このおかしな仲間に祝福を!   作:俊海

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ようやく一段落つきました。
以前ほど早くは書けないですが、これからもよろしくお願いします。


この素晴らしいサバイバルに祝福を!

 きっと俺は、どこか油断していたのだろう。

 自分では、俺は最弱職なのだからと常に気を抜いていないつもりではあったが、それでも気のゆるみというのはあったらしい。

 思えば、この世界に来てから、立ちはだかる苦難の壁というのはあったが、それでもさして苦労せずに乗り越えてしまい、楽観的な考えがわずかながらも表に出てきてしまっていた。

 これまでの生活が、順調に行きすぎたせいで、こんな事態になるなんて……。

 

 

「……二人とも無事か?」

 

「ええ、カズマが咄嗟に担いでくれたおかげで、怪我はないですよ」

 

「私も、ちょっと擦りむいたくらいで、行動に支障はありません」

 

 

 めぐみんもゆんゆんも、無事だったようで安心した。

 三人ともが健在であるというのは、不幸中の幸いというものだ。

 誰かが行動不能になっていたら、間違いなく俺達が生き残る可能性が激減していたのだから。

 

 俺は、背後にあった筈のダンジョンの入り口の方へと目を向ける。

 ただ、そちらを見ても、俺の目には、天井から崩落してきた岩によって作り出された壁しか映らないが。

 

 

「……つってもどうするかな、これ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カズマに直接依頼が来たですって?」

 

「ああ、なんでも領主様直々らしい」

 

 

 ダストとパーティ交換をしてから数日後、突如俺はギルドからお呼びがかかっていた。

 どうして俺なんかに、領主だなんて雲の上の存在の野郎が話があるのか不思議でしょうがなかったが、どうも、この間魔王軍幹部を倒してしまったことで、その領主にも俺達の噂が耳に入ったらしい。

 そこで、その腕を買って、少しダンジョンの様子がおかしいから現場検証をしてくれるように頼まれたって訳だ。

 

 

「本当に、俺が冒険者になったときは、ここまで評判になるようなパーティが組めるようになるとは思わなかったんだけどなぁ」

 

「……私は最初からカズマはすごい人だと思ってたんですけどー。私の方がその領主よりもカズマの事はちゃんと理解してるんですけどー」

 

 

 そう言って、アクアが頬を膨らませる。

 ……あれ? なんでアクアが不機嫌になるのだろうか。

 いつものアクアなら、『よかったじゃない! カズマがこうやって認められるだなんて、私も自分の事のように嬉しいわ!』とか言ってきそうなんだが。

 

 

「アクアはこの間のあれと、カズマがあのパーティでクエストに行っているのを見て少し不安になってるんですよ。もしかしたら、そのパーティにカズマをとられるんじゃないかとね」

 

「いやねぇよ。俺が移籍するとか考えたこともないから」

 

 

 めぐみんが説明してくるが、はっきり言って寝耳に水というか、何処からそんな話題になるのか不思議なくらいに突拍子もない未来予想図だ。

 あれからも、ちょくちょくダストたちと討伐に行ったりもするが、だとしてもこの四人から離れるつもりは毛頭ない。

 

 

「ダストの借金返済のために付き合ってやってるだけで、俺が向こうの方を気に入ったとかじゃないから安心しろ」

 

「別に心配とかしてないし。別にカズマがどこか別のパーティに行ってもいいし。その後で私が勝手に付いてくから」

 

 

 ……前から少しだけ思っていたことがあるのだが、もしやアクアって愛が重いタイプの女神なのでは?

