このおかしな仲間に祝福を!   作:俊海

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この素晴らしい入院に祝福を!

 多くの人達の力を借りて、どうにかハンスを討伐してから翌日。

 スライムの残骸の処理や、交戦時の余波によるインフラの整備などに、仲間たちが率先して尽力している中、俺はというと。

 

 

「……なんで俺、観光地に来て入院してんだろ」

 

 

 周りの人間によって、病院にへとぶち込まれたのであった。

 

 

「仕方が無いではないですか。カズマ殿の体調を考えると、緊急入院して頂く他なかったのですから」

 

「そんなに俺の身体ってヤバかったんですか?」

 

 

 ちょうど今、見舞いに来てくれているゼスタさんに訊ねる。

 俺の問いに、ゼスタさんは『こいつマジか』みたいな表情を一瞬だけ浮かべて続けた。

 

 

「あれは誰が見ても同じような判断をすると思いますよ。お腹の中はグッチャグチャ、全身の骨が折れる寸前、その上精神的疲労も溜まってるとなれば、どうやってでも医者に診せるというものです」

 

 

 ……なんか、思ってた以上に俺の身体はぼろぼろだったらしい。

 内臓損傷なんかは多分アクアの蹴りによるもので、骨は体力が低下してる状態で無理に体を動かしたことによるものだろうが、精神的疲労ってのがいまいち分からん。

 別に、ストレスが溜まるようなことは……、いや、よく考えたら普通に有ったわ。

 あー、あのクソ領主の事を思い返すだけで腸が煮えくり返ってきた。

 

 

「アクア様……おっと、アクア殿の回復魔法は素晴らしい物ですが、貴方のそれは、しばらく休息をとって自然に治癒させた方がよろしいかと」

 

「それで治るなら全然構わないんですけど……、ゼスタさんは、アクシズ教徒としてはこれで良かったんですか?」

 

 

 俺の不安げな質問を聞いたゼスタさんは、慈しむような笑みを浮かべて。

 

 

「それは勿論。私はアクア様の意志を尊重する者ですから。アクア様を祭り上げるようなことなど致しませんよ。この街に今いらっしゃるのは、ただの女の子であるアクア殿。そういうことで良いのです」

 

 

 

 

 ――アクアがハンスを殴り飛ばす直前、俺とアクアはついついアクアが女神であるということを口走ってしまった。

 それによって、アクアの正体が彼らの信奉している水の女神、アクア本人であるということがアクシズ教徒達に知れ渡ることになったのだ。

 実際に女神っぽい力でハンスを浄化してしまったし、女神であるかどうかを疑う要素も無かったために、その場は激しく大混乱。

 自分達の失態を俺とアクアが後悔しかけたその時、このゼスタさんが前に出てきて、俺達にこう尋ねた。

 『貴女様は、女神としてこの地に降臨されたのですか? それとも、一人の人間としてやって来られたのですか?』と。

 その問いに、アクアは、『私は、カズマ達の仲間としてこの世界に現れました』と返したら、ゼスタさんは満足そうに笑って続けた。

 『ならば、僭越ながら私から。貴方達の旅路に遥か遠き天界におわす(・・・・・・・・・・)アクア様の祝福があらんことを』

 

 ……要は、女神様がこの地にやってきたなんて事実は無かったことにするから、アクアはこちらの事なんか気にせずに、自分の気の向くままに生きてくれ。と告げられたわけだ。

 ハンスに向けられていたちょっと行き過ぎた信仰心を見て、もしかしたら晒し上げにされるのではと疑っていた自分が恥ずかしい。

 

 

「で、本音で言うと?」

 

「そんなのアクア様がこの街アルカンレティアにお越し頂いた日を街中の人間総出で全力で祝う祝日にしたいくらいに嬉しいに決まってるじゃないですかヤッホウ!!」

 

 

 やっぱり、この人どこかファンキーなところがあるな……。

 

 

「し、失礼。……ですが、我々がアクア様が求めるものや望む事を行いたいと思っていても、アクア様がそれを望まないのであるなら、こちらの都合を押し付けるわけにはいきません。『善意の押しつけはいけません。あなたにとっては善意でも、相手からすればそれが悪意に見えるかもしれません。地獄への道は善意で舗装されているという言葉もあるのだから』という教えもありますしね」

 

 

