このおかしな仲間に祝福を!   作:俊海

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この素晴らしい要塞に祝福を!

「囲め囲め! ロープで引っかけるか、ハンマーで重心をずらしてやれ! そしたら勝手に向こう側に滑り落ちやがるからな! 一方的に殴られる恐怖ってもんを教えてやるんだ!」

 

 

 建物のドアを開けようとしている俺達の背後から、まるで侵略者としての立場が入れ替わったかのような声が飛んでくる。

 ゆんゆんの働きもあって、甲板の上にいるゴーレムたちは、駆け出しの多いはずのこの街の冒険者達に蹂躙されつつあった。

 ……これも、煩悩のなせる業というものか。

 

 だが、そんな俺も彼らを侵略者呼ばわりできるような立場ではなく。

 

 

「おらっ! いい加減観念してここから出て来い! クッソこの扉やたら頑丈にできてやがる……。ダクネス、本気でぶっ壊していいぞ!」

 

「言われずとも! この私の目の前で、この街を襲撃した報いを必ず受けさせる! っく、しかし、硬すぎるぞ! ええい、そこのお前、そのハンマーを貸せ!」

 

「出て来るんだ! このデストロイヤーを用いての、あまりにも身勝手な犯行、断じて許すわけにはいかない! 長い間逃げ(おお)せたみたいだが、その罪を償う時がついに来たんだと諦めろ!」

 

「え、えっと……三人とも? 気持ちは十分に分かるんだけど、勢い余って研究者の人を殺したりしないでね? 向こう側にも言い分があるかもしれないし……」

 

 

 研究者が立て篭もっているらしい建物のドアを罵声も浴びせながら、無理矢理こじ開けようとしていた。

 ミツルギの魔剣で切断しようにも、扉が相当分厚いため難儀している。

 苛立ちまじりに破壊しようとしていると、アクアが後ろから引き気味に慈悲深い言葉をかけてくるが、気にしていられる余裕もない。

 だって、早く引っ張り出さないと、爆発するだろうし、この要塞。

 

 

「おいカズマ! そこに首謀者がいるのか!?」

 

「多分な! お前らも手伝ってくれ!」

 

『応!!』

 

 

 俺の言葉を聞いて、駆けつけてくれた冒険者たちが、一斉にハンマーを振りかざし、開かずの扉へと殺到していく。

 

 

 

 

 

―――………

 

 

 

 

 

「開いたぞーっ!」

 

 

 それから五分ぐらい経って、ようやくその扉が開かれることになった。

 どんだけ頑丈に作ってんだよ、この扉。

 アクアの強化魔法を掛けてもらったダクネスとミツルギでも手こずるとか、デストロイヤーを制作した研究者は何者なんだ。

 

 そんな疑問を抱えたまま、俺は、鳴り響く警報を気にも留めず、次々と中に突入していく冒険者たちの後に付いていく。

 中にも防衛用のゴーレムは居たが、物理攻撃において最強クラスであるダクネスとミツルギの前では、そんなものはただの土くれと何ら大差はない。

 現れた瞬間から斬り伏せられていくばかりである。

 ……なんだろう。

 今回、俺ってロクに役に立ってなくない?

 

 どことなく居心地の悪さを感じていると、目の前に、機械化されたこの空間に似つかわしくないものが現れた。

 

 ……それは、白骨化した人の骨。

 おそらくこれが、この要塞を乗っ取った研究者のものなのだろう。

 椅子に腰かけているそれを見た途端、俺も含め、殺気立っていた冒険者連中たちのボルテージが下がり。

 せめて弔ってやるくらいはしてやろうとアクアを手招きで呼ぶ。

 すると、アクアが。

 

 

「浄化の必要はないわね。未練もなく成仏してるみたいだし。ご遺体は、共同墓地に埋葬するとして……」

 

 

 …………え。

 未練もなく?

