔を作って返事を返す。

 

「そうなんだ、良かった」

 

何でもないと知って、少女も嬉しそうな笑顔を返してくれた。

 

「でも、知らない人に話しかけたら危なくないかい?」

 

子供が見知らぬ人に話しかけるのは、防犯上良くないのではないだろうか?

 

「大丈夫だよ。魔導王陛下が仰ってたもん。誰かが困っていたら助けるのは当たり前だって」

 

父親の自慢をするかのような表情で、少女が教えてくれた。

ああ、魔導王とは、こんなにも信頼されているのだな。

誰も彼も、こんな幼い子供ですら、本心から彼を讃えている。

 

「そうなんだ。ねえ、君は魔導王陛下のこと好きかい?」

「うん! 大好き!!」

 

満面の笑みで少女は返答してくれた。

耐えきれず、踵を返す。己のギルド拠点へと。

 

来なければ良かった。

モモンガと自分の差を思い知って、惨めになっただけだった。

自分はリアルでは使い捨てにされる負け犬、ゲームの世界でだって、掃いて捨てるほどいる一プレイヤー。

一方のモモンガは、リアルでは勝ち組で、ゲームでも有名ギルドのギルドマスターで、悪役ではあるが、ファンだって沢山いる人気者だ。

異世界においては、誰からも讃えられ、尊敬される至高の王にして絶対神。

何で生まれが違うだけで、自分とこんなにも違うのか。余りにも不公平じゃないか。

 

……いや、自分だって出来る筈だ。

同じユグドラシルプレイヤーだ。モモンガに出来て、自分に出来ない筈が無い。

この国が、民がどうなろうが知ったことか。

自分だって成り上がるんだ。

いつまでも、惨めな負け犬のままで終わってたまるか。

調べたところによると、残っているギルドメンバーはモモンガ一人だけだ。

転移前に投げ売られていたワールドアイテム、永劫の蛇の指輪(ウロボロス)だってある。

 

「アインズ・ウール・ゴウンを斃して、俺がこの国を盗ってやる」

 

思わず漏れた小さな呟きを聞くものは誰もいない……筈だった。

 

 

 

 

 

―エ・ランテル王城、アインズの執務室―

 

「……ニグレド」

 

アインズの重たい声が、静かな執務室に響く。

 

「はい。間違いなく、アインズ様に対する殺意を観測致しました」

 

アルベドの姉、探知特化型のNPCであるニグレドの言葉だ、間違いは無いだろう。

 

「ツアーよ、お前が望んだ通り、彼のプレイヤーには我々ではなく、この国の、この世界の姿だけを見せた」

「分かっているよ。彼は、今回のプレイヤーは、この世界の為に生きてくれる者では無かったということだね」

 

白銀の鎧姿のツアーは残念そうに答える。

もしも、新たなプレイヤーが“自発的に”アインズに協力してくれるなら、ワールドエネミー探索も捗るだろうと思っていたが、野心が大きすぎる者は八欲王と同様、世界に混沌しか齎さない。

 

今のアインズ達であれば、ただのプレイヤーなど力でねじ伏せることは容易い。

だが、それは騒乱の種を蒔くことに等しい。

だからこそ、この世界で己の役割を見付けようとするプレイヤーであるかどうかを確かめたかったのだ。

 

「アインズ様、この世界でアインズ様に叛意を示すものなど生かしてはおけません。直ちに討伐隊を編成致します」

 

魔導国宰相、アルベドは笑顔こそ崩していないが、目には殺意が籠っている。

 

「いや、今回はプレイヤーが相手だ、私も行こう。ツアー、お前も付き合えよ」

「転移と同時に潰すっていう、君の案を止めさせたのは僕だからね。ちゃんと付き合うよ」

 

アインズの我儘と気紛れに付き合ってくれる仲間が増えるかもしれない、という淡い期待を砕いた報いは、その身で受けてもらおう。

 

「おお、珍しくやる気じゃないか。良し、久しぶりに守護者全員で行くとしよう。アルベド、皆の弁当も手配しておいてくれ。ピクニックも兼ねよう」

「うふふ、皆も喜びましょう。アインズ様、あの村はいかが致しましょうか?」

 

転移してきたギルド拠点の周りに用意しておいた村のことだ。

 

「あの村はこの日の為に作ったものだが、折角作ったのだからそのままにしておけ」

 

確か、建設当初から100年は経ったはずだ。

 

「残念だな、同郷の者がまた一人いなくなるのは」

 

その呟きには、同族に対する感情というものが何一つ籠ってはいなかった。

 

 

 

 

 

翌日、辺境の村の近傍で、何か大きな爆発音のような音がした。

詳細を知るものは誰もおらず、そのことは、誰の記憶からも忘れられた。

爆発音がした場所は、いつの間にか美しい湖になっていた。

いつからか、観光客が来るようになり、やがて湖畔の避暑地として人気になったという。

 

 




アインズ「全く、リアルとゲームの区別位、つけて欲しいよなあ」

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