 アクシズ教の教義って、なんとなく『他者の気持ちになりましょう』みたいな教えが多いような気がするな。

 女神様があれだから、そりゃそうかとも納得できるけれども。

 

 

「そういうわけで、アクア殿の事は頼みましたよ。カズマ殿がいらっしゃるなら、きっとあの方にとっても素晴らしい日常を送ることが出来そうですから」

 

「……任されました」

 

 

 そう告げて、ゼスタさんが病室から退出した。

 なんだろうな、父親から娘を任されたような気分になってくる。

 アクアにはその気なんて一切ないだろうから、その表現が適切かどうかは分からんが。

 

 

「しっかし、思えば何の気兼ねもなくゆっくりできるって言うのは久しぶりだな」

 

 

 周りにいる奴らが異性ばかりだからか、色々気を遣わなくっちゃいけないし、何だかんだあいつらって目を離せないところがあるからなぁ。

 ようやくできたフリータイム、思う存分堪能するか。

 

 

「……つっても、やることが全くないんだが」

 

 

 今の俺ってば、完全に手持ち無沙汰。

 元居た世界なら、こんな空き時間があればネットゲームをプレイし続けるんだが、この世界ではいつもの日々がネットゲームそのものである上、そもそもの問題としてゲームの筐体があろうはずもなく。

 だったら外出するかと考えたが、安静を指示されてるので病院から出ることすらままならない。

 ……マジで何しよう。

 

 

「日曜日のお父さん連中は、いつもこんなことでも考えてんのかな」

 

「何をいきなりボヤいているんだ、君は?」

 

「ぎゃあっ!?」

 

 

 独り言を呟いている横から、予期せぬ声をかけられて、驚きのあまり悲鳴を上げてしまった。

 ダクネスと言い、何でこう、油断しているところに声をかけられるんだろうな俺は。

 そんなどうでもいいことを考えながら、呼びかけられた方へ顔を向けると。

 

 

「……ええと、誰だっけ?」

 

「き、君、もしかしてそれは本気で言っているのか……?」

 

「いや待て、待ってくれ。喉のあたりまで出かかってるんだ。特徴的な物は思い出せるんだけど、名前が出てこなくって」

 

 

 そこにいたのは魔剣使いのソードマスター。

 俺がはったりとかで適当にはぐらかして、アクアに顔面ビンタを入れられた奴。

 確か名前は……。

 

 

「ああ、そうだ、カツラギさんだ! 元気にしてたかカツラギさん」

 

「違う! 僕の名前はミツルギだ!」

 

「なんだ、半分合ってるじゃねえか。四捨五入したら正解だし、実質正しい答えを言ったに等しいのでは?」

 

「それは、逆に言えば半分間違ってるから完全に間違ってるに等しいとも言えるだろう! 何を訳の分からないことを言ってるんだ君は!」

 

「おい、ここは病院だぞ。静かにしろよ。お前には常識ってものがないのか?」

 

「グッ……!?」

 

 

 苦虫を潰したような顔でこちらを睨んでくるミツルギさん。

 けれど、俺の言い分にも一理あると思ったのか、一つ咳払いをし、

 

 

「……まあいい。君のからかいにも今回は目を瞑ろう。今日は君のお見舞いに来たんだからね」

 

「は? お前何言ってんの? お前って俺に対して嫌悪感しか抱いてないんじゃ?」

 

 

 何やら寝言を言い出したミツルギを、訝しげに睨む。

 こいつは俺に一時的とはいえ魔剣を奪われ、公衆の面前で束縛プレイをかまされた挙句、多額の金を強奪されたんだぞ。

 俺なら恨む。恨みまくって復讐するまである。

 

 

「いや、あれは間違いなく油断していた僕が悪いし、こちらの言い分も酷いものだったんだからお相子だよ。むしろ、そっちこそ僕の言いがかりに気を悪くしてないかい?」

 

 

 何だこの聖人。

 やっぱこいつ良い奴だよ。俺だったら恥かかせた野郎の顔なんか二度と見たくないって思うし。

 それをわざわざ見舞いに来るばかりか、自分の非のあった場所を謝罪するとか人間出来すぎでは?

