提督の欲望に翻弄される名取……。
仄かな灯に照らされた部屋。
部屋には二人の人間がいた。茶色いショートヘアに同系統の色の瞳を持つ少女と男が――。
少女が怯えた眼差しで男を見つめる。
「や、やめてください。……お願いです」
その双眸を涙に濡らした少女の嘆願を冷たく一笑する男。
「ここまで来ていまさら泣き言か? 止める理由はないな。……そろそろ諦めろ、名取。……そらっ! 出すぞ!」
「い、いや……。やめてぇぇぇ」
少女の悲鳴が木霊する。
「きゃぁぁぁ!」
男から放たれたドロドロとした液体を受け、少女が悲痛な悲鳴を上げた。
「どうだ? 美味いか……?」
眼下の少女に対して、至高の表情を浮かべる男。
「……こ、こんな真似をなさるなんて。……ひ、卑劣です!」
少女は放たれた液体を拭い去ろうと、手を動かし苦闘する。
「甘いな。そう簡単には取れないだろう?」
そんな少女の手を押さえ込み、液体が付いたモノを口の中に押し込む男。
「諦めて飲み込んだ方がいいぞ。我慢すればもっと辛くなるぞ」
「う、うぐっ」
堪らず吐き気を催す少女。
体質的に身体が受け付けないのだろう。
「何度も経験すれば、そのうち美味くなるさ」
直後、男の下卑た笑みがこぼれる。
「うっ……」
少女がコップを手に取り、急いで口を濯いだ。
その独特の風味。そして匂いから早く解放されたいが為に……。
「この味が解からないようではな。……まだまだ青いな。仕込みがいがありそうだ」
自らが放った液体を指に掬い、その匂いをかぐと少女にそれを近づける。
目を閉ざし、顔を背ける少女。
その様子に満足そうに口元を吊り上げ、下卑た笑みを浮かべる男。
少女が見慣れていた男の顔は其処に見出せなかった。
「……そんな。……もう許して……下さい。……お願いです」
虚ろな瞳で嘆願する少女。
「嫌だといったら?」
冷笑する男。もとよりそんな嘆願など聞く耳を持たない。
その男に対し少女が抵抗する。
「もう……結構です。提督さんが責任持って食べてください」
少女は、目の前の食卓にあるコーンのマリネサラダとアサリのリゾット、そして無理やり飲まされ半分ほどに減った、グラスに注がれたファイヤークラッカー*1を男へ渡す。
「辛い物は嫌いですから。っていつもお願いしているのに……。美味い料理とカクテル飲ませるからと言われ、期待していました。……でも、南1号作戦で大破したからってこんな料理、あんまりです」
涙で濡れた瞳を拭い少女が走り去る。
その後姿を見つめ、
「ふぅ。あいつの辛いもの嫌いにも困った物だ。……しかし、どうしたもんだろうな、これは」
調子に乗ってかけすぎた、タバスコまみれの料理を前に、後悔の念を抱く提督であった。
20数年前に大学時代の先輩が香港のバーで教わったらしい、マジですか? と言いたくなるようなレシピ(笑)
1:ショットグラスに30ccのテキーラを注ぐ。
2:タバスコを10滴ほど入れる。
3:グラスを回し簡単にかき混ぜる。
4:レモンの輪切りハーフカットを添える。
*飲む際、レモンは必須。
【飲み方】
一気に飲み干し、レモンをかじる。(約2秒間で)
曰く、『不思議と口の中にうまみが広がるぞ。騙されたと思ってやってみろ』
……あなたのその台詞信用できませんでした(;_:) そして予想通りでした。
やっちまったぜ、タバスコ気化で大被害。
うっかり換気扇回さないまま、炒め物中にタバスコ掛けたら入れてた容器の蓋外れた。半分近くがフライパンに……あっという間に気化して……うん、耳鼻科に駆け込んだよ。
そうそう、辛い(つらい)と辛い(からい)って同じ漢字なんだよね。うん。
と書いて元ネタを投稿した2004年の秋。
辛い(つらい)と辛い(からい)を書きたかっただけだから正直言って名取にする意味あったかなぁ……。
因みにタバスコ、自宅で作れるか試したことあります。
結果? 熟成が上手く出来ていれば成功だったんだけどね……。