 今だってナチュラルにストーカーしますよ発言をしたし、これまでのダメにさせられそうになった回数からして、その疑惑がかなり強い。

 これは、今後はうかつな発言や行動は慎まないといけない気がする。こんな異世界で、監禁エンドなんて御免だし。

 

 

「それは置いといてだ。明日はダンジョンに行きます。あ、めぐみんもついて来いよ」

 

「嫌です」

 

「行きます」

 

 

 拒否するめぐみんに俺が即答すると、杖を構えてこちらを威嚇してきたので、『バインド』で杖を取り上げた。

 何をそんなに嫌がるのか。せっかくのクエストだというのに。

 

 

「嫌です嫌です、ダンジョンなんて私の存在価値皆無じゃないですか! ダンジョンが崩れるから爆裂魔法なんて使えないですし、私もう本当にただの一般人に成り下がりますよ! どうしてわざわざそんな危険な目にあいに行かなきゃいけないんですか! どうせならこの間みたいにダクネスを連れて行けばいいじゃないですか!」

 

「しょうがねえだろ! ダクネスはなんか実家の都合とかで今日はいないし! 大体この調査にはめぐみんを連れて行くようにって、ご丁寧に依頼書に指名されてんだから!」

 

「……え? なんでですか?」

 

「なんでも、今回の調査の原因が、魔法関係の物だそうで、そこで魔法のエキスパートであるめぐみんにも、どうか実物を見て意見を聞かせてほしいらしい」

 

 

 そうでもなかったら、ダンジョン内で一番戦闘力が無くなってしまうめぐみんを連れ出そうだなんて、絶対に思わない。

 むしろ、言い方が悪いが足手まといが増えるくらいなら、留守番をお願いするレベルだ。

 

 

「それに今回挑むダンジョンは近場の物だし、初心者が腕試しで入るようなところだから、それほど危険じゃないしな」

 

「……いろいろと引っかかるところはありますが、そういうことならいいでしょう」

 

 

 渋々ながらも、ようやくめぐみんは了承してくれた。

 あとは……。

 

 

「そういうことなら私も行くわ! カズマには『ヒール』も『ターンアンデッド』も教えたけど、いざという時のための回復役は必要でしょ?」

 

「アクアは明日は留守番な」

 

「なんでよーーーっ!?」

 

 

 涙目で縋りついてくるアクア。

 そりゃ俺だって回復役であるアクアには、ついて来てほしいのはやまやまなんだけれども。

 

 

「お前、明日はバイトやら宴会芸やら相談役やらで忙しいんじゃなかったか? 前日になってキャンセルなんかできないだろ」

 

「そ、それは……、でも、カズマのためだし……」

 

「俺のためだってんなら、なおさらだ。俺が挑むダンジョンは難易度は低いものだし、わざわざそのために沢山の予定を取り消させるような奴だなんて噂が立つ方が問題だぞ。俺のことはいいから、アクアは明日、予定通りに過ごしておいてくれ」

 

 

 俺が向かうダンジョンは、冒険者たちにすでに荒らされつくされているであろうダンジョンだ。

 そんなところを攻略するのに、わざわざアクアにドタキャンさせてまでついて来てもらう必要はない。

 なにより、いつまでもアクアにおんぶにだっこでは、いつの日か俺がその誘惑に負けてしまいそうだという理由もあるにはあるが。

 

 

「……分かった。でもせめてゆんゆんは連れて行ってよ? ゆんゆんの魔法なら、ダンジョンの中でも使い勝手は良いでしょうし」

 

「それはもちろんだ。ゆんゆん、頼めるか?」

 

「もちろんです! カズマさん達に私ができることがあるなら、何でも言ってください!」

 

 

 ゆんゆんは、相変わらずチョロい。

 ここまで子供っぽいというか、純粋なまま育ってこれただなんて、もはや奇跡としか言いようがないのでは?

 それとも、なんだかんだ友達思いなめぐみんが、そうなるようにフォローしてたのかもしれないけれど。

 

 

「お願いしますよ、ゆんゆん。基本私はダンジョン内だとクソ雑魚ナメクジとなってしまうので、私の命は貴方の手腕にかかっていると言っても過言ではないのですから」

 

「十二分に過言だよっ!? ほら、カズマさんだっているんだし、私ばっかりって訳じゃ……」

 

「おい、俺は最弱職の冒険者なんだぞ。『潜伏』や『罠探知』なんかでサポートはできるけど、戦闘に関しては不安定なんだからな」

 

 