 

 

「あの時は俺も悪乗りしてたからなぁ。気にする以前の問題と言うか……。で、そのためだけにわざわざアルカンレティアに来たのか?」

 

「いや、僕がアクセルを離れている間に、妙な噂が流れていたのが気になってね。率直に聞こう。佐藤和真、君は魔王軍と繋がりがあるのかい?」

 

 

 ……あー。あの領主が流した噂を確認しに来たのか。

 アクセルから結構離れた場所にあるアルカンレティアへと、馬鹿正直にその本人に事の真偽を聞くために。

 こいつ、相当天然だな。

 

 

「お前バカだろ。繋がりがあろうがなかろうが、どっちにしろ『ありません』って言うに決まってるじゃねえか」

 

「ば、バカとはなんだバカとは! 確かに言われてみればその通りではあったけれども!」

 

「そもそも何で俺がここにいるって知ってんだよ。一応逃亡って体でここに来てるんですけど」

 

「何でって……君は知らないのか?」

 

 

 知らないって、何が?

 そんな俺の疑問を知ってか知らずか、ミツルギが懐から一枚の紙を取り出した。

 えーっと、何々……?

 

 

「……『冒険者であるサトウカズマをリーダーとするパーティが魔王軍幹部、ハンスの討伐に成功。この件を以てして、領主アルダープがサトウカズマに対し掛けていた嫌疑を、ダスティネス家が正式に棄却した』」

 

 

 ああ、成程。

 昨日の激闘がアクセルの方にまで伝わってたって訳か。

 それで俺の居場所が分かったと。

 だが、今はそんなことは重要じゃない。

 今俺が最も気にかけるべきは……!

 

 

「やったぜ、これで完全に俺は潔白だ! ダスティネスだかなんだかはよく分からないけど、とにかくありがとうございますあいだだだだ!?」

 

 

 喜びのあまりベッドの上で立ち上がると同時に、俺に襲い掛かる全身の痛み。

 けれど、そんなことは気にしない。

 これで晴れて俺は、大手を振ってアクセルに戻ることができるってことだ!

 

 

「なんだよこんな良い報告を持ってきてるんだったら早く言えよ! それをわざわざ魔王軍に与するものか? なんて聞いてきやがって!」

 

「一方の意見だけを聞いて判断するのは良くないと思ってね。とにかく、祝福させてくれ佐藤和真。疑惑が払拭されたことと、魔王軍の討伐の成功、その両方にね」

 

 

 そう言ってこちらにウィンクをよこすミツルギ。

 畜生! イケメンだから気障なポーズも様になりやがって!

 だが、こんな朗報を教えてくれたんだ。今回は目を瞑っといてやる……あれ?

 

 

「なあミツルギ。お前がこの情報を知ったのはいつなんだ?」

 

「今朝方だね。アクセルのギルドで発表されたのがそのくらいだったし」

 

「……お前ってどうやってここまで来たのん?」

 

「どうやってって……ちょっと走っただけだよ?」

 

 

 それを聞き、俺は病室にかけられている時計の方へと視線を移す。

 刻まれている時間は、13時30分。

 確か、俺達が馬車を使ってここまで来るのに、道中のハプニングや夜営なんかもあったにしろ、丸一日以上はかかった筈。

 …………。

 

 

「おいミツルギ、やっぱりその魔剣の所有者の権利を俺に譲れ」

 

「いきなり何を言い出すんだ!?」

 

 

 その身体能力向上の効果があれば、あのスライム戦でも、もうちょっといい感じに戦えただろうに。

 ……いや、ねーな。

 ダクネスであれだったんだ。たかだか剣士が二人になったところで焼け石に水。

 むしろ、接近戦をしなくちゃいけなくなるから、危険度アップしてるわ。

 

 

「ごめん、嘘だ。ジョークジョーク」

 

「君のジョークは心臓に悪いよ、全く……」

 

 

 ミツルギが安心したようにため息をつく。

 やっぱ、あのスティールでトラウマになってんのかね。

 こいつが挑んできた勝負だから、謝ったりなんかはしてやらないけれど、ちょっとやりすぎたかなって気分になる。

 

 

「それより、君はアクセルに戻るつもりなのかい?」

 

「まあな。魔王軍の手先だ、なんて疑いはかけられたけど、あそこにいる奴らの事は気に入ってるし、まだまだ駆け出しの冒険者だしよ、もうちょっとあそこでヌクヌクとさせてもらうわ」

 

「……魔王軍幹部を二人も倒しておいて、駆け出しの冒険者を名乗るはどうかと思うけどね」

 

 

