機動要塞デストロイヤー。
実は、これは正式な名前ではなく、後から日本より転生してきた奴らが勝手につけた名称らしい。
なんとも安直なネーミングセンスだと思っていたが、徐々に近づいてくるそれを見て、ああ、そんな名前がふさわしいなと思えてくる。
まだまだ遠い地平線の彼方から、それの頭が見えてきた。
「……おいおい、思ってた以上にデカくねえか?」
誰かがぽつりと呟いた。
この間アルカンレティアで死闘を繰り広げることになったハンスの時も、その巨大さに驚いたけれど。
そんなハンスも、あれに比べれば可愛いサイズだった。
ハンスとの戦いで、あれだけの威力を誇る爆裂魔法でも、魔王軍を相手にするにはまだまだ成長させる必要があるということで、最近ではめぐみんのレベルを上げるようにしていたが。
それでも、あの脚を破壊できるまでに達しているかが怪しくなってくる。
「ヤベえって、あれ! いくら爆裂魔法でも破壊するのは無理臭くねえか!?」
「デカいし速いし、迫ってくる姿がもう怖いんだけど!!」
「おい、本当に頼んだぞ、紅魔族の黒い悪魔!」
「持てる力は全力で出してくれよ! 出し惜しみとかするんじゃねえぞ」
まるで、神頼みするかのように、めぐみんに縋る冒険者達。
傍目から見ると、まだまだ幼い少女に向かって、絶叫交じりの懇願をする厳つい野郎共、なんて格好のつかない場面だが、それを責められる人間などここにはいない。
あまり作戦に関わりのない俺でも、この場からとんずらしたい衝動に襲われるのだから。
そして、その当のめぐみんはと言うと。
「……ふむ、大体予想通りですね。任せてください。あれを丸ごと吹き飛ばせと言われたら、間違いなく無理だと言えますが、脚だけを吹き飛ばすくらいならば、我が爆裂魔法の威力は十分です」
冷静にデストロイヤーを見据え、腕を組み、仁王立ちしながら自信満々に言い切った。
パニック状態からくる強がりではなさそうだ。
……何だこの幼女、滅茶苦茶カッコイイんだけど。
それでも、一応は、という気持ちは抑えられないので。
「おいめぐみん、本当に行けるんだな?」
「ふっ、カズマ、私を誰だと思っているのですか。私はあなたの魔法使いにおける師匠ですよ。そんな私が、他の事はともかく、魔法に関して嘘偽りを口にするとでも?」
そう訊ねても、めぐみんは不敵な笑みを浮かべながらそう返すだけ。
「……うん、ありえねえな」
魔法に関しては人一倍真摯なコイツが、重要な場面とはいえ、魔法の事で嘘をつくわけがなかったな。
そうしたら気になってくるのが他の魔法使いたちの様子だが。
「いいですかゆんゆん。さっきも言った通り、早すぎても遅すぎてもだめですよ。あなたの今回の役割は、破壊ではなく妨害に近いものだと理解してくださいね。余計な衝撃を与えると、万が一がありますから。それと、角度も間違えれば、却って我々の障害となることを肝に銘じておくことです」
「わ、分かってるわよ! だから、そんなに捲し立てないで! 緊張してくるからあああ~!!」
ようやく樽から出てきたゆんゆんが、めぐみんに再三確認をとらされている。
実際、ゆんゆんの魔法は、めぐみんたちとは別のベクトルで繊細さが求められるものだ。
めぐみんは、そのあたりまでちゃんと計算してくれてるとは言っていたが。
涙目になりながらも、ゆんゆんは自分の頬を軽く叩いて。
「……うん、大丈夫! めぐみんがこういうことに関して誰よりも優秀だっていうのは、里にいた時から知ってるから。今回もめぐみんを信じるわ!」
「その意気です、ゆんゆん。それでこそ我がライバルというもの!」
うんうん、仲良きことは美しきかな。
どこか心がほっこりとしてきそうだ。
……状況が状況じゃなければな。
「ウィズ、大丈夫よね? 私、一回もウィズが爆裂魔法を使った所なんて見たことないから、何とも言い難いんだけど……」
ふと、向こうを見ると、アクアがウィズに確認をとっている。
そういえば、ウィズが本格的に攻撃魔法を使ってるところなんて見たことはなかったけれど、めぐみんほどの威力は出るのだろうか。
