強くてニューゲーム   作:トモちゃん

6 / 38
5話

転移というか、2周目が始まってから数日が経過した。

アインズは自室で遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモートビューイング)により、周辺地理を確認していた。

前世と同じ位置にカルネ村、エ・ランテルが見つかった。街道の方向から、おそらく王都も前世と同じだろう。

時期はどうなのか、カルネ村が無事だということは、前世より前に転移してきたのか、それとも……。

そして、カルネ村で少女たちを助けたことは覚えているが、詳細はほぼ忘れた。何しろアインズにとっては30万年も前のことなのだ。

不可視化の能力を持つ僕たちをカルネ村、エ・ランテルに送り出したアインズは、彼らから齎される情報を吟味しながら今世をどう生きるか考えていた。

 

建国し、世界征服するにしても、前世はほぼデミウルゴスに丸投げしてしまった。

何故かデミウルゴス達からは褒め称えられることしかなかったが、今回はもう少し上手くやれる筈だ。

方針としては、出来るだけ犠牲は減らす。これはヒューマニズムではなく、単純に国の生産性を上げるためだ。

簡単に言えば、納税者を出来るだけ確保したいのだ。

今回はナザリックの運営資金もアインズの前世で蓄えた個人資産で賄える。冒険者になる必要もあるまい。

それと、国の統治にしても、自分の直轄領は出来るだけ小さくしたい、とも考えてる。

広くてもこの大陸の半分位にしたい。

世界征服したはいいが、ハンコを押しているだけで一日が終わるような生活はもうしたくない。

それでさえ、デミウルゴスとアルベドの権限を超える仕事だけを厳選した状態だったのだ。

アンデッドでなければ過労死していたに違いない。

かつての懐かしい友、社畜の代名詞と呼ばれたヘロヘロに伝えたい。

 

「一年で1週間も休みがあるなんて、ヘロヘロさんが羨ましいですよ。俺なんてこの前、180年連勤しましたよ。タブラさんもびっくりの大錬金術師ですよ」と。

 

なるべく優秀なものに自治を認め、出来る限り楽をしたい。

 

 

それとどの国を永久敵国にするか、だ。

前世では法国がそうだった。

シャルティアを洗脳した犯人が法国だと分かったため、ここだけは魔導国に組み入れることを許可しなかった。

魔導国内の反魔導王派というべき者たちを追放し、捨てる場所として30万年間、法国も続いたのだ。

この国は何故か、一年中ゴキブリが大量に発生し、備蓄している食料や畑を食い荒らすため、常に食糧不足だった。

その為、定期的に―口減らしも兼ねて―魔導国に戦争を仕掛けていた。

その際発生した死体は、魔導国でアンデッドの材料や一部の僕たちの食糧として有効活用されていた。

ほぼ完全に世界征服した後は大きな戦争など起こり得なかった為、法国は本当にありがたい国だった。法国の民にとってはたまったものではないが。

法国を支配下に置かなかったアインズの先見の明をアルベドとデミウルゴスが絶賛したのは言うまでもない。

 

 

アインズはワールドエネミーとなった際、一日に一度、周囲の死者を“強制的に”復活させる能力を得ていた。

本来は、中ボスを連続で討伐することで現れるワールドエネミーの能力だ。

戦闘中、HPがある一定値を割るごとに中ボスを全部生き返らせるという、プレイヤーのスキル回数、MPやアイテムといったリソースに加え、やる気とプレイ時間にダイレクトアタックしてくれる運営死ねという能力だったのだが、転移後の世界では仕様が変わっているらしい。

この能力は超位魔法並みの効果範囲を持つため、10万の兵を復活させることすらも容易かった。

その為、アンデッドの材料になれなかったものは、毎日復活と死を繰り返すという地獄を味わうことになった。

能力の性質上、復活拒否は出来ないらしい。これから逃れるには、老衰で死ぬか、レベル1未満になるまでレベルダウンするかしかない。

しかし、この能力は相手を完全復活させるものの為、レベルダウン効果はない。

また、アインズの神聖を高めるのにも大きく貢献してくれた。今世ではこれを最初から有効活用しようと考えている。

この能力と法国のおかげで、経験値を大量に稼ぎ、強欲と無欲に経験値を蓄積しまくった結果、経験値消費型のスキルや魔法は大したデメリットではなくなっていた。

尚、強欲と無欲はアインズに吸収されてしまったが、その能力はきちんと使えるようだ。誰かに渡せなくなったのが地味に痛いが。

 

 