 呆れたような笑みを浮かべるミツルギ。

 確かに、こいつの言う通りではあるけれど、なんせ俺は冒険者になってから二ヶ月とちょっとくらいのまだまだひよっこレベルなのもまた事実。

 ……冷静に考えると、普通におかしいよな、これって。

 

 

「でも実際俺って冒険者になって間もないんだぞ? むしろ、なんでこんなに魔王軍の強敵共とエンカウントしなくちゃいけない訳? 俺がこの世界にやってくるまでに、もうちょっとミツルギさんが頑張って幹部たちを倒しておいてくれたら、こんな苦労をしなくて済んだってのによ」

 

「そ、それに関しては僕も申し訳ないと思っている。それにしても、なんで僕は一度も魔王軍の幹部と会敵することが無かったのに、君ばかり出会ってしまうんだろうね。もしかして、僕らの魔王討伐へのやる気に反比例してるのかな?」

 

「おい、その理屈で言ったら、俺には魔王討伐のやる気が一切ないみたいに聞こえてくるんだが? 喧嘩売ってるなら買うぞ。具体的にはその魔剣をスティールして、お前の手元に戻らないようなところに売りつける」

 

「止めてくれ! 本当に止めてくれ! ……というより、結構君は魔王討伐には力を注いでいるんだね。何だか気力とかがなさそうだから、荒事には関わらずにのんびり暮らしたいタイプだと思ってたんだが」

 

 

 こいつ、俺の本質を当てやがった。

 言い方自体はひどいけど、冷静になればこいつの眼識というのは、なかなかに精度が高いのだろうか。

 ……あんなじゃじゃ馬娘を二人引き連れてうまくやっているってことは、普段はそういう気配りもできるタイプなのかもしれない。

 ただ、俺と出会った時は、でっかい檻に閉じ込められて、ひどく落ち込んでいるアクアの姿を見てしまったからああなっただけで。

 うん。今改めて思えば、職質不可避なことしてたな俺達。

 

 

「だってなぁ。魔王を倒さないとアクアが天界に帰れないんだぞ。いくらなんでも、そりゃ可哀そうじゃん」

 

「それは確かに……おや? 君はアクア様と離れても構わないのかい? あれほど普段から仲良くしているのに、別れが惜しくなったりは?」

 

「多分する。というか、その時になったら泣き叫ぶ自信がある。でも、それでも、アクアだって魔王の討伐は可能であったら実現してほしいって思ってるだろうし、俺なんかが傍にいるよりは元居た場所に戻れた方が嬉しいだろ。あんな女神様してるアクアだ。今も我慢してるだけで、天界から人間たちを見守る仕事をしたいんじゃねえか?」

 

 

 そう言うと、ミツルギは複雑そうな表情を浮かべて。

 

 

「……思い込みが激しい僕から忠告するのもあれだけど、君の考えとアクア様の考えが一致しているだなんて決めつけない方がいいと思うよ」

 

 

 そんな風に、俺にへと告げた。

 

 

「そのあたりは追々な。とにかく、俺のこの世界での目標は魔王を倒すこと。だから、できる限り、率先して、内心嫌々ながらも、毎日グータラしたいって欲求も抑え込んで、それが成し遂げられたら後は冒険者稼業なんてやめて商売人にでもなり温い人生を送ることを目指して、今だけは魔王軍とも戦いますよ、俺は」

 

「思ってた以上に、君って奴はダメ人間だったんだな」

 

「ダメ人間じゃねえよ。一応商売で食っていくって言ってんだからちゃんと働いてるだろうが」

 

 

 急に違う生き物を見るような眼差しで見てくるミツルギだが、そんな無言の訴えには屈しない。

 そもそも、魔王を倒すだなんて英雄的偉業を成し遂げたのであれば、もうその後の人生は働かずとも遊んで暮らせるような待遇を用意してくれたって罰は当たらないはずだ。

 だというのに、そんな厚意に甘んじることなく働こうとしているだけ、俺はかなり立派な人間だと言えるだろう。

 

 むしろ、魔王を倒したのにあくせくと魔物を倒して力をつけているほうが、この世界の王族から『あいつ、実は圧倒的な力を蓄えた後に我々に叛逆、さらには魔王に成り代わってこの世界を支配しようとしてるんじゃね?』的な疑惑をかけられるというもの。

 故に、無害ですよアピールをするという意味でも、民草に紛れて余生を過ごすのは全然ありな選択肢だ。

 だから、俺のこの考えは間違っちゃいない。

 