 

 

「いや未練ぐらいあるだろ。どう見たって、一人取り残されて寂しく死んでいったみたいな……」

 

 

 俺の言葉をよそに、アクアが何かを見つけた様だ。

 それは、死体のそばに放置されていた、手記らしきもの。

 間違いなくこの研究者が書き残したものだろう。

 

 アクアがそれを手に取ると、俺達は固唾を飲んでそれを見守る。

 一体、このデストロイヤーの中で何が起こったのか。

 そして、どうして暴走させるまでに至ったのか。

 その答えが、これに書かれているのかもしれない。

 

 ある種の緊張感の中、アクアが手記を読み上げる……。

 

 

「……。○月×日。国の偉い人が無茶過ぎる要求をしてきた。なんでも、この予算で機動兵器を作れとか。こんな低予算で人員も足りてないのにそんなもん出来るわけないだろ、無茶言うな。そう抗議してもどこ吹く風。どれだけ言っても聞いちゃくれないし、辞表を出しても受理してくれない。上の奴らは現場の苦労というものを分かっていないようだ。いよいよこの国は末期なのではなかろうか」

 

 

 …………思わず、皆が白骨化した死体にへと目を向ける。

 

 

「○月×日。今日が提出日だというのに未だに設計図は真っ白。だけど知るか。あまりの無茶ぶりに現場の士気は最悪な上、金もなけりゃ時間もないわ。そんな短期間で魔王軍に対抗できるアイディアが思いつくなら苦労はしない。何もかもが面倒くさくなってたところ、突然紙の上にクモが現れた。とっさにそれを叩き潰してしまったため、クモの体液が用紙に飛び散ってしまった。……ちょうどいいや、嫌がらせの意味も込めて、このまま出してやろう」

 

 

 …………ここだけ聞くと苦労話のようにも思えるが、嫌な予感がして止まない。

 微妙な空気になってきた中、アクアはさらに続きを読む。

 

 

「○月×日。おかしくね? あの設計図とすら言えない何かが、すごく高評価なんだが。寸法も素材も細かい設計も何にも書いてないのに。しかも、俺の知らないうちに計画がどんどん進んでる。マジふざけんなよ。そんなんでいいんなら、そこらにいるクモを見つけた時にでもアイディアが浮かんでくるだろ。大丈夫かこいつら。俺が提出した設計図だからってバイアスがかかってないか? そう俺に近しい奴らに打ち明けても、皆が諦めムードになっているし。やっぱりこの国はもうだめだ」

 

 

 ………アクアの表情を見ても、創作で語っている様子はない。

 つまりこれは全て事実という訳で。

 

 

「○月×日。俺達研究班の予想を超えるスピードで、計画が進行していく。あの、これの開発に俺は必要でしたか? もういいや、勝手にしろ。そんで暴走した機動兵器に潰されちまえ。動力源がどうのと言ってきたが、やかましい。こっちは機動兵器がちゃんと動くようにするために、お前らが持ってきた設計図の細かい修正をするので忙しいんだ。適当に超レア鉱石であるコロナタイトでも用意しろと言ってやった。あんな低予算で機動兵器を開発させようとする国に、そんな希少なアイテムを用意できるとは思えないけどな」

 

 

 …………。

 

 

「○月×日。嘘だろマジで持ってきやがった。ちょっとあんまりな出来事に怒りを通り越して呆れの感情が芽生えてくる。コロナタイトを用意できるだけの資金があるんなら、俺だってもうちょっとまともに設計に取り組んでたわ! 完全に放置と言うのもあれだからところどころ設計の修正は入れておいたので、それが動力源なら動くとは思うけども。……この国には、計画性というものが無いのだろうか」

 

 

 …………なおも、研究者の愚痴らしきものが続き。

 

 

「○月×日。明日が起動実験だと言われても、知ったこっちゃない。結局俺達研究班は碌に関与できなかったし、お前らが勝手に作り上げてただけじゃん。だというのに、責任者は俺。何か失敗が起きれば俺のせいにされる。そりゃクモの汁をぶちまけたのは俺だけど、それで上に通す奴らも頭がおかしいし、それだけで完成させちまう技術班もどうかしてる。やってられるか。どうせ最後だ、意趣返しで研究班の連中を集めて機動兵器の中で宴会でもしよう」

 

 

 …………徐々に鋭くなってきた俺達の視線が気になるのか。

 

 

