そんなこんなで、俺達五人のパーティというのは、それはもう他の人からすれば羨ましく見えるほどの人員で構成されることになった。
だって、五人中四人が上級職だぞ。バランスも文句がつけられないほどにいい。
前衛はクルセイダーであるダクネス、支援や回復をアークプリーストのアクア、火力担当がアークウィザードのめぐみんとゆんゆん。
これ以上の人材というのは、この初心者の街であるアクセルでは望むこともできないだろう。
そう、そのはずなんだが……。
「はい、反省会な。議題はさっきまでやってたキャベツ収穫での一連の行動について」
『…………はい』
「作戦自体はそう悪いもんじゃなかったと思うんだよ。ダクネスがキャベツを引き付けて、ゆんゆんが魔法で蹴散らす。キャベツにつられて突撃してきたモンスターはめぐみんの爆裂魔法で処理して、アクアと俺で三人のサポートって感じにしたのは我ながらいい分担だとは思ったんだ」
シンプルながらも堅実な手段なはずだ。
俺以外のやつが考えても、大きく逸脱した作戦やフォーメーションにはならないだろう。
「で、まずはゆんゆん。そりゃあんだけの数が居たら魔法の撃ち漏らし位はあるのは理解できる。そんなところを責めるつもりは毛頭ない」
空一面を覆うほどのキャベツの群れなら、如何にゆんゆんが魔法の熟練者だとしても、全てを討伐なんかできるはずがない。
そんなことは承知の上だ。
「だからって、魔法で攻撃するのも忘れて、倒せなかったキャベツを必死の形相で追いかけまわすのは止めてくれ。お前逃げられることに関して何かトラウマでもあるの?」
「……えっと……そのぅ……」
あの半泣きになりながらやたらと鋭い目つきで追いかけまわすゆんゆんの姿は、それはもう恐ろしかった。
しかもその間、魔法も使わずに追いかけまわすだけだったし。
「で、次はダクネス。お前との討伐はこれが初めてだから今回ので色々評価してたけど、ステータスやら戦闘スタイルについてはこっちが土下座してでもパーティに入れたいくらいには素晴らしかった。俺の思い描いていた女騎士って感じで」
「そ、そう褒められると、何だか面映ゆいな……」
ダクネスの奮闘ぶりは尋常ではなかった。
あれだけのキャベツの群れの攻撃を平然と受け止めながら、返す剣でばっさばっさと倒していく様は無双シリーズのキャラを思い起こすほどだった。
「だけれどだ、お前って何? 戦闘狂か何かなの? なんで途中からテンションがおかしくなって、フラグみたいな台詞ばっか吐きながら大笑いしてたわけ? しかもろくに防御しようとしないで攻撃は受け続けてたし、あれには周りもちょっとドン引いてたぞ?」
調子に乗ってたからかは知らないが、順調に行き過ぎてたせいか、いきなりダクネスの様子がおかしくなり、満面の笑みを浮かべながらキャベツの嵐に突っ込んでいったダクネスの姿は、アレすぎた。
しかも、『ふはははははは! この程度か! この程度で私の体に傷をつけられると思うてか!』とか『次はお前だ! さあ、我が剣の錆になるがいい!!』とか『まだだ! まだ足りぬ! この生温いダメージでは私は倒れんぞ! どこからでもかかってくるがいい!』とか、素で言ってるのかよく分からんことを叫びだすし、ゆんゆんのそれとは別の意味でダクネスに恐怖を覚えたものだ。
「しかも綺麗にフラグ回収して、ゆんゆんが追いかけまわしてたキャベツに後ろからの突撃で吹っ飛ばされてたしさぁ。防御には自信があるんじゃなかったのか? 不意打ちとかには防御力でも下がる効果でもあるのか?」
「……実は、その……割とダメージ自体は蓄積してて…………結構いっぱいいっぱいだったというか……」
なるほど、ポンコツか。
というかやせ我慢してただけかよ。そんなに自分の強さをアピールしたかったのか?
