転生者迷走録(仮)   作:ARUM

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某所で見たところによると、ガンダムBFは全てのガンダムキャラが幸せに暮らしている世界だそうですね。
これが何を表すのかというと、シンがマユ(妹)、ルナマリア(級友)、ステラ(転校生?)とラノベが如き青春ハーレムを構築してる可能性があるわけです!


第三十四話 普通のザクの三倍速=ビグロくらいの速さ?

 

 

「……ここは」

 

 ウルラの一室で眠っていたハマーンの目覚めは、健やかなものとは行かなかった。

 グラナダを連れ出されたときと同じか、それ以上にけたたましいサイレン。

 慌てて起きて、目に入るのは見慣れぬ部屋。見慣れぬ家具も置かれた部屋は、そう言えばヒダカという戦隊長の私室であったかと思いだした。

出会って直ぐの人間を信用できるほどハマーンはまだ人間ができていない。親から離され、人の暖かみを忘れかけていた十代の少女にそれを求めるのは酷だろう。それでも部屋を譲られて、譲った本人がザクで寝ているとあっては流石にすこしばかり申し訳ない気持ちが湧く。

 

「今度は、何?」

 

 ハマーンはアヤメという大尉から、できれば余り出歩かないように言われている。しかしそれは絶対ではなく、一声かけてくれれば別に艦を見て回るくらいはかまわないとも。

 現状はどう考えても緊急事態だと思われて、ハマーンは外へと出ると決めた。

 急遽用意された服に着替え、扉からひょいと顔だけを出して外の様子を伺う。

 

 外には、誰もいない。しかし、遠くの廊下では慌ただしく兵が駆けていくのが見えた。

 しばらくその様子を眺めた後、ハマーンは部屋を出た。

 まずは人の多い方を目指して、駆けていく。

 

 

 

 

 

 

「な……」

 

 視界の端が光った瞬間、アヤメは艦長席で任務がほぼ終わったものと思っていた。未だ月からは離れては居ないもののグラナダを脱出し、後はソロモンへと帰るのみ。特に有力な敵もいない。

 当直の兵に頼み、ドリンクに口を付ける余裕もあった。そう、余裕という名の油断があった。

 何時の時代でも、油断に対するしっぺ返しは手痛い反撃と相場が決まっている。それはどこの誰であろうと、どんな形であろうと変わることは無い。人が宇宙へ進出し、そしてまた戦争を始めた今においても。

 油断をしていたのは、戦隊の首脳部。この場合は、事情を知っていた冬彦とアヤメの二人。アヤメに事を教えたのが冬彦であることを鑑みれば、冬彦一人のせいと言えるかも知れない。グラナダの不手際であるとゲートを押し通り、しかし真実連邦の艦隊などは存在しないと知っていた二人。

 因果応報、天罰覿面、人を呪わば穴二つ。果たしてどれが適切か。

 余りにも早く訪れた“其れ”は遠く離れた月の山陰から、幾条ものメガ粒子砲の軌跡という形で、罰を下しにやって来た。

 

 グラナダへの工作の為の偽連邦艦隊とは別に、“本物の”ルナツー残党。その一部がこの月にいたのだ。

この一党は月の中立都市を頼ったものの多少の物資の支援に留まり、港への入港は拒否された。これにより半ば破れかぶれでジオンに対して一矢報ようと決めたのだが、彼らもまた軍人だった。機を窺い、レーダー波の届かぬ影に隠れて時を待っていたのだ。

 

 艦隊中央にいた「ウルラ」を掠めて、右前方の「ミールウス」に着弾するまでの間。

 ウルラのブリッジに居た者達の中で、意味のある言葉を発することが出来た者は誰も居なかった。

 この瞬間、後は良家のお嬢様を連れ帰るだけという消化試合の体は消え失せ、生き残りを賭けた戦闘が始まった。

 

「艦長ォ! ミールウスが左舷エンジンに被弾!!」

「左舷方向に敵影あり! 数六、距離12000!」

「……話が違うんじゃあないか。冬彦?」

「艦長、指示を!」

「下げ舵三十! 月の表面ギリギリまで艦を下げて手近な山かクレーターの影に艦を隠せ。多少時間が稼げる! その間にミノフスキー粒子散布とMSの発進急げ! 戦闘配備!!」

 