「○月×日。酷い揺れを感じて目が覚める。なんだこれ。他の奴らに聞いても状況を把握できてる奴はいない。本当に何が起きてるんだ。昨日宴会するまではコロナタイトも起動プログラムも行動プログラムも異常はなかったというのに。……もしかして、酔っぱらってるうちに俺達がやらかしたか?」

 

 

 …………アクアの頬に、一筋の冷や汗が流れ落ちる。

 

 

「○月×日。現状を把握。発火装置の誤作動に加え、行動プログラムのバグにより機動兵器暴走中です。だから最初から無理って言ってたじゃん! むしろ、なんで俺達の手助けもほとんどなかったのに形だけは出来上がったんだよ! お前らみたいなやつらが、機械が壊れた時に『何もしてないのに壊れた』とか言いやがるんだ! プログラミングしたの俺じゃないのに、これも俺のせいにされるんだろ? あーあ、こんな国滅べばいいのに。もういい、プログラムの修正は明日にしよう。俺達はたまたま機動兵器に乗り込んでただけだし、今すぐ直したところでどうせ俺は死刑になるだろうし」

 

 

 …………遂にアクアはこちらを見ようともしなくなり、

 

 

「○月×日。何か、寝てる間に国滅んでた。国にいた人たちは逃げたみたいだけど、こいつ、一晩で国を滅ぼしちまったよ。やったぜ、かなりスカッとした! これも俺達をブラック環境で働かせて、あんな設計図でこの機動兵器を生み出したお前らのせいだ、ざまあみろ! 実際、これが暴走したのは俺達が原因って訳じゃないからな! 満足だ。俺も研究班の奴らも満足げにしている。よし、ここまでやったならもういいだろう。コロナタイトを持ってこいなんて言った責任も無くは無いし、早速修復作業に取り掛かるとするか」

 

 

 …………やがて、皆が肩を震わせ始め。

 

 

「○月×日。ダメだこれ、直せないわ。プログラムの書き換えをしようにも、あいつらが勝手に弄ったせいで訳が分からんことになってる。下手に書き換えたらさらにひどいことになりそうだ。かといって機動兵器を手順を踏まずに停止させようにも、コロナタイトのエネルギー供給量が多すぎて、一旦停止させると一時間ぐらいでエネルギーが処理しきれずに機動兵器が爆発する。そもそもどうやったら強制停止させられるのかも分からないんですけどね。こうなったら、研究班の連中はテレポートで退避させて、俺だけでも最後までここに残って、やれるだけはやってみよう。全く、こんなポンコツ兵器を作っちまうなんて、本当にあの国ダメだったわ。おっと、もうその国はダメになったんだったか!」

 

 

 …………あふれ出る感情を無理やりに押さえつけながら、耳を傾ける。

 

 

「○月×日。いやー、手に負えねえわ。ま、いっか。俺はあの国が滅んだ時点で満足してるし! 機動兵器から降りられないし、もう余生はここで過ごそう。ブラック環境からの解放万歳! ……あ、そうだ。もし、この手記を読んでくれてる奴がいた場合に備えて書いとくか。この機動兵器を止めたいのなら、動力源になっているコロナタイトを外せば停止すると思う。まあ、外したら、今度はそのコロナタイトをどうにかしなくちゃいかんけど。あーあ、あの金属の檻を破壊できる奴が居たら、俺達でもどうにかできたのになぁ」

 

 

 最後まで読み上げたのだろうアクアが、複雑そうな表情を浮かべながら顔を上げ、言った。

 

 

「……終わり」

 

『なめんな!!』

 

 

 アクアとウィズ以外が見事にハモった。

 

 

 

 

 

―――………

 

 

 

 

 

「……これがコロナタイトか。書いてあった通り、鉄格子っぽいのに囲まれてるな」

 

 

 要塞の中枢部。

 いざという時の被害を減らすために、俺、アクア、ダクネス、ウィズ、それに加えてミツルギだけで部屋の中へと侵入した。

 その中央には、金属の檻の中で、赤々と輝く小さな石が。

 あれが、コロナタイトとかいう奴か。

 

 この格子をつけることでコロナタイトを取り出せないようにしてるんだろうが、機動停止させるときはどうするつもりだったんだろうか。

 どこかに冷却装置みたいなものでもあればいいんだけど。

 ……まさか、起動させっぱなしで、止める気が無かったとか言うんじゃ。

 