ギルドの皆があれだけ期待を寄せているから、そのあたりの確認はしてなかった。
「任せてくださいアクア様。確かに一度もお目にかけたことはありませんでしたが、これでもめぐみんさんよりはアークウィザードとしての経歴は長いんです。アクア様が結界を打ち破ってくれれば、必ず遂行して見せますよ! ……それでもし失敗したら、私が皆さんを弔ってあげますね」
「そういう不吉なことをこの直前になって言わないで!?」
なんだか、聞かなかったことにしたい。そんな会話が聞こえてきた。
……あ、ミツルギの奴、今のウィズの喋った内容が耳に入って来たのか、ちょっと顔が引きつってやがる。
だが、今はミツルギの様子を気にかけていられる余裕はない。
そろそろ俺の出番だ。
『接敵するぞ! 総員、戦闘準備!!』
めぐみんに教えられていたポイントにまで辿り着いたデストロイヤーを見て、俺はギルドの人に貸し出された、拡声器のような魔道具で、皆に指示を出した。
どうしてそんなことをしているかと言うと、いつの間にか、現場の指揮を俺がとることになっていたからだ。
なんでも、俺が、主要メンバーたちのリーダーだからということらしい。
たかが冒険者の俺の肩に乗せられた責任の重さに辟易としていると、デストロイヤーが、その姿の全貌を確認できるくらいにまで接近していた。
文字通り、機械的に意思もなく破壊をもたらすその巨体から、圧倒的な威圧感を漂わせながら。
機動要塞デストロイヤー。
まるで、大型戦艦に巨大な脚を八本くっつけたような風貌のそれは、その前に立ちはだかっている物全てを粉砕しながら猛進し、
『アクア! 結界の破壊、頼んだ!!』
攻撃開始地点に踏み込んできた!
「『セイクリッド・ブレイクスペル』ッ!」
俺の合図を聞いて、間髪入れずにアクアが魔法を放つ。
俺やダクネスにかけていたものと同じ魔法のはずだが、力の込め方の違いのせいか、今回のそれは、光の球のようなものを作り出している。
そして、アクアは思いっきり振りかぶり、その光球をデストロイヤーへ投げつけた。
全力投球されたアクアの魔法は、デストロイヤーに直撃する瞬間、一瞬だけ膜のようなものによって防御されたが、その抵抗も虚しく、そのまま飴細工のようにその防御壁を粉々に粉砕してしまった。
恐らく、あの砕かれたものが、魔力結界だったのだろう。
なら、これで魔法がデストロイヤーに通用するはず。
俺は拡声器に向かって大声でウィズに指示を出す。
『ウィズ、魔法の準備は完了してるか!? めぐみんが撃ちだすタイミングに合わせてやっちまってくれ!』
リッチーであるウィズなら、めぐみんに合わせて魔法を使えるはずだ。
その、当の本人であるめぐみんの方を振り返ると。
「……まだです。脚を破壊するだけなら今でもできますが、より完璧な破壊には程遠い。焦らず、機を窺うのです……あと少し、あと少しで……!」
なにかをブツブツ言いながら、しかし、デストロイヤーを全力で観察し。
絶好のチャンスが到来したのか、めぐみんが突然詠唱を開始した。
俺達の目の前には、今にもバリケードごと俺達を蹂躙せんとするデストロイヤー。
そんな化け物に立ち向かうのは、二人のアークウィザード達。
一人は、モンスターでありながら、人間たちの街で魔道具店を営んでいるリッチー。
もう一人は、あらゆる魔法を愛しているのに、使える魔法はたった一つだけの変態アークウィザード。
アクセルの街でも上位の実力を持つ、そんな二人の攻撃魔法は、
「「『エクスプロージョン』ッッ!!」」
機動要塞の脚を、消し飛ばすことに成功したのであった。
けれど、これで終わりじゃない。
「ゆんゆん、後は頼みましたよ。なに、最悪失敗しても死にはしないので気楽にやってください」
全ての力を使い果たしためぐみんが、いつものように地に伏しながら、ゆんゆんに語り掛ける。
「大丈夫、めぐみんに心配されなくてもいけるから! ……それじゃあ、やります!」
精神を集中させたゆんゆんが、これから放つのは合体魔法。
ただし、ただ二つの魔法を合わせて使うだけの合体魔法じゃない。