 俺の攻撃手段と言えば『狙撃』なんだが、単純に防御力の高いモンスターには効き目が薄い。

 そうなったときのためにも、色々と道具やらは用意しているけど、消耗品を使う以上その限界というのはあるわけで。

 そもそも、ゆんゆんの魔法でどうにかできる相手なら、俺は戦わない方が経済的にもよろしいくらいだ。

 

 

「そういうわけで、頼りにしてるぞ、ゆんゆん!」

 

「ええ、頑張ってくださいね、ゆんゆん!」

 

「う、うう……緊張するよぉ……」

 

 

 俺達二人の期待を背負い、ゆんゆんは、その重圧に押しつぶされそうになっていた。

 そんなに深刻に考えなくても、大丈夫だろうに。真面目だな、ゆんゆんは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、そうやって意気揚々とダンジョンに入ったはいいものの、なぜか途端にダンジョンの崩落が始まって、今に至ると……。運悪すぎだろ、俺達」

 

 

 おかげさまで、帰り路が完全にふさがれてしまっている。

 不幸中の幸いというか、俺達三人の中に重症になった奴はいなかったけれども。

 

 

「俺は、キースに教えてもらった『千里眼』があるから暗闇の中でも見えるけど、めぐみんとゆんゆんは大丈夫か?」

 

「いえ、全く見えません。なんとかカズマとゆんゆんの魔力を感じ取って、誰がどのあたりにいるのかは把握できますが、何処に壁があるとかになるともうさっぱりです」

 

「め、めぐみん……そんなこともできるんだ……」

 

 

 思った通りというか、めぐみんがやっていることは魔法使いであるゆんゆんからしても異端の物のようだ。

 めぐみんはやはり変態であったか。……こんなところでそんなことを再確認はしたくなかった。

 

 

「しょうがねえな。念のために持ってきた松明があるから、それで明かりは確保しよう。『ティンダー』っと」

 

 

 松明に火をともすと、辺りがボヤァと映し出される。

 ゲームだったらそこらじゅうが見渡せるようになったりするが、現実だとそう上手くも行かない。

 俺の場合は『千里眼』があるから、些末な問題だけどな。

 

 

「こんだけ大規模な事故だ。すぐに救助が来るだろうし、のんびり待っとこうぜ」

 

「いえ、私たち自身の力で脱出する方法を考えた方がいいと思いますよ」

 

 

 楽観的な俺の言葉に、めぐみんが反論してきた。

 

 

「なんでだよ? ギルドの依頼で俺達はこのダンジョンに来たんだぞ? 向こうだって俺達がここにいるってことは把握してるんだ。こんだけ派手な落盤があれば、捜索してくれるんじゃないか?」

 

「それなんですが、私たちがこうなってしまったのも、誰かに嵌められてしまったからだという可能性が高いのです」

 

 

 嵌められてる? 俺達が?

 なんだってそんな陰謀論が出てくるんだ。

 以前から中二病だったけど、めぐみんはそういう方向にシフトチェンジしたのか?

 

 

「先ほどの落盤ですが。あれ、トラップのせいっぽいです」

 

「トラップ……だと?」

 

「はい。私達がダンジョンの中に入ると同時に、マジックアイテムが作動する気配がありました。きっと、爆薬か何かを仕掛けておいたんでしょう。その爆発のせいで、御覧の通り、我々はこの中に閉じ込められてしまったということです」

 

「め、めぐみん……それ、本当?」

 

「本当ですとも。もっとも、仕立て人としては、我々がその瓦礫の山の中に消えることを目的としたと考える方が自然ですね」

 

 

 そう言いつつ、めぐみんは自分の服の中をゴソゴソしはじめ、目当ての物を見つけたのか、何かを掴んでて掌を俺達の方に差し出した。

 ……これは、紙切れか? でも何かで汚れているような……。

 

 

「見てください。さきほど咄嗟に掴んでおいたのですが、これがその証拠です。爆発の影響で一部しか残っていませんでしたが、『起爆』の魔法陣が書かれた紙です。これがセンサーの代わりになっていたのでしょう」

 

「お、おいおい、待て待て待て! それは曲がりなりにもトラップなんだろ? なんで俺の『罠探知』に引っかからなかったんだよ? そんな程度なら、いくら俺でも分かるぞ!」