 ……うん、そんな恐ろしいことを想像している暇はない。

 とにかく、コロナタイトを取り出さないと。

 いっちょ、ここは俺の『スティール』で。

 そうしようとした瞬間。

 

 

「ふんっ!」

 

「はぁっ!」

 

 

 ダクネスとミツルギが剣を一閃させて、金属の檻を破壊してしまった。

 ……もう、こいつらと俺の力量差を比べるのは止めにしよう。

 虚しくなるだけだ。

 

 

「カズマ、コロナタイトは外してもいいんだな?」

 

「ああ、でも多分メチャクチャ熱いから」

 

 

 ウィズに冷やしてもらいながらにしよう。

 そう俺が言い切る前に、ダクネスは手に収めてしまった。

 尋常じゃない熱量を吐き出している、コロナタイトを。

 

 

「お、おい!? ダクネス大丈夫なのか、そんなの手に持って!?」

 

「うん? 確かに少し熱いが、耐えられないほどではないぞ。……ああっ!? よ、鎧が溶け出して!?」

 

「『フリーズ』! 『フリーズ』!」

 

 

 ダクネスの鎧を融解させそうになったコロナタイトを、ウィズが大慌てで冷却する。

 えっと、鉄の融点って、確か1500度は超えてるとか聞いたことがあるんだけど。

 強化魔法を掛けられてるとはいえ、そんなものを持っててこの女騎士は『少し熱い』程度で済んでるのか。

 ……こいつの躰は何で出来てるんだ。

 

 

「佐藤和真、彼女の特異性については後で考えるんだ。それよりもこのコロナタイトをどうにかしよう。そろそろ臨界点に達しそうだぞ」

 

 

 ミツルギが指さす先にあるコロナタイトは、どんどんその輝きを増している。

 けれど、慌てる必要はない。

 そのためにも、わざわざウィズについて来てもらったんだからな。

 

 

「それじゃあウィズ、こいつを『テレポート』させてくれ。これだけ近くにあればいけるだろ?」

 

 

 どんな危険物であっても、遠くにやれば怖くない。

 俺とミツルギで過剰に備えていたのが功を奏したと言うべきか。

 『テレポート』でウィズが登録している山の山頂に送ってもらうように指示を出す。

 

 

「はい、大丈夫です。それでは、いきま――」

 

 

 まさにその時、大きく地面が――いや、デストロイヤーが振動する。

 なんだなんだ! 誰かが魔法を暴発でもさせたのか!?

 とっさに周囲の安全を確かめるために、辺りを見渡すと。

 

 

「きゃ、きゃあああああぁぁぁぁ……!!」

 

「ウィズーーー!?」

 

 

 突如出現した床の亀裂に吸い込まれて、落下していくウィズの姿が!

 

 

「ウィズさん! くっ! 佐藤和真、彼女は僕に任せておけ! 後は頼んだ!」

 

「え、ちょ、ミツルギっ!」

 

 

 そう言って、ミツルギが、ウィズを救出するために、自ら裂け目へと飛び込んでいった。

 勢いをつけて飛んでいき、落下していくウィズの下敷きにでもなろうとでも考えたのか。

 

 ミツルギはチート持ちで、ウィズもリッチーだから死にはしないだろうが、今はあの二人の心配をしている場合じゃない。

 ウィズがこの場から消えたということは。

 

 

「おい、ヤバいぞ! 石が赤を通り越して白く輝きだしてる!」

 

 

 『テレポート』を使える人間が居なくなったということを意味する。

 光の加減からして、甲板まで戻って他の『テレポート』持ちを連れてくるのも間に合いそうにない。

 

 

「ゆんゆんの魔法で、デストロイヤーも結構なダメージを受けていたということか。丁度ここの部分が活断層のようにズレてしまったんだな」

 

 

 そもそも、ダクネスの言葉の通りなら、デストロイヤーが崩壊しつつあると判断して、甲板の連中が引き上げている可能性が。

 

 

「クソッ! どうして、最後の最後で!」

 

 