「……『インフェルノ』、『アースシェイカー』……『ボトムレス・スワンプ』……、この
そう、合体させるのは
レベルも上がり、技術も進歩したゆんゆんだからこそ使える超高度なテクニック。
その後も支障もなしに完成したのか、ゆんゆんは力強く目を見開き。
「いきますっ! 『ボルケーノ・イラプション』!!」
そう叫ぶや否や、脚を失って慣性の法則に従って街の方へと地を滑っていたデストロイヤーの真下から、火山が噴火したかのように、突如として大量の溶岩が襲い掛かった。
このまま俺達を轢き潰すはずだったその巨体は、溶岩流の勢いに押され、見る見るうちに後退し始める。
そして、少し傾いた状態で押し戻され、ついにはデストロイヤーは完全に制止した。
それに遅れて、デストロイヤーの破片が、俺達の頭上に降り注ぐ。
めぐみんが担当していたこちら側は、あまり数は多くないけれど、ウィズの方からは。
「やったわ! これでデストロイヤーもいたいっ! な、なんで私の所ばっかりあいたっ!」」
よく聞く声で、誰かさんが悲痛な叫びをあげている。
……アクアには、後で慰めの言葉をかけるとしよう。
それにしても、ウィズでさえ完璧な破壊が上手くいってないということは。
「フフフ……。まさに計算通り……! 魔法の調子も良かったですし、言うことなしですね……」
未だに立ち上がれないめぐみんが、顔だけ起こし、満足気にそう言った。
このまま放置するわけにもいかないので、ドレインタッチで体力を少しだけ分けてやる。
「フ……フフ……これこそ、パワーアップを果たした、我が爆裂魔法です。カズマ。今の爆裂魔法は何点でしたか……?」
起き上がっためぐみんが、そんなことを聞いてくる。
そんなの勿論。
「100点満点に決まってんだろ。あのウィズよりも上々な成果を出したんだからな」
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
辛そうにしながらも、感謝の言葉を述べるめぐみん。
まさか、これだけの短期間で爆裂魔法のみとはいえ、ウィズを上回ることになろうとは。
めぐみんの、魔法への想いが為せたものだとでも言うべきか。
「ゆんゆんは平気か? あれだけの魔法を使っちまったら、かなり疲弊するだろ」
「……ま、まだいけます。二種類だけの合体魔法なら使えるくらいには……!」
「もう、本当に無理すんなよ。お前らの仕事は終わりに近いんだし」
ゆんゆんの合体魔法も、かなり凶悪な物にへと変貌してきている。
以前の実験では、『アースシェイカー』と『インフェルノ』で巨大地震を起こしたくらいだったのに、今ではマグマまで操れるようになってしまった。
……冷静に考えたら、地震を起こすだけで相当ヤバいってもんだけども。
しかも、まだ一発は撃てる余力を残してる。
なんなの紅魔族って。
魔王を輩出する一族ですか?
「お前らはゆっくり休んでろ。あとは、俺達に任せとけ」
俺達の役目は、デストロイヤーの動力源を確保する事。
その間は、この二人にはしっかりと休息をとってもらうとしよう。
そして、改めてデストロイヤーの巨体を見上げようと、振り返ったとき。
「……あれ? ダクネスはどこ行った?」
最前列にいたはずのダクネスの姿が、どこにも無かった。
何やってるんだあいつ。
……まさか、ゆんゆんの魔法に巻き込まれて!?
「佐藤和真。君は無事だったかい?」
「ああ、俺は何ともない。でもダクネスがどこにも……!」
狼狽えていると、ミツルギがこちらに駆け寄ってきた。
そして、俺の震え声交じりの訴えを聞いたミツルギは、苦笑いと言うか、信じられないものを見たかのような表情を浮かべて。
「確か、クルセイダーの人だったかな? ……彼女だったら、噴火したときの勢いで打ち上げられた岩に飛び乗って、そのままデストロイヤーに乗り込んでたよ。すごいね彼女。全然怖がったりせず、満面の笑みで向かってたし」
そんな、バカげたことを言ってのけた。
「…………何やってんのあいつ? というか、どうやったらそんな芸当ができんの?」
「…………さあ?」
ダクネス、あいつは本当に人間か?