 毒づきながらも、アヤメは指示を飛ばす。指示に従い操舵手が舵を切り、急激な進路変更に艦が大きく揺れるが、ここで下手な動きを取ろうものなら立ち所に沈められる。ヘタをすれば、最初の一発がウルラに当たっていた可能性も充分にあった。当たらなかったのは、それこそ奇跡か偶然か。

 アヤメは、ふと手に持っていたドリンクに気づいた。軍服とセットになっている白い手袋越しに熱が未だ伝わるホットティー。未だ振動の収まらなぬ中ではどこかに放る訳にもいかず、半分ほど残っていたそれを一度に口に含んだ。

 

「カァ~~っ……!」

 

 飲み干した後、熱と共に声にならないうめきが漏れた。喉の奥がひりひりとしたが、気合いが入ったと紙のカップを握り潰す。

 一度スイッチが入れば、アヤメも負けるつもりは無い。戦隊にはモビルスーツがある。不意討ちから立て直す事さえ出来れば、負けは無い。多少の戦力差などひっくり返せる。そしてそのために必要な時間を、自分の指揮で創り出せば良いのだ。

 

《アヤメ! 何が起きている!?》

 

 艦橋と同じように酷く揺れるモニターに冬彦の顔が映る。ザクで寝泊まりする予定であった為、万が一に備えてパイロットスーツを着ているが、気づかずに階級も付けず下の名前で呼んでいる辺り慌てているらしい。寝ていたのかもしれないが。

 

「奇襲だ! ルナツーの残党から襲撃を受けている!」

《なっ、んだっ……と……!?》

「あとどれくらいで出られる!?」

 

 冬彦も状況がわかったのか、直ぐに周辺の計器に目をやり、機体の状況をチェックする。手早く終えると、ヘルメットを被りながら報告する。

 

《後は武装を装備すればいつでも出られる! 出られるが、揺れが酷くて装備を受け取れん!》

「あと数秒で揺れは収まる。頼むよ」

《何とかする。それより、状況は?》

「艦長! ミールウスより打電! 左エンジンの誘爆により拡張ブロックに被害! MS隊発進不能! また、さらなる誘爆を防ぐ為に増槽をパージ。しかし自律航行は可能とのことです」

《まさか……》

「まだ沈んじゃいない」

《……わかった》

 

 しばしの沈黙を挟んで、通信が切れた。切ったのは、冬彦の側で、モニターは暗転する。再び、光りが灯ることはない。

 その内、揺れが収まった。それまでの間、アヤメは握り潰されたカップを手放すことを忘れていた。

 

「……緊張するなんて、柄でもない」

 

 手に持つそれを、ポケットへとねじ込んで。

 眼鏡を外して、レンズについた僅かばかりのゴミを拭う。そして、再びかけ直した時、そこに居たのは若いながらも開戦からこれまでを生き抜いた、一人の艦長だった。

 

 

 

  ◆

 

 

 

「急げ! 装備は対艦砲と弾の替えだけで良い! 盾は要らん!」

《中佐ァ! クラッカーはどうします! 時間はかかりません》

「頼む! マウントは右側にしてくれ」

《了解!》

 

 持つ物を持ったら、すぐにカタパルトへとザクを進める。脚部がロックされ、オペレーターの許可と共に射出。艦首ハッチを出れば、そこは宇宙だ。艦を下げていたこともあって、月面が近い。しかし地表には降りず、勢いを殺さぬようそのまま前へ前へと加速する。

 白く輝く月面での戦闘というのは、よく考えれば初めてのこと。軽いとはいえ重力がある。普段であれば、月面に降りて待ち一択である。しかし、今回に限って言えば時間がない。そう時間がないのだ。

 ミールウスの被害がどの程度深刻かは正確にはわからない。しかし片方とは言え主機関に直撃して死傷者が無いなんて事はありえない。誘爆も起き、拡張ブロックにも被害が出たという。拡張ブロックといえば、それはすなわちMS格納庫だ。

 

「戦争だからな。そりゃあ、人も死ぬか」

 

 誰が死んだか。何人死んだか。今はまだわからない。しかし、間違いなく誰かが死んだ。MS隊に被害が出ていたとしたら、クレイマンか、それともベンか。どちらも、最初の部下だった。

 

「……戦争だから、か」

 

