転生者迷走録(仮)   作:ARUM

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戦極姫6……嫌な予感がする。
大正義島津ルートがなんか無いクサイし……
おなじみのキャラも結構グラが大幅変更されてるし……

新キャラも悪くはないんだけれど……あとは開けてみないとわからん。

なんなんだろう……この……この……何?





第六十二話 

 

 

 

「即刻、ドズル閣下を拘束するべきです」

 

 口周りに髭を蓄えた禿頭の将校、エギーユ・デラーズは躊躇うことなくそう言い切った。

 大佐の階級にあり、ギレンの乗艦であるグワデンを任されている男だが、ザビ家の一員であるドズルを拘束すべしと言うその言葉は余人に聞かれれば幾ら彼であっても批難は免れない。それどころか、逆にデラーズが拘束されることさえ充分に考えられる。

 

「随分と率直な物言いだな。デラーズ」

「はっ。本心でありますれば」

 

 だが、進言を受けたギレンはそれを咎めることもせず、不敵に微笑む。ジオン本国サイド3はズムシティ。親衛隊本部の執務室で、ギレンは外の緊張感など素知らぬ風に悠々と構えていた。

 一方で、デラーズは真剣である。彼が問題視しているのは、当然のことながらドズルが本国への帰還には過剰すぎる艦隊を引き連れてきたことだ。それも、どの艦も戦歴を重ねた一線級の部隊ばかり。当然各艦にはそれに付随するMS部隊も存在し、無視することなどできようはずもない。戦力を引き連れてきた以上、ドズルが何かしら自分の意を通そうとしていることは明白だ。

 月の艦隊も出張ってきているが、これはドズルの結婚式に合わせて訪れていたキシリアの護衛艦隊である。もともとはキシリアの移動に妥当な数であったのが、こちらも増派されており、グワジン級のアサルムなどもこの増援組である。

 キシリアも大きな動きがあると見て、相応の手駒を呼び寄せたということなのだろう。

 まず無いことだと予想されているが、仮に短絡的にドズルとキシリアが手を結び、ギレンを総帥の座から降ろそうというのなら、単純に今本国に居る戦力を比較すると馬鹿にできなくなっている。

 デラーズもあり得ないとは思いつつ、最悪への備えとしてグワデンを筆頭に親衛隊を展開させてから、こうしてそもそもの原因であるドズルを拘束するべきだと進言しに来たのである。

 

「今すぐにそれをするのは不可能だと、わかって言っているのだな?」

「は、もちろんです。タイミングとしては式のあと、ということになりますな」

 

 既に、士気高揚の為の一大イベントとして、式のことは布告済み。パレードも予定されており、今更中止することは難しいし、マイナス面での影響が大きい。

 

「戦力は足りそうか」

「元より備えはあります。駐留している控えの軍と親衛隊を足せば、戦力で宇宙攻撃軍を上まわります。仮に突撃機動軍を相手にしたとしても、五分に戦えましょう」

「ふむ。数の上では劣っているが?」

「親衛隊にはR型以外に新型のMAも配備されています。装備の面ではこちらが上です」

「……まあいい。ドズルと周辺に監視を付ける。連絡を密に。奴に国を割るだけの度量も目的も無いとは思うが、いざとなればその時は期待している。ペズンの部隊も呼び戻しておいた。どう使うかの判断はまかせる」

「はっ」

 

 ギレンは自らのサインをしたためた書類をバインダーに挟み、デラーズへと差し出す。

 デラーズはそれを恭しく両手で受け取り、小脇に挟んで退室していった。

この時の執務室には、この時秘書官長であるシンシアもおらず、ギレン一人。

 視線を宙空に彷徨わせ、ギレンは開戦を決めたときのように、その頭脳を回転させる。ドズルの動く、その理由を。

 

「さて……面倒なことをしてくれたな、ドズルめ。何が奴を駆り立てる」

 

 元々ドズルは前線に立つ将として血気盛んな所がある一方で、情に厚いことは彼を知る誰もが認めるところでもあった。決して重用の序を破るようなこともなく、ギレンや他の家族を立ててきた。

 それがここに来て、まるで中世の砲艦外交、それこそジオン独立以前、宇宙世紀初頭の連邦のようなマネを、突然行った。

 しばしの瞑目。そして長考。ギレンをして、その答えを導き出すことはできずただ執務机を指で打つ音が一定のリズムで響いていた。

 

 しばらくして、指を打つ音が止まる。そして――

 

「……しまった」

 