 

 

 実際俺の『罠探知』スキルは、魔王軍幹部であったベルディアの仕掛けた罠には十二分に仕事をしていた。

 それが、そんなちゃっちい仕掛けに反応しないはずがない。

 

 

「……おそらく、相手はよっぽど隠蔽が上手い人物なのでしょう。私も驚きました。まさかカズマのスキルさえ欺くとは想定していませんでしたから。もはや、因果関係を捻じ曲げるレベルの魔法でも使えるんじゃないでしょうか」

 

「そんなすごいことが出来んのに、やってることがみみっち過ぎねーか、そいつ」

 

 

 その能力を使って、直に殺しに来た方がよっぽど早い気がする。

 

 

「……世の中、とんでもない力があるのに、それの使い道がおかしな人なんていくらでもいますからね」

 

「ああ、めぐみんもそうだよね。せっかくの才能を『爆裂魔法』に使っちゃうんだし」

 

「シャラップゆんゆん!」

 

 

 凄まじい説得力だった。

 

 

「大体、それを言うならゆんゆんこそ、友達がいなさ過ぎて悪魔と契約しようとしていたではありませんか! 私があれを止めていなかったらどうなっていたか……」

 

「そ、その話はもういいでしょ!?」

 

 

 ……ああ、ゆんゆんも、めぐみんと同類だったんだな。

 そりゃそうだ、そうでもなければ友達なんかやってられないもんな。

 

 

「なんですかカズマ、その生温かい目は」

 

「いや、類は友を呼ぶって本当だったんだなって噛みしめてただけさ」

 

「それを言いだしたら、その二人と接点のある貴方も類友になってしまいますがよろしいでしょうか?」

 

「やっぱ故事成語って奴はあてにならねーな!」

 

 

 俺が、こんな人間の形に収まった災害の化身と同類扱いされてたまるか。

 仲間としては全くこれっぽっちも不服はないが、それでもあらゆる意味で人間を卒業してるような奴と同じものにカテゴライズされたくはない。

 

 

「……なあめぐみん、もしもお前の言っていることが全て事実なら、とんでもなく嫌な推理が俺の頭の中に浮かんだんだが」

 

「奇遇ですね、私もカズマと同じようなことを思いついていると思います」

 

「え、えっと、二人ともなんでそんなに冷や汗をかいてるの?」

 

 

 まだ状況が呑み込めていないゆんゆんは、俺とめぐみんの顔色から、何か良からぬことが起こっていることは把握できたようで、焦ったように話しかけてくる。

 事実、最悪のケースを考えたら、俺達だって慌ててしまいそうだ。

 

 

「……カズマ、貴方は誰からこのクエストの依頼を受けたんでしたっけ?」

 

「……この街の領主からだな」

 

「では、以前のベルディア討伐の際、その報酬は誰から支払われたんでしたっけ?」

 

「…………この街の領主からだな。めぐみん、俺からも質問していいか?」

 

「…………どうぞ」

 

 

 話をつづけるごとに、俺達の顔色は真っ青になっていく。

 ゆんゆんも、ようやく察しがついたのか、血の気が引いている。

 

 

「その領主がどんな奴なのか、めぐみんは聞いたことあるか? どうせ噂話だろって真面に受け取ってなかったんだが、俺は悪評ばっかり耳に入ってきてたんだけど」

 

「……大体同じような評価ばかりですね。はい」

 

 

 ある人曰く、悪事ばかり働いているのに証拠がないせいで貴族をやっていられる典型的な悪徳領主。

 ある人曰く、手に入れたいと思ったものは芸術品でも宝石でも何が何でも手に入れたがる強欲の化身。

 ある人曰く、中でも女にだらしなく、狙われたが最後、どうあっても逃げることができないほどに粘着質。

 酒場での話だから、大げさに吹聴しているのだと思っていたが、もしもそれらが事実だとしたら?

