儚い雰囲気の艦娘……
ちと不幸にしてしまったかも……。
――左舷雷跡3――
――何処かで声が聞こえる。
躱そうとする動きはとても鈍く――。
衝撃と共に私は沈む――。
ごめんなさい――。
守れなかった――。
沈む。沈む。多くの人が沈んで逝く――。
あの人には今年生まれた幼子が――
あの人にはたくさんの兄弟が――
あの人には年老いた両親が――
あの人には許嫁が――
あの人には――
出来たら、一人でも多くの人が助かって――。
それが私の、儚い夢――。
私の艦としての想いはそこで途絶える。
「この子、ドロップ?」
気が付くと私は海原に漂っていた。
そんな私を囲み見つめる何人もの顔。
髪飾りをつけた子が金髪のお姉さんに尋ねている。
「私は愛宕。貴女の自己紹介、お願いできるかな?」
穏やかな声――。
「あたし…白露型駆逐艦……その八番艦。山風」
「山風ちゃん、ね。もし良かったら私達の鎮守府に来てくれないかな」
「いいよ……。別に」
まだこの鎮守府に来る前、来た直後。
誰も信じられなかった自分。そんな私を変えてくれたのは――。
やめてよ、放っておいて。
私を秘書艦にしたあなた。
構わないで。放っておいてって言ってるでしょ? やめてよ、そういうの。
冷たくあしらっているのに――。
――あの! あげる! ……あとで、食べて、ね……?
何時からだったろう、そんなあなたが気になりだしたのは。
これ……! いいの……!? ……ありがと……ありがとぉ……ッ。
あなたからの贈り物。少し胸が温かくなった。でも、あなたは私の前で他の娘にも――。
そんなあなたが面白くなくて――。
何か用? ――用がないなら、放っておいて。あたしは一人が……。
ちょっぴり拗ねて――。
あなたの慌てる様子が少しだけ嬉しくて――。
変わらない日々。少しだけ変わってきた日々――。
あなたが少し怖い顔をして――。
……っやだ、腕を掴まないで。
差し出された小箱。
……何、これ? ……別に、あたし……。
あなたにはほかに相応しい娘がいるでしょ。それなのに――。
私の手を取り強引に指輪をはめるあなたの手。
……あたしで、いい、の? ……別に、嬉しくなんか……。
最後の抵抗もあなたは強引に突破して――
……綺麗。温かい……。何、この気持ち……。
何? ……泣いてなんかいない、よ……。
泣き出した私をあなたは、いつもの様に包んでくれた。
何時までも傍にいるよって約束してくれたのに。それなのに――。
「山風! 大変よ! ――提督が……。――提督が……!」
「えっ!」
――暖かかったあの場所はもうない。あなたを失った時から――。
皆が私を腫れもののように扱う。
違うの――。
そうじゃないの――。
心が叫ぶ――。
あなたが居なくなった場所に未練なく――。
私はあの場所を飛び出た――。
……さわさわさわ……
風が鳴く。
……さわさわさわ……
風が鳴く。
――どうして? ――
――どうして、私をおいていったの? ――
――あなたに会いたい――
瞼に浮かぶ優しい笑顔
その微笑みはもう見られない
……さわさわさわ……
風が鳴く
……さわさわさわ……
風が鳴く
――私――
人の身となった
――私、ずっとあなたの事好きだったのに――
――一緒にいきたかった――
――もっと早く心を開いていたら――
――もっと――
思い出は風にのって消えていく
……さわさわさわ……
風が鳴く
悲しくて、泣きたくて
だが涙は頬を伝わらない
悲しくて、泣きたくて
悲しくて、泣きたくて
忘れられないなら……
また心を閉ざそう
在りし日の艦の様に……
心を閉ざせば
何も感じない
何も感じなければ
悲しみも消える
……さわさわさわ……
風が鳴く
……さわさわさわ……
……風が鳴く
…………風が……
もう風の声は届かない
心に陽が差すのは
いつの日か……
心に陽が差すまで
山風提督の方、ごめんなさい。
雰囲気が似ている娘を主人公にして10数年前に書いた物がHDから見つかったので、つい……。