 くわと目を見開き、手を伸ばした先にあるのは内線電話の受話器である。

 導き出された最悪の仮定に手を打つべく、ギレンはグワデンへ戻る途中だったデラーズを呼び戻すのだった。

 

 

 

  ◆

 

 

 

「つまりは――」

 

 米神を押しながら、冬彦は対面で腕を組むコンスコンを見た。

相も変わらずふてぶてしい印象を受ける男だが、この時ばかりは神妙なようにも見えた。

 

「このタイミングで、連邦と和平を結ぶ、と?」

「ドズル閣下は、そのつもりだ」

 

 流石グワジン級と言うような広々としたグワザンの会議室は、僅か数人によって占有されていた。冬彦とコンスコン。それ以外には、冬彦側にはフランシェスカ。コンスコンの側には腹心が数名といったところ。

 

 冬彦が前後不覚に陥りかけたあの後。

 グワザンと通信をとった冬彦は、コロニーの中ではなくグワザンへと呼び出された。

 通信でできない話があるというのはわかっていたが、戦艦の並ぶ中で出たのが権威の簒奪ではなく敵との和平だというのが驚きだった。

 

 さて、連邦と和平。それがなれば戦争は終わる。しかし現状停戦すら実現しておらず、目下戦闘は各地で継続中である。

 まして、今は連邦もとりあえずのMS量産が可能となり攻勢に出つつある情勢。ジオンとしても広大な占領地域を有し、はっきり言って士気が高く和平というような雰囲気は無い。ジャブローを落として戦争に勝利することを目標とするだろう。

いずれは必要になるだろうが、ギレンの考えも今ではないはず。せめて、これが一時の停戦や休戦なら話も違うのだろうが……ドズルの話を奇貨として採用することもないだろう。

コロニー落とし直後に結ばれた南極条約。これさえ本来は休戦条約を目指した物であった。しかし現実にそれは叶わず、結ばれたのは大量破壊兵器の不使用などといった、互いに致命傷を負わせるのを防ぐ物のみ。そして地上降下作戦が始まった。

 

 ドズルは、世論やギレンの意向を無視してでも、このタイミングで和平を通そうと言うのだ。そのために艦隊を率いてサイド3に戻り、冬彦を呼び戻した。

これだけのことをして肝心の交渉がこれから……ということもないだろう。既に、連邦にもある程度の根回しは済ませているはず。

 

「ドズル閣下は、それを総帥に?」

「今頃は、丁度話しているところかもしれんな」

「閣下は、この話が通るとお思いですか」

「難しいだろう」

「通らなければ?」

「……袂を分かつ。それだけの価値はあるはずだ」

 

 ため息を漏らしたのは、冬彦。他は誰もが息を呑んだ。

 例外は、その情報を明らかにしたコンスコンだけ。良くも悪くも、思う所はあるのだろうが、それが表情に出ているのか。

 袂を分かつ。ジオンを割るということ。

 それで喜ぶのはルナリアンか連邦か、それともダイクン派か。

 

「今しかない。今しかないのだ。今停戦を結ばねば、後は勝つまで続けるしかない」

「今更言うことでもないでしょうよ」

「貴官にも、仕事を任せたい」

「戦うことしかできませんよ。私は」

 

 冬彦のあからさまに予防線を張るような言葉に、コンスコンはくすりともしない。

 流石に無いとは思うが、ここで仮に冬彦に連邦に特使として向かえと言われても困るのだ。むしろ、特使を護衛しろと言われる可能性が非常に高い。そう言うことに使うには、都合が良すぎるくらいに冬彦の隊は装備と規模が充実しているのだから。

 

「……まあ貴官にサイド6へ特使を迎えに言って貰うという案もあったが、それは別の者に任すことになっている。例え交渉が決裂したとして、そうすぐに戦闘に発展することはないだろうしな」

「敵を削れば削るだけ、ジオン全体の戦力が減るだけですからね」

「その通りだ。そしてそうなるまえに、貴官に説得して貰いたい相手がいる」

「それは?」

「高官や知識人は、ドズル閣下やマハラジャ閣下が何とかしてくださる。そこで、貴官にはもっと下の、実際に現場で戦う人間をまとめてもらう」

「……はい?」

「実際に指揮をとれとまでは言わん。だが、敵に回られるのは困る。ドズル閣下の式までに、有力なパイロットを取り込んでおいてくれ」

 

 




 
スランプ気味。
エタりたいわけじゃないんだけど、こういう時に限って違うネタが浮かんでくる。

エマと漆黒のシャルノスのクロスとか俺何が書きたいんだろう。


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