俺達の言葉を信じて乗り込んだのだろうとは思うけど、そこまでやれるもんなのか、人間って。
まあ、ダクネスの安全が確認できたならそれでいい。
問題は目の前に鎮座しているデストロイヤーだ。
このまま何事も起きずに簡単に終わってくれるなら苦労はしない。
フラグになりそうな発言は控え、油断せずに包囲して。
そうしようとした瞬間。
「……? こ、この地響きはなんでしょう……」
ウィズが不安そうにあたりを見回す。
ゆんゆんの合体魔法の際に生じたような地震は、デストロイヤーを中心に起きている。
もはや、俺とミツルギは、『ああ、やっぱりか』と、何もかもを諦め、死んだような目になりながら様子を窺っていると。
『この機体は、機動を停止しました。この機体は、機動を停止しました。それに伴い、排熱及びエネルギーの消費が出来なくなっております。搭乗員は直ちに、この機体から離れ、避難して下さい。この機体は……』
機動要塞の内部から、危険を知らせるアナウンスが鳴り響き始め。
「「知ってた!!」」
それを聞いて、俺とミツルギは、一目散にデストロイヤーの内部へと向かうのであった。
「佐藤和真! このアナウンスってやっぱりあれじゃないか!? これはまずいことになる奴では!?」
「多分だけど! このままだとボンッてなるんじゃねえか、こういうのって!」
俺の言葉に、並走するミツルギの顔が苦虫を噛み潰したようなものになる。
半分ネタで言っていた、自爆するかもしれないなんて状況が現実の物になったら、その被害は計り知れないものになるだろう。
冒険者の皆には、事前にデストロイヤーに乗り込むように指示を出してはいるが。
『おいお前ら! 機動要塞デストロイヤーに乗り込む奴は今すぐ来い! この街にある大事なものを、こんな奴の好きにさせないためにもな!!』
重要なことはぼかしつつ、拡声器で連中に発破をかけておく。
そして、その数秒後、背後から雄たけびが聞こえきた。
奴らも、大切なものを守るため、俺達に追従してくれると信じよう。
「ミツルギ、マグマの熱さは平気か!?」
「ああ! この寒さのおかげで、大分冷えてきている!」
魔法によって生み出されたマグマが固まって、デストロイヤーの内部へ向かうための坂道になってくれている。
いちいちフックでロープをかけてからよじ登ってたら時間がかかるため、わざわざゆんゆんに魔法を使ってもらったわけだが。
「やっぱ、結構な傾斜だな……」
登れないこともないが、中々にしんどい。
そのあたりはめぐみんが計算してくれたのだろうが、それでも、なんというか……。
登攀に戸惑っていると、後ろの方から誰かが駆け寄ってくる音がして。
「やっと追いついたわ! はい、カズマ。『筋力強化』!」
「アクア、サンキュー!」
アクアが俺にステータスアップの魔法を掛けてくれた。
最初のカエル討伐以来、中々その恩恵にあずかることが無かったものの、今では俺もレベルアップしているおかげか、随分とその効果のほどが実感できる。
ついでばかりにミツルギにも強化魔法を使っているようだ。
こいつなら、なおの事パワーアップしていることだろう。
「よし、皆、乗り込め……あれ?」
やっとの思いで、甲板にまで到達すると、そこには。
「……ゴーレムの残骸? どうも、向こう端からあの建物に向かって一直線上のゴーレムが全部破壊されてるようだけど……」
ミツルギの言う通り、俺達の反対側の端っこから、甲板の中央にある建物に向かう線上全てのゴーレムが粉砕されていた。
……なんとなく、察しがつく。
これ、ダクネスの仕業だ。
「先にデストロイヤーに乗り込んだ俺の仲間がいただろ? 多分、そいつのせいだ」
「…………前々から思っていたんだけど、実は君達って全員日本から転生してきた人だったりしないかい?」
気持ちは分かる。
「すごいわねダクネス。あれだけいるゴーレムを一人でこんなに……。今日は調子でもいいのかしら?」
「ダクネスが戦場で調子が良いのはいつもの……」
アクアが感心するようにつぶやき、俺がそれにツッコミを入れようとした時、アクアと自分の口から飛び出したその言葉が妙に引っかかった。
ダクネスの調子がいい……。
それはつまり、ダクネスは今調子に乗っているということでは?