 焼け石に水と分かっていても石に『フリーズ』をかけ続けながら、悪態をつく。

 今となっては、天井の裂け目から差し込む日光すらも忌々しい。

 いっそのこと、その隙間から蹴り落としてやろうかとも考えるが、そんなことをすれば、俺達が助かっても他の奴らが犠牲になるだけ。

 

 

「アクア! これ、封印とかできたりしないか!? 女神の力とかそういう感じの奴で!」

 

「ご、ごめんなさい! そういう力は私には……!」

 

 

 困った時の神頼みも、不発に終わる。

 となると、あとはダクネスだけなんだが。

 その当の本人はと言うと。

 

 

「アクア、もう一度私に強化魔法を掛けてくれ。私が何とかしよう」

 

 

 いつの間にか鎧を脱いで、右手にベルディアの魔剣を、左手にコロナタイトを持ちながら、そんな頼もしいことを言ってくれた。

 

 

「おい、ダクネスマジか? マジでどうにかできるのか!?」

 

「ああ。完全に運試しにはなるが、さっきコロナタイトを持った感じからして、この窮地を脱することはできるとは思う」

 

 

 そう言って、ダクネスは不敵な笑みを浮かべた。

 何だよこいつ、ヒーローかよ。

 

 

「で、どうやってそいつを処理するつもりなんだ? 『テレポート』もないんだぞ?」

 

「なに。今でこそコロナタイトは暴発寸前ではあれど、感触からしてこいつはアダマンタイトに比肩しうるほどには頑丈だ。おそらく、こいつがこうなっているのも、自身で生成されたエネルギーに耐えられなくなっているだけなのだろう」

 

 

 コロナタイトを掴みながら、ダクネスは今しがたできた亀裂の近くまで歩み寄り、そのまま天を仰ぐ。

 ……なんだろう。すごく嫌な予感がしてきたぞ?

 

 

「それはつまり、如何に私の力と言えど、こいつを叩き潰すことは不可能であるということだ。……そう、例え、全力(・・)であってもな」

 

「おい待てダクネス。早まるな。その解決方法は余りにも力任せすぎる。もしもそれで起爆したら……」

 

 

 何とか必死に止めようともするが。

 

 

「失敗したとしても、ここで爆発するのには変わりない。ならばやってみるだけの価値はあるだろう」

 

 

 そう言われてしまえば、押し黙るしか他ない。

 

 

「……分かった。おい、アクア。ダクネスに盛れるだけバフをかけまくれ。こうなりゃ責任は俺がとる!」

 

「りょ、了解!」

 

 

 俺の指示を聞いたアクアが、即座に魔法を重ね掛けする。

 こうなりゃやけだ。分の悪いギャンブルをしてやろうじゃないか。

 

 アクアの支援を受け取ったダクネスは、左手に持ったコロナタイトを軽く宙へと放り投げ、両手に持ち替えたベルディアの魔剣を振りかぶり、隙間から覗き見える大空を睨みながら――。

 

 

「南無三!!」

 

 

 青白く輝く鉱石目掛けて、魔剣を全力でフルスイングした!

 

 

「頼む! こんなところで爆発するのだけは……!」

 

 

 俺の必死の祈りが届いたのか、コロナタイトはダクネスの殴打によって起爆することはなく、真上の青空にへと吸い込まれていく。

 打ち上げられたコロナタイトは、そのまま音速に近い速度で空を駆け、遂には遥か彼方の地平線付近に着弾。

 そして、遠く離れた場所であるここでも視認ができるほどの規模の爆発を引き起こしたのだった。

 

 

「……ふぅ、あの辺りなら人の住んでいるところでもない。これで一件落着だな!」

 

 

 危険極まりない方法で危険物を処理したダクネスが、一仕事終えたと言った様子で汗を拭く。

 俺とアクアは、それ以上の冷や汗をかきまくっているというのに、こいつのメンタルはオリハルコンで出来てるのか。

 そういうところも含めて、今回のダクネスはやたらとカッコよかった気もする。

 ただ。

 

 

「…………二度とこんなギャンブルやらねぇ……」

 

 

 

 それに付き合わされる俺達の気持ちも考えてくれ。

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