「こう、ボコボコにされているのに耐えきっているという事実が、すごく心地よくてな。無敵感と言うか、優越感が私を包んでいくのがなんとも言えず……。で、でも、しっかりキャベツを討伐していたのだから問題ないだろう?」
「そうだな。ついでに言うなら壁役なら自分の限界はしっかり把握しておいてほしいっていうのと、守るべき味方がいないところで奮闘しようとするのは止めてくれれば文句ないな。お前ナイトなんだろ? なんで自分から敵に突っ込んでんの? 守るより攻めるのが好きなタイプなの? 実はドSなの?」
「いや違う。私はどちらかというなら受け身なタイプだ。むしろそういったものを抑えるために無理やり攻めているくらいなんだぞ」
こいつ、Mだったのか。
盾役を選んでいるあたりそうなのかもしれないが、あの狂戦士状態を見ていると、そうは思えないから不思議である。
……いや、そう言えば居た気がするな、バーサーカーでドMなキャラ。
それはまさに筋肉だったってやつ。
「ダクネスはこれくらいにして、次はめぐみんだ」
「お言葉ですが、私は私の役割を全うしたと自負しています。しっかりと我が爆裂魔法で魔物の群れは蹴散らしましたし、何も不手際はなかったはずですよ?」
そう、めぐみんは今回の討伐において、特に自分から何かしら問題を起こしていないのだ。
昨日の首絞めが少し頭をよぎったため、仲間にしたのは少し早まったかなって後悔していたのだが、こちらの指示はしっかり聞いてくれるし、勝手に要らんこともしないとても優秀な仲間だった。
爆裂魔法も、撃てばそれっきりだということを理解しているからか、無暗矢鱈とすぐに撃とうともしないし、撃つタイミングと状況を選んでいるところは知力が高いあのステータスは飾りではなかったという証明にもなったくらいだ。
「ああ、お前は特に問題を起こしてない。むしろよく上手くやってくれていたくらいだ。最初は爆裂魔法なんてとんでもない一発芸としか見れなかったけど、今回ので大分見方が変わったよ。いやしかしすごいなあの威力。なんというかロマンがある」
「そうでしょうそうでしょう! 爆裂魔法は習得こそ困難ですが、一度使いこなせるようになればあらゆる魔法を過去のものにする破壊力を秘めているのです! 昔から言うではないですか、でっかいことは良いことだと! そう言えば冒険者はアークウィザード以外で唯一爆裂魔法を習得できる職業ではないですか! どうです? これを機に共に爆裂道を歩むというのは!?」
「いや、いくらなんでもポイントが足りなすぎるし、魔力も追いつかないから無理です」
俺のその言葉に、少しばかりショックを受けためぐみんが項垂れるが、無理なものは無理なんだからしょうがない。
爆裂魔法はめぐみんほどの才能があってようやくまとも――撃ったら倒れる魔法がまともなのかはおいといて――に使えるものだ。
俺が使ったら、即座にあらゆる力を搾り取られて、再びあの世にご招待されるだけだろう。
「ただ、やっぱり早いところ爆裂魔法を撃っても行動できるようにならないとな。今回だって、力尽きたところに、キャベツに吹っ飛ばされたダクネスののしかかりを受けるところだったんだしさ」
「幸いカズマが素早く回収してくれたおかげで避けられてましたが、あんなものをまともに喰らってしまったらさすがの私でもこの世からの離脱をしかねませんからね。そのところは努力するつもりです」
「……面目ない」
めぐみんの言葉にしゅんとするダクネス。
くたばってるところに、空から重装備の女騎士にのしかかられたら、小柄なめぐみんでは致死的なダメージになりかねない。
ゆんゆんあたりからの不穏な空気を感じ取っていた俺のおかげで回避されたけれども。
「じゃあ最後はアクアだ。お前の支援力は仲間が増えるほど光るものがあるな。補助魔法に回復魔法、どれも俺の指示通りによく動いてくれた。おかげでダクネスも戦闘不能からすぐに復帰できたし、ゆんゆんも正気に戻せた」
「いやー、それほどでもないわよ。カズマの指示が的確だったおかげだし、これくらいはしないとね」
アクアはそういいつつも後ろ頭をかきながら、少し照れている。
褒められて嬉しいのだろうか。
前回のカエルでは、支援魔法をかけたのが貧弱な俺だったからイマイチ効果のほどが実感できなかったが、ダクネスやゆんゆんにかかるとああもとんでもないことになるとは思わなかった。
「ただ、俺がいなくなった途端に、棒立ちになるのはやめてほしいかな。ある程度は自分でも考えて行動してくれ」
「それが……私って自発的に行動すると、いっつもロクなことにならないのよね……。だから、なるべく他人から言われた通りに行動した方が被害が少ないかなって……」