しかも、今は一人で突貫しているし。
……こりゃヤバイ。
「アクア、ゴーレムが破壊されている方向に向かって全力で走るぞ。ダクネスの事だ。絶対にどこかでポカをやらかして……」
いた。
言い出す前に発見できた。
大型のゴーレム三体くらいに囲まれて、片膝をついているダクネスが何か叫んでる。
「くっ……まさか、このようなところで体力が尽きるとは!」
大噴火の勢いで飛翔して、この甲板に着弾し、確実に二桁以上のゴーレムを粉砕しているというのに、なんでそれで未だに体力が尽きてなかったの? なんて疑問は置いておく。
だって、ダクネスだもの。
むしろ、こうして息を荒げているダクネスを見て、『ああ、こいつ人間だったんだな』と安心すらしているくらいだ。
「だが、このままみすみす殺されると思わないことだ! 『醜態をさらすくらいなら殺せ』などと言う気は一切ない! むしろ殺せるものなら殺して見せろ! 私は殺されるその時まで、足掻いて抗って、戦い続けるぞ!」
何一人で盛り上がっちゃってんだろこの人。
どうせ、こうしてピンチになってるのも、調子に乗って高笑いしてたら不意打ちを食らったからとか、あえてゴーレムの攻撃を全部避けたりせずに受け止め続けてたからとかそんなんだろ。
本当に、調子に乗るとダメダメになるんだからこのバーサーカーは。
という訳で。
「アクア、頼んだ」
「了解! 『ヒール』!」
柔らかな光がダクネスを包む。
途端に、再び生き生きとし始めたダクネスは。
「フハハハハ! アクア達も来ていたのか! 助太刀感謝する! しかし、この場は私に任せて先に、」
「言ってる場合じゃねえからさっさとついて来い! 『バインド』! ミツルギ、ちょっとゴーレムの方は頼んだ!」
「ああ、任せろ!」
なんかもう、可哀そうなほどに知能が低下したようなことをほざき始める。
そんなバカなことをやらかしてるダクネスの姿なんて見てられないので、懐から出したワイヤーで戦闘狂を捕縛してやり、その隙にミツルギが剣を一閃して、ゴーレムを三体纏めて破壊した。
「ぬう!? 一体何を!?」
「一体何を。じゃねえよ! お前の目的はゴーレムを破壊することじゃねえだろ! 俺達が今すべきことは、一刻も早く動力源を探すことだろうが! 何をお前はバーサークしてんだよ!」
そこまで言って、我に返ったのか、ダクネスは見る見るうちに顔を紅潮させて。
「……そうだったな。ほ、本当に申し訳ない……」
ようやく正気に戻ってくれたらしい。
「という訳で行くぞ。バインドも外してやるから、自分で立て」
「う、うむ……」
すっかり縮こまってしまったダクネスが、申し訳なさそうに後ろからついてくる。
「すまない。元々はこの建物に向かおうとしていたのだが……傾斜のせいか、ゴーレムが一斉に向こう側に着地した私の方に飛び込んできてな。それで逐一相手をしていたら、このようなことに……」
ゆんゆんの魔法で傾けさせたのは、自重が重いゴーレムたちが戦いづらいようにするって目的もあった。
実際、ここまで俺達は何の苦労もせずに辿り着けたわけだし。
だが、ダクネスが傾斜の下側になってるところに着弾したものだから……。
運が悪いな、こいつ。
本人からすれば戦える数が増える分、運がいい方になるんだろうけど。
『のりこめー!』
「……後続の奴らも追いついてきたし、ゴーレムはあいつらに任せて、俺達はさっさとここに入るぞ」
「ああ、分かった。……うう、どうして私はこう、衝動が抑えられないんだ……!」
自己嫌悪に陥ってる女騎士を尻目に、俺は、砦のような建物の扉を叩いたのであった。
「……君、結構苦労してるんだね」
「大丈夫だ、慣れた」
ミツルギが同情したような視線を送ってくるが気にしない。