 

 

「…………で、今回俺達は何かの爆発のせいで危機に陥っていると。『爆裂魔法』が使えるアークウィザードを連れた状態で」

 

「…………そういうことですね」

 

 

 完璧に謀殺未遂です。ほんとうにありがとうございました。

 

 

「めぐみんが『爆裂魔法』を暴発させたせいで事故死したって見せかける気満々じゃねーか! そのためにわざわざめぐみんを指定してやがったのかチクショー! 何だよ、俺が何したって言うんだよ! 別に誰かに迷惑をかけて生きてきたわけじゃねーじゃん! 懸賞金を払わなくちゃいけなくなったからって、命を狙うとかおかしいんじゃねえの!? なめんな! いっそクソ領主の家に直接攻め込んでやろうか、ああ!?」

 

「ええ、全くなんてことをしでかしてくれたんでしょうか、あの悪徳領主は! 私が『爆裂魔法』をリスク管理もできないで撃つとでも思っているとは! こうなったら、その通りにやってやろうじゃないですか! 具体的には、領主の顔面に直接ぶち込んでやりますよ、ええ!!」

 

「ちょ、ちょっと二人とも落ち着いて! 物騒なことを言ってないで、どうにかしようよー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ともかく、我々が今取れる行動は三択です」

 

 

 気を取り直しためぐみんが、俺とゆんゆんに指を三本立てた手をこちらに向けてきた。

 

 

「一つ目は、カズマが最初に言ったように、外からの救助が来るまでここで待つこと。……私としては、お勧めできませんが」

 

 

 俺とゆんゆんはそろって頭を縦に振る。

 こんなことをしてくる奴だ、どうせ救助活動も遅らせようとするに違いない。

 そんなものを待ってたら、俺達がミイラになっちまう。

 

 

「二つ目は、ゆんゆんか私がこのダンジョン内でレベルアップして、『テレポート』のスキルを習得すること。私達はアークウィザードなので、習得するのに必要なポイントが貯まるまで相当時間がかかりますけど」

 

 

 確かに確実に帰れはするが、このダンジョンは初心者向けの物だ。

 悠長にレベル上げなんかしてたら、救助の方が先に来そうである。

 

 

「三つ目は、このダンジョンを捜索し、別の出口を発見する事です。個人的に、この方針で行きたいと思うのですが、反対意見はありますか?」

 

「はい!」

 

「では、ゆんゆん。どうぞ」

 

「めぐみんの『爆裂魔法』で、出口を作るっていうのはどうでしょうか?」

 

「やめとけやめとけ。ただでさえさっきの爆発でダンジョンのあちこち崩落してたんだ。そこにめぐみんの『爆裂魔法』なんか撃ち込んだら、今度こそ俺達は生き埋めになっちまうぞ」

 

 

 まあ、どうしようもなくなって、どうあがいても出られないってなったら、最期の賭けでやってみる価値はあるけれども。

 

 

「そういうことです。それに、それをしてしまうと、脱出した後の方が面倒なことになりますから、本当のとっておきにしておきましょう」

 

「ま、とりあえず三つ目の選択肢を選ぼう。これだけ広いんだ、どこかに抜け道なんかがあってもおかしくない。地道だけど頑張ろうぜ」

 

「はーい!」

 

 

 ゆんゆんの元気な返事を聞いて、ようやく心を落ち着かせることができた。

 はぁ……それにしても、順調な冒険者生活だったはずなのに、どうしてこうなったんだよ……。

 

 

「ところでカズマ。食料や水、毛布なんかは用意しているでしょうか? それがあるのとないのとで生存率が大きく変わってくるのですが」

 

「ん? ちゃんとあるぞ。保存食は10日分はあるし、水は『クリエイト・ウォーター』でいくらでも出せる。毛布は一枚しかないけど、寝袋は三人分入ってるからそれぞれ使ってくれ。モンスターやアンデッド避けなら、アクアに作ってもらった聖水もいくらかは。トイレットペーパーとか、洗剤も……」

 

「私、カズマがリーダーで本当に良かったと思います」

 

「そもそも、その鞄の中に、どうやってそれだけの物が……?」




Q,なんでこんなことになってるの?

A,アルダープがダクネスを手に入れるための建前(ベルディア戦での借金など)が無くなってしまったから。

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