「……よくそれで元いたあの場所で仕事できてたな。アクアってあれだろ?だいぶ偉い立場の存在じゃないのか?あの時も部下っぽい奴いたし、自分からアクションを起こす側なんじゃ?」
「流石に何年もやってればミスったりしないわよ。ただ、思いつきで何かやると悪い方の結果になりやすくて……後輩にも色々迷惑かけたことも何回もあるし……」
まさかの女神が指示待ち人間だったでござる。
でも、この善性の塊みたいな女神のことだ、言っていることは事実なんだろう。
サボりたかったり面倒だからと仕事を放棄するような奴じゃない。
……よっぽど運がないんだろうな、この女神。
「まあ、こうやって偉そうには言ってるが、俺なんかこの中で一番の雑魚だし、俺の意見だってちょっとした参考にでもしてくれたら、これ以上俺からは何もないさ。むしろ、皆は俺に何か文句とかないのか? 直せる範囲なら努力するけど」
「……ねえめぐみん、貴女は何かある?」
「いえ、私はむしろ助けられているので、感謝したいくらいですが。ゆんゆんはどうですか?」
「私が追いかけてたキャベツをスティールで収穫してくれてたし、迷惑かけてないかってくらいで……だ、ダクネスさんは?」
「気絶した私にアクアを派遣してくれたタイミングが実に良かったし、あれは、カズマが口だけでサポートすると言ってサボるような輩ではなく、常に私達全員に気をかけてくれているという証左だろう。なに、冒険者だからと自虐的にならなくとも、カズマは優秀な人間ではないか」
おい、なんで持ち上げられてるんだ。
止めろよそういうの、また周りからの視線が痛くなってくるじゃねえか。
さっきから酒場にいる野郎どもが憎しみを込めた目でガン見してくるのが気になってしょうがない。
つーか、そんなに羨ましいならパーティ申請の時に来ればいいだろ。むしろ今でも戸口は開いてるんだから来てくれたっていいんだぞ。
「それにしても、ウチのパーティも豪華な顔ぶれになってきたじゃない? 五人中四人が上級職なんてパーティ、そうそうないわよカズマ? これもきっと、貴方が今まで頑張ってきたから、そのご褒美みたいな物よ! やったわね!」
素直に祝福してくるアクアの能天気さが羨ましい。
そりゃ、女の子が仲間になるのは嬉しい。
だって四人とも美人だし、優しいし、有能だし。
だが肝心の俺が気後れする。
相当に巡り合わせがいいのは自覚してるし、贅沢なのも分かってる。
けれど、もう少し扱いに困るような仲間であれば、俺も遠慮なく仲間になれたような気がする。
「カズマカズマ。周りの目なんか気にしなくても良いのです。もともと私達二人はパーティに加えられなかった側の人間なのです。ああやって恨めしそうにしている中には、私達を追い出した人もいるのですから自業自得というものです」
「私もだ。戦闘になるとついつい先ほど指摘されたように一人だけで行動してしまい、パーティからも敬遠されるようになったところ、カズマが救い上げてくれたのだ。むしろ胸を張ってしかるべきだぞ」
「そうですよ。私なんて、その……変な人が寄ってきたり、騙されそうになったりで、ちゃんと向き合ってくれたのはお二人が初めてだったんです。気に病む必要なんかないですよ」
三人の優しさが身に染みる。
前世でここまで俺に優しくしてくれた女の子がいただろうか。
さっきの討伐でも助けてもらったし、やっぱり異世界に来てよかった……。
「……いや待て、何かがおかしくないか?」
「え? 何が?」
とっさに出た俺の言葉にアクアが反応する。
そうだ、キャベツの討伐では確かに五人で協力して挑んだわけだ。
なんなら、俺が居なくたって、四人でやっても結果はそれほど変わらないはずだ。
そう。そのはずなんだが……。
もしもだが。もし俺が居なかったら四人はどうなっていたんだろうか?
ゆんゆんは際限なくキャベツを追いかけて。ダクネスはキャベツに吹っ飛ばされて戦闘不能。めぐみんはそのダクネスの下敷きになって。アクアは自発的な行動をとりたがらない訳で。
あれ? なんでだろう? キャベツをまともに討伐できる様子が思い浮かばないぞ?
…………。
「いやいやいやいや、気にしすぎだよな。まだまだ組んで間もないわけだし、たまたまそういうことが重なっちまっただけだよな。あ、気にしなくていいぞアクア。ちょっと魔が差しただけだから」
「そう? それならいいけど」
そうだよ。あまりにも四人に対して失礼な考えすぎる。
まさか、俺が纏めなきゃこの四人の先が真っ暗だなんてそんな……ねぇ?
そんな一抹の不安を笑顔で押しつぶして、パーティ結成を祝した宴会の準備に取り掛かるのであった。
ダクネス→
out 変態
in すぐに調子に乗って、残念な部分が出てしまう
ん? ドMのままじゃないかって?
変態成分をとっただけで、ドMの部分はそのままだからね。仕方ないね。