 

「……そういや、お前の取り巻きはどうしたんだ?」

 

「クレメアとフィオかい? あの子達なら、アクセルで待っていてもらってるよ。流石に二人を担いで連れてくるわけにはいかないし、……その、あの子たちは君にあまり良い印象を持っていないからね」

 

 

 分かる。

 あいつらがこの場に居たら、俺が無抵抗なのを良いことに罵詈雑言を浴びせそうだ。

 それに、ミツルギが連れてこようとしても、女二人を体にへばりつかせながら全力疾走する男って絵面は、余りにもひどすぎるものな。

 

 

「しかし、仕方が無いとはいえ、この世界に来て以来久しぶりに一人旅をしているような気分になれたよ。……あの二人には申し訳ないとは思うけど、何というか、ここまで来るまでの道中がちょっとだけ気楽だったな。いつものにぎやかな雰囲気も好きだけど、たまには一人になりたいって言うか……」

 

「分かる。俺もさ、あいつらが良い奴らだっていうのは十分以上に理解してるんだけど、やっぱり、こう、変な遠慮をしちまうし、いくら仲間でも異性にひけらかすようなもんでもない、男特有の事情ってもんがあるしさ。この入院であいつらと離れられて、少しだけ寂しい一方で、我慢から解放されたって言うか……」

 

 

 そこまで語り、俺とミツルギの視線が交差した。

 ……もしや、こいつ……。

 

 

「前の世界じゃ、俺って異性とあんまり縁がない生活を送っててさ、ここに来るまでは女の子に囲まれて冒険したいな、なんてことも考えてたんだよ。……今となっては、あの四人が本当に良い子達で良かったなって思ってます。噂に聞いたら、女同士のギスギスって陰湿なものが多いらしいし」

 

「そうだったのか。僕は地球でも異性に囲まれてたからそんなことを考えたことはなかったな。むしろ、こっちの世界では同性の友達が欲しいなってすら考えててね。クレメアとフィオに不満があるわけじゃないけど、どうしても女性には話しづらい話題なんかもあるわけだしさ……まぁ、前の世界でそこまで親しい男友達がいたわけでもないけども」

 

「話しづらいって言ったら、地球の話とかもやりにくいよな。こっちに来たときは常識をすり合わせるのにスッゲー苦労したもんだ。本当になんで秋刀魚が畑でとれんの? 他の魚は普通に水の中で泳いでるのに、なんで秋刀魚だけ地上で育つわけ?」

 

「それを言うなら野菜が悉く活発に動くことにも驚いたよ。危うく自分の正気を疑った所さ。動く物だから動物なのであって、それとは別ジャンルの植物たちが動くだなんてどういうことなんだってね。正確には植物だって動きはするけれど、あそこまで活発に動いたりはしないし」

 

「ああ、植物って言ったらミツルギはキ〇コとタケ〇コどっちが好きだ? 俺はタケ〇コ。あのサクサクした触感が好きでさ」

 

「僕は断然キ〇コだね。チョコが手に付きにくいし、チョコが多い分お得感があるだろ?」

 

「はぁ? チョコが食べたいんなら板チョコでも食べてろよ! タケ〇コは綺麗にコーティングされてるってのに、キ〇コなんてチョコに棒をぶっ刺しただけじゃねえか! よってタケ〇コの勝ち!」

 

「それには異議を唱えさせてもらおうか! キ〇コはチョコとクッキーの部分がしっかり分かれてるからこそ、二つの食感を楽しめるんじゃないか! それにタケ〇コはクッキー部分が多すぎてあまりにも食感がパサパサしすぎる! よってキ〇コの勝ちだ!」

 

「その点トッ〇はすげえよな」

 

「ああ、最後までチョコたっぷりだからね」

 

 

 そこまで言って、俺とミツルギはパァン! と軽快な音を立てながらハイタッチを交わす。

 ……そうか、俺が今まで足りないと思っていたのは、こういうバカ話ができる相手だったんだ。

 ダスト? あいつはバカ話と言うか、あいつ自身がバカだからちょっと……。

 

 ミツルギは、固くて生真面目な奴だから俺とは話が絶対に合わないって思っていたが。

 でも、何というか、

 

 

「「男同士の会話って楽でいいなぁ!」」

 

 

 少しではあるが、ミツルギとは仲良くやっていけそうな気はしてきた。

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