このように継続的に戦争を仕掛けてくる敵性国家は非常に重要なのだが、今となっては法国をそうしたのは勿体無かったと思っている。

戸籍等が最もしっかりした国であり、これを流用していたら、前世はもっと楽に世界征服できていたことだろう。

現地の人間にしては強者も多く、育成方法も優れている。

それに今世では法国に恨みもない。前世と同じく、システムが優れた国であれば今回はちゃんと傘下に入れるとしよう。

アインズが考えている計画にも必要な国なのだし。

そう考えると聖王国あたりがちょうど良いだろうか?しかし、前世では自分を神とあがめる宗教を立ち上げた少女が居たし……。

まあ、これはある程度支配が進んでから考えれば良いか。

 

 

考えに耽っていたアインズに伝言(メッセージ)の魔法が届く。

どうやら、カルネ村に派遣していた僕からだ。

前世と同様、帝国の騎士風の連中がカルネ村に迫っているらしい。

 

「セバス、アルベドを呼べ。完全武装で来るよう伝えろ。この村を助けに行く。それとアウラに後詰を命じておけ」

「畏まりました。直ちに」

 

セバスが出ていくと、アインズは遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモートビューイング)を覗き込む。

既に帝国騎士風の兵士たちはカルネ村の入り口に到着していた。すぐに殺戮が始まる。

アインズは既プレイのゲームのチュートリアルを眺める感覚で「あ~、こんなんだったな~。てか、村しょぼいな。大都市のイメージしかないわ」とか考えていた。

皆殺しにされては意味がないので、そろそろ行くとしよう。そう思ったとき、扉をノックする音が聞こえてきた。良いタイミングだ。

 

「入れ」

「失礼いたします。アインズ様」

 

セバスがアルベドを連れて入室してくる。

 

「では行くとするか。久々の戦闘、いや、チュートリアルイベントだな」

 

転移門(ゲート)の魔法を起動し、カルネ村へ向かうアインズとアルベド。

 

「くふふ、アインズ様と二人っきりでお出かけ。これがデートという奴ね、くふふふ」

 

浮かれた声は聞こえなかったことにした。

 

 

 

 

 

エンリ・エモットは幼い妹の手を引いて必死に走っていた。

だが、所詮は少女の足、帝国の騎士に勝てるはずもなく、二人の騎士にすぐに追いつかれ、背中を切られた。

致命傷では無いが、冒険者でもない彼女には、もう逃げる術などなかった。

どうにか妹だけは逃がさなくては、そう考えたとき、奇跡が起こった。

目の前の空間には黒い穴が開いていた。

そこから出てくるのは死の化身、いや、死そのものだった。

豪奢なローブに身を包んだそれは、騎士に向かって徐に手を伸ばした。

 

心臓掌握(グラスプハート)

 

そう呟いた瞬間、騎士が倒れた。

ああ、死んだんだ。そう理解する間もなく、もう一人も電撃に貫かれ死亡した。

次は自分たちだろうか、そう思ったとき、死の化身が声をかけてきた。

 

「大丈夫か? 怪我をしているな」

 

それは思った以上にずっと優しい声で、まるでその骸骨の面が仮面か何かだと錯覚させるほどだった。

 

「回復してやるとしよう。大治癒(ヒール)

 

光に包まれたと思ったら傷が完全に消えていた。

アインズは魔力系魔法詠唱者ではあるが、今ではある程度の信仰系魔法も使えるようになっていた。

使用できる信仰系魔法は多くはないが、回復魔法を使えるだけでPvPでは相当に有利であることは間違いない。この能力を得た後、PvPをしたことはないが。

 

「アインズ様、その娘をどうなさるのでしょうか? 」

 

いつの間にか死の化身の後ろに黒い全身鎧を着た(多分)女性が立っていた。

 

「ん?助けてやるだけだ。この国にいるということは私の民だからな」

 

当たり前のように答える死の化身。私の民と言っていたが、王様なのだろうか?

王様が骸骨だったなんて聞いたこともないが。

 

「くふふ、そうですわね。この地に住まうものは全てアインズ様のもの。ならば、多少の慈悲は与えてもよろしいかと」

「そういうことだ。ではその前に、中位アンデッド作成<デスナイト>」

 

スキルを使い、死の騎士を2体作成する。

一体にはこの少女たちを守るよう、そしてもう一体にはこの村を襲っている騎士たちを捕らえるよう指示を出す。

但し、逃げる者は容赦無く殺せ、と付け加えておく。

 

 

「ど、どうかお願いします!お父さんを助けてください! 」

 

エンリは恐怖を押し殺し、目の前の死神に懇願する。

 

「虫が良いことは承知しています。でも、貴方様しかいないんです。私にできることなら何でもします」

 

地面に頭を擦り付けるように土下座をするエンリ。

 

「先ほども言っただろう?この地の民は全て私の民だ。ならば、私が守るのは当然の義務だとも」

 

表情が変わらない骸骨の顔だが、まるで優しく微笑んでいるようにエンリには見えた。

 

 

 

 

 

 