 機体を左へ向け、それから上へと向けて、機体を陰から出した。機体の正面の延長に、敵艦隊が来るように。

 冬彦は、操縦桿を前へと押し出す。それに合わせて、機体は加速していく。ジオン唯一の二つの眼を持つMS-06が。

 ゆうるりと。しかし衰えることなく。前へ前へ。操縦桿を更に前へ。

 スラスターからの噴出光が月面の上に尾を引いていく。堆積物を巻き上げ、吹き飛ばし、前へ、前へ。

 

「戦隊長より各機。食い荒らすぞ。続け」

《ちょ、中佐! 追いつけませんって!》

《危険です! 中佐!》

 

 僚機からの悲鳴じみた通信が届くが、冬彦は黙殺した。

 計器に眼をやれば、まだ危険域には入っていない。

 普通のザクなら、既にオーバーヒートを起こすか、機体の不具合を知らせるアラートが合唱を始める頃合いだが、バックパックを換装し、更にS型のカスタム機であるこの機体は、まだ余裕がある。

こればっかりは、特に技術も必要無い。ただ頑健な身体と、遠のく意識に耐える意志があればいい。

およそ、通常のザクの二倍の速度。あの赤い彗星シャアが三倍と言いつつ実際には一・五倍だったことを考えると、随分な無茶だ。

だから、身体が軋み、機体が軋み、それでも加速を止めることはない。

前へ。

ただ、今は前へ。

 二つ目の残光が、涙の様に尾を引いた。

 

 やがて、敵が見えてくる。

 

 優秀な“眼”が、敵を見逃すということは無い。障害物もない月面、敵の陣容は容易に知れる。マゼランが三、サラミスが八。戦闘艦ばかりで、方々へ逃げて行った残党にしては思いの外数も多い。戦隊が隠れたからか、今は砲撃も止んでいた。

 

砲口を、一番前にいるマゼランへと向ける。スタンダードな濃緑の船体で、狙うは艦橋。ミールウスの二機と、加えてフランシェスカが今回も出撃出来ていない為、九機での出撃。基本的に一人一隻がノルマで、二隻潰せば余裕が出てくる。

 だが、無茶な加速で味方を置いてきた為に、今は一人。戦力比は逆転どころか一対十一と酷いことになっている。

 しかし、負けてやるつもりはない。

 名ばかりで、本当の意味でエースになったなど思っていない。

 それでも、相手がMSでなく、のろまな艦船が相手なら――

 

「多少の無茶は、通すぞ……!」

 

 艦橋の真正面から一発。撃ち出された砲弾は吸い込まれる様にマゼランの艦橋に命中し、爆炎を上げる。崩壊した艦橋の横をすり抜け、狙いを付けるのはまたマゼラン。戦艦と言うだけあって、サラミスよりも火力があり、弾幕の密度も高い。

軌道を上向きに修正して弾幕を躱し、今度は艦の上方から艦橋を狙う。味方がやられたことで、他の艦も砲を向けつつあるが、止まりさえしなければ充分に抜けられる。

 また、一発。外すことなく撃ち込む。

 

「二ァつ!」

 

 三隻目のマゼランへ照準を合わせようとしたところで、機体を右へ滑らせる。一瞬前にザクがいたところを通り過ぎていった。

 

「さっ、すがにぃ……!」

 

 急制動から来る高いGで、言葉を出すにも歪んで出てくる。敵艦隊の後ろに抜けて転回れば、サラミスやマゼランのエンジンの噴出口がよく見える。そして、ザクの砲口はその噴出口を向いている。

 

「キッツイなあっ!!」

 

 一隻目と二隻目が艦橋だったのに対し、三隻目は機関部に直接叩き込んだために、すぐに大爆発を起こし船体が“くの字”に折れ曲がった。

 

《すげぇ……》

 

 部下達が追いついた時に見たのは、たった一機のザクに戦闘能力の半ばを喪失した三隻の戦艦と統制を失いつつあるその僚艦の姿だった。

 

 

 

 




 これも某所で見たことですが、FFT獅子戦争、あれ最後結局全員生存してるってのが公式見解になるんですってね。やったぜ。

 ……長くFFTの新作が来てませんが、どうせならFF12の世界に獅子戦争後のラムザ達がINして冒険みたいな話で出ないだろうか。
 IFの世界線ってことにして、FF12の面子+FFTの面子でFF12の物語をプレイしていくゲーム。で、途中から独自のストーリーに分岐していく話。もちろんグラとシステムはFFT式で。出ないかな?……でないか。



……FFTAとFFTA2? プレイ済みです。

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