突如現れた死の騎士、戦っても傷一つ負わせられない。逃げようとしても自分たちが3歩も歩く間に追いつかれる。

死の騎士に蹂躙される帝国騎士風の集団の頭上から声が響く。

 

「お疲れかな? 法国の諸君」

 

絶望的な状況下、救いの手が差し伸べられたと思い、声が聞こえた方を見上げると……。

そこには黒い後光をまとい、死の騎士以上に濃厚な死の気配を放つ強大なアンデッドが居た。

 

 

副隊長、ロンデスは目の前にいるのが自分たちが崇める神だと直感した。だが、何故、法国の、人類のために働いている自分たちに死の騎士を放つのか。

村人達も呆然とその光景を見上げている。悍ましいアンデッドのはずなのに、まるで神話に出てくる神が降臨したかのような神聖さがあった。

 

「まだ戦いたいなら、武器を取り給え。投降し、裁きを受けるなら…」

 

ガシャリ、と騎士たち全員が武器を放り捨てる。

 

「あ、貴方様は一体……」

「ふむ、君が村長かな? 」

「は、はい。左様でございます。一体、貴方様は…」

「私はこの魔導国の王、アインズ・ウール・ゴウンという。この地はそもそも私の支配地だ。故に、そこに住まうものは皆、どんな種族も私の民だ。何人たりとも、それを傷付けることは許されない」

「魔導国、でございますか? 」

「そうだ。少しの間、地下で異形種の楽園を作って実験をしていたのだよ。全ての種が生きられる理想郷を作るためにな」

「理想郷…」

「飢えることも、このように突然襲われて死ぬこともない楽園をこの地にも作る。そのための研究をしていたのだがな、ようやく目途が立ったというわけだ。」

 

嘘を吐いているようには見えないが、村長の頭はこんな荒唐無稽な話を信じられるほどお花畑ではなかった。

 

「村長、村人たちの死体をここに集めろ。それと、向こうの森に逃げて来た少女が二人いるので連れてきてくれ。デスナイト、お前は騎士たちの死体を集めろ」

 

何をするのかは分からないが、この絶対者に逆らうことなど誰も出来なかった。言われた通りに死体を並べる。

 

 

 

「では始めるか。中位アンデッド作成」

 

騎士の死体に対してスキルを発動する。次々に恐ろしく強力なアンデッドが作られていく。

デスナイト4体、ソウルイーター6体作ったところでちょうど騎士の死体が無くなった。

生き残った騎士たちの顔は皆、一様に蒼白だ。

自分の仲間たちは、もう永遠に救われることが無い。彼らには神罰が下されたのだ。いや、自分たちもそうなるのだろう。

 

 

続いてアインズは村人の死体のほうに向かう。

村人たちの表情は皆沈痛だ。せめて、安らかに眠らせてやってほしい、誰もがそう思っていた。意を決して村長が懇願する。

 

「ゴウン様、どうか、せめて村人たちは安らかに眠らせてやっては下さいませんか。この年寄りの命であれば捧げます。どうか、どうかご慈悲を」

 

目の前で土下座する村長に対し、アインズは鷹揚に答える。

 

「不安なのは分かる。だが、安心するがよい、村長。私は真っ当に生きる民はその命を全うするべきだと考えている。まあ見ておくがよい」

 

アインズが手を振ると、周囲が光に包まれる。それはこれ以上無いほどの神聖な輝きだった。

そして、奇跡が起こった。光が収まると、死んだはずの村人たちが起き上がってくる。

 

「お父さん、お母さん!! 」

 

泣きながらエンリとネムの姉妹が両親の胸に飛び込んでいく。

 

「ゴ、ゴウン様。貴方様は…貴方様は…」

 

村人も、敵対していたはずの騎士たちも、皆、一斉にひれ伏した。

誰もが理解した。目の前の存在はアンデッドなどではない。このお方こそが世界を救うべく降臨された神なのだと。

 

 

 

「(ふふふ、やはり、死者を復活させるというのはインパクトがデカい。しかも、普通なら復活させることが出来ない者を生き返らせるというのが重要だ。他の追随を許さないサービスというのは、いつの世も最強の武器になる。)」

 

神として崇められる為の実験は成功といって良いだろう。アインズは一人ほくそ笑む。

さあ、本番はここからだ。上手くやれば法国を丸々手に入れることが出来る。建国後の外交も楽になるだろう。

 

静寂の中、物思いに耽るアインズの姿は、誰の目にも触れ難い、神聖なもののように映った。

この日、後世において、神の降臨した聖地となるカルネ村の信仰は生まれた。

 




次はオバロ二次では大人気のニグンさん登場です。
彼は今作で生き残れるでしょうか?
次回、「ニグン、死す」デュエル・スタンバイ!

 ▲ページの一番上